第52話:モフモフ学部
夏の森の野外実習が終わった後、俺たちは動植物学部の校舎に来ていた。
ミノタウロスの解体を手伝ってもらうのが本来の用事なんだけど…
「まさか夢幻種を連れ帰るとはね…」
…ロッサ先生が静かに驚いている。
ミノタウロス狩りだけの筈が、想定外の生き物を連れ帰るサプライズだ。
「夢幻種の飼育なんて、歴史上初かもしれないよ」
先生の話では夢幻種はこれまで捕獲された事が無く、当然ながら飼育出来た事は無いらしい。
その夢幻種のウサギたちが教室の中までついて来て、他の学生たちの膝に乗って撫でられている。
解体作業の邪魔しちゃってるんだけど、可愛いは正義、誰も拒めない。
「フワフワしてる~」
「可愛い~」
「モフモフがいっぱいだぁ」
「うちの学部、モフモフ学部に改名しようよ」
「いいね、モフモフ!」
…とか言ってる動植物学部のみなさん。
君らも立派なモフモフだからね?
猫が服着て二足歩行してる世界で、モフモフとは何を意味するのだろうか?
「すいません、連れ帰っちゃって。地球だと野生動物の飼育は許可が必要だったり禁止だったりするんですけど、大丈夫ですか?」
「そうした制約や禁止事項は無いな」
連れ帰ったのはまずかったかな?と心配で聞いてみたけど、そこは問題ないみたいだ。
「夢幻種はこれまで捕獲出来なかった生き物だから、生体情報が取れたのは素晴らしい事だよ」
とりあえず、ほめてもらえたからOK?
ウサギたちやユニコーンは、そのまま動植物学部で飼育する事になった。
ユニコーンは怪我を治してくれたのが分るみたいで、ピッタリとチッチの隣に寄り添っていた。
チッチから離れようとしないので、そのまま彼が飼う事になったんだけど…
「親が探しに来たりしないかな?」
って言ったロッサ先生の言葉通り…
…その夜、来ちゃったよ!
チッチが寮の自室で寝てたら、顔に鼻息がかかったそうで。
「………?」
仔馬かな? どうかしたかな? って思いつつチッチが目を開けたら…
「?!」
…ユニコーン(大)の顔があったとか。
子供を奪われたと思って怒るかと思いきや、仔馬が何か話したみたいで、ふむふむと聞いてる様子の母馬が、今度は自分も撫でろと首を寄せてきたという。
地球だと「清らかな乙女」にしか懐かないと言われるユニコーン。
この世界では特にそんな伝承は無いらしい。
というより、夢幻種であるユニコーンが人に懐くなんて事自体がありえない事だった。
稀少な召喚獣・福音鳥の主人として学園では有名なチッチ。
今後は夢幻ユニコーンの飼い主としても、学園の歴史に残る事になるだろうね。




