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異世界の名探偵(旧題:ファンタジーにおける名探偵の必要性)  作者: 片里鴎(カタザト)
ドラゴンイーターあるいは黄泉がえる首無し姫の問題 出題編
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嵐の城(3)

 俺達も、見取り図を片手に、マサカドについて一階を回る。


「その見取り図は、急遽作ったものだ。当然ながら、現在の嵐の城はただの遺跡だ。今や全ての部屋はただの空き部屋だからな。今回、怨公を閉じ込めるためにそれぞれの部屋に役割を割り振っただけだ」


「なるほど」


 そりゃそうだ。

 しかし、注意して歩いてみると確かにところどころ、床や壁の材質が違う。床で色の違う部分を蹴ってみれば音まで違う。


「ダンジョンの床壁の流用が気になるか?」


「まあ、それは、ちょっと」


「嵐の城は大体ダンジョンの流用が4割、他が6割だが、見て分かるようにどこからどこまでが普通の材質でどこからどこまでが聖遺物とはっきり分かれているわけじゃあない。攻める方からすれば、強度としては実際にはダンジョンがそのまま城になったようなものだ。心配するな。一個大隊くらいなら攻めてこられても今の人員で充分防衛できる。口が堅くて腕が立つ、俺の信頼する部下二十名を見回らせているからな。ああ、ちなみにそいつらには必要最低限の情報は共有している。あくまで必要最小限だ。さすがに全て黙秘したまま警備させるわけにもいかない」


 そうして、扉の前に立つ。


「ここが、貴賓室だ。まあ、ぶっちゃけ、不死公を迎えるために慌てて多少マシな調度品をそろえただけの部屋だがな。さすがに、王をそこらの部屋に座らせるわけにもいかん」


「不死公が来るのか?」


 ボブが目をむいて驚くと、


「そりゃあそうだ。怨公を捕まえたと言っても、まずその怨公が本当に怨公なのか判断できん。俺達ではな。おそらく、判断できるのは奴だけだ。だから当然呼んだ。おそらく、怨公が連行されてきてすぐにこの城に着くことになるな。勘だが」


 この男が勘ということは、つまりそうなるということだ。


「ほら、見てみろ。中には入るなよ。絨毯が汚れる」


 ドアが開けられて、そこを覗き込むと、なるほど確かに赤い絨毯が敷かれ、銀樹製らしい椅子と机が置かれている。

 狭い部屋ではあるが、不死公一人が滞在するなら充分だろう。

 部屋の奥に扉が見える。


「ええと、あの扉は」


 見取り図で確認をして、


「倉庫か」


「そうだ。あそこは元々、この城が作られた当初から倉庫になっているらしい。倉庫に繋がる部屋を貴賓室にしたくはなかったが、一番小奇麗な部屋がここだったから仕方がない。倉庫に用がある場合は、こっちだ」


 マサカドは扉を閉めると、左手の方に進みドアを開ける。

 小さな部屋に出る。部屋というより、単なるスペースだ。四方全てに扉がある。


「こっちの扉から倉庫に入れる。今のところ置いてあるのは、元々あったガラクタと俺の焔の手入れ道具くらいだが」


 と、マサカドが右の扉を指し示すが、俺達の目は正面の扉に向いてしまっている。


「なに、これ」


 呆然とキリオが呟く。


 巨大な金属製の中央開きの扉だ。ほぼ、壁の一面全てが扉になっていると言っても過言ではない。

 その扉には、大小の無数の歯車が取り付けられ、複雑に絡み合っている。それらの歯車とおびただしい量の金属線で接続させるようにして、扉の中央には、手のひら大の金属の半球が存在している。

 金属製の扉でありがら、生物を連想させる気持ち悪さがある。


「そこの扉は開かない。どうも、聖遺物らしい。破壊も不可能だ。開け方も分からないんだ。この嵐の城を作った時に、不死公が作ったとされる、開かない扉。開けられるのは不死公だけだそうだ。今回、いい機会だ。不死公に頼んで開けてみてもらうか」


 そう嘯いて、マサカドは倉庫とは逆側の扉を示す。


「こっちは詰め所だ。警備の兵士のうち、見回っていない兵士はここにいる。まあ、こっちの扉はあまり使わないがな。見取り図を見れば分かるが、基本的に、どの兵士ももう片方の扉から出入りする。そっちの方が見回り易い」


 その狭い部屋から出ると、


「こっちが食堂だ。持ち込んだ食料で簡単な調理をしている。兵士は大抵ここで食事をしている。俺達もそうだ。お前らもな。一応、貴重な遺跡なんだ。決められた場所以外で食事するんじゃあないぞ」


「僕にわざわざ忠告する必要はないな。誇り高きメージン家だぞ。他の二人には言いきかせなければいけないかもしれないが」


「はいはい」


 ボブの戯言を受け流しながら、マサカドについて二階に上がる。


「ああ、地下もあるのか? 下りの階段があるな。けど、見取り図には地下がないぞ、どういうことだ?」


 ボブが文句を言うと、


「ああ、そのことか。降りてみれば分かるが、あの下り階段の先は行き止まりだ。下り階段しかないんだよ。その後は、すぐに壁だ。どういうつもりであんな構造にしたのかは分からないが」


 マサカドが言っているうちに二階に着く。

 さっき覗いたが、一方通行の壁を使った大きな壁が目に入る。


「間違えてあの窓から身を乗り出すなよ。そのまま二階から落ちるしかなくなるからな」


 注意をしてからマサカドは、階段を出て廊下を歩く。


「この両側が大広間。大きな部屋だが、何に利用するかはまだ考えていない。まあ、探偵達が揃って会議する時にでも使うか。で、ここ。真正面にあるのが二階の詰め所になっている。これには理由があって、隣が怨公を閉じ込めておく予定の牢獄だからだ」


 正面向かって左手にある部屋をマサカドは指差して、


「どうしてあの場所を牢獄にしたのかは、まあ扉を見れば分かるだろう」


「あの部屋、外から鍵がかけられるんですか」


 頑丈な金属製の扉だが、他とは少し形状が違い、留め金が外側についているのが見てとれる。


「それも、かなり厳重なタイプのな。中からじゃあどうやっても開かない。もともとの嵐の城で、監禁部屋として使われてたんだろうな。資料がないから確かなことは言えないが」


 そこで、マサカドは伸びをして、


「案内としてはこんなところか。屋上には特に紹介するようなものはない。向こうの部屋はただの空き部屋だ。一応見てみるか?」


 つかつかと牢獄前から詰め所前を通って、突き当りにある部屋の前に立つ。


「ここは狭いし、使い様がないからただの空き部屋だ」


 マサカドがドアを開ける。


「ようこそ」


 狭い部屋で一人、床にあぐらをかいていたジャンゴがにやりと笑って迎える。

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