群れなす龍を穿て2
「分厚い」
「流石に乗り込ませようとしてないですね」
乗り込ませまいとしているんだろうけど、にしても数が多すぎる。
完全に外と中を隔てているくらいだぞ。
「これもう誰か到着してないか?」
梅酒の言う通りだ。誰か到着している。
「まあ入りたいから突破させてもらうけど」
「というかコレくらいなら俺たちも飛び乗った方が良いですね」
「確かにコレならいける!」
「エールちゃん戻ってねー」
3人ともファミリアを戻して、ミニオンを飛び越えて移動する。
まあ上にも下にもいるからめんどくさい。
しかも、さっきから被害度外視で突っ込んだり槍を振るってくる。
「うわっ!足引っ張るな」
倒すより足止めするために動いている。
それとさっきから足掴んでくるのはやめようか。
まあ足場も敵だから仕方ないんだけど。
「じゃあまずはバン」
「ウェ?」
結構近めで支援職のバンブスターを捕まえる。
「歯ぁ食いしばれよ!あるのか知らんアバターだけど」
「ちょまっ」
その勢いで、浮島の入り口方面へぶん投げる。
何やら叫んでいるが、お次は梅酒侍Gだ。こいつ今更だけどフルネームで呼ぶやついるのかな?
「梅酒、援護は頼むぞ」
「ア、アイアイサー」
ヨシラスト松茸王。メインタンカーらしいけど、こんな状況でも問題なく動けている。さすがことあるごとに俺に牙向ってくるだけのことはある。
「松茸、飛べぇ!」
「応!」
軽く浮き上がった松茸王を蹴り飛ばす。ソレに合わせて向こうもコチラを蹴り返し、飛んで行く。
コレで全員送れたはず、あとは俺だ。
今のでよろけたのを上手く立て直し、上手いこと跳んで行くが
「がっ、テメエら!」
あと少しのところで引きずり落とされた。
「「「兄弟子!!!」」」
マズイ。弟弟子達がコチラに手を伸ばした。
イヤ1人で十分だろ後先考えねえのかコイツら。
仕方ない。サッサと空いてる左の刀で俺を掴んでる奴らを斬って
「引力運動・開始」
そんな危機的状況を思い切り引っ張る力で浮島の入り口部分に乗り込まれる。
「ってお前いつの間にここにいたんだよ!」
俺たちの危機的状況脱したのは、A2だった。
「オドロイタデショウ。ワタシの呪術とマイファミリアのマッチャのオカゲですよ」
「確かホロコブラか」
首に巻いているヘビのファミリアを見せながら自慢げに言う。
ホロコブラはステルス能力を持っている。主たるプレイヤーごと数秒消えるスキルと彼の呪術による引力運動でほぼ一直線に到達したというわけだ。
「しかし1人デ行くには少々心細いユエ、誰か来るマデ待っていたのデスよ」
「まあこんだけ入れば最悪斥候としても十全にやって行けるか」
「コレ俺タンカーとしてやれるかなあ?」
「とか言いつつ軽装でも大盾離さないよね松ちゃん」
「みんなバフかけ直すから集まって」
ということでバフかけたり回復もして
「それではオープンザドアー!」
横にスライドするドアを開けて入って行った。
ハバキリ達5人が浮島内部に入った瞬間、浮島自体が動き出した。
全体のステルスが解け、その姿が露になる。
黒を基調とした超巨大な球状の浮遊物体。それをを中心として6艦の戦艦が周りに浮いていた構造だが、彼らが入った瞬間周りの6艦が時計回りに動き出した。
それ以外の動きは示さないが、今までにない動きを見せたことに見える範囲にいたプレイヤーNPCを問わず、驚きの声を上げた。
「ウーン初めての光景だなぁ」
ソレを見上げながら掲示板やサイトを開く少年の姿のプレイヤーがいる。
「仙女さんが最近またひっきりなしに動いているから何かするまでは分かっていたけど、まだクラン運営したってとこまでしか確認できてなかったんだけどねぇ」
その少年のそばにメイド服の女性プレイヤーが現れ
「社ちょっ………いえウィズ様、如何なさいますか?」
「まあ仙女さんにコンタクトは取らなきゃだよね。お従兄さんも居るらしいし、同盟を結ぶのも前向きに検討するべきかな」
「流石です。あの輩は憎たらしいですけど、腕は立ちますし他の面々も私達よりはできる方々でしょう」
「キョウカはお従兄さんの事が嫌いだったね」
「抱く感情は別ですが少なくとも日本の剣士に彼を知らぬものはいらっしゃらないでしょう。名前を変えていてもピンと来ますよ」
そう言い握り拳を固くする女性を見て微笑む見た目相応の少年プレイヤーはシステムメッセージを見て目を見開く。
「あっは、コレ絶対聞き込みしないと駄目じゃん!」
『起動:ヴァルフロイア』
『自律起動開始:ヴァルボンブ』
『自律起動開始:ヴァルリーク』
『自律起動開始:ヴァルフラウ』
『自律起動カウンター:0/3』
ついに全貌を表したヴァルフロイア。そして自立起動で何が変わるのかご期待ください。
あとラストで出てきた新キャラ2名。まあハバキリの身内ではあります。




