ちょっとした逃走中
「で?なんなのあの連中?」
只今イプトラルの街中で、謎の追手から逃走中ですよ。早く状況を教えてくれA2。
「彼ラは『ウィズダムサイト』という攻略サイトを運営している情報屋クランデシテ…まあワタクシの方はスキルや魔法のような技をエフェクト無しで使用しているところに注目されマシテ」
あーナルホドね。そりゃあ現実の魔術や呪術は、力の流れによる色の変化は起きてもこのゲーム内でのスキルや魔法特有のエフェクトが出ているわけではない。それを見抜かれて追及されてしまっているところか。
だが、魔術も呪術もというかどちらも伝わっている場所の違いで名前が変わっているだけの同じものゆえに一括りに『魔学』と呼ばれているものだが、基本的に現代社会に流れないようにという隠匿のルールが敷かれている。
「お前らゲーム内だからって使いすぎたな」
「ウーンそうなんデスけどね、キリ君ダッテ分かるデショウ」
ハッハッハッ。そりゃあね、下手なスキルより羽馬村流剣術の方がダメージ出せてるらしいし。それなら動きとかを固定化されかねないスキルよりも、普通に剣振った方が良いというものだ。A2も同じ、下手なスキルよりも自分が今まで使い込んでいる呪術を使用したにすぎない。
「とりあえず逃げるぞ!って右の方多いな」
「彼ラは包囲のスペシャリストです。追い込み漁する気マンマンってワケですよ」
はあー確かに、見えてはいないけど円を描くように人が増えていってる。
「A2、良いルートはないか?」
「なくはないデスけど、少し包囲を突破する必要が」
「任せろ!」
話を聞いていれば、A2の技は対策されている可能性がある。
ならば、俺がどうにかすれば良い。
とりあえず、包囲網の一点にツッコむ。
「な、こっち来たぞ!」
「血迷ったか?」
「てかなんか嫌な予感」
「掴まれA2!あとセンジュを落とさないように」
「OK!」
A2が、背中にくっついたのを確認して、前を見据える。
逃げたいなら相手が反応するよりも速く行動するのみだ。
A2とセンジュを抱えたまま、韋駄天通の構えで走り抜く。
何人か目が同じように光出し、コチラに対応している。おそらくは、動体視力を上げるスキルと他の何かを組み合わせている感じか。
流石に初見の俺相手でも、ある程度の対策ができるように判断できているあたり、プロすぎないか?
コイツらもしかしてどこかの組織の人?知り合いがいるかもしれんけど今は無視。
守りの姿勢に入った彼らを見てタイミングを合わせる。
「「ココ!!!」」
相手の直前に蹴りを入れる姿勢でブレーキ、からの
「斥力運動・開始」
ブレーキをものともしない力の作用で、蹴りに対応しようとした包囲網を飛び越える。
「あっ」
「「「逃っげろーーー」」」
「ま、待て!」
誰が待つかバーカ。こちとら逃げ足は早いんだよ。
「でこれからどうするの?」
「ヘイA2、VRJJのとこは?」
「あそこらヘンで屯してイルのはバレているノデ、何人かイルでしょう」
それもそうか、路地に入りましてちょっと時間稼ぎ
「お、酒場がある。あそこなら隠れられるか?」
「イヤそこには………イエそこに入りマショウ!」
ん?半分冗談のつもりだったが良いなら入るか。
何はともあれ、剣を突き立てられた龍の頭というデザインのレリーフが付いた扉のノブを回し、中へ入ると
「アレ、見失った?」
「確かここら辺の路地に入っていったんだよな」
せいぜいが窓が見える程度の閑散とした路地裏。
その路地に、入ったはずの2人のプレイヤーを追って何人かのウィズダムサイトのプレイヤー達が思案する。
「A2のファミリアの対策もしたんですけど、アレを使った痕跡もないんですよね」
「ならもう1人のハバキリ?とかいうヤツが何かしたのか」
「とりあえずもっと広範囲を当たれ!」
そう言い、路地裏から離れてあたりを散策したが一切の痕跡を見つけられなかった。
ウィズダム・サイトは別に攻略メインってわけでもない。知りたかったから調べて、収益取れそうだからサイト運営していただけの集団。あとハバキリの思惑通りトップ勢がプロでリアルでの知り合いだったりする。
 




