【side:H&N】 ウサギ忍者は燃え尽きない
「さあさあさあ行くでゴザルよ!」
決勝戦にて、クノイチとトンファーの戦いの火蓋が斬られた。
ステラの扱うマスターラビットは、長物がメインとはいえ忍者であるため、彼女のスタイルに合った行動が取りやすい。
対するトンファーことツヴァイは、リアルで魔術士崩れの殺し屋として活躍している。
そして、炎を得意とした罠を得意とすることが、彼の選んだダークレッドというキャラクターと合致しており、知る者からすれば、彼はリアルダークレッドだと言われかねないだろう。
もっとも、リアルであればステラが勝つのはほぼ確定している。
だが、ここはステータスを一定に定められたゲームの中。
加えて、初の扱いとなるこの環境で、どれだけのことができるだろうか。
1回戦、2回戦とやって、両者引き分けとなった。
マスターラビットの攻撃はステラの技量もあり凄まじかったが、クリティカルを狙うスタイル故の純粋火力の低さと、ダークレッドのテクニックである強制トラップ発動による衝撃で、足を取られる状況に追い込まれ、そこからの火力の押収で敗北した。
続いてステラは、トラップ発動をほぼ完全に読み、トラップ発動の衝撃で飛んで当たるように、飛び道具用のクナイを置き、ソレらがダークレッドに当たることで、火力をカバーして勝利を収めた。
そしていよいよ最終戦。
両者睨み合う。
ある程度は互いの手札、できることが明るみになった。
故に取る方法は
「ぶっ込め!」
短期決戦だ。
ダークレッドが、直進する。
自傷覚悟の背面トラップによる衝撃を利用した突撃で、近距離攻撃を仕掛けるつもりだ。
ついでに、飛び道具や中距離設置のトラップで、移動先を潰したり微少なダメージを稼ぐ。
対して、マスターラビットは受け流しや払いのけで、最小限しか動かない。
トラップにクナイを乗せる先ほどの戦法は健在だが、ソレも最小限避けられるほどのものだ。
お構いなしにと、ダークレッドが接近する。
ダークレッドには、近距離で高火力を放てるスキルが存在する。
そのためトラップや飛び道具を駆使して、接近の隙を産んだり、スキルのゲージを貯めるのに役立てる。
正直コントロールが難しいとはいえ、ほぼほぼハメ技すぎるため、ナーフしようと運営が検討しているが、今はソレで成立している。
(ヤツはカウンター狙い。なら)
ステラの方は、完全にカウンターを狙っているのがほぼ確定している。
ならば、飛び道具と中距離トラップを駆使してメインの獲物を後方の伸び切った方へと誘導する。
そして
「くっ」
うまい具合に、飛び道具で刀を撃ち落とした。
あとはスキルを発動するだけとツヴァイは一気に距離を詰め
「おりゃあー!!!」
「なっ!?」
ステラの扱うマスターラビットが、素手でダークレッドのスキルを発動しようとしていた腕を横から払いのけ、返しの肘打ちを叩き込む。
しかも飛び道具のクナイを打ち込みつつだ。
(しまった!固定観念に囚われていた)
ツヴァイは、自身が固定観念に囚われていたことに、己を恥じた。
現実的に考えれば、下手な拘りがなければ愛用の獲物を手放したところで、素手で立ち向かうのは普通のことである。
ただし、コレはゲームの世界であり、マスターラビットは飛び道具以外は太刀の斬撃しか使わないキャラクターだからと油断していたのだ。
ココは、どれだけ行ってもゲームだろうが、プレイヤーが実際に体を動かして自由に動くことができるのだ。
別に太刀が手に接着しているわけでもないのに、手から離れれば何もできなくなるわけでもないのに、ソレしかないと思ってしまった。
今までそうだったから。
(あーコレ無理かも)
そう思いつつも、逆転を狙い搦手を使おうとするが、
「ウララララララララ!!!」
「クッッッソガァ!」
当たらない。
連続のラッシュからの投げ技で、身動きが取れなくなる。
(ってオイ待てコッチは)
更に、ダークレッドの攻撃で手放された刀の方向に飛ばされたことを、ツヴァイは気づいた。
しかも、相手は先ほどと同じように、攻撃に合わせてクナイを撃ち込んでいる。
自身は、クリティカルになる箇所が多い。
つまり
「ちょ、待っt」
「『秘剣・脱兎の型』」
マスターラビットのスキル条件に合致する状況。
ソレを彼女が逃すはずもない。
『WINNER!マスターラビット!!!』
コレ選択肢自由なフルダイブ型VRMMO格闘ゲームだから
今までの格闘ゲームみたく決められた行動以外もできるから
ただし、生まれたばかりなので、やりこんでいる人ほど今回のような固定観念にとらわれている人は多いぞ




