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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第24章 豊編
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後押し

~豊の客間~


夜、豊はまた一人で客間のソファーに座っていた。


あの後、アイキたちが来て、芙蓉の口封じの呪いは完璧だと確認された。


芙蓉の覚悟に紫竜もアイキたちも驚いていた。

豊の話が芙蓉を後押ししたのかは分からないけど、豊自身はまだ呪いの覚悟を持てない。



「情けね~」


豊は一人で呟いた。


そう歳も変わらない女性が目の前でやり遂げたのに、豊はいまだに怖じ気づいてるなんて



「そんなことないわよ~芙蓉ちゃんは特別なの」



竜礼の声に豊は驚いた。

また、竜礼が扉の間から覗いている。


気配を消して音もなく扉を開くから困ったものだ。



「勘弁して下さい。僕は耳も鼻もよくないんです。」


「だから今日は部屋に入る前に声かけたでしょ?」


竜礼なりに昨晩、豊が言ったことに対応はしてくれたらしい。


「入る前にノックをお願いしても?」



「はーい。そんなに警戒しないでよ。私の言ったとおり、芙蓉ちゃんと会えたでしょ?」



竜礼は微笑みながら部屋に入ってきて、豊の向かいに座った。


「どうやって族長を説得したんですか?」


豊はいまだに信じられない。


「うふふ。竜礼姉さんはすごいのよ。」


竜礼は答えないが、豊に追及する勇気はない。



この女は怖い。

関わりたくないのに、会いに来られると豊には逃げ場がないのだ。

それに、竜礼が居れば獣人が襲ってくることはないという安心感もあるのは確かだ。



「そう落ち込まないの。芙蓉ちゃんは族長と10年以上連れ添ってるのよ。その辺の獣人とは訳が違うわ。」



竜礼なりに豊を慰めようとしているらしいけど、


「今日は何のお話ですか?」


豊はこの女に心を許してはいない。



「も~族長からの話は補佐官がもってくるわ。私は今夜もお喋りしにきただけ~」


「こんなところに来ることを族長や兄君は不愉快に思われないのですか?」


「ないない~ユタカに敵意がないことは2人も分かってるし~私は言ってもきかない女だって諦められてるから。」


「・・・」


あの龍希と龍サンも手を焼いているようだ。



「僕には気のきいた話はできないですよ?退屈では?」


「うふふ~ご謙遜。あの芙蓉ちゃんを説得するなんてすごいわ。」


「僕は何も・・・芙蓉さんがすごいだけです。」



「芙蓉ちゃんも無理だと思ったわ。過去の妻たちの誰もできなかったのに。ユタカが芙蓉ちゃんの背中を押したのよ。

やっぱり同族は特別ね。」




竜礼はお世辞ではなく本気で感心しているようだ。



「芙蓉さんには同族の妻仲間もいるのでは?」

豊はダメもとできいてみた。


「あら。さすがに知ってるのね。会いたい?」


「夫が許さないでしょう?」


「ユタカが会いたいなら、竜礼姉さんができることはあるわよ。ユタカもずっとここには居たくないでしょ?」


「他の同族に会ったからといって、僕が覚悟を決められるか分からないですよ。」


「でも会いたいでしょ?どっちの妻がいい?」


「どっち?どんな選択肢があるんですか?」


「分かってるくせに。私から妻の情報は洩らせないわよ。夫竜が怖いから。」


「・・・」


豊は困った。

竜礼は豊が妻の情報をどこまで握っているのか探りたいのだろう。

 下手なことをもらせば、夫竜に解放軍が襲われる。

とはいえ、何も知らないふりも無理だ。竜礼には通用しない。



「オウコの眷属犬を捕らえた現場に僕がいたことはご存知ですよね?」


「うん。」


「その時、犬たちが話してました。解放軍出身の人の妻がいると。」


「もう有名な話になったわね。」


「その妻と会えば、僕はもう生きて解放軍に帰れないですよね?」



「・・・」

にこやかにしていた竜礼はふと真面目な顔になった。


「もう忘れた?私は族長の忠実な部下なのよ?」


「え?覚えておりますよ。命を助けてもらいましたので。」

豊は戸惑いながらも答えた。



「紫竜族長がユタカを生きて解放軍に返すと約束したの。紫竜一族の威信にかけてその約束を完遂するわ。

ちょっと失礼じゃない!?私はユタカを罠にはめるつもりなんてないのよ。」



「・・・何をお望みで?貴女にメリットなんてないですよね?」


竜礼が嘘をついているとは思えないけど、だからこそ怖い。

豊には見合うものを返せない。

竜礼を相手にするなんて絶対に無理だ!



「成功したらいずれこの借りを返してね。」


竜礼はウインクすると部屋を出ていった。




~朝顔亭~


2日前、族長の妻は口封じの呪いを受けたらしい。

別荘の人族が妻の後押しをしたらしいけど、そのことを族長は怒っていたけど、何はともあれ、族長が戻ってきて、龍景はほっとしていた。

 妻を失った龍栄は正気は失っていないが、とりあえず一月は自宅療養となった。

 三年で離婚する予定だったとはいえ、それなりに執着はしていたのだろう。

 せっかくの象妻だったのに、子を成す間もなく死んだのは惜しいが、原因が族長妻にあるので滅多なことは言えない。


今日は龍景は本家で取引があり、妻はリュウカの部屋で族長妻と会っていたらしいけど・・・侍女からリュウカの部屋での報告を聞いて、龍景は機嫌が悪くなった。

 おもわず族長にくってかかったほどに。



コンコン



息子を寝かしつけて、妻が執務室に来てくれた。


「お疲れ。どれ飲む?」

先に晩酌していた龍景は妻に声をかけた。


「その前にお願いがあるの。」


妻のおねだりは歓迎だけど、今回は嫌だ。

昼間に族長妻から求められた件に決まっている。

とはいえ、妻の話も聞かずに拒否はできない。



「何?珍しいね。」


龍景が手招きすると、妻は隣に座った。



「芙蓉を助けてくれた解放軍が別荘にいるんでしょ?」


「らしいね。」


「藍亀の呪い受けないと解放できないんでしょ?」


「俺は詳しいことは知らない。」


「詮索はしないわ。明日、別荘で会いたい。」


妻はダイレクトに言ってきた。


「なにしに?」


「おしゃべり」


「話し相手なら他の妻にして欲しい。」


「やだ。知ってるんでしょ?

私なら別荘の解放軍の背中を押してあげられるかもって芙蓉にお願いされたこと。」


「・・・奥様が別荘の人族を気に入ったことは聞いてるけど、ユリを巻き込まれるのは困るよ。」


「嫉妬深い族長は早く別荘の解放軍を追い払いたいんでしょ?族長のお手伝いをするわ。」


「ユリはそんな仕事しなくていいんだよ。族長の手伝いは俺の仕事だ。」


「ね、お願い。ただでとは言わないから。」


「また取引?」


龍景は思わず顔をしかめてしまった。

象族領でも妻から取引を持ちかけられて、妻はハヤブサに殺されるところだったのだ。



「ううん。そんな大層なことじゃないの。」


「何?」


龍景には妻の言いたいことが分からない。



「今夜はいっぱい愛してるって言ってあげる。」


妻の言葉と仕草は可愛いけど、龍景はさすがに呆れた。

妻と解放軍を引き合わせたくない。解放軍が若い雄ならなおさらだ。これは夫として譲れない。



「俺のこと、ちょっとバカにしてるでしょ?」


「あ~ひどい。大真面目よ。」


なぜか妻は本気で怒っている。



「いや、だって子どもだましというか、子ども扱いというか・・・」


妻が息子によく言っている言葉だ。

微笑ましいし、正直羨ましいと思ったこともあるけど、だからといって今回のお願いはきけない。



「ふーん。いいわ。絶対にもう一回って頼んでくるようになるから。」



妻はなぜか自信満々だけど、子作りで妻に主導権を握られていたのはもう前の話だ。


大切な妻でも叶えられない望みは多々ある。

解放軍の雄になんか近寄らせない。絶対に。


龍景は、呆れたまま妻に引っ張られて寝室に向かった。

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