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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第23章 ジュウゴ編
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地下室の捜索

~研究所 倉庫~

カモミールは2つ目の棚のファイルを調べ終わり、3つ目の棚に向かった。

どうやら棚のファイルは古い順に並べられているようだけど、2~3年前の実験結果(失敗)も記載されていたりするので、読み飛ばす訳にはいかない。


ワニ毒のことは象族軍時代に学んだけど、ここにある資料はカモミールの知らない毒ばかりだ。

 様々な種族を使って行われた毒実験の記録も不愉快きわまりない。

さすがのカモミールも読んでいて吐きそうになったが、芙蓉様は黙々とファイルを調べ続けているので、カモミールが弱音を吐くわけにはいかない。



「う・・・」


それでも象族(どうぞく)を使った毒実験の記録は思わず目を背けたくなる。

子ども、老人、病人、産まれたばかりの赤子に妊婦まで実験対象にされている。


✕年✕月  産後3ヶ月の象に微量ずつ投与開始

      ※○ヶ月後に死亡(総投与量は○㍑)

✕年○✕月  妊娠中の象に投与(2瓶分)

      2日後、早産し母子ともに死亡

      胎児への有効性確認



「え!?この頃って・・・」


カモミールが呆然となって呟いた時だった。



ドボン



壁の向こう、カモミールたちがやって来た方向から水音が聞こえた。

大きな地底湖に何か落ちたのだろうか?


芙蓉様には聞こえなかったようだ。

相変わらず黙々とファイルをめくっている。



そういえば、倉庫番だというワニの子が逃げて30分以上は経っただろうか?

てっきりワニの研究員たちが駆けつけてくると思っていたけど、誰も来ない。

不気味なほど静かだ。



カモミールは頭を横にふり、再び作業に戻った。



~地下室~


豊がタンチョウから逃げて中央の道に逃げ込むと、すぐに地下に続く階段が現れた。

階段は螺旋状に掘られていて先が見えないが、豊は走り降りるしかない。

背後からタンチョウの羽音が追いかけてくるからだ。



「ぜーぜー」


ようやく階段の下までたどり着くと、大きな穴の空いた鉄の扉が現れた。

先ほど龍サンが言っていたのは、この鍵のかかった扉だったようだ。

龍希が壊したのだろうか。



「象の地下室と同じだ。」



龍希の息子と水連町の水人が閉じ込められていた象の地下室も鉄の扉だった。

そして地下室の光景も同じだ。


壁に空いた穴から水が流れ出している。

豊がかけ降りてきた階段からも湖から溢れだした水が流れ落ちてきており、地下室の床から20㎝ほど水がたまっている。



桃とワニたちは今度は妻たちを溺死させるつもりなのだろう。

早く見つけ出さないとヤバい。


だけど、あの象の地下室とは異なり、ここはざっと見えるだけでも部屋が20以上ある。

豊は一番近い部屋に入ってみた。

すでに龍希たちが探した後なのだろう。扉は空いている。



「ここは研究室か何かか?」



黒い机が並び、ビーカーや様々な色の液体が入った瓶が棚の中に並んでいる。


豊は順番に部屋を見ていったけど、似たような部屋が続き、通路の突き当たりまで行くと、左右に通路が延びており、それぞれ20近い扉が並んでいる。


右側は龍希と龍サンが、左側は龍エイが次々と扉を開けて部屋を調べていた。

妻たちがどの部屋に閉じ込められているのか、龍希たちは匂いを辿れないようだ。


それに意外なことにワニの姿も死体もひとつもない。


『ワニたちはどうやって象を閉じ込めたんだ?』


豊は疑問に思うけど、事情を聞ける相手はいないので、とりあえず部屋の捜索を続けることにした。

 あの桃のことだ。簡単に見つかる場所に妻たちを隠すはずはない。

またどこかに隠し扉か落とし穴があるはずだ。



龍エイが探し終わったであろう部屋に豊が入ると、ここはワニの私室のようだ。

ベッド、テーブルと椅子、タンスに置時計と古いが作りのよい家具が置かれている。

部屋の状態からごく最近まで使われていたようだ。


豊が5つ目の私室に入った時、棚の引き出しからワニの日記を見つけた。

ページをめくると半年前から昨日まで、毎日の出来事が記録されている。


昨日の日記は・・・


【いよいよ明日だ。間に合った。リュウキの妻に復しゅうするんだ。我らは拐うだけ。妻殺しはワシにやらせればいい。】



「ん?」

豊は思わず眉をひそめた。


ヨウコを恨んで拐ったのはワニだ。

桃はヨウコに用はないと言っていた。

なのに、ワニにはヨウコを殺す気はなかった!?


桃の言い分と違う。

象がいなければヨウコはワニに殺されていたのではなかったか?

それに失敗したからヨウコと象を地下室に閉じ込めて溺死させようとしているはずだ。



ワニと桃で計画に認識の違いがあったのだろうか?

それとも・・・


豊はページの日付を遡ることにした。

パラパラとめくっていくと、気になる記載があった。



【イヌワシたちがハクトウワシを利用した計画をやりとげたそうだ。なのに、シュホウが来たらしい。計画は中止か?】



どうやら、ヨウコを拐う計画にはイヌワシも関与していたらしい。

ハクトウワシといえばケープだが、ワニの計画に利用されたのか?


それにシュホウとは・・・カラス戦争に介入したという朱色の鳥のことだろうか?



豊は更にページをめくるけど、ヨウコに関する記述はもうなさそ・・・


「ん?」


ほぼ半年前のページで豊の手は止まった。



【策士の部下人族がきた。試作品の実験数が減っている。策士の死亡はやはり事実か?】



「ジュウゴがここに?」


司令官の予想通り、ジュウゴは解放軍を裏切った後もワニと繋がっていたようだ。

しかも、ジュウゴが開発した試作品の実験をワニに共有していた?



ドタドタ



豊が考え込んでいると複数の足音が近づいてきた。



「おい!人族!妻たちはどの部屋にも居ないぞ!また隠し扉か?」


怖い顔の龍希が駆け込んできた。


紫竜たちはすべての部屋を調べ終わったようだ。



「象の時は秘密の地下室がありました。」


「どこだ?水が邪魔で妻の匂いを辿れないんだ!」


「地下室に水が流れ込んでいるなら、水の流れで分かるはずです。だから宙に・・・」


「よし!」


今度の龍希たちは察しがいい。

豊が言い終わる前に3人は宙に浮いて床の水の流れを観察しに出ていった。



豊はそう言ったものの、また違和感を感じていた。

床の水位はもう豊の膝下まで来ている。


ここより下に秘密の地下室があるなら、もう水没しててもおかしくない。

 だけど、ワニの解毒剤を作るほど賢い妻と、手練れの象をどうやってワニは地下室に閉じ込めたのだろうか?


力ずくならこちらにもワニの死体が転がっているはずだ。

象が大人しく捕まるはずはない。


もしもワニたちが睡眠ガスを持っているなら、水中から出た最初の部屋で使っているはずだ。

ワニ側にあれだけの犠牲者を出したということは桃の言うとおり、象による妨害は完全に予想外だったのだろう。



あのタンチョウが妻たちを地下室に追い込んだ?

いや、あの広い地底湖はともかく、ここは天井が4~5mほどの高さしかない。

この場所では象なら飛んでいるタンチョウに手が届くだろうから、象が逃げ惑うとは考えにくい。


ならば桃が2人を追い込んだ?

桃相手なら象も逃げただろうか?



「・・・あの、補佐官殿!」


豊は廊下に出て、龍サンを呼んでみた。


「なんだ?」


すぐに龍サンが扉から出てきた。

不機嫌そうだが、素直に出てきてくれたということは豊の知恵を頼りにしているのだろう。



「呼びつけてすみません。この地下室から桃の匂いはしますか?」


「いや、壁からも天井からもワシの匂いはしない。そこらじゅうワニと薬品臭いが、龍栄様がワシの匂いを探していたから間違いない。」



やはり龍エイの鼻が一番いいらしい。



「・・・」


「なんだ?ワシがどうした?」


「いえ、妻たちが大人しく地下室に閉じ込められるとは思えないので、桃が追い込んだのかと思ったのですが・・・」


「それはないな。」


なんと龍サンは即答で否定した。


「なんでですか?」



「ワシから妻たちの匂いはしなかったからさ。もしも妻に羽1本でも触れていたら2人の雷が落ちてるよ。」



「・・・ならば象・・・妻の弱点とか、何か弱らせられるものとか分かりますか?」


「・・・俺には分からんが、もしそんなものがこの辺にあれば夫の龍栄様が気付くさ。」


「そうですか。また何か思い付いたらご相談します。すみません。」


豊がそう言うと、龍サンはまた秘密の地下室を探しに飛んで行った。



豊は手詰まりだ。

人の女ならともかく手練れの象を地下室に追い込む方法なんて思い付けるわけもない。


それよりもジュウゴの行方や居場所のヒントが見つかるかもしれない。

豊はワニの日記の続きを探すことにした。


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