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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第6章 望郷編
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龍賢復帰

~紫竜本家 大広間~

 龍灯たちがジャガー本家を訪問した翌々日、龍希は一族会議を招集した。

議題はたくさんあるが、まずは・・・

「龍賢様!お帰りなさいませ!」

「ああ!お待ちしておりました!」

「長らくご心配とご迷惑をおかけしました。」


昨年6月に狼族の妻と死別して巣に籠っていた龍賢がようやく復帰したが、もう8月の終わりだぞ!?

やはり連れ添った年月が長いと回復に時間がかかるな。

にしても、相変わらず龍賢はすげえ人気だ。


「さて、じゃあ龍賢への説明もかねて時系列順に説明してくれ。」

「では、私から」竜湖が立ち上がって報告を始める。


 昨年6月、龍賢様と龍雲の妻が同日に死亡しました。

その翌月、ススキ亭に侍女として侵入していた白鳥ココの娘が龍兎の鴨妻を殺害し、龍緑の妻を殺害しようとしましたが、返り討ちにあい、ココの娘は死亡しました。この時、人族が改良したワニ毒が使われ、龍兎と龍緑は意識はあるものの、身体が動かなくなりました。

 同月末、孔雀から買った狼の子により、白猫領の地下室にワニ族の元妻スイスイがいることが分かり、族長・龍緑・龍景が地下室を襲撃し、スイスイとワニ侍女2匹、人族4匹、鴨雛1匹を仕留め、雌カラスのハセを捕獲しました。更にワシ領でココの息子ワシのイーロにさらわれていたカラス族長の妹カヤを保護しました。ハセとカヤの話から、白鳥元妻ココ、ワニの元妻スイスイはシレイカンと名乗る人族たちと組んでいることが分かりました。

 それから・・・その襲撃と同日に、鶯亭で龍栄の白猫妻がナイフで殺され、転変した龍明が雷で巣を焼き、竜縁は龍栄のシリュウ香で眠っていたところを龍栄に助け出されましたが、龍栄と竜縁は煙を吸って意識が戻らず、龍明はうっうっう


 竜湖は途中で泣き出してしまった。

「俺が代わるよ。」龍希は報告を引き継いだ。


 おそらくスイスイたちワニは俺たちをおびき寄せる囮だった。白鳥ココと息子のワシはいまだに行方不明だ。鶯亭に侵入して白猫を殺した犯獣人も不明。念のため、執事を除くワシの使用人は全員解雇し、退職金を払って追い出したが、ワシ以外のココの間者がまだいる可能性は否定できない。

ここまでが白鳥の関与が分かっている事件だ。白鳥事件と呼ぶことにしている。


 それからこの年の9月に龍海の熊妻の兄が蟄居先から行方不明になり、人族商人の協力でカバに匿われて、クーデターを起こさせた。クーデターで族長になったカバは、この兄熊の助言で、ヌーに嫁いでいた実娘と、さらに熊領にいた竜色の娘をワシに誘拐させている。このワシはイーロではなく、うちをクビになったワシだ。

兄熊は行方不明だが、カバに紹介した人族の商人はスミレという名の雌で、鹿領そばの人族町の商人らしいから、いま使用人たちに捜索させている。これが熊事件だ。

本来は熊族の仕事だが、どうやらこの熊はうちに敵意を持っている。カバを唆して、龍雲に不妊の嫁をよこして来たし、カイホウグンという人族たちと接点があるようだ。

熊を野放しにすれば、別の獣人の種族でも同じことをするかもと思っていたら、どうやらこの熊はジャガー族でもクーデターを起こさせようとしたらしい。


龍希は一息ついて目の前の酒を飲んだ。

「なるほど。そんなことが・・・シレイカンという人族たちと、カイホウグンという人族たちは別組織ですか?」両腕を組んで聞いていた龍賢が尋ねる。

「いや、同じだ。カイホウグンという人族組織のトップがシレイカンという雌の人族らしい。スミレという雌もカイホウグンらしい。」

「ほう。ではそいつらが、白鳥ココ、死んだワニ元妻たち、龍海殿の後妻の兄熊と手を組んでいるわけですな。人族について他に情報はないのですか?」

さすがは龍賢だ。理解が早い。


「あるぞ。龍灯」龍希がそう言うと、龍灯が立ち上がって報告を始めた。

「実は、ワニ元妻たちがいた白猫の地下室から、カラス妹の産んだワシ雛を人族たちが連れ出しています。カラス族がワシ雛の行方を探し、人族がゴリラ商人に売ったワシ雛を買い取ったそうです。龍景がそのゴリラに接触したところ、ワシ雛を売ったのは、人族ではなくゴーライという雄ゴリラだと分かりました。ゴーライは重症を負ったところをカラス族が保護したとのことで、回復を待って話を聞く予定です。

 それから、もうひとつ。ジャガーのクーデター未遂に関与したと思われるカイホウグンの幹部を黄虎が捕えているそうで・・・その、族長の奥様を利用して幹部から話を聞き出したいとぬかしてきました。」

「ん?なぜ黄虎がカイホウグンを?」首をかしげているのは龍賢だけではない。

「分かりません。ですが、ジャガーの眷属復帰と縁談といい、黄虎はかなりカイホウグンを警戒しているようです。

あ、あと、竜色の娘を拐ったワシたちも黄虎が捕えているそうで、もしかしたら兄熊について何か知っているかもしれません。」

龍灯は龍希をちらちら見ながら報告を終えた。


「族長の奥様を利用してカイホウグンの幹部から話を聞き出すなんて可能なのですか?」龍賢が尋ねる。

「可能性はあるわ。龍希がタンチョウ領で捕えたカイホウグンの人族たちは、私たちにはろくに自白せず自殺したけど、同族の奥様たちには面白いほどペラペラ喋ってくれたから。その人族は今も自殺せずに私のところにいるわ。私相手には警戒して喋らないけど、生きてればエサとして使えるからね。」竜湖の報告に龍賢は驚いた顔になる。

「よく龍希様がお許しになりましたね。」

「仕方なくだよ。妻は、カイホウグンの奴らが子どもたちの命まで狙うかもと心配してんだ。だからとっととカイホウグンを皆殺しにして妻を安心させてやらねぇと。」龍希は渋い顔で答える。

「人族ごときが若様たちに何ができるというのです?」

「龍明と同じことはできるかもよ。芙蓉ちゃんにもしものことがあれば、龍風だけでなく、龍陽と竜琴にもどんな悪影響が出るか・・・芙蓉ちゃんが一時、育児放棄した時には大変だったわ。3人とも泣きわめいて、食事も睡眠もどんどん出来なくなって・・・もう二度とごめんよ!」

竜湖はまた涙目になっている。



「で、では今回の黄虎の要請も・・・」龍賢は龍希に尋ねる。

「嫌だ!あんな場所に二度と連れて行きたくない!」

「奥様はなんと?」

「こんな話聞かせられるか!」

「つまり、奥様が知れば、行くと言われるということですな。」

龍賢はまじで頭が良すぎて困る。

「う・・・いや、だか・・・」


「族長、虎の谷に行きましょう!私と竜縁がお供します。」

「え!?」

龍希は驚いて、龍栄を見る。

「り、龍栄様?」龍賢たちも驚いている。

「いやいや、なんで?嫌ですよ!あんな場所に妻子を連れて行きたくない!龍栄殿だってそうでしょう?」

「虎の谷なんて二度と行きたくない場所だと愛娘に教えるためです!」

「は?」龍希は意味が分からない。

「ああ、私から説明しますわ。」苦笑いしている竜夢が立ち上がったので、皆注目する。


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