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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第4章 世代交代編
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守番の危機 中編

~シュグの医務室~

 今日で6月が終わるというのに誰も目を覚まさない。龍灯の時と症状は同じなのに・・・目を覚ます方法が分からないのだ。5人が眠りこける前に口にしたものはバラバラで薬が盛られた方法も分からない。

 誰かが廊下を走ってくる音がする。嫌な予感がした・・・

「族長代行!すぐに執務室にお戻りを!」族長執事のクースだった。



~族長代行執務室~

「りゅう、族長代行!」龍希が執務室に戻ると真っ青な顔をした龍算がいた。龍算は今日の午前、スミレ亭の守番をしていたはずだ。

「どうし・・・」

「龍光様が目を覚ましません!」

「は、はあ!?な、何いってんだ?だってあいつは父り・・・」

「昨日の夕方から眠り続けておられて・・・龍栄様が5~6発叩かれても起きないのです!今のところ若様たちはご無事ですが、龍光様をどうしたら?」龍算は相当狼狽えている。

「困ったわね。龍光も本家に運ぶとなると、あのシマヘビは自分と子どもたちも本家にとうるさいわよ。本家に来たいとずっと龍光に訴えてるんだから。」竜湖が険しい顔で告げる。

「はあ!?冗談じゃない!あのシマヘビは二度と妻子に近寄らせない!」龍希は堕胎菓子事件を思い出してギリギリと歯ぎしりをした。

「しかし、龍光様だけ本家に運ぶとなるとさすがに若様たちは動揺されるのでは?も、守番中に父竜が巣を離れるなど前例が・・・」

「う・・・」龍算の疑問に龍希は困った。

「それにスミレ亭の守番は・・・増員しますか?こんなこと初めてで・・・」

そうだ。通常は父竜は常に巣にいて、それプラス半日交代で2人ずつ守番を担当する。なのに父竜不在となると・・・

「増やすったって・・・そんな余裕はないぞ。さすがにスミレ亭を3人ずつにしたら、守番が回らなくなる。」龍希は頭を抱えた。

「やはり本家に竜の子を集めますか?また誰か倒れるかもしれませんし、龍灯も妻の出産が近づけば守番を担当できなくなります。」龍算も頭を抱えている。

「お、伯母様!どうすれば?」

「え?私には男の守番のことは分からないわよ!」頼りの竜湖は慌てた顔でそれだけ言ってあとは黙り込んでしまった。

「り、龍栄殿は何か言ってなかったか?」

「いえ、龍栄様もお困りで・・・族長代行のご判断に従うとしか・・・」

「はあ!?また俺?無理だよ!」

「龍希、夜にいい考えなんて浮かばないわ。今日はあんたもトリ退治をしてたんだし、龍算も休まなきゃ。今日はゆっくり休んで明日また考えましょ!」

龍希も龍算も頷いた。



~客間~

「ただいま。」

「パパー!」

「パパ、ごはん」

上の息子と娘が駆け寄ってきた。

「ああ、ご飯にしような。芙蓉は?」

「あかちゃんとねんね。」

「あかちゃんないてたの。」

「そうか。」

 龍希が隣室の扉を開けると、ベッドの上から妻の寝息が聞こえる。その隣で下の息子も寝ているようだ。シュンと守番の竜冠がそばについているから心配ないな。


 龍希は子ども2人と夕食を取り始めた。2人ともスプーンとフォークを使って自分で食べられるようになったので楽だ。3歳の娘は食事の途中で何度か立ち上がって妻の寝ている部屋に行こうとしたが、妻の毒見役が相手をすると素直に戻ってきた。

最近の娘は、俺の言うことはなかなか聞かないのに。やはり妻の同族だからだろうか?それとも側にいる時間が長いからか?

 子ども3人となるとさすがに使用人の手が足りないので、出産前に妻の毒見役も侍女にして妻の世話や子守りをさせている。

新しい侍女も増やさなければいけないが・・・本家の使用人はますます信用できなくなったので引き抜くことなんてできないし、困ったな。


 扉をノックする音がして、タタが新しい酒を持ってきた。

「ん?なんだその小瓶は?」タタの盆にはよく見る赤ワインの瓶と、見たことのない茶色の小瓶が載っている。

「アナコンダ族の新作の果実酒だそうです。味がお気に召したら買ってほしいと試供品を置いていきました。」

「アナコンダの新作!何年ぶりだ!」龍希は歓喜の声をあげた。アナコンダ族の酒はどれもお気に入りだ。

一族の8割がアナコンダから酒を購入しているらしく、大事な取引相手だが、アナコンダはシリュウ香を買わないので主要取引先には入っていない。

 龍希は早速、新しいワイングラスに小瓶の酒を注いだ。量は少ないのに果実のいい香りがする。

アナコンダ族の酒は不思議だ。鼻のいい龍希たちでも原材料が分からないのだ。

「これは味も期待できるな。」龍希は果実酒の色と香りを楽しんでから、ワイングラスに口をつけた。

「パパ!」

「龍陽、後にしてくれ。」

「パパ!め!」

「竜琴、これだけ飲ませてくれ。な。」

食事が終わった子どもたちが龍希のところに来て、構ってくれと袴を引っ張り始めた。


「若様、姫様、タタと遊びましょう!ほら、三輪も一緒ですよ。」タタと毒見役が慌てて駆け寄ってきたのだが、

「やだーパパ!」

「パパ、めー」

なぜか子どもたちは龍希の袴を離さない。それどころかさらに力強くぐいぐい引っ張り始めた。

「こら!龍陽、竜琴、引っ張るな。これだけ飲んだら遊ぶから、な、タタたちと遊んで待ってろ!」龍希は堪らず子どもたちを叱る。

「やだーへんなにおい!や!」

「竜琴にはまだ酒は早いからな。女は果実酒好きが多いからもう少し大きくなったら一緒に飲もうな。」

龍希はそう言って娘の頭を撫でると今度こそ新作酒を飲もうとしたのだが、

「パパ!パパ!」龍陽が足をバシバシ叩いてきた。

別に痛くはないが、落ち着いて飲めない・・・

「なんだ?龍陽、待ってろって!」

「ダメ!へんなにおい!へんなにおいする!」

「これは果実酒の匂いだよ。お前にもまだ酒は早いな。ほら、タタたちからジュースでももらえ。」

「若様、マンゴージュースがございますよ。」

「マンゴーちがう!ママのフォーク!へんなにおい!くさいの!」

息子の言葉に龍希は果実酒を飲む寸前で止まった。

「今、なんて言った?」驚いて息子を見る。

息子は半泣きで龍希のワイングラスをにらんでいる。

「タタ、竜湖と竜紗を呼んでこい!」

「はい!」タタは飛んでいった。


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