55 合流
「おーい」
戦っている仲間を見つけた俺達は手を振り上げ声をかけた。
チェリーが魔法で周りの魔物を振り払ったところで皆はこちらに歩み寄ってきた。
チェリーが戦っているところを初めて目の当たりにしたが、よく分からない装備をしているものの、なかなか手練れているようだった。
「師匠!帰ってきたでやんすね!師匠達がいない間に魔王軍が攻めてきたでやんす」
俺の姿を見るなり、銀次の顔が明るくなる。
「う、うわぁぁぁ!」
建物の上に隠れている冒険者に一匹の蛇がニョロニョロと近付いていた。
真弓が弓を引き、建物の壁を登っていく蛇に矢を放つと脳天に矢が刺さったまま真っ逆さまに蛇は落ちていく。
「他の冒険者の方々は次々とやられている。大門付近にいる魔物と目を合わせるとみんな石になっていくから近づけないでいるわ」
そう言っている間も真弓は周囲を気にし、次々と離れた魔物に弓を射っている。
「ぼぼぼぼぼく怖くて近付けない。あの蛇が頭に纏わりついた女は気持ち悪すぎる。あぁー神様ー」
やはりメデューサか。
チェリーが情けない言葉を吐き、頭を抱えながらしゃがみこむが、真弓が尻を足で蹴り上げるとシャキンと立ち上がった。
「国王の指示で何人かの冒険者は【オーダラ】に向かった英雄さんパーティを呼びに行ったみたい。いつになったら来るか分からないけど、そんな遠くないから今日中には来ると思う……」
「戦力に欠ける他の冒険者は、こぞって僧侶を探しに行ったからこっちは結構手薄だ。だっ、誰が毛薄だって!?」
頭を触りながらなんかよく分からないテンションで絡んでくるナックルにゆうなも剣児も若干引き気味で見ていた。
俺も引いたが、拳に付いた魔物の血を見ると頑張って戦っていたんだろうなと感心したのは事実。
無駄に変な絡みをした影響で、おでこ辺りに魔物の緑色の血がべったり付着したが、皆は黙ってそれを見過ごしていたのも事実。
「お、おら石になるのは嫌だぞ。どうやって戦えばいいんだろ」
メデューサと目を合わせるとその者は石化してしまうというが、魔王である俺には効かない。
理由は簡単、石化になる対象者はメデューサを恐れているかそうでないかだからと聞いた。
所詮頭に蛇が湧いた女だ、別に怖くはない。
ちょっと気持ち悪いくらいだ。
剣児みたいに少しでも怯えているとたちまち石化されてしまうのが落ちだ。
「分かりました。しかし英雄さんパーティが来るまでにタンナーブが落ちてしまうかもしれませんので、私達も倒す勢いで戦いましょう」
ゆうなが意を決して発言をした。
まぁ逃げても隠れてもどっち道、戦うことになる。
勇者として懸命な判断だ。
そんな中、ナックルが俺達の後ろにいる侶春と侶子に気付いた。
「ゆうな、ところでその後ろにいる二人の坊っちゃんと嬢ちゃんは?」
「侶春君と侶子ちゃんです」
「おー見つかったのか!しかしよー、連れてきちまったのか?いくら勇者様でもここは教会に置いてから来るべきだったんじゃあないかー?一般人にここは危険だぞ?」
まだ仲間になった事を知らないので、二人を心配する意味で意見を言ってきた。
「そうなんですけど、この二人が仲間になったので」
「「えーっ!?」」
こんな状況だがそれを初めて知った仲間達は驚きを隠せない様子だった。
「急展開でやんすね」
「ぼくの後輩だ……。あああああ」
何故かチェリーは目を上にあげ昇天していた。
侶春と侶子を見ると、皆が驚いていたのが歓迎されていないように感じたのか、少し暗い顔をして俯いた。
「まぁ俺がこの二人は守るからさ。今回は俺が責任を持つ。将来的にきっと俺達の助けとなるはずだ」
俺は悲しそうな顔をする侶春と侶子の頭に手を乗せ、安心させた。
「は、初めまして、俺っちは侶春です!まだ冒険者じゃないけど仲間に入れてもらいました!宜しくお願いします!」
「うちは侶子です。皆さんの迷惑にならないよう精一杯頑張ります!」
緊張感を全面に出したように震える声で挨拶をすると、ナックルはニンマリと口角を上げた。
「そうか!宜しくな、侶春、侶子」
頭から緑色の液体を滴しながら微笑む姿はゾンビ系のそれであった。
周りの仲間も次々と歓迎の声をかけた。
「では早速ですが、これからの動きを指示します!一先ず、近距離戦が得意な皆さんはここで雑魚の処理を。私と真弓さんとチェリーさんは前線へ」
「うげっ……!」
チェリーは露骨に嫌そうな声を漏らした。
ほう、やはりそう来るか。
接近戦では分が悪い相手には、遠距離からの攻撃だな。
しかし、しょうかんで遠距離からでも攻撃が出来る俺を連れていかないのは不服の極みだ。
頭の中で戦法を組み立てている中、仲間が増えすぎて最初の仲間である俺の存在を忘れてしまったんじゃないか?
これは誠に遺憾だ。
俺はかつて滅んだというメデューサを見たいんだ。
「いや、俺も行こう」
俺は半ギレでゆうなにアピールした。
「出野さんはここで皆と戦ってください」
「いや、俺
「侶春君と侶子ちゃんを守りながらだと前線は危険ですから」
「なぬっ!?」
くそっ、そういうことか。
確かに並の冒険者が侶春と侶子を守りながら強敵と戦うとなると、二人に危険が及ぶ可能性がある。
それを考慮しての判断か。
元魔王である俺にとっては、二人を守りながら戦うことなど容易である。
何なら結界を張っておけばいい話だ。
しかしハーデスとしてではなく、出野ハーとして戦うとなると危惧することは無理もない。
「いや、しかしこの窮地に俺が行かないとタンナーブの民を守れぬやもしれぬぞ」
俺はそれっぽい事を言って更にアピールした。
「出野さんの横にいる侶春君と侶子ちゃんもタンナーブの民です。とりあえずよろしくお願いします」
俺はチラッと侶春と侶子を視界に入れる。
くそっ、あの時教会に置いていけば良かった。
何故俺はこんなチビッ子応援団を連れてきてしまったんだ……!
激しく後悔する中、銀次に目配せしてこの状況をどうにかしてくれと訴えかけた。
その意図を汲み取った銀次は助け船を出す。
「ゆうなはん、ここは魔物が多すぎて逆に危険でやんす。前線はここよりは魔物が少ないから、遠くから狙う分には前線の方が安全かもしれねぇでやんす。師匠には魔物がいないところで二人を守りながら遠くからしょうかんで攻撃してもらう方が得策かと」
俺もその意見に頷き、ゆうなと目を合わせる。
ゆうなは近付いてきた蛇に一撃を食らわすと剣に付いた血を振り払いながら口を開く。
「確かにそれは一理ありますね。……では出野さんも私達と一緒に行動しましょう。もし向こうも魔物が多いようでしたら戻って皆さんと行動を共にしてください。侶春君と侶子ちゃんの安全を最優先でお願いします!」
よし、これで俺も前線に行けるな。
銀次の一声が無ければ完全に俺は居残り組だった。
銀次もたまには役に立つもんだな。
「一刻を争いますので行きましょう!」
ゆうなはそう告げると大門に向け走り出すと、真弓もそれに続き走ろうとしたが、チェリーが一向に動かない様子に気付き、笑顔で青筋を立てながらチェリーの肩を叩いた。
チェリーはその表情から何かを察し、鎧をガシャガシャと鳴らしながら一気に駆け出した。
「よし、俺達も行くぞ」
「はい!」
侶春と侶子は震える声でそう答え、俺達もゆうな達の後を追った。
「安心しろ、俺のそばから離れなければ死ぬことはない」
走りながら横にいるチビッ子応援団にそう声をかけると、二人は無言で頷いていた。
次回予告
仲間と合流し、二手に別れたハーデス達は前線へと走り出す。侶春と侶子を引き連れて走るが、この二人はハーデスの行動に対して少し不安を抱く。果たしてハーデスは信頼関係を築けるのか!?
次回 ~不気味~




