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迷いの森のネブリナ


灰色の霧の中、僕を呼ぶ声がする。


「……ス。……ミナス。アミナス。」


アミナス「だれ?オルガ姉?」


そう思うのはその声が女性の声だからだ。


「アミナス。アミナス。こっちへおいで?こっちへおいで?」


僕はその声の方向へ歩き出す。


ダリア「だめ!」


は!


起きたのはまだ夜も更けた2時半頃だ。屋敷の古い時計の音が聞こえる。

僕は寝汗をかいていた、そんなに怖い夢だったか?額の汗をぬぐう。


アミナス「最後のは、ダリアの声だった……」




その朝、服を着替えていると1台の馬車が屋敷の前にやってきた。


こんな早くに誰だろう?


部屋を出て一階に向かう。すると玄関の方からダリアが小走りでやってきた。


ダリア「あ、アミナス様!お客さまです!」


僕に?


オルガ「ふわ~、アレ?早いなダリアは、いつベッドを抜け出したんだ?」


低血圧なオルガ姉は朝が弱い。


ポヨヨン


アミナス「とりあえず、はだけた前のボタンを閉めてくれ……」


オルガ「おっと、すまん、すまん。」


あの戦闘で見せた、鬼神のような目と耳は寝てる時は機能しないみたいだ。ダリアがベッドから抜け出す音も聞こえないのか。


客室に行くとそこには50代くらいの軍服を来た長身の男性が席にいて、僕達は互いに挨拶を交わした。


ロイ「私はロイ•ネーベルホルン。幕僚大佐です。本日付けでここに着任いたしましたので、ご挨拶に伺いました。」


アミナス「リヴィエール家の長男。アミナス•リヴィエールです大佐殿。」


ロイ「いえ、我々、軍民は貴族と同等かそれ以下です。公爵家の方にお会いできて光栄です。」


オルガ「大佐!」


ロイ「おぉ、そう言えば、少佐オルガがいましたな。無茶してませんか?」


いきなり、ゴブリンの巣を壊滅させました。


オルガ「大佐が来れば負け無しだ!アミナス!良かったじゃないか!」


ロイ「よせよせ、私も左遷された身なんだよ。」


え?


ロイ「こんな死地に追いやられて、先が思いやられますが、いや、先達がしっかりしないといけないですな!リヴィエール公はまだお若い。」


「それではこれで。朝早くに失礼しました。」


そう言うと、ネーベルホルン大佐は騎士団詰所へと向かった。




朝食の席で、ロイ•ネーベルホルン大佐についてオルガ姉に聞いた。


ロイ大佐は以前のカウテースとの戦で上官の無脳(貴族)に作戦立案したところ、口論となりその後、降格、謹慎処分になったらしい。


オルガ「あの人に従ってればこっちも楽なんだ。戦場の地理も把握してるし、敵情を何回も斥候を出して調べ上げるし。」


ふ~ん。


有能すぎて疎まれる人材がここにもいたのか。


僕は金髪のリーゼントヘアの戦乙女が朝食のパンを一口に食べるのを見ていた。


アミナス『今の、一斤だよな……?』


ダリア「あの、アミナス様は夢を見られますか?」


アミナス「うん。たまにね?今日の夢なんて君の声がしたよ。なぜ?」


ダリア「いえ。そう、なんですね。」


?変わった質問だなぁ。




ゴブリンを掃討した南側の山に道を作る。


そのためには人員と金がいる。しかし、領地の交付金には限りがある。


アミナス「と言うことで、首都セントローゼに逆戻りだ。」


オルガ「金を借りるにもアントルイスにもオスカーにも支店がないと来たもんだ。やれやれ。」


ダリア「あの、私は?なぜ連れてこられたんでしょう?」


ダリアは心配そうに僕を見つめる。


まあ、奴隷として売ればかなりの高額で取引されるであろう。

それだけ彼女は美人だ。やや目のクマが気になるが。


アミナス「いや、色々見て回れば、なんか思い出すんじゃないか、って思って。」


ダリア「そうでしたか、安心しました。」


オルガ「心配するな。お姫様は私が守ってやるから!」


ダリア「はい!」


仲いいなこの2人。




貴族様所有の金融専門の銀行で大金を借りる。公爵家の名前を出せば審査とかは要らない。


オルガ「いいよな。王族は信用満点だ。」


いざとなれば、国庫が開かれる。

それをいいことに一部の王族達は毎日どんちゃん騒ぎをしてるらしい。

僕はあんなクソッタレどもと同族なのだ。


アミナス「こっちは命かかってるから、酒池肉林のボンボンとは違うよ。」


オルガ「気を悪くするなよ。褒めてるのさ!」


生まれを褒められてもなぁ。


借りたお金で求人を出し、石畳の買い付け、道路建設の機材をレンタルする。

近日中には作業が開始されるだろう。




馬車に乗って帰路につくころには日が傾き始めていた。


ダリア「結構、巡る所多かったですね!」


アミナス「なんか、思い出せた?」


ダリアは買ってもらったジュースを飲みながら首を横に振る。


なんか、オルガ姉に似てきたか?


オルガ「ま、焦ることはないさ。」




その夜もまた同じ夢を見た。


今度は霧の中に女性らしき人影もある。


「お前は可愛いなぁ、アミナス。もっとこっちに来て、よぉく顔を見せとくれ?」


ダリア「この人はあなたには渡さない!」


「おや?魔女?珍しいな淫夢で混線するなんて。」


ガバァ!


ハーハー


アミナス「ゆ、夢か……」


また深夜の2時半。寝汗で全身ぐっしょりだ、シャワーを浴びたい。


それ以降、寝付けづ、朝まで僕はロイ大佐に貸してもらった孫子を読んで過ごした。




道路建設が始まって数週間


異変が起こり始めた。


夜まで何事もなかった作業従事者(男性)が行方をくらませるのだ。


ウィル「それだけじゃねぇんでがす。切っても切っても、次の日には木が生えてきて作業が進まねぇんでがす。」


オルガ「なにそれ?」


アミナス「小さい頃、読んだ おとぎ話にそんなのがあったな。」


僕らは小遣い稼ぎに道路建設作業に来ていたウィルを屋敷によんで対策を練ろうとした。


アミナス「ここで話しててもラチがあきそうにない、現場に行ってみようか?」


皆が立ち上がったその時、それまで黙ってみんなの話を聞いていたダリアが口を開いた。


ダリア「私も行っていいですか?」


オルガ「何もない森だよ?」


僕は夢の内容が気になってたので承諾した。


オルガ「何か思い出すのかねぇ?」


アミナス「とにかく行ってみよう。」




道路建設のために木材を切り出して、根を掘り起こし、更地にして、平行を取ったら石を敷き詰める。


その工程が、山のちょっと入ったところで滞っていて。薄く霧がかった森に当たる。


オルガ「なんかくさい……」


アミナス「息苦しいね?ここ。」


ダリア「……これは!迷いの森の結界!」


は?なにそれ?


ダリアが森に進み入るとサーッと木々がダリアを避けて行く。


オルガ「なにこれ?魔法?」


アミナス「ダリア、君は一体何なんだ。」


ダリア「あなたには渡さない。」


ダリアは夢の中で聞いたセリフを森を見据えていうだけだった。


アミナス『なぜ君が、それを……』


ダリア「行きましょう。オルガ様!」


オルガ「え?私?」


アミナス「僕も行くよ!」


ダリアは僕に何か言おうとしてやめた。


ダリア「わかりました。行きましょう。アミナス様も!」

 

3人で木々がいびつに歪んで避けていく森を抜けると輪郭がグネグネした細長い屋敷が見えてきた。


ダリア「やはり。魔女。」


オルガ「魔女?」


ダリア「アミナス様は私とオルガ様でお守りします!」


?お、おう?


オルガ「なんだか知らないがボス戦かな。」


ビュウン!ビュウン!


オルガ姉が背中の方天画戟を手に持つと勢いよく振り回した。


あ、アブ姉……




扉を開けて中に踏み入ると


中は外の見た目とは裏腹に大きな空間のロビーだった。

たくさんの部屋の扉が並んでいる。


オルガ「どうなってんだ?こりゃぁ?」


ダリア「トラップか、私には効かない。」


僕達が玄関で佇んでいると扉が一つ開いて中からゾロゾロとゾンビが出てきた。


うわ!クッサ!


オルガ「コイツラお風呂キャンセル界隈?!」


違います。


ダリア「オルガ様!」


オルガ「おーし、ぶっ飛ばしてやる!」


ブゥン!


方天画戟を一振するとゾンビ達数十名の首が胴体を離れる。


オルガ「なんだ?手応えがねぇ!雑魚乙!」


ブゥン!ブゥン!


ゾンビに続いて数体の石のゴーレムが現れる。


オルガ「動く石?!」


ダリア「オルガ様!赤い所を!弱点です!」


ドガァ


方天画戟の一突きでコアを砕かれたゴーレムが灰燼かいじんに帰す。


オルガ「あ、ほんとだ!ほんなら、もういっちょ!」


「わー、やめやめ!高いんだぞ?!」


ロビーに女性の声が響く。


開いた扉から黒髪のフクヨカな女性が現れ、ゾンビやゴーレムがその女性に膝をつく。


アミナス「夢の声の人!」


ダリア「この人はあなたには渡さない!私のだ!」


えぇ?


オルガ「誰だ?」


ネブリナ「私はこの館の魔女。霧のネブリナ。まさか同種に先を越されてたとはなぁ。」


ダリア「私はダリア•シュピーゲル。」


ネブリナ「ほぉ、シュピーゲル。鏡の魔女の家計の名前だ。下の名前持ち?てことは、人世ひとよにいたやつだね?アンタ。」


ダリア「やっぱり。私は魔女だったんだ。」



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