女騎士オルガのゴブリン退治
次の日
早朝から僕は領地の村を視察した。
僕達のいる村アントルイスの事をよく知らないといけない。特に、戦死してる先代領主の死の要因とかを……
アミナス「あそこが炭鉱かぁ。」
オルガ「さすがにここは人が多い。」
掘り当てた近くの山から採れる石炭が主な村の収入源のようだ。村のほとんどの人間がここに集まってるんじゃなかろうか?
昼間の村は女子供がまばらにいるだけで閑散としたものだった。
林業だろうか?時折、山々から木を切る音が聞こえてくる。
アミナス「他にも色々ありそうだけどなぁ?鉄とか銅とか。」
オルガ「戦地になるから、開発が進まないんじゃない?」
その反面全体的に標高が高く、土地は痩せており、食料生産には向いていなかった。
アミナス「地元で採れる野菜を見ないわけだ。」
オルガ「他の領地からの輸送に頼ってるのかぁ。補給線断たれたら一発でアウトね。」
一通り村を見て回ったので、屋敷に領民代表を招いて話を聞くこととした。
応接室の長いテーブルに僕とオルガは並んで座りその後ろにダリアが控えている。
ダリアはメイド作業の傍ら、大役を受けて少し緊張していた。
アミナス「そんな硬くならなくていいよ。ダリア。」
ダリア「は、はい!」
そこへ領民代表のウィル•ホースボーンという若者が通されて来た。僕らは席を立って互いに挨拶を交わした。
ウィル「ホースボーンでがす、新しい領主様。よく来なすった。公爵家の方においでいただき国がこの村さ、見放してね~事が分かって安心しました。」
ん〜?僕13歳だけどね?中央の連中は政敵のいい狩り場位に思ってんじゃないかな?
アミナス「ずいぶん若いね?」
ウィル「ここじゃ、年老いたら、働き口がねぇもんで、それに戦争続きだで……」
うわぁ、やな理由だ。
アミナス「ここ、アントルイスの事をもっとよく知りたいんだ。」
オルガ「ここに至る道は首都セントローゼに続く1本の細い道しかないのか?」
ウィル「へぇ。それしかごぜーません。
前の戦の時、カウテースに宿場町のプラテラを抑えられて兵糧攻めにあいました。
領主様が騎士団と村の若ーの引き連れて打って出た所を待ち伏せに会い、隊は全滅。領主様も戦死なされました。」
ウィルは当時のことを思い出したのか、涙ぐんで震えている。
オルガ「プラテラって、あの廃墟の?」
ウィル「そうでがす。」(ぐずっ)
アミナス「ここの問題点が見えてきたね?」
オルガは頷いた。
オルガ「道が一本なのがいけない。補給路はたくさんあったほうがいい。領民達に道に使えそうな所を探してきてもらおう。」
アミナス「ダリアはアントルイスの高低差がわかる地図を持ってきてくれ。」
ダリア「はい。アミナス様。」
ウィル「え!?山ぁ、入るのですか?いやぁ、やめといた方が良いでがす。」
アミナス「?どうして?」
ウィル「ゴブリンが巣を作ってる場所がいくつかあるんでがす。」
アミナス「林業は?!やってんじゃないの?」
ウィル「ありゃぁ、ゴブリンたちが木を切る音でがす。俺らは山さ入らねえ。」
ガーン。人がやってんのかと思った。
オルガ「ここの騎士団は何やってるの!腰抜け揃いなの?!」
怒るオルガ姉のオーラにビビるウィル。
ウィル「いぇ、毎年のように戦乱があって、毎年のように騎士団も死傷者が出るもんでがすから、村の治安維持に回す人員はあっても、とても山狩に出る余裕がなくて……」
アミナス「そっかー。予算だけじゃなくて、人員も足りてないのかー。」
ここアントルイスに赴任する前に、現地の予算のことについては下調べした。
どうも国は今ある炭鉱が維持できればいい、みたいな額の予算しか割り振ってない。
戦乱続きの土地柄だし、公費つぎ込んでも、作ったインフラはすぐ駄目になると思っているのだろう。
オルガ「それで若造ばっかりなのね?ここの騎士たち。」
そう言う、オルガ姉もまだ20代でしょーに。
アミナス『前途多難だけど、やらなきゃ、戦死する未来しかない。やるっきゃない。』
オルガ「私が行ってくる!」
そう言うとオルガ姉は立ち上がった。
アミナス「えぇ!?一人で?!」
オルガ「まぁ見とけ!」
不安だ。
オルガ「不安だからってついてくるなよ。」
アミナス「い、いや、オルガ姉に何かあったら化けて出そうでそっちが怖いよ。」
オルガ「死なないって。」
オルガ姉は僕が震えているのを苦笑してみていた。
自慢の方天画戟は森林地帯だからと今回は持ってきていない。弓とナタだけだ。
刺突武器のレイピアは護身用にと僕に渡してくれていた。
いつも長物をぶん回す猪武者が小回りのいる閉所戦闘ができるのだろうか?
その時、オルガ姉は弓をつがえた。
え?何も聞こえ……
ビシュ!
「ぎぇぇぇ!」
オルガ「来たぞ!伏せてろアミナス!」
ビシュ!
「ほげっ」
咄嗟に頭を下げるとその場所に矢が飛んできた。
アミナス「ひえぇ!」
オルガ姉は飛んでくる矢をナタで器用に落としている。
アミナス『神業?!普通はできるの?!』
オルガ「私は目と耳が良いんだ!」
ビシュ!
ビシュ!
オルガ姉は次々と見えない敵を仕留めていく。聞こえてくるのはゴブリン達の断末魔とウメキだけだ。
ガサ!
オルガ姉に飛びかかるゴブリンの眉間に一発矢が当たる。
ビシュ!
ゴブリン「がっ」
オルガ「気づいてないと思ったのかウスノロ。」
一人逃げていくのか、ソイツの草木をかき分ける音が遠ざかっていく。
オルガ「終わったぞ?」
アミナス「ふー、危なぁ!」
おもむろにさっきの音のした所へオルガ姉は進む。僕はオルガ姉から離れないようについて行った。
オルガ「バカなやつだ、負傷兵が血を撒き散らしながら拠点に戻るとか。」
アミナス「普通は止血するの?」
オルガ「基本だ。行こう、ヤツが巣まで案内してくれる。」
したたり落ちる血の後を追って巣の洞窟の前まで至る。道中、鳴子があるだけで他は何もなかった。
初戦であらかた片付けたのか?巣の規模が小さくて、打って出る兵員がいないのか?
アミナス「洞窟の中に伏兵とか、罠じゃないの?」
オルガ「はぁ?入るわけないだろ?」
え?じゃあどうするんだ?
オルガ「お前も手伝えよ、アミナス。」
そう言うとオルガ姉は枯れ枝や落ち葉を集めてこいという。
火計。
洞窟の前で火を起こして燻すつもりなのだ。
アミナス「中に女性がいるんじゃ……」
オルガ「戦争は非情なんだよアミナス。捜索願が出されてた人が死んでた。なんてよくある話さ。」
えぇ……
ボワッ
オルガ「ほれ、アミナス。あおげ、あおげ。」
アミナス「そよ風でいい?」
熱を帯びた煙を僕の風の魔法で洞窟内部に送り込む。
熱風に喉をやられたのか洞窟内部から咳き込む音がする。
オルガ「団体さんが来るぞ?アミナスは下がってろ!」
アミナス「いや、僕もやる!」『来る場所が一箇所なんだから。しかも閉所。』
オルガ「風刃か?」
アミナス「その通り!風刃!」
一刃の風が洞窟に巻き起こる。
中で複数人が体を切り刻まれ倒れる音がする。その後、打って出ようとするものはいなかった。
オルガ「矢の節約ができた。魔法は便利だな!」
嬉しそうにオルガ姉が肘で僕を押す。使える魔法はこれだけだけど、
唯一、オルガ姉に勝ってる僕の取り柄。オルガ姉は魔法が使えない。
一応、炎が燃え尽きるのを待って中に入ると切り刻まれたゴブリンの遺体と、どこからか連れてこられた女性とゴブリンの老体と幼体が息絶えていた。
アミナス「……一酸化炭素中毒。」
オルガ「だから、ついてこなくていいって言ったんだ。」
戦争は非情だ。
アミナス「まぁ、死ぬってこういうことなんだって言ういい経験になったよ。」
震える声で精一杯の強がりをしてみせる。
オルガ「行こう。ここはもう安全だ。私は次のゴブリンの出現ポイントに向かうがどうする?」
オルガ姉だけにこんな思いはさせない。
アミナス「もちろん、ついてくさ。」
今度のゴブリン達は近接戦闘主体だった。
レイピアやナタの出番だ。
石器メインのゴブリンが鉄製武器を持つ人間(一人はもう、人間ではないかもしれない)にかなうわけもなく。
アミナス『うへー。』
ゴブリンの返り血でベタベタになる。その臭いに頭がくらくらする。気持ち悪くて吐きそうだ。
はぷっ
手で口を押さえる。
オルガ「吐いちまえるなら、吐いちまえ。」
若いのに無理するな。オルガ姉は僕のメンタルを心配してくれてるようだ。けどまぁ、
アミナス「激戦地に送られたんだから、このくらい覚悟してたよ。」
オルガ「強いなぁ、アミナスは。」
なんか、鬼神に褒められた。こうして、南側の山の道路開発がスタートした。




