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この世界にはダンジョンと呼ばれるものがある。
先に説明した通り、その危険度によりランク分けされている。
中には危険なモンスターや罠がひしめいている。
それと同時に貴重なアイテムや資源などが手に入ることがあり、ダンジョン攻略を生業にする剛の者も多数いる。
大抵は、そういう宝探しのダンジョンランナーであるが、クロウたちが潜る場合は少し違う。
ダンジョンのもう一つの側面は、魔王の尖兵が育つというものだ。
危険度の高いダンジョンで長く生き残ったモンスターは、高い知力を得る。
そして、一定以上の強さとなるとダンジョンを飛び出し、魔王の手先として人類に牙を剥く。
クロウたちがダンジョンに潜る場合、この尖兵が育つ前に倒す、というのが主たる目的になる。
クロウは宝物が大好きなので、どっちが本題か分からない場面が多々あったが。
そんな記録を探るうちに、一行はダンジョンへと進入して行った。
「食らえ! 豚野郎!」
ビアンが叫びながら、双剣を振り回す。
斬撃がバチバチと紫電を放ち、筋骨逞しい豚ヅラのモンスター【オーク】を切り裂く。
オークは悲鳴と血飛沫を上げながら、ドサリと倒れる。
クールスピリッツは、リーダーのビアンが双剣を振るうアタッカー。
フルプレートに身を固めたアイズルが、タンク。
背の高いベッソが水魔法によるヒーリング。
そして、イダレッタがサポーター兼スカウト。
特に、ビアンが持つ紫電を放つ双剣【バイレリラ】は、ダンジョンで見つけたかなりレアな武器だ。
魔剣と呼ばれる武器で、比類なき切れ味に魔力をまとわせ、硬いモンスターも紙を裂くように切り捨てる。
『ビビったか!?』
但し、スタミナの消費が激しいので普段は紫電を放たず使っている。
今回は稔に自分の凄さを見せつけるべく、大盤振る舞いをしている。
『うーむ……あの剣は凄いですね…あのふわふわ浮かんで見える魔法文字っぽいのが鍵だと思うんですが…近くで見れば分かりますかね? 貸してくれませんかね?』
ビアンにもオークにも大した興味はなく、魔剣の秘密で頭がいっぱいだった。
『ふっ! ビビって難しい顔してやがる』
『当たり前だ』
『このままビビり散らかして、奥まで連れ込みゃ何があっても事故で済む』
「おい!ミノル! 先に行くぞ!」
「ん? ああ、ハイハイ」
じーっと剣を見たままフワフワとついて行く。
『あいつ、青い顔でフラフラ付いてくるな』
『完全にビビってやがる』
『楽勝だ』
思惑通りに話が進み、ニヤニヤが止まらないクールスピリッツの3人だった




