表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で英雄となるために  作者: ミカヅキモ
2/2

英雄譚 序章 第一

教室の前で止まった足音は数秒そこに留まり、教室の引き戸を開けようとした。

開けようとした。


押し返した。

なんの説明もなくこんな所に連れてくる人間がろくな奴じゃない。そして何より怖かった。

俺の高校は俺の卒業直後、合併して廃校になったはずだ。しかし、その教室は寸分違わずここにある。ここの教室にはろくな思い出も無かったし、走馬灯としては不釣り合いだろう。ろくな思い出…というよりも何もなかった。青春も学問も俺には向いてなかった。扉の先にいるのが誰だろうが、こんなところに連れてこられた鬱憤を理解しているのだろうか。


次に扉を叩かれた。二回大きく叩かれた。

その音にも苛ついた。この部屋に連れてきたのだから当然俺の存在も知っているはず。おちょくっているのか?それとも…

また足音を立てて3-2教室から離れていった。

何をしたいのかも分からないが、俺をここに連れてきたそいつにとことん反抗したかった。


それにしても…教室が広い。こんなに広かっただろうか。昔きた場所が狭くなって感じるのはよくあるが、明らかに俺の成長を通り越して広くなっているような感じがする。気のせい…とはいえない程大きくなっているような…。

ふと窓側を見た。窓の外は本来なら俺が唯一日課で眺めていた港町と立派な海の景色があったはずだ。しかしその景色は見えず、過度な光の反射が美しい眺めを妨害している。その光は暖かみを感じられず、ただの照明だろう。


「唯一の…楽しみが…」


確信した。死んでないし、これは走馬灯でもない。

死ぬんだとしたら、俺はこの景色を思い浮かぶはずだ。明らかに悪趣味なやつが、俺のことも大して知らないのにこんな所に連れてきたに違いない。


「ご名答。ごめんね表現できなくて」


そんな女性の小さな声が教室に響いた。


「あっ…?」

存在感がなかった。足音も扉が引かれる音もしなかったはずだ。じゃあどうして…窓の外は期待外れで、音が聞こえなくなるほど夢中になるはずがなかった。

後ろを振り返るしかなかった。


その姿は170後半の俺を身長で軽く超え、190にも届こうとする女性だった。布のような衣を纏っていてその衣は明らかに薄らとしているが、不思議と透明ではない。露出は少なく、大人の魅力も子供の純粋な魅力も両方持ち合わせていた。感嘆しかでなかった。

ロングの白い髪と藍色の水滴を滴らせた様に透き通る目の瞳孔は不思議と引き込まれる魅力があった。


俺が思った感想はただ 神々しかった。

この世のものではない。そんな感じだけが伝わってきた。


「あっ驚いちゃった?ごめんごめん。驚かすつもりはなかったんだー。あんまりにも警戒してる様子でさ。あんまり怖がらせても不味いなーと思ってさ!」


「え…どうやって、教室の中へ?」


「あれ?面白いねー。普通なら私の質問をするはずなのに。」


「…」


「あっごめんね。質問の答えは…あーいっちゃっていいのかな…いいよね?別に関係ないし…」


「答えはね。すり抜けてきた!」


「そうですか…どうしてここに連れて来たんですか?」


「反応うすいね。人間ってこう…なんというか崇め祀ったり余りの驚きに気絶しちゃったりするものかと思ったんだけど…違った?」


「ははは…まぁ前提が

死んだと思ったら現在廃校となった高校の寸法違わない教室に移転された

から、それもあると思いますけど…」


「そうだったんだ。へぇ。人間ってそんな思考回路なんだ。本に載ってなかったな。」


「まぁそうですね」


俺の質問普通にスルーされたな

人間じゃないってことは分かった。そしてここに連れ込んだこいつの世界にも人間の本があるらしい。多少興味があるが、正直どうでもいい。

本題は何がしたいかだ。 なぜここに連れてきたのかなぜ俺なのかについて聞きたい。


「本題に入りますね!」


「あっはい」


「あなたにはこれから。過去に戻って異世界転移してもらいます!」


…異世界があるのは初耳だが…物質をすり抜けてくる人もいるんだ。それぐらいはある気がした。


「あらら?反応薄いよ!あれ〜?私だって初めて知った時はびっくりしたのにな〜」


はは…前提が

死んだと思ったら女が壁からすり抜けたんじゃなければ驚けたんだが…


「ありゃ。こりゃ実験失敗かも…」


なんか不味いことになってしまったかもしれない…

実験?ってことは俺は…()()()なのか…

実験失敗ってことは、、俺は用済み?用済みになった実験動物って…どうなるんだ?

()()()

殺さ…れる?あり得ない…喋った感じそんな感じは一切しないぞ。でも、これが実験体に対する言葉とは必ずしも否定できない。


「う〜む…困ったね…んじゃッ


「異世界!!?異世界といったら俺の住んでた世界とは環境も法則も違うの!?えぇ!!しかも俺は日本にしか住んだことないし!?どうなるんだ!?」


「そうでしょ!驚いちゃったか!やっぱそうなるよね。…あっでも関係なかったかも。」


「えっ…」


おい。何やらせてくれてんだ。

今の渾身の驚きを返してくれ。


「あなたが使命は!【過去と向き合うこと】

そして【成長すること】だよ!」


過去と向き合う、成長する…当たり前だ。

当たり前だったのに…俺はできていなかった気がする。



「思い詰めた顔は!ここでは勿体ないからやめて。それじゃ転送するから。あっちでは私がサポートするよ。」


「あっはい了解です」


その直後、3-2の教室の壁・床が局所的に崩れ、崩壊する。


「…なんだ!?」


半分まで崩壊した時、理解した。色が抜け落ちている。全ての物質の色が、抜け落ちて床に這い回る様に集まっている。その色は混ざりに混ざるうちに真っ黒へと変化していく。その模様はうねりにうねり、複雑な魔法陣に移り変わる。小さな小さな文字が、その魔法陣を作り上げている。


「これわざわざ準備してあげたんだよー」


「人間に映る太陽とかの光は私にも難しくてね。空間を作るのはそれよりとても難しい。たがらあなたの記憶から抜き出したんだ。多少あなたの主観も入ってたけどね」


どこかから声がする。だからあんなに教室が広く感じたんだ。


魔法陣が完成されていく。立体的で俺を囲むように構成されていく。


「あっ。そういえばいろいろあって名乗るの忘れちゃってたね。私はアステリア!人間のこといろいろ知りたいな!」


俺の名前はどうでもいいのか…この際名乗っておくか

失礼かもしれないしな


「俺の名前は佐野健一(さのけんいち)。これから…って」


いつも区切りが悪い。

黒の文字が体を覆い、

俺の視点は真っ黒になった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ