鉱山の異変
失踪していた訳ではございません。引っ越しで思いのほか時間が全く取れませんでした‼‼
3か月放置してすみませんでしたあああああああ
次の日。一行はホテルを出発して鉱山へと向かった。ドンから連邦軍に連絡が行き、ホテルの外で連邦軍の兵士が馬車で待機してくれていた。
「もうすぐ到着です。瘴気が突然出てくる可能性がありますのでマスクを必ず装着してください」
兵士の案内で部隊長がいる天幕へと入る。部隊長はエルフ族のようだ。こちらを見ると敬礼で出迎えてくれる。
「部隊長のジルと申します。鉱山を気にかけていただきありがとうございます」
「25代目聖女の横山真由です。突然お邪魔してすみません。多少ですがご協力できればと思います」
真由は部隊長と握手を交わす。部隊長はお会いできて光栄ですと一行に頭を下げた。早速状況を聞くことにする。
「これが鉱山内部の地図です。入り組んでいますのでもしも案内役とはぐれた場合は目印を頼りに地上へと戻ってきてください。さて問題の瘴気ですが…発生源は鉱石が多く眠っているこの広間です」
「広間か…瘴気は核にはなっていますか?」
誠司の問いにジルはいいえ、と首を横に振った。それならまだ悪化する前に対処できるはずだ。
「魔物の種類は飛行型が多いです。ただ鉱山内部ですのでなるべく炎系の魔法はお控えください」
「引火したら考えたくもないな。気を付けよう」
誠司は人一倍頷いた。炎属性に適性がある誠司は今回刀による戦闘に徹底することにする。
(本当はボウガンがあれば使いたいけど…刀と相性悪いんだよな)
ストラス以降地味に弓矢やボウガンでの訓練を行っているが、いまいち刀と相性が悪い。今は後衛に優秀なユキもいるし出番が無いのが正直なところだ。だが坑道は狭く刀身が引っかかるかもしれない。念のため借りておこうと心に決めておく。
「アタシも坑道で斧無理だな。多分引っかかる」
「それなら私の剣の予備があるから使うかい?」
お、借りるわ!とアイラは剣を受け取る。騎士団時代から時折剣も使用していたと聞いているが実際に見るのは始めてた。ユキと真由はひそかに歓喜している。
「とりあえず広間を目指そう。カグヤ殿を頼んでもいいかい?」
「おうよ!任せて!」
先陣はジルとクラノス、誠司、真由とユキ、後ろはアイラとカグヤ、他連邦軍数名で進むことになった。
坑道から瘴気が漂っている。マスクを今一度確認すると一行は中へと足を踏み入れた。
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「元々ここは魔晶石が一番よく出てくる鉱山でした。一年ほど前から品質が下がったと思っていたら瘴気が出るようになり…最近は瘴気を帯びた魔晶石がでてくるようになりました」
「鉱山から発掘される魔晶石は恵みの力が地中に溜まってそれが固まって魔晶石となる、の認識で会っていますか?」
「えぇその通りです。恵みの力が少なくなってきているのでしょうかね…」
ジルが声を落とす。オーロラから連邦のご神木を見せて貰った時、確かに弱っていると彼女は言っていた。ここまで影響が出るのかと真由はつばを飲み込んだ。
(ゆっくり滅びに向かっている…なんてオーロラ様は仰っていた。でも、事態が悪い方向に進むのが速い気がする…)
杖を握りなおしオーロラの話を思い出す。獣人族の亡霊が瘴気の核を得たのが真由たちがこの世界に来るひと月前、水源地の核が呪術を使ってきたのも真由たちがロンドリスを発った後だ。
(なんか…先回りされている?誰に?やっぱりあの魔王が…)
王国よりも単純に状況が悪化し厄介になっている。今ユキから呪術に対抗できる魔法を教わっている。もしかしたら今回使うかもしれないと魔力を温存することにする。この予感が当たらないといいのだが。
「前方!魔物来ます!」
ジルの声に全員武器を構える。今はこの狭い坑道での戦闘に気を配らなければならない。真由は気持ちを切り替えた。
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二時間近く経っただろうか。一行は狭い坑道を進み目的地の広間へと到着した。瘴気の核は無い。と聞いていたが目の前にあるのは完全に瘴気の核の形をしている物体だった。
「なぜ…⁉先ほどは無かったぞ‼‼?」
「一旦下がって‼‼真由!行けるか!」
「…違う、これは瘴気の核じゃない!幻だよ‼‼」
真由は落ち着くよう一行に言葉を掛ける。確かに瘴気の核の形をしている。だがいつも感じているあの気配が無いのだ。試しに浄化魔法をかけるが周りの瘴気を浄化するだけで核をすり抜けていく。
「幻影魔法…よし解析と解呪にかかります!」
「ユキ⁉どこ行くんだ⁉」
ユキは魔法書を取り出し解析をと宣言するが、クラノスから帰ってきたのは変な言葉だった。え、と顔を上げると周りには誰もいなくなっている。
「え、は…⁉」
驚き杖を構える。確かに先ほどまで自分はみんなと一緒にいたはずだ。すぐ隣には真由がいたのにいなくなっている。それよりこの気配、以前ロンドリスの裏路地で感じた魔法にそっくりだ。
「また⁉って、解析しているっての‼‼‼」
同じ手はもう喰らわない。ユキは即座に詠唱すると幻影を打ち消した。マスクの下で軽いく息を吐き消えていく幻影と切り替わる現実の光景を凝視した。どうやら自分は別の広間へと転送されたようだ。
「幻影じゃない、転送か。とりあえず誰かと合流して…!」
目印を頼りに地上を目指せと言われたことを思い出し近くの坑道へと足を向ける。と、右の穴から足音が聞こえた。
「ユキ!いるか⁉」
「アイラ、カグヤ‼‼」
アイラとカグヤだった。二人共本物だ。ユキは安堵からアイラに抱き着いた。アイラはユキの無事を確かめると良かったと息を吐いた。
「突然視界が揺らめいたと思ったら変なところに飛んでてよ。ユキの声が聞こえたから走ってきて正解だったぜ」
「私たち三人だけってことか。真由たち大丈夫かな?」
もしかしたらロンドリス同様ユキを狙った技だったのかもしれない。杖を抱くように抱えるユキにカグヤは大丈夫だろと背中を叩いた。
「あの聖女様、その気になれば姐さん直伝の拳骨で術式解除して解決するよ」
「ちょっと想像できるのなんでだろうな…」
カグヤの軽口にユキは緊張が溶けた。何故かはっきりと想像できてしまう光景にユキは笑いだしてしまう。アイラも二人の様子を見てよし、と声を掛けた。
「ひとまず地上に戻るぞ。カグヤ殿頼んだ」
「おう、あの道から風を感じるぜ。多分上に行く道だ」
カグヤが指を指す坑道から確かに風が吹いている。目印も確認すると三人は顔を合わせて頷き走り出した。
(それにしても私と真由を分断させたのか、よっぽど浄化されたくない何かがあるのかな)
あの場で浄化ができたのは真由とユキだけだ。おまけにユキは最上位の浄化能力は無いがそれでも真由の次に浄化能力が高いと言われている。二人そろえば理論上は何でも浄化できてしまう。敵にとっては最悪なのだろう。
「ユキ、大丈夫か?」
「大丈夫、私と真由を分断させたってことはこの鉱山、何か瘴気の核の代わりになる物があるのかなって」
確かになとアイラが頷く。少し進むと広間に出た。最初の広間ではない。坑道と広間を何か所もつなげているようだ。
「これだいぶ下の方に飛ばされたかもな。風は流れてきているけど風上は遠いし」
マスクの隙間から薬を飲みカグヤが分析をする。確かに転移前の広間より空気が薄い気がしてならない。速く上に戻って合流を、と言いかけたところで急にカグヤから引っ張られ後ろに飛んだ。
「わっ…!」
「足元!瘴気出てきてる!」
アイラに言われ慌てて下を見ると先ほどまでいた場所に瘴気が噴き出ている。即座に浄化魔法をかける。浄化出来たため本物の瘴気だった。
「ごめんカグヤ、ありがとう」
「気にすんな、今ユキがやられたら俺と姐さんが危ないからさ。悪いけど踏ん張ってくれ」
カグヤの言う通りだ。ここで自分がやられるわけにはいかない。ユキは頷くとゆっくり息を吐いて魔力の流れ―真由のいる方向を探す。が、瘴気の妨害かうまく探せない。
「だめだ、魔力探知がうまくいかない…なんでだろ」
「瘴気のせいじゃないか?とりあえずまた風上を目指そうぜ。もしかしたら途中で会えるかもしれないし」
アイラに言われまた三人は風上へと走り始めた。
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「うお、これって…⁉」
先頭を走っていたアイラが即座に剣を構える。何度目かの広間に出るとそこには瘴気の核が鎮座していたのだ。おまけに蝙蝠の姿をした魔物までいる。
「カグヤ!上行って真由呼んで来い!ユキ、浄化頼んだ!」
「だめだ姐さん!通路塞がってる!」
ユキを背に庇いながら指示を出すが、カグヤの声に通路に目を向けると確かに土砂で塞がっているようだ。舌打ちをしながらユキに浄化魔法を剣に付与してもらい核へと切りかかる。
「多分戦闘の音と瘴気の気配でみんな気付く、時間を稼ぐぞ!」
「了解!」
ユキの防護魔法が身を包む。アイラが積極的に瘴気の核から飛んでくる攻撃を弾きながら魔物を切り捨てる。カグヤもユキを守りながら魔物を対処していた。
(早く真由気付いて…!最悪転移魔法で二人だけでも上に送る…!)
残っている魔力はまだ余裕があるが、転移魔法を使うとなると三人一気に運ぶのは無理がある。転送地点に魔法陣があるわけでもないため余計魔力や神経を使うのだ。瘴気の核の攻撃を躱しながら浄化を進めていく。
(アイラもカグヤも疲れが見える、早く来て真由…!)
かなり下層に飛ばされた三人は走ってここまで来ている。特に前衛の二人はユキを守りながら戦闘をしている関係上、疲労が蓄積している。このままではじり貧だ。
「二人共!いったん逃げて体勢…わっ!」
二人に下がるよう口を開いたのもつかの間、ユキは突然視界が揺らいだ。いや、足元の石に気付かず転んでしまったのだ。小走りでいたため勢いよく転んでしまい、杖が手からすり抜けていく。尻餅を付き痛いと声を上げる。
「ユキ!早く起き上がれ!」
カグヤの声で顔を上げると自分の直線上にいる瘴気の核から光線が発射されようとしていた、
「ユキ!」
アイラとカグヤの声が重なる。二人共蝙蝠の魔物に行く手を阻まれフォローに入れない。とっさに杖を取ろうとするが光線が来る方が先だ。
「こんなところで…‼‼お母さん…‼‼」
腕を顔の前で交差し目をきつく閉じる。思わず母にすがった。杖なしで出せる魔法は防御魔法ぐらいだ。
光線が飛んできたのがわかる。防御魔法だけで凌げるだろうか。心臓の鼓動が速くなる、それに反して光線がゆっくりと自身に飛んできている。早まる鼓動に合わせて呼吸も速くなり、体の中から何かが放出されそうな感覚に襲われる。そう、初めて魔法を使った時のような魔力炉が一気に稼働したかのような感覚が―
「―ユキ」
懐かしい声が聞こえた。美しくそしてもう一度聞きたいと何度も願ったあの声が。その瞬間、魔力炉が一気に魔力を解放し、ユキを中心に広間全体がまばゆい光に包まれた。
「…‼‼おい、これって…⁉」
眩しすぎる光が収まった。アイラが目を開けるとそこには信じがたい光景が広がっている。
「核が…浄化されている…?」
瘴気の核や魔物は光の粒となって消えていく。そう、これは浄化が完了していく証だ。何度か見た光景にアイラとカグヤは困惑していた。
「な、なんで…真由…はまだ遠い…の…に…」
魔力探知が復活し困惑しながらも真由を探すと聖女はまだ上層にいるようだ。かなりの距離が開いており、彼女の魔法の射程範囲外だ。ユキは尻餅をついたまま駆け寄ってきたアイラにもたれかかるように倒れる。
「…聖女の力を受け継いでいた…ってことか…あれでもこの世界の産まれでは最上位の浄化能力は無い…んだよな…?」
「……どうなってんだ一体…」
世界の定理を、そして聖女―真由の召喚された意味がさらに分からなくなる状況に三人は戸惑うことしかできなかった。真由にどう説明すればいいのか、彼女の尊厳を傷つけるのではないのか、ユキは震えながら近づいてくる足音に耳を傾けることしかできなかった。
最初から転移魔法使えよというツッコミですが、決められた転移地点以外にいきなりワープさせるのは超優秀な魔法使いでもしんどいということで勘弁してください。




