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俺の閣下  作者: テディ
本編
10/186

第9話  継続


 3人の責めるような視線に耐えながら、

ジョシュアは、自分の感想を話した。

「現実的ではない部分が多い。それが人の心を動かすのだろう?

そこが架空の話の面白いところだ。だいたい若手なのに騎士隊長で、文官大臣の

設定がすごいと思った。そんなやつがいるなら、すぐさま雇いたいくらいだ」

そう言うとソフィアが笑い出した。

「それは凄い人物だな。私も雇いたい」

「そのありえなさが貴重で、その人物がどうゆう人に惹かれるのか、

そこも心が踊るのだろう?女性の夢だな、多分」


いかにも冷静に見えるように話したジョシュアは、ホッとした。

ここで自分の気持ちを打ち明けるには、幾ら何でも性急すぎる。

しかも観客付きだ。言わなくても責められる筋合いはない。

自分にだって心の準備も、打ち明けるときの理想もあるのだ。


半ば開き直ったジョシュアを見て、モリンは微笑んだ。

「ジョシュ、あなた女性の夢が分かるのね?

少し大人になってしまって、驚いたわ」

そう言われて、ジョシュアはグッと詰まった。

しまった、調子に乗って話すぎた……。


マイアが、頷いて続いた。

「本当に、ジョシュからこんなに理解の言葉が出るなんて……。

どちらかと言うと夢物語だと相手にしないかと思っていた」


ジョシュアは、いかにも心外と言わんばかりに答えた。

「いったい俺を何だと思っているんだ……。そのくらいは考える」


そんなジョシュアを、ソフィアは優しく微笑んで眺めていた。

リリーはその様子を見て、内心ため息をつく。

どう見ても、お互いに恋していると想うのに、

何故、当の本人たちは気がつかないのか。

これが恋の厄介なところなのね……。しょうがないわね……、もうひと押し。

自分がこんなにお節介だったなんてと、リリーは苦笑していた。


「これで、ソフィの恋愛対象が分かったわね。

ソフィ、あなた自分で口にした人物がいるかどうか考えるのよ」

「ん??現実でか?」

「そう。あなたがありのままでいる事を認めてくれる人物」

「女性としても?ハハッ、そんな人物はいないだろう?

この小説にもある通り、男性の理想像から程遠い私が?」

「ソフィ、居たらどうするの?」


リリーの問いかけにハタとソフィアは固まった。

いや、どう考えても居ないだろう?そう思ってリリーを見たら、

彼女は冷静に、真面目に自分に問うていた。


「リリー、いると思うのか?」

「あなた、この際身分差など気にしないわよね?」

「身分?あればあっただけ、私が対象になることはないと思うが……。

そうだな、待ってくれ。本当に考えたことがないんだ。

今、考えるから」

そう言うとソフィアは、腕を組んで真剣に考え出した。


「そうだな……、身分差……。

もともと身分差など何の役にも立たんと思っていたから……、

気にした事がなかった。

確かに貴族や王族では、身分は重要なのか?!バカバカしい……。

自分が王族の姫としては、これ以上ないくらいダメなのに

相手に身分を求める?ないない……。ありえないな。

父上も母上も、気にしないと思う」


その答えを聞いたリリーは、さらに詰め寄った。

「ソフィー、何故 陛下と女王陛下は気にしないと

言い切れるの?」

「そうだな、父上は私にこの小説のように

幸せになってほしいと思っておられる。

でも母上は、私らしく幸せになってほしいと思っておられる。

結局、父上は母上に賛成するからな。だから、気にしないと思うのだ」


それを聞いたリリーは満足そうに頷いた。

「では何の問題もないのね。あなたはあなたらしく、

自分の相手を選ぶことができるのだわ」

それを聞いたソフィアは、珍しくカラカラと笑い出した。

「まあ、そう言う事にはなるな……。

だが、現実は厳しいからな。アテにせず、しっかり仕事を

する事にしよう」


そんな様子を見ていたモリンが、ソフィアに尋ねた。

「ソフィ?何故あなたは、相手がいないと思い込んでるの?

確かに、あなたは魔法に夢中になるあまり 日常生活が得意とは言えないわ。

でも考えようによっては、周りの者が全てやってくれるじゃない?

あなたは得意な仕事と社交だけを頑張れば良いのではなくて?」


ソフィアは、もっと笑い出した。

「モリン、それは無理だ」

「何故?」

「簡単な理由だ。ジョシュに世話してもらわないと、

気持ち悪いのだ」

さも当たり前かのように話すソフィに、一同愕然となった。

「もちろん皆には感謝している。どうも近侍やら、侍女やらが

ジョシュに習ってまで、私のために動いてくれているようなんだが、

何と言うか、具合が違うんだ。

だから他のものに世話してもらうのを諦めた」


ソフィアは大笑いしている。

「何なのだろうな、幼い頃から世話してもらっているからか、

絶妙なんだ。ジョシュ、感謝してるぞ」


満面の笑みで言われたジョシュアも、あっけに取られていた。

確かにこれは……気持ちを打ち明けても、通用するか分からない。



リリーは首を振りながら、息を吐いた。

「ソフィ、分かったわ。ではこうしましょう。

あなた、自分の思い描いた人物に気がつけば結婚するのね?」


「ん?? そうだな、そんな貴重な人物を逃すわけには行かないからな。

相手がよければ結婚しよう」


マイアはあまりの面白さに、肩を揺らしていた。

リリーは、ニッコリと微笑んだ。


「そう、良かった。では月に何回か、あなたの恋愛について

話しましょう。今日は色々な発見があったでしょう?

時には、自分について研究するのも良いのではないかしら?」


ソフィアは考え込んだ。

「そうだな、自分を研究など考えたこともなかった……。

やってみるか。でも……お前たちはそれで参考になるのか?

自身の恋愛のためと言っていただろう?」


モリンは、優しく微笑んだ。

「良いのよ、ソフィ。新しい価値観を聞きたいんですもの」

マイアも楽しそうに頼んでいた。

「そうよソフィ、あなたが幸せになれるなら

それは画期的で新鮮な方法に違いないわ!!」


「そっ……そうか?」



こうしてソフィアは、自分について考える事になった。

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