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第52話 めぐみとのデート

 今日はデートの日、天気は快晴だ。


「…そろそろかな?」


 俺は家の前で、めぐみの迎えを待っている


「ん?」


 見覚えのある黒い高級車が来ている。


「……あ」


 俺が誘拐された時に乗った車だ。

 車は止まり、運転席の方のドアが開く。


「――おはようございます。大牙様」


 現れたのは、執事服姿の女性だった。


「えーと…あなたは…」


 めぐみに誘拐された時、ちらっと見た様な…。

 誘拐されて、すぐにめぐみの部屋に通されたからな。


「あの時は無礼なことをしてしまい申し訳ありません」


 女性はあの時の誘拐を謝罪する。


「ああ、いえ…もう気にしてません」


 その女性の謝罪を素直に受け入れる。


「ありがとうございます」


「申し遅れました。わたくし、萩原と申します」


 萩原さんは、丁寧に自己紹介をしてくれる。


「ど…どうも、自分は王守大牙です」


 俺も自己紹介をする。


「存じております。できるならば、お嬢様と長いお付き合いをお願いします」

「ああ、はい」


 丁寧に挨拶されるなんて、あんまりないないから驚いて、固くなってしまう。


「萩原~、大牙さ~ん」

「!?」


 後方の席の窓を開け、めぐみが顔を見せる。


「申し訳ありません。お嬢様」

「早く行きましょう~」

「おう」


 俺は、車の後方に乗る。


「…おー」


 そこでのめぐみは――


 白いワンピースを着て、白い帽子を持っている。


 普段見ていると違うから――新鮮だ。


「ふふっ、どうですか?」


 そう聞いてきためぐみに――


「――綺麗だ」


 そう…嘘のない本心を言った。


「そ…そうですか…」


 恥ずかしそうにして、帽子で顔を隠している。


「大牙様、お座りください」

「ああ、はい」


 めぐみの隣に座る。


「では、参ります」

「頼むわ」

「お願いします」


 そうして出発する。


「……」


 俺は、めぐみの車をジロジロと見てしまう。


「どうしました?」


 それに気づくめぐみ。


「いや、二回目だが…」


 そう、俺はこの車に乗ったことあるのだ。

 しかし、あの時は――


「…誘拐されてたから、見る余裕なかったからな」


 俺が、めぐみに誘拐されていたからな。


「あら~そうですの~」

「おい、当事者…」


 笑いながらそういうめぐみにツッコミを入れる。


 あの時は少し焦った。

 だって抵抗できず、すぐに車に連れ込まれたからな。


(それだけ、こいつのボディーガードが優秀ってことだが…)


「あれ?…その時は萩原さんいませんでしたよね?」


 そう…あの時は、萩原さん姿はなかったのだ。

 めぐみに信頼されているなら一緒にいてもおかしくないのだが…。


「私の基本的な仕事は、屋敷の管理や事務、調整などで、ほぼ屋敷にいます」

「そうなんですか」


(ああ、だからいなかったのか)


「今回は、お嬢様たっての希望で、大牙様に私を紹介したかったそうなので来ました」

「へえー…」


(こいつがねぇ…)


 そう言われ、めぐみの方を見る。

 見ると、ニコッと笑みを浮かべるめぐみ。


(…何を考えているんだか)


 めぐみがいつも何か考えているのは、日常茶飯事と考えている。

 もちろん、油断はできないが…。


「萩原さんは、めぐみと付き合いは長いんですか?」

「はい、めぐみ様とは幼少の頃からの付き合いです」

「ああ、そうなんですか」

「私が幼い頃からですから…萩原が中校生の頃からでしょうか」

「そうなのか」


 萩原さんとめぐみは、結構長い付き合いらしい。


「――ですから、萩原のことは姉の様に思ってるんです」

「なるほど…」


 めぐみにそこまで言われるほど信頼されているんだな。


「……」


 黙ってはいるが、萩原さん嬉しそうだ。

 そんな感じがした。




 話をしながら車に乗っていると――


「――当着いたしました」


 目的の場所に到着したようだ。


「…ここか」

「ええ、ココが私たちのデートスポットです」


 目の前には、広場と小高い丘、湖もある。ザ・定番って感じだ。

 俺とめぐみは、そこにいくつかの荷物を下ろし、その場所に行く。


「大牙様…」


 行こうとすると萩原さんに呼び止められる。


「……お気をつけて」

「はい?」


 そんな不穏な言葉を残して、その場を後にする萩原さん…。


(…なんだったんだ?)


「大牙さ~ん!」


 考えているとめぐみが、俺を呼ぶ。


「今行く!」


 そうして、俺とめぐみとのデートが始まった。



 ――歩く。


 ――その場を歩く。


 ――景色を見ながら歩く。


 ――それくらいしかやることがない。


 めぐみの顔も見ることもあるが、ほとんど前を向いて歩くことしかない。


(しかし、このままというのも…)


 俺は考え、めぐみの方を見て――


(ああ、そうだ)


 あることを思いつく。

 いや、思い出したというべきか。


「……めぐみ」


 俺は、めぐみに声をかける。


「どうしました?」

「手を…繋がないか?」


 考えてみたら、抱きしめたことやキスをしたことがあっても――


 手をつなぐのは初めてだ。


「いいですよ~」


 めぐみは笑顔で俺に手を差し出す。

 しかし、平然としているめぐみに少しムッとする。


 こっちは、彼女とは言え、初めてだから緊張もしてるんだが――


(いや…それこそ今更か…)


 その手を俺は握り、めぐみの手の温度や感触を感じる。


(小さく繊細そうな手だな…)


 めぐみの手は、お嬢様と言えるほど、細く柔らかい。


(……ん?)


 手を握ることに集中していたが、よく見ると――


「……」


 耳が赤くなっていることに気づく。


「ふふ…」


 その様子に思わず、笑ってしまう。


「な、なんですか?」


 聞こえてしまったらしい。

 あと、平然としているが照れているな。


「いや、可愛いなと思って…」

「!?…そんな言葉じゃ、騙されませんよ」

「本心だって」

「~~~」


 恥ずかしそうに顔を赤くしてる。

 こういうところが可愛い。


「もう!」


 顔をぷくっとしている。


「すまんすまん」


 こいつ、攻めるのは好きだけど、攻められるのは弱いな。


「…しかし、結構人もいるな」


 周りを見てみると、俺たちの様なカップルや老夫婦、家族連れ、ランニングしている人など、様々だ。


「そうですね。休日だからでしょうか?」

「俺たちと同じデートしてるのもちらほらといるな」

「…そうですね」


 また、恥ずかしがってるな。


「そういえば、めぐみってこういう場所来たりするのか?」

「あー…いえ、全く行きませんね」

「そうなのか」

「はい、家の周りがこんな感じなので」

「へぇー……えっ!?」


 家の周りが?こんな感じ?

 こいつの家の周り、そんなにでかいの?

 誘拐された時、結構時間かかったと思ったけど――


「そ…そんなに広かったんだな」

「ああ、大牙さん一度しか来てませんでしたね」


 そうだけど…そうじゃない。


「ちなみに大きさは?」

「ええと…確か…」


「東京ドーム1.5倍くらいだったはずです」


(……)


 驚きすぎて言葉が出ない。


「大牙さん?」

「…あ、いや、驚きすぎてな…」

「ふふっ」


 そんな様子が面白かったのか笑っている。


「桜さんや、りんさんもそんな反応でしたよ」


(そりゃ、そうなるだろうな)


 桜とりんの驚いた姿を容易に想像できた。


「そりゃ、驚くだろうな…そんな広けりゃ…」

「だから、遊びに行く時以外は、あまり家の庭からでないんですよね~」

「なるほど…」


 お嬢様だし、色々決まりもあるのだろう。


「来るときは迎えを行かせます~」

「うん、それは頼む」


 歩いていたら迷子になる気がする。


「ふふっ」


 また楽しそうに笑う。


「あ!大牙さん!」


 めぐみが何かを見つけて、指をさしている。


「あそこのベンチでお昼にしましょう!」

「…ああ、もうそんな時間か」


 歩いていたら、お昼ごろになっている。


「そうだな…食べるか」

「ええ!」


 俺たちはベンチに座り、持ってきた弁当を食べることにする。


「それじゃあ、お弁当食べましょうか!」



 俺は、この後……


 恐怖と……


 臨死体験を経験することになる。



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