#89 3人の想い
10月4(金)
朝起きて日課のウォーキングを済ませてシャワーを浴びてリビングに行くと、テレビのニュースで俺達の事を話している所だった。
「おはよう〜」
「おはよう春斗。体調はどう?よくなった?」
朝の挨拶をすると、ばあちゃんに体調を心配された。
「体調?特に問題ないけど?どうかしたの?」
「昨夜帰って来てから寝るまで、魂が抜けたみたいな顔をしていたから心配していたのよ?」
「ん?」
そういえば、昨日記者会見の為に新宿支部に行って、敬さんとか役員の人達に挨拶をして...あれ?そこからの記憶がないぞ?
「体調に問題ないのならご飯食べれる?」
「うん。お腹空いたよ」
「みんなそろそろ降りて来るでしょうから、少し待って頂戴ね」
「うん。分かった」
みんなが降りて来るまでの間、テレビでニュースを観ていたのだが、思い出した。
昨日の記者会見でほのかが爆弾発表して驚き過ぎて記憶を飛ばしていたらしい。
ていうか、俺の重婚を俺に内緒で政府に要求して、政府もあっさりそれを認めるってどうなってるんだよ!?
しかもこれからアプローチして行くって、誰が!?ほのかだけ?いや、私達って言っていたって事は、少なくとも後1人はいるって事だよな?雛か?唯佳か?どっちにしろ今までそんな素振りなんて...あった様な気がする...ただ単に距離感が近いだけだと思っていたよ...ハア...
全てを思い出してテレビの前で頭を抱えていると、リビングにみんなが降りて来た。
「春くんどうしたのー?ご飯だよー」
「ん?ああ、今行くよ」
「春斗大丈夫?昨夜は死んだ様な顔していたけど」
「うん。大丈夫。心配掛けてごめんね智佳姉」
「ううん。大丈夫ならいいの」
ばあちゃんだけじゃなくて智佳姉にも心配を掛けてしまったようだし、いつもはイジってくる凛も何も言って来ないって事は気を遣ってくれているのだろう。
記憶が飛んでいたくらいだから、余程酷い顔をしていたのだろう。
朝食を済ませ、学校に行く為に唯佳と凛と一緒に家を出た。
「凛が一緒に家を出るのは珍しいな。早過ぎないか?」
「ちょ、ちょっと用事があるから早く行くの!別にお兄ちゃんが心配だから一緒に出て来た訳じゃないんだからね!」
「あ、ああ、分かってるよ」
純粋な疑問を口にしたら怒られてしまった。
そんな凛の頭を唯佳が撫でて宥めている。
結局、そのまま中学校の前で凛と別れて、唯佳と2人で話をしながら学校まで歩いて来た。
思い切って気になっていた、ほのかが言っていた私達が誰なのかを聞いてみた。
答えは3人全員だった。
学校に着き教室に行くと、雛とほのかは既にクラスメイトに囲まれて質問攻めにあっていた。
「あっ!春斗くん。おはようございます。昨日は突然済みませんでした」
「春斗っちおはよ〜。昨日はごめんね。大丈夫?」
「あ、ああ、大丈夫だよ...」
「春くん、体調が悪くなったら保健室に行こうね?」
「ああ、大丈夫だから」
特に体調が悪い訳ではないのだが、昨日の様子が酷かった所為で、家族の時と同じ様に心配されている様だ。
「春斗、具合がよくないのか?」
「いや、ただの緊張疲れだよ」
自分の席に着くと、陸人が心配そうに振り返って聞いて来た。
「まあ、あんな記者会見で主役だったんだもんな。緊張疲れもするよな」
「ああ」
「それに、意地の悪い質問もあったしな」
陸人と話していると担任の先生が教室に入って来て、ホームルームが始まった。
女子達は1日中他の生徒から質問攻めにあっていたが、朝の事もあって体調が悪いと思われている俺は、静かに過ごす事が出来た。
正直、ほのかが言った重婚について聞かれなくて助かっている。
授業が終わり、俺達は自分達の個室に移動して来た。
「春斗くん、先ずは当事者の春斗くんに相談もなく、重婚なんていう重要な事を勝手に政府に要求して、許可を取ってしまった事、本当にすみませんでした」
「春斗っちごめんなさい」
「春くん、ごめんなさい。春くんに内緒で話を進めちゃって、ホントにごめんなさい」
個室のソファーに座るなり、3人が俺に頭を下げて謝って来た。
「これが、3人がSランクに拘っていた理由だったのか?」
「「「はい」」」
「そんなに俺の事を好きでいてくれたのか?」
「「「はい」」」
「一体いつから?」
「私は子供の頃からずっと好きだったよ」
「いや、それは異性としてじゃないだろ?」
「そうだけど、ずっと好きで気付いたらそのまま男の子として好きになってたんだもん...」
「アタシは入学式の時に一目惚れしたんだ」
「一目惚れって...もっとちゃんと考えた方が」
「春斗っち、一目惚れはあるんだよ?それに、ちゃんとその時以上に好きになっちゃっているからね?」
「私はちゃんと好きだって気付いたのはパーティーを組んで、一緒にいる時間が増えてからです。ですが、その前から好意は抱いていたと思います。普段から誰とでも親しく話していて、困っている人には躊躇わずに手を差し伸べられる人柄は、人として好感が持てました。それが、パーティーを組んでから間違っている事には厳しく対処出来る、強い心の持ち主である事も判り、信頼できる頼もしいリーダーシップがある事も、男性として一気に好きになる理由として十分で、あっという間に恋に落ちていました」
「俺はそんなに立派な人間じゃないよ...」
「「「そんな事ない(ありません)!!」」」
あまりによく言われたので、照れもあり否定的な事を言ったら強く否定されてしまった。
「春斗くんは人としても男性としても立派な人ですよ?自信を持って下さい」
「春くんは素敵だよ?」
「じゃなかったら、アタシ達3人が全員好きになったりしないかんね?」
「ありがとう」
「ふふっすぐには無理でも少しずつ自信を持ってもらえると嬉しいです」
今は、こんな美少女3人から勿体ないくらいの好意を寄せられて困惑しかないけど、いつまでもそんな感じでいるのは、好きだと言ってくれている3人に対して失礼なんだろうな。
3人の事は異性としてかどうかはまだ分からないけど好きだし、まだ、男としての自分に自信はないけど、3人に対して恥ずかしくない人間になれるように頑張ろう。
「好きだって言ってくれた3人に対して恥ずかしくない人間でいられる様に頑張るよ」
「はい」
「春斗っちが自信を持てるようにアタシ達も手伝ってあげるね」
「手伝うって何をするんだ?」
「春くん、だーいすき!」
「えっ?」
「春斗っち、大好きだよ!」
「へっ?」
「春斗くん、大好きです」
「ちょっ!?」
「春斗っち、こんな美少女3人からこんなに好きって言われれば、嫌でも自信付くんじゃん?」
「えへへーちょっと恥ずかしいねー」
「私達も慣れが必要ですね」
「春斗っちが自信を持てるように、それから春斗っちに3人の事を女の子として好きになってもらえる様に一杯アプローチを掛けて行くからね」
3人は記者会見の最後に、ほのかが言っていたようにアプローチを掛けて来る様だ。
俺には勿体ない状況だが、きちんと真剣に考えて答えないとな。
幸い俺の知らない所でとはいえ、その気になれば3人を幸せに出来る環境は整ったんだしな。
「不束者ですが、宜しくお願いします」
「ぷっ!アッハハハハハ春斗っち、それ男の人が言ってるの初めて聞いたんだけど」
「私もーアハハハハ」
「ふふっその返しは予想外でしたけど、それは私達の事を受け入れて下さるという事で宜しいですか?」
「すぐに恋人関係っていうのは頭も気持ちも追い付かないけど、真剣に考えて答えたいと思う」
「そういう真面目で誠実な所も好きですよ」
「私も好きー」
「アタシも大好き〜」
3人からのストレートな愛情表現に顔は恐らく真っ赤になっていると思う。
「あっ!あの、好きって言ってもらえるのは嬉しいんだけど、ダンジョン内では無しでお願いします」
「何で敬語なん?でも、ダンジョン内では恋愛っていう意味での好きは言わないようにするね」
「私も気を付けるー」
「そうですね。集中力が切れると危険ですからね。ですが、階段内では許して下さい」
「そうだね~階段内なら、魔物も出ないしいいよね?」
「春くんお願ーい」
「わ、分かった。それは受け入れるよ」
「「やった〜」」
「ありがとうございます」
交際とまでは行かないものの、真剣に考えるという俺の答えに満足してくれたみたいで、今日は帰る事になった。
今日はどの家でも、Sランク昇格のお祝いらしくそれぞれの家路に就いた。
まさかこんな日が来るとは思っていなかったな...




