#81 美味しいカレー屋さん
9月26日(金)
「今日は18時半に待ち合わせしているから、いつもよりも時間を気にして行こうね」
「いつも大体18時に攻略を終わってるんだし、いつも通りで大丈夫だろ?」
「そうですよ雛さん。いつも通り落ち着いて行動して下さい」
「何処にいても転移ですぐに戻って来られるんだし大丈夫だよー」
今日は先日助けたバーニングスピリッツと食事の約束をしている。
西八王子駅の近くに美味しいカレー屋さんがあるらしい。
雛はカレーが大好きらしく、朝からテンションが高かったので、ギャル仲間からも落ち着く様に言われていた。
どんだけ好きなんだよ。
テンションの高い雛を連れ、遭遇した魔物を倒しながら次階層への階段を目指して進んで行く。
昨日の最終地点から攻略を再開して20分程で54階層に到達した俺達は、更に40分くらいで55階層の転移陣で支部へと戻って来る事が出来た。
トイレ休憩を挟んで攻略を再開し、56階層に降りる階段を目指して進んでいるのだが、この階層から出て来た砂嵐というヤマアラシに似た見た目の魔物が厄介だった。
「魔物を倒しても竜巻が消えないんだけど!?」
「何でー?」
「砂嵐という魔物の固有スキルらしくて、理由はまだ判っていないそうです」
砂嵐という魔物は、敵を発見すると竜巻を巻き起こす。
その竜巻は砂漠の砂を巻き上げ、勢いよく周りに撒き散らす為、ダメージはないがチクチクして煩わしい上に、視界も悪くなり戦いにくくなる。
その上、倒した後も暫く消える事なく意思を持っているかの様に追い掛けて来るので、非常に厄介だった。
「髪の毛の中、砂でジャリジャリするよー」
「今日はカレー食べに行くのに最悪だよ~」
「少し早いですが今日はもう終わりにして、続きは明日にしませんか?シャワーに時間が掛かりそうなので...」
「「さんせーい!」」
「分かった。そうしよう」
「「やった〜!!」」
結局、トイレ休憩の後は10分も攻略を進めずに終了となった。
「あら?随分早いけどどうしたの?」
「砂が凄くて準備に時間が掛かりそうだから、終わりにしたのー」
「頭がジャリジャリ言うよ~」
「普段ならいいんですけど、今日は食事に行くので」
「ああ、そうだったわね。じゃあ、さっさと換金しちゃいましょうね」
「「おねがーい」」
換金を済ませ自分達の個室に戻った俺達は、さっさとシャワーを浴びる事にして男女で別れたのだが、いつも思うんだけど、もっと壁を厚く出来なかったのかな〜女子達が騒ぐ声が丸聞こえなんだよな~
「ひぁぁー!雛ちゃん!いつも言ってるでしょー!おっぱいは揉んじゃダメだってー!メッー!」
「だって気持ちいいんだよ~ほら、唯佳っちも自分で揉んでみ?」
「ホントだねーじゃなーい!」
「ほらほら、2人共遅れてしまいますよ?今日はただでさえ時間が掛かりそうなんですから、さっさと砂を洗い流してしまいましょう」
「は~い」
「ほのかちゃん?真面目な話してるけど、私のおっぱい揉みながら言われても説得力ないからー!」
こんなやり取りを毎日聞かされている俺の身にもなって欲しい。
俺だって健全な男子高校生なんだぞ~!
ハア...
いつもはさっさとシャワーを浴びて、個室のリビングみたいな部屋に避難するんだけど、今日は俺も髪の中まで砂だらけで、頭を洗うのに時間が掛かっていて、女子達の話を長尺で聞かされている。
女子達も俺に聞こえている事は分かっているはずなのに、それでも話の内容がいつも同じ様な内容なのは、もう狙って聞かせてるとしか思えない。
それってセクハラなんじゃないですかね~!?
取り敢えず砂も洗い流せてさっぱりしたので、何処にとは言わないけどシャワーで冷水を掛け、平常時の状態に戻してからリビングに戻った。
髪が長い分、時間の掛かる女子達も、待ち合わせの時間には充分間に合う時間にリビングに出て来た。
「春くんお待たせー」
「遅くなってしまいすみませんでした」
「春斗っち〜楽しんでもらえた?」
やっぱり確信犯か〜ありがとうございます!
「雛ちゃん?春くんが何を楽しんだの?」
「それはね~y」
「何でもない!何でもないから!それよりも少し早いけど待ち合わせ場所の富士森公園支部に行こうか」
「ん?うん。いいけど、春くん何で慌ててるの?」
「い、いや、それはその...」
「唯佳さん?あまり詮索するのはよくありませんよ?」
「そうそう、いくら幼馴染みでも内緒にしときたい事くらいあるじゃん?」
「そっかー、そだねー」
「それでは、参りましょうか」
「「は~い」」
何とか誤魔化せた。雛とほのかの力を借りてだけど...
唯佳の転移で富士森公園支部に移動して来た俺達は、バーニングスピリッツの皆さんが来るまで、端っこに寄って待つ事にした。
「あー!可憐ちゃんまだ働いてるよー」
「ホントだ〜」
「かれんさんは今日はご実家に泊まられるという事でしたが、それだけが理由ではなかったのでしょうか?」
可憐さんの実家はこの近くらしく、今日は実家に泊まるからと俺達と一緒に帰らなかった。
だけど、まだここにいるって事は何か仕事が残っていたのだろうか?
俺達の専属になってからは、比較的出退勤の時間は自由になると言っていたと思うんだけど、残業しないといけない様な仕事でも残っちゃってたのかな?
暫く様子を見ていると、受付の職員さん達に色々と教えながら動いている様だ。
「そういえば、かれんさんは私達の専属になる前は、ここの支部でフロアマネージャーの役職に就いていたんでしたね」
「あ〜それなのにいきなり俺達の専属として異動しちゃったから、俺達と一緒に富士森公園支部に来ている間に色々と教えているのかもな」
「引き継ぎもまともにする時間もなかったでしょうしね」
「可憐ちゃんかっこいいねー」
「ね~凄いテキパキ動いてるね~」
俺達が可憐さんについて話していると、バーニングスピリッツが全員揃って現れた。
「すまない。待たせたかな?」
「いえ、全然」
「そうか?ならよかった。こちらから誘っておいて待たせたのなら申し訳ないからな。それじゃあ、行こうか」
「はい」
道中キレイに男女で別れて、話しながら移動した。
お店の場所は西八王子駅の反対側、北口の方にある図書館の並びだった。
隣のラーメン屋さんには行列が出来ているが、カレー屋さんの方はお客さんはおらず、店員さんなのかオーナーさんなのか分からないけど、外国人の男性が1人だけカウンターの中にいた。
「ここのカレーはホントに絶品なんだよ。今は偶々お客さんがいないけど、味は俺達が保証する」
「看板にネパールカレーって書いてありましたね。どういう特徴なんですか?」
「分からん」
「えっ?」
「俺達にはインドカレーとの違いはよく分からないけど、美味い事だけは間違いないから」
「そ、そうですか...」
一気に不安になったんだけど、大丈夫だよな?
若干不安になりつつ、メニューを見てみる。
カレーは全部で4種類、キーマカレーとマトンカレー、豆カレーに何故かタイ風グリーンカレーで、プラス150円でハーフ&ハーフに出来るらしい。
「俺はキーマカレーで」
「ハーフ&ハーフにしたり大盛りにしたりしなくてもいいのか?遠慮しなくてもいいんだぞ?」
「じゃあ、ご飯とカレーを大盛りで」
「アタシはキーマカレーと豆カレーにする〜」
「私はグリーンカレーでお願いします」
「うーんとねー私はマトンカレーとグリーンカレーが食べたーい!あと、マンゴーラッシーくださーい」
「あ〜アタシもマンゴーラッシー飲みた〜い」
「私はアイスチャイを下さい」
「俺はこのトゥルシー茶っていうハーブティーを下さい」
バーニングスピリッツのみんなも注文して、それぞれの料理を食べて行く。
確かに和樹さん達が言っていた様に、凄く美味しいカレーだった。
俺もインドカレーとの違いがよく分からないけど。
バーニングスピリッツは和樹さんと洋輝さんの双子と幼馴染みの美桜さんと加奈さんが、高校1年の時から組んでいるパーティーらしい。
「唯佳ちゃん達はどういう経緯でパーティーを組んだの?」
「私達はねー最初は春くんと私の2人で組む予定だったんだけどねー、ダンジョン発生事故にクラスで巻き込まれちゃってー、その時に雛ちゃんも入りたいって言ってくれて、一緒にパーティーを組む事になったのー。それでねーその時の話をほのかちゃんが聞いててー、ほのかちゃんも入りたいって言ってくれたからこのメンバーになったんだよー」
「ダンジョン発生事故って、6月くらいにあった八王子聖明高校の?」
「そだよー」
「えっ?じゃあ、みんなはまだ、探索者になって3ヶ月くらいしか経ってないの?」
「正確には3ヶ月も経っていませんね。私の誕生日が7月1日なので、みんなそれを待って探索者活動を始めてくれたので」
「探索者登録は、ほのかっち以外は終わらせていたけどね~」
「て事はたった3ヶ月弱でAランクまで駆け上がったのか?」
「お前ら知らなかったのか?」
「えっ?和樹は知っていたの?」
「最近散々テレビやネットでニュースになってるだろ?逆に何で知らないんだよ」
「だって、ニュースとか見ないし〜」
「和樹が知っていた事にビックリよね~」
「いつの間にニュースなんて見るようになったんだよ」
「いや、普通にニュースくらい見るだろ?ていうかお前らも見ろよ!時事ニュースくらい知っとかないといつか恥かくぞ?」
その後もわいわいと賑やかにカレーを食べ進め、混み始めた為お店を後にした。
ご馳走になったお礼を言って、少し離れた場所で物陰に入って、唯佳の転移で雛とほのかを送ってから帰宅した。
美味しいカレーのお店を知る事が出来たので、また今度行こうと思う。
レギュラーサイズなら700円、ご飯大盛り50円、カレー大盛り100円と比較的リーズナブルだったしね。




