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ある日ダンジョン出現に巻き込まれた  作者: 鹿野
2章 目指せSランクパーティー
69/129

#69 諦めの悪い求愛者

 9月15日(日)


 朝から昨日の探索の続きを始めて1時間半、次階層への階段を発見して階段を降りて来た。


「順調に49階層に降りて来られたし、今日中に50階層のボス部屋まで行きたいな」

「そうですね。順調に行けば、もう少し先の階層まで行けると思いますけどね」

「うちには雛ちゃんがいるから大丈夫だよー」

「まっかせなさ〜い」

「そうだな。頼りにしているよ」

「えへへ〜」


 49階層は森と草原が合わさった様な階層だった。


「何だか学校のダンジョンの1階層みたいな感じだねー」

「そうだね~何か懐かしいね~」

「そうですね。とは言っても、まだ2〜3ヶ月前の事なんですよね」

「そう考えると、つい最近なんだよな」


 俺達にとって始まりの場所となった学校のダンジョンの1階層に似た階層を見て、何だか感慨に耽ってしまいそうになっていると、大きなライオンの様な魔物が近くの森から出て来た。


 〘メラゾン〙

 〘ライオンのゾンビ、生者に対する憎悪で生前よりも力と敏捷が大幅に上がってゾンビとして蘇ったライオン〙


 何だかやけにリアル感のある説明がされてるな。

 いつもはこんな感じじゃなかったと思うんだけどな。


 そう思いながらも、みんなに鑑定の結果を伝える。


「何か強そうじゃん!行ってくるね~」


 そう言って雛が影移動で接近し、メラゾンに斬り付ける。


 確かに鑑定の結果を見ると強そうに感じるけど、この階層の魔物だと一撃で倒せてしまうだろうと思っていたのだが、驚いた事にメラゾンは雛の初撃に反応して躱そうとした。


 結果は躱しきれずに大きく傷を負ってしまったものの、光の粒子へと変わる事なく未だに戦闘態勢で立っている。


「おっ?躱された!?やるじゃん!」

「グルルルルルッ」


 雛は攻撃を躱されたのに嬉しそうにメラゾンに話し掛けている。


 一方話し掛けられているメラゾンは、大きく傷を負っているにも拘らず、しっかりと立ち雛に向かって怒りの籠もった唸り声を上げている。


 次の瞬間、メラゾンの方から攻撃を仕掛けた。

 ゾンビでも、人型の最弱のゾンビ以外は走る事も出来るし、ジャンプする事も出来る。


 メラゾンも当然の様に走っているが、そのスピードは想像以上に速い。


 さっき雛の攻撃を躱した時の反応速度も速かったが、走るスピードも速く、あっという間に雛に迫った。


 だが、スピードなら雛も得意とする所、メラゾンのスピードにも顔色一つ変える事なく、カウンターで下から斬り上げ、メラゾンを縦に真っ二つに斬り裂いた。


「いや〜この階層の魔物の割にいい反応してたね~」


 メラゾンが光の粒子へと変わるのを見届け、雛が笑顔で感想を言って来た。


「雛ちゃんお疲れ様ー」

「そうだな。雛の初撃が躱されるとは思っていなかったよ」

「そうですね。この階層の魔物にしては、素早かったですね」

「ゾンビじゃなかったら、春斗っちにテイムして欲しかったくらいには気に入っちゃったよ」

「ゾンビは流石に嫌だもんな...」

「ね~」


 もう従魔はいらないと思っているけど、仮に従魔を増やすとしてもゾンビはない。


「メラゾンって新種か?」

「どうでしょうかね?私は聞いた事がないですけど」

「アタシも知らないよ~」

「私もー」

「まあ、どうせ次階層への階段を見つけるまでに、何体か見つけられるだろうし、その時に倒せばいいか」

「「さんせーい」」

「そうですね」


 それから2時間半、メラゾンを討伐しつつ次階層への階段を探して空を移動しているが、まだ階段は見つかっていない。


「一旦お昼を食べに戻るか」

「「「は~い」」」


 唯佳の転移で支部へと戻ると、専属カウンターで昨日の男性(高校生って言っていたから男子か)が、明日一緒に釣りに行く為に、休みをずらして出勤している可憐さんに話し掛けていた。


「源さん、一緒にお昼に行きませんか?美味い店を知っているから案内しますよ!」

「私が専属に付いているパーティーが戻って来ていないので、食事には行けません。私に構わずお昼に行って来て下さい」


 昨日フラレたにも拘らず、今日もアプローチを掛けているようだ。


「でも、戻って来るか分からないじゃないですか、それなのに待っているなんておかしいですよ!それにもし戻って来たら他の人に対応してもらえばいいじゃないですか!」

「クローバーは毎日お昼を食べに戻って来るので、もし戻って来ないなら、朝の段階でそういう風に伝えてくれますから、今日も戻って来られると思います。それなのに、専属担当が先にお昼を食べに行ってしまうなんて事をしてしまっては、専属失格です」

「毎日お昼を食べに戻って来るって、そのクローバーとかいうパーティーは、毎日転移陣の近くで活動しているんですか?」

「お答え出来かねます」


 いつまでも見ていても仕方ないので、割って入らせてもらう事にした。


「可憐さんただいまです。えっと、いいですか?」

「春斗くん、おかえりなさい。ええ、大丈夫よ。では、クローバーの皆さんがいらっしゃいましたので、場所を空けて下さい」

「くっ!」


 凄い目で睨まれたけど、可憐さんは俺達の専属担当なんだし仕方ないじゃないか。


「可憐ちゃん、これよろしくー」

「はい。預かるわね」

「あっ!そうだ可憐さん、メラゾンっていうライオンのゾンビ知っていますか?」

「ええ、ギリシャのアテネ第一墓地ダンジョンに出て来る魔物ね。世界でそこでしか確認されていない魔物なんだけど、もしかしてここのダンジョンでも出て来たの!?」

「ええ、49階層で出て来ました」

「レアドロップの不死獅子の血液はドロップした!?」

「えっ?ええ、しましたけど...」


 可憐さんが何だか興奮しているみたいだし、他の受付職員さん達も驚いているみたいだけど、そんなに凄いアイテムなのかな?


「ええ、不死獅子の血液は、白血病の特効薬の材料になるアイテムなの、でもレアドロップの中でもドロップ率が低いアイテムな上に、今まではギリシャのアテネ第一墓地ダンジョンでしか取れなかったアイテムだから、値段がとんでもない事になっているのよ。買取額で1個1,000万円の値が付いているわ」

「そうなんですね。じゃあ、新たなドロップ場所が発見されてよかったですね」

「ふふっ金額を聞いてもいつも通りなのね」

「ハハッまあ、オークションで稼いだので」

「それもそうね。それにしても、ここで不死獅子の血液が取れると知られれば、ここのダンジョンに潜ろうと思う探索者も増えると思うわ。そういう意味でもいい発見だったわ」


 一先ず換金を済ませて、可憐さんは支部長にこの事を報告しに行ったので、可憐さんが戻って来るのを待つ。


 そこに、さっきの男子が話し掛けて来た。


「あんたらがクローバーっていうパーティーか?」

「ええ、そうですけど」

「俺はEランクパーティー蒼い激流の北条ほうじょう 総司そうじっていうんだけど、よかったら一緒に昼飯でもどうだ?」

「どうだ?と言われても、ほぼはじめましての方にいきなり食事に誘われても...」


 正直困る。

 狙いが可憐さんだというのが分かっているだけに、尚更OKし辛いというのもある。


「あのさ~可憐姉とお近付きになりたいのは分かるけど、可憐姉のいない所でコソコソすんのはどうかと思うよ?」

「しかも、はっきりフラレている所も見ていますし、私達が勝手に同席を許可する事は出来ません」

「ごめんなさい」

「なっ!?見ていたのか!?」

「ええ、昨日のもさっきのも見ていました」


 北条さんは、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 あれだけ派手にアプローチしておいて、何を今更と思うけど、本人はそんなに目立っていないと思っていたのだろうか?


「お待たせ、お昼にって、どうかしたの?」

「いえ、彼がお昼を一緒に食べないかと誘ってくれたんですけど...」

「ああ、北条さん、昨日もお伝えしましたが、17歳のあなたは私の恋愛対象外です。お気持ちは嬉しですが、どうかこれ以上はお止め下さい」


 可憐さんは昨日と同じ様に北条さんに付き合う気がない旨を伝えた。


「俺は諦めませんから!」


 北条さんはそう言うと、走ってその場を去って行った。


「これだけはっきりと断っているのに諦めないって...」

「可憐姉モテるのも困りもんだね~」

「もう、他人事だと思って...」

「まあ、取り敢えずいつもの中華屋さんに行きましょうか」

「そうね。この辺のお店に入って、彼に会うのも気不味いし、そうしましょう」


 という事で、地元のいつもの中華屋さんに移動した俺達は、慣れ親しんだ味を堪能して、鋸南町ダンジョンに戻った。


 食事の時に、女子達が可憐さんに聞いていた話が聞こえた感じだと、可憐さんは今は恋愛に興味はなく、好きな人もいないらしい。


 ただ、今は好きな人はいないと言った可憐さんの顔は寂しそうで、誰かの事を考えている様に見えたのは見間違いだったのだろうか。

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