#68 他人の告白現場を初めて見ました
「海鮮丼美味しかったねー」
「ホント!新鮮で最高だった~」
「漁港の所にあるお店でしたから、新鮮なのでしょうね」
保田漁港近くのお店で、海鮮丼を食べて来たのだが最高に美味しかった。
やっぱり鮮度って大事なんだなと思ったよ。
お昼ご飯を食べ、戻って来た45階層を攻略するべく、雛の勘に頼って空を進んで行く。
30分くらい進んだ所で雛が止まった。
「ここら辺を探してみよう。外れていてもいいんでしょ?」
「ああ、勿論。闇雲に1軒1軒見て行くよりも、雛に任せる方が効率いいって実績があるんだし、外れても気にしないよ」
「そうですね。みんなで話して決めたやり方ですから、雛さんに責任を負わせたりはしません」
「そだよー」
外れても雛に責任はない事を確認して、雛が指示した区画を探索して行く。
「この区画にはないみたいだな。雛、次を頼む」
「は~い」
それから1時間半を掛けて3カ所探索してみたが、次階層への階段は見つかっていない。
「ないな。次に行くか」
「ちょっと待って。あそこが気になるんだけど」
雛が指差す先にあったのは本棚だった。
今いるのは何かのお店の奥で、店長室かオーナー室の様な部屋、他の部屋よりも立派な造りになっていて、その本棚も立派な物だった。
「その本棚がどうかしたのか?」
「何か違和感ない?ここの本とかさ〜」
そう言って雛が1冊の本を手に取ろうとして手前に引いた途端、本棚が奥に開き、階段が姿を現した。
「おー!階段だー!」
「雛さん、何で判ったんですか?」
「う〜ん、何か他の本に比べて手前に出てる気がしたんだよね~」
「全然気付かなかった...」
その本棚はさっき俺が見ていたのだが、何も違和感は感じなかった。
「流石雛ちゃんだねー」
「そうですね。頼りになりますね」
「ああ、凄いわ」
「えへへ〜」
みんなで雛を褒めながら階段を降りて行く。
降りて来た46階層は広い草原の様な階層だった。
「草原ですね」
「草原だねー」
「草原だな」
「草原に出て来るアンデッドって何かな~?」
「あそこに見えているのがそうなんじゃないか?」
視線の先には、リビングアーマーでも45階層から出て来たゴーストでもない魔物がいる。
「鎧を着たガイコツ?」
「骸骨武者っていう魔物らしいぞ」
「今度は和風の魔物だねー」
「骸骨武者は、ゴーストやリビングアーマー等と同じく、他のダンジョンでも確認されている魔物ですね」
「じゃあ、ドロップアイテムは持って行かなくてもいいねー」
「なら、さっさと次階層への階段を見つけて、先に進んじゃおっか〜」
「ああ、そうしよう」
新種の魔物じゃないのなら、わざわざ戦う必要はないので、さっさと次階層を目指す事にした。
魔物達の頭上を移動する事30分、次階層への階段を発見した。
「近くにあってよかったな」
「そうだね~移動だけだと飽きるしね~」
「そうですね。楽ではあるんですけどね」
「そだねー」
こう言ってはいるが、雛と雪兎は偶に下に降りて行って、魔物を倒したりしていた。
このくらいの階層なら問題ないから別にいいのだが、雛の戦闘狂が雪兎にも伝染っていないか若干心配だ。
47階層は洞窟型の階層で、目の前にはじめましての魔物がいる。
「何でアンデッドエリアにゴーレムがいるん?」
「ゴーレムって生きてないからアンデッドにならないんじゃないのー?」
「私もアンデッドエリアにゴーレムがいるなんて、聞いた事がないですね」
「こいつは腐乱ゴーレムっていう、アンデッドと土を素材に造られたゴーレムらしい」
「うげ〜趣味悪〜」
「取り敢えず、浄化ー」
唯佳の浄化を浴びた腐乱ゴーレムは、光の粒子へと変わって行った。
「浄化は効くんですね」
「そうみたいだな。雛、先頭を頼めるか?」
「オッケ~なる早でこの階層は抜けたいね~」
「祈っとくねー」
「私もお祈りします」
当然俺も祈る。
こういう時ってホントに効果あるんだよな~
「よ〜し!行こ〜!」
「「「おー!」」」
階段を出た雛は、最初の横道を左に曲がり、突き当りのT字路も左に曲がった。
「あった〜!」
「やったー!」
あっさりと次階層への階段が見つかった。
「俺達の攻略スピードが速い理由は、どう考えてもやっぱ雛だよな」
「間違いないですね」
「雛ちゃんのお陰だねー」
「えへへ〜今日はいっぱい褒められるな~」
「キュッキュッ!」
「おっ?雪兎っちも褒めてくれるん?ありがと〜」
「パオ!」
「アハハ、エレンっちもありがとね~」
この階層での戦闘は最初の腐乱ゴーレムと骸骨武者の2回だけだった。
「腐乱ゴーレムは新種っぽいし、レアドロップまで取ってから先に進もう」
「そっか〜新種だからそれがあったのか〜」
「折角早く階段あったのにねー」
「残念です...」
落ち込む3人を励ましつつ、30分くらい狩りを行って、腐乱ゴーレムのレアドロップまで取ってから48階層へと降りた。
「腐乱ゴーレムのレアドロップがゴーレムコアⅣだって知っていたなら、ムリに取りに行かなくてもよかったのに~」
「悪かったよ。思い付かなかったんだって...」
「仕方ありませんよ。全員失念していたんですから」
「そだねー。冷静に考えれば、ゴーレムなんだからレアドロップはコアだよねー」
「あっ!別に春斗っちに文句言ってる訳じゃないんよ」
まあ、今回は俺のミスだし文句を言われても仕方ないと思っているのだが、雛の愚痴は俺に対しての物ではなかったらしい。
気を使われただけだと思うが...
取り敢えず、反省してミスは繰り返さない様にしよう。それが大事な筈だ。
降りて来た48階層は、荒野の様な大地が広がる階層だった。
「今度は荒野か」
「色んな種類の階層が見れて楽しいけど、いるのがアンデッドなのが残念なんよね~」
「そだねー」
「見た目には楽しいエリアなんですけど、残念ですよね」
3人が愚痴を溢しながら荒野の空を行く。
「あれがこの階層から出て来た魔物か」
「どれが本体でしょうか?」
「あの人型のガイコツ何じゃない?」
「ぽいよねー」
俺達の視線の先にいるのは、2頭?の骨の馬に曳かれた台車?の上に人型の骸骨がいて、手綱を握っている魔物。
台車?の車輪には、左右共にゴツい槍の穂先の様な刃物が付いていて、掠るだけでも危なそうだ。
「チャリオットっていう魔物らしい」
「チャリオット?どういう意味なん?」
「確か戦車って意味だったと思うよー」
「古代ギリシャやエジプト、ローマ等で使われていた2輪の戦車の事ですね。中国でも使われていました。」
「なるほど〜取り敢えず、あの人型のガイコツ斬って来るね~」
雛はそう言って近付くと、本体と思われる人型の骸骨の頭を斬り砕いた。が、チャリオットは光の粒子には変わらず動き続けており、砕かれた頭も復元している。
「えっ!?これが本体じゃないん!?」
雛が驚きの声を上げている。
俺も人型の骸骨が本体だと思っていたよ。
「キュッ!」
俺達が驚いている内に、雪兎が2頭の馬の内の左側の馬に攻撃を仕掛け、胴体を真っ二つにしたのだが、人型の骸骨同様すぐに復元してしまった。
「人型の骸骨でも、馬でもないのか?それとも右側の馬なのか?」
「右の馬に攻撃してみます。コンプレッションファイアー」
ほのかのコンプレッションファイアーで、右の馬が粉々になったが、やはりすぐに元通りに戻ってしまった。
「うわー元に戻っちゃったー」
「魔物の名前がチャリオット...もしかして、あの台車じゃなくて、戦車が本体なのか?」
「その可能性はありますね」
「試して来る」
俺はそう言って、瞬歩で魔物に近付き戦車部分を真っ二つにした。
その瞬間、魔物は光の粒子へと変わって行った。
「お〜!倒せた〜!」
「春くん、えらーい」
「春斗くんの言った通り戦車が本体だったんですね」
「ああ、当たっていてよかったよ。もし違ったら、もう何が本体なのか分からなかったからな」
「そうだね~そうなったら、唯佳っちの浄化しか対抗出来ないとこだったね」
「対抗手段があるだけいいけどな」
「そうですね。そうじゃないと私達は兎も角、他の探索者は撤退するしかなくなってしまいますからね」
「取り敢えず、レアドロップまで取って行きたいから、チャリオットは倒しながら階段を探そうか」
「「「は〜い」」」
空を駆け、空でも襲って来るゴーストを倒しつつ、チャリオットを見つけては攻撃を仕掛け、次階層への階段を探して行った。
因みに、ゴーストにも物理攻撃は通用する。
個体によって場所は変わるのだが、核の様な物があって、それを攻撃出来れば倒せるのだ。
ただ、核は無色なのでなかなか目視出来ないのが厄介なので、唯佳の浄化で倒してもらうのが手っ取り早い方法である。
2時間くらい探索してみたのだが、49階層への階段を見つける事は出来なかった。
「時間的に今日は終わりにしようか」
「「「は~い」」」
「キュッ!」
「パオ!」
支部に戻り専属カウンターに行くと、1人の男性が可憐さんに片膝を付いて花束を差し出していた。
「あれって、可憐姉告られてんじゃん!」
「おー!告白現場初めて見たー」
「告白って言うよりプロポーズっぽくないか?」
「かれんさんには、恋人はいないと聞いていますが...」
少し離れた場所で足を止めた俺達が、そんな事を言っていると、可憐さんが動いた。
「ごめんなさい。お気持ちは嬉しいですが、受け取れません」
どうやら男性は玉砕してしまった様だ。
「何故ですか!?」
「17歳は許容範囲外です。と言うより年の離れている方は恋愛の対象外なんです。ですから、諦めて下さい」
どうやら男性は高校生だったらしい。
可憐さんは28歳だし、男性からしたら厳しい戦いだったな。
肩を落としてその場を去って行く男性に同情しつつカウンターに行き、換金をしてもらった。
「可憐ちゃん、換金お願いしまーす」
「みんなおかえりなさい」
「可憐姉モテるね~」
「誂わないの。雛ちゃん達の方がモテるでしょ?」
「山中湖でも、かれんさんを好きだって言っている方を知っていますよ?」
「あら、そうなの?でも、今は恋愛はいいかな~」
「そうなんですか?」
「ええ」
何だか寂しそうな表情を浮かべた様に見えたけど、気の所為かな?
それ以上、可憐さんの恋愛の話にはならず換金も終わりそれぞれの家路に就くのだった。




