#67 新たな防具
9月14日(土)
「おはよ〜」
朝のウォーキングを終え、付き合ってくれた女子3人がシャワーを浴びに行ったので、待っていようとリビングに移動し、朝食の支度をしているばあちゃんと母さんズ、手伝っていた紗奈さんに挨拶をする。
可憐さんはまだ寝ている様だ。
「唯佳ちゃん達はお風呂?」
「うん。シャワー浴びに行ってるよ」
「明後日もダンジョンに行くのよね?」
「うん。その予定だけど、何か用事でもある?」
「紗奈ちゃんと海釣りに行こうって言ってるんだけど、あなた達も一緒にどうかと思って」
「海釣りか〜ちょっと興味あるな~」
「そう?なら、唯佳ちゃん達にも聞いてみるわね」
「うん。唯佳達なら行くって言いそうな気がするよ」
「何処にー?」
ばあちゃんと話をしていると、背後から唯佳の声がした。
「ん?明後日、海釣りに行かないかって誘われてるんだけど、どうする?」
「行きたーい!」
「アタシも釣りしてみた〜い」
「いいですね。偶には遊びに行きたいですもんね」
「じゃあ、決まりね」
「若洲海浜公園なら、車で行けるし道具もレンタル出来るから手ぶらで行けますよ」
「手ぶらで行けるのはいいわね。そこにしましょうか」
「「「「はーい」」」」
「紗奈さん、若洲海浜公園って何処ですか?」
「ああ、場所は葛西臨海公園の近くよ」
「夢の国の近くか、唯佳、ちょっと夢の国まで転移で連れてってくれるか?」
「いいよー」
俺は唯佳に夢の国まで転移してもらった。
そこから少し歩いて移動して、葛西臨海公園の観覧車が見える所までやって来た。
「唯佳、今度はあの観覧車の所まで頼む」
「はーい」
そう言って転移して来たのは観覧車のゴンドラの上だった。
「えっ?観覧車の上!?」
「観覧車の下の方は見えなかったからー」
いや、確かにその通りだけど...観覧車が止まってる時間でよかった。
スマホで若洲海浜公園の方向を確認して唯佳に転移してもらい、また確認して転移してもらうを何度か繰り返し、若洲海浜公園の入口に着いた。
「唯佳ありがとう。これで明後日少しゆっくり出来るな」
「そだねー」
「じゃあ、帰ろうか」
「はーい」
唯佳の転移で家に戻って、明後日は唯佳の転移で行ける事を伝えて、シャワーを浴びに行った。
朝食を済ませ、自分達の個室に移動して着替え、紗奈さんと別れ可憐さんと一緒に鋸南町ダンジョンに移動して来た。
「それじゃあ、気を付けて行って来てね」
「「「「はーい」」」」
可憐さんと別れ、43階層のお城の中に転移して来た。
「よし、行こうか」
「「「はーい」」」
「キュッ!」
「パオ!」
土魔法の壁を退けてもらい、雛を先頭にして進んで行く。
2階に謁見の間があったものの、次階層への階段はなく、城内の探索を続けて行く、1時間半くらい経った頃、個室の窓からお城の敷地の外に階段が見えた。
「みんな、あれじゃないか?」
「えっ?あっ!階段あるじゃん!」
「お城の中じゃなかったんだー」
「こんな目立つ建物があったら、ここにあると思ってしまいますよね」
「ホントだよ~もう!紛らわしいんだから〜」
「まあ、見つかったんだし良しとしよう」
「そだねー」
「では、ここから飛んで行きましょうか」
「「さんせーい」」
ウィンドアーマーを掛けてもらい、窓から飛び出して次階層への階段にそのまま突っ込んだ。
44階層は砂漠の町とピラミッドが見える。
「砂漠って事はミイラかな?」
「そうかもな」
「ピラミッドも見えるしねー」
「強そうなイメージはないですけど、44階層に出て来るような魔物なんでしょうか?」
「確か他のダンジョンで出て来るミイラは、30階層台で出て来た筈だから、そんなに強い魔物ではない筈なんだけど、でも、砂漠のアンデッドって、ミイラ以外思い浮かばないんだよな~」
「取り敢えず、進んでみましょうか」
「「はーい」」
空を駆け、町の上空までやって来た。
途中、トーテラッテやリビングアーマーは見掛けたものの、いる筈のもう1種類の魔物の姿は確認出来ていない。
「もう1種類見つかんないねー」
「そうだね~」
「やっぱり、あのピラミッドの中にいるのでしょうか?」
「そうかもな~それにしても寒いな」
「そだねー」
「防寒着持ってくればよかったよ~」
「夜の砂漠は気温が下がると言いますからね」
俺と唯佳、雛の声が震えているのに対し、ほのかはいつも通りだ。
「ほのかっちのその腕輪、こういう時にホントに便利だよね~」
「私も新しく買おうかなー」
「確かに、温度調節機能付きの防具に変えるのはありだな」
「そうですね。この腕輪なら、今着ている防具と併用も可能ですから、いいかもしれませんね。私も腕輪以外の防具を新調したいと思っていたので、今から行きませんか?」
「「さんせーい」」
「じゃあ、行こう!寒くて駄目だ」
俺達は早速、八王子のいつものお店に転移して、ほのかと同じ賢者の腕輪を購入、更に防具自体も今身に着けている中級者用の物から、上級者様の物へと買い替える事にした。
俺はアイスマンモスの革鎧を買い、今まで装備していたサラマンダーの鱗鎧と融合した。
唯佳は光蜘蛛のドロップアイテムである光糸製の光糸のワンピースを買い、今まで装備していた聖糸のワンピースと融合。
雛はアンキロサウルスの革鎧を買い、今まで装備していた虹色装束と融合。
ほのかはエルダーリッチのローブを購入した。
融合後のそれぞれの特徴はこうなった。
〘炎と氷の革鎧〙
〘炎耐性と氷雪耐性を併せ持つ革鎧。耐久にかなり大幅にプラス補正〙
〘聖女のワンピース〙
〘白坂 唯佳専用防具〙
〘魔法耐性。光魔法の効果に大幅にプラス補正〙
〘アンキロサウルスの虹色装束〙
〘レインボーカメレオンの特性を併せ持つ、アンキロサウルスの革製の忍装束。周りの景色に合わせる迷彩仕様。耐久にかなり大幅にプラス補正〙
〘エルダーリッチのローブ〙
〘エルダーリッチの素材で作られたローブ。魔力に大幅にプラス補正〙
かなりいい装備になったと思う。
融合する前でも、今回購入した装備はいい物だった。
まあ、お値段も1人500万円程したので、いい物じゃなきゃ困るのだが、更に融合した事でよりよい物になったと思う。
その証拠に、偶々お店にいて融合するところまで見届けていた柏木さんが物凄く興奮している。
そんな柏木さんを置いて、他の店員さんに挨拶をして鋸南町ダンジョンの44階層に戻って来た。
「お〜!寒くな〜い」
「ホントだーあったかーい」
「全然違うな~これならちゃんと戦えるな」
「私も漸く初心者用装備から卒業です」
「ほのかは何で今まで初心者用装備だったんだ?」
「必要性がなかったからとしか...」
「まあ、この賢者の腕輪で事足りちゃうもんね~」
「ええ、ですが、その事を知った母からいい加減初心者用装備は止めてほしいと言われまして、自社製品を信頼してはいても、見ていて怖さはあったそうなんです」
「そう言われると確かにー」
「あと、低ランクの間はいいですけど、Aランク探索者になっても初心者用装備でいられると、ダンジョン関連企業の会長の娘としてどうなんだというのもありまして...」
「涼子さん的にはそういうのも気になるよな」
「ええ、ですからどっちみち、近々買い替える事になっていたんです」
会長令嬢もなかなか大変な様だ。
「さて、防寒対策も終わったし、あのピラミッドにでも行ってみるか?」
「行ってみた〜い!」
「私もー」
「先に急ぐばかりではなく、偶には観光でもして行きましょう」
「「お〜!」」
いや、観光って...でもこのくらいの階層だったら、強ち間違ってもいないか。
ピラミッドまで移動して入り口から中へと入って行く。
中にいたのは包帯でぐるぐる巻になっているミイラの様な魔物、鑑定してみた結果。
〘マミー〙
〘ミイラの上位種〙
とだけしか判らなかった。
「ミイラの上位種らしいけど、鑑定でもそれしか分からなかった」
「まあ、この階層の魔物なら余裕っしょ」
そう言うや否や、雛が斬撃を飛ばしてマミーを討伐した。
「やっぱりこの階層の魔物なら、楽勝だね~」
「まあな、でも油断禁物だぞ?」
「分かってるって」
「雛?煮干しだけは辛いぞ?」
「ほ、ホントに気を付けます...」
「私も気を付けるー」
「そうですね。私達3人も煮干しにリーチが掛かった状態ですから、気を付けて行きましょう」
「「はい!!」」
女子3人は昨日、景色に見惚れて魔物の接近に気付くのが遅れた事がバレて、次に油断したら煮干しだけのおかずが待っている。
「春くんがバラしたからなんだよ?」
「凄い他人事みたいに言ってるけど、春斗っちがバラさなければアタシ達が怒られる事はなかったんよ?」
また、声に出してしまっていた様だ。だが、今回は俺は悪くない。
「いやいやいや、俺は悪くないだろ?俺がやらかした時はお前らだってバラすんだし」
「そうですね。春斗くんの事は責められませんね」
「「うっ!」」
反論出来なくなった唯佳と雛を連れてピラミッドの中を進んで行く。
「今度はちゃんとピラミッドの中に45階層への階段あるかなー?」
「どうだろうな?何とも言えないけど、探索してみるしかないだろ?」
「そうだね~さっきのお城みたいに窓とかもないし、外見えないしね~」
「そうですね。でも、私達はこういう風に探索らしい探索は、あまりせずにここまで探索者活動をやって来ましたから、ちょっと楽しいですね」
「分かる~ドキドキワクワクするよね~」
「そだねー」
雑談をしながら遭遇した魔物を倒し、どんどんピラミッドの奥へと進んで行くも、次階層への階段は見つからず、最奥の間に到達してしまった。
「どうやらここが1番奥の様ですね」
「そだねー」
「結局、階段なかったね~」
「そうだな」
2時間半くらいピラミッドの中を探索して辿り着いた最後の部屋だったが、残念ながら次階層への階段はなく、石棺が1つ置いてあるだけだった。
「あの石棺はどうする?開けてみるか?」
「ちょっと不気味だよね~」
「そだねー」
「そうですね。死者に対する不敬だと感じますしね」
散々アンデッドを倒して来たのに、何を今更と思いはするが、動いているアンデッドと死者を埋葬する為の棺では感じ方が違うのかもしれない。
俺にはない線引きだが、理解は出来る。
「そうは言っても何かあるかもしれないし、開けて確認した方がよくないか?」
「じゃあ、春くん開けてみてー」
「うん。春斗っちに任せた!」
「春斗くん、お願いします」
「分かった。じゃあ、開けるな」
そう言って、躊躇う事なく石棺の蓋を外した。
中にあったのは1つのボタンだった。
「ボタン?」
「春く〜ん、何が入ってたのー?」
「ん?ボタンが1つあるだけだ」
「春斗っち、何のボタンなの?」
「分からない」
「説明とかも書いてないですね。押してみるしかないでしょうか?」
「「えっ?押すの!?」」
ほのかの発言に唯佳と雛が驚いた反応を示す。
「まあ、過去にダンジョンで罠は確認されていないし、押してみても問題はないと思うけどな」
「そうだけど、怖いよー」
「なら、全員で一塊になってボタンを押しましょう。そうすれば、1人1人バラバラになる事はないでしょうし」
「さんせーい」
そう言って3人が俺にギュウッとくっついて来た。
「じゃあ、ボタンを押すぞ?」
「「「は~い」」」
「キュッ!」
「パオ!」
こういう風にみんなでくっつく時に、何故か俺が中心になるのだが、もう慣れたので何も言わずに幸せな感触を楽しみながら、石棺の中のボタンを押した。
すると目の前の壁が動いて階段が現れた。
「おー!階段が出て来たー」
「おもしろ〜い!」
「どうやら次階層への階段みたいですね」
「取り敢えず、降りてみよう」
「「「は~い」」」
幸せな感触から解放され、目の前に現れた階段をみんなで降りて行くと、古いヨーロッパの街並みが見えて来た。
俺達は一先ず転移陣で支部へと戻り、昼食を摂ってから探索を再開する事にした。




