#60 雛のパワーアップ系スキル
9月5日(木)
「みんな久し振りね」
「あ~!可憐姉だ〜」
「かれんさんお久し振りです」
「可憐さんお久し振りです。夏休みは楽しめましたか?」
「ええ、久し振りに友達と会ってリフレッシュ出来たわ」
放課後、いつも通り山中湖支部のカウンターに行くと、夏休みが終わった可憐さんが、満面の笑顔で出迎えてくれた。
唯佳は朝、紗奈さんと一緒に可憐さんの事も転移で送って来ているので会っているけど、それ以外のメンバーは久し振りに顔を合わせた。
「私は朝会ったもんねー?」
「そうね。いつもありがとうね。そういえば、最終エリアの大広間型の階層を攻略したんですってね。凄いじゃない!」
「「えへへ~」」
「さなさんから、大広間型の階層があるダンジョンは、その階層を攻略出来ないせいで、全然攻略が進んでいないと聞いていたので、攻略出来て先に進めてよかったです」
「大広間型の階層を攻略したなんて話は聞いた事がないもの、それをあっさり攻略して先に進んだなんて凄い事よ?」
「うちのパーティーは雪兎とエレンもいますし、雛の分身の術もあって、一般的な他のパーティーと比べると、人数が倍くらいいますからね」
「確かに人数が多いのはアドバンテージになっているでしょうけど、それ以上にクローバーだからこそだと私は思うわよ」
「でも、AランクパーティーやSランクパーティーの宵闇なら、ここの55階層くらい攻略出来ませんか?」
「宵闇や一部のAランクパーティーなら出来るかもしれないけど、それでもホントに極一部のパーティーだけだと思うわよ」
「そうなのー?」
「ええ、複数のパーティーが合同で攻略に当たれば、Aランクパーティーなら攻略出来るでしょうけど、単独パーティーでとなると、ホントに少ないでしょうね」
「でも、攻略出来るパーティーがいないわけではないんですよね?では、何故攻略してしまわないのでしょうか?」
「理由は様々でしょうけど、1番の理由は本拠地としているダンジョンを攻略する事に集中しているからでしょうね」
「なるほど、確かに自分達がいつも潜っている所を優先したい気持ちは分かりますね」
可憐さんと久し振りに会ったせいか、雑談が長くなってしまった。
可憐さんに見送られ、56階層へと転移して来た俺達は、昨日の最終地点から攻略を開始した。
「人間に尻尾が生えてるのって、何回見てもオモロイね~」
雛がそんな感想を言いながら、白坊主に斬り掛かる。
雛は、近接組の中では唯一、一撃で倒せないのだが、色々な忍術を使いながら魔物を翻弄し、混乱を齎しながら討伐している。
「おっ!剣術のレベルが上がった~」
「おー!おめでとう。雛ちゃん」
「雛さん、おめでとうございます」
「これで雛の剣術もMAXになったな」
1時間程攻略を進めていると、雛の剣術レベルが上がり、MAXになった。
更に20分後には、次階層への階段も見つかり、順調に攻略が進んで行く。
「今日はいい感じで進んでいるねー」
「そうだね~次の階層も近くに階段があればいいね~」
「雛さんが祈れば叶うのでは?」
「雛、試してみてくれるか?」
「流石にないでしょ。まあ、祈ってみるけどさ」
そんな感じでわいわいと階段を降りて行く。
「ほら、流石にないでしょ?」
「なかったねー」
「残念ですね」
「そうだな」
降りて来た57階層の造りは、他の階層と同じ様な通路型の階層だった。
階段から出た所は正面に伸びる通路と左に行く通路があり、正面の通路には次階層への階段は見えていない。
「でも、まだ左の通路があるから分からないよー」
「そうですね。諦めるのは早かったですね」
「そうだな。雛が幸運の女神だと証明する為に、階段から出て左の通路を確認してみよう!」
「「おー!」」
「何でそんなにアタシを幸運の女神にしたがるん?」
階段前にいた魔物を倒し、左の通路を確認すると、すぐにT字路になっていて、その先は確認出来なかったが、T字路までの間には次階層への階段はなかった。
「雛、どっちに進む?」
「左!」
「じゃあ、左の通路を近接組で殲滅、正面通路の魔物は、唯佳の結界で止めつつ後衛組に任せる」
「「「はい!」」」
「キュッ!」
「パオ!」
雪婆の数が多く厄介かと思ったが、近接組が影移動や瞬歩で内側まで移動してから戦闘を始めると、魔物達はこれまでの階層と同じく混乱し、他の魔物も巻き込む様に、範囲攻撃を仕掛けて来てくれた。
雪婆は、氷雪魔法に対して耐性があったが、この階層から出て来た食わず女房という、ヘビの魔物も含め、他の魔物にはダメージを与えてくれるので有り難い。
俺達は、魔法でダメージを受ける前に魔法の範囲から離脱すればいいので、ダメージを受けるのは魔物だけで俺達は無傷、更に混乱も深まるのでいい事ずくめである。
5分くらいで魔物を殲滅した俺達は、雛を先頭に左の通路を進んで行った。
「雛ちゃん、やっぱり雛ちゃんは凄いね!」
「やっぱり雛さんは幸運の女神ですね」
「.....」
T字路まで来た俺達の目の前には、次階層への階段があった。
「と、取り敢えず降りようか?」
「そうですね」
「はーい」
「...うん」
信じられないといった表情を浮かべる雛の手を引き、階段を降りて行く。
58階層も通路型の階層ではあったのだが、天井が高く幅も広い、理由はもう見えている魔物、デイラボッチという大きな魔物の為だろう。
「デイラボッチとは、全国的にはだいだらぼっちという呼び名で知られている妖怪ですね」
「おっきいねー」
「土魔法を使って遠距離攻撃もして来るみたいだし、見た目通りパワーと耐久もあるみたいだから気を付けて対応してくれ」
「分かった!斬って来るね!」
「えっ?」
そう言うやいなや、雛がデイラボッチに接近して斬り掛かった。
「お前達が幸運の女神ネタで弄るから、ストレスが溜まっていたんじゃないか?」
「春斗くんも、人の事は言えないですよ?」
「うん。みんなで反省しようね」
雛が、デイラボッチを切り刻んで行くのを見ながら、俺達3人は反省しようと話し合った。
雛は、俺達の見ている前でデイラボッチを一刀両断にして見せた。
「「「えっ!?」」」
「ヘッヘッヘ〜パワー系のスキル覚えた~」
どうやら、以前から欲しがっていたパワーアップ系のスキルを覚えたらしい。
「随分とタイミングいいな...」
「そうですね...」
「雛ちゃん、何てスキル覚えたのー?」
「アクセラレーションっていうスキルだよ~」
「アクセラレーション?聞いた事がないスキルだな」
「うちのパーティーでは、その点に関してはもう、驚きの対象ではないですね。それで、具体的には、どういった効果があるのですか?」
「攻撃時の加速度を3倍に出来るんだってさ~」
「加速度を3倍?それで、威力はどのくらい上がるんだ?」
「わっかんな〜い」
俺と雛には、ちょっと難しかったみたいだな...
「物理の問題ですね。加速度は力に比例するので、加速度3倍なら威力も3倍になると考えてもいいのではないかと思います」
「うんうん。いいと思うー」
「お〜!すごいじゃ〜ん!そっか、攻撃スピードが3倍って事だもんね」
「少し違うんですけどね...」
ホントに凄いな。分身体も使えるだろうし、一気に攻略が進むかもしれないな。
「身体への負担は問題ないのか?」
「うん。さっき使った時は問題なかったよ」
「じゃあ、先に進もうか」
「「「は~い」」」
雛の分身体も含めた近接組5人が、一撃で魔物を倒せる様になった事で、移動スピードが格段に上がった。
そのお陰なのか雛のお陰なのかその両方なのかは分からないが、2時間半くらい攻略を進めたら、次階層への階段に辿り着いた。
「今日ヤバいね」
「ねー。今日だけで2階層降りれちゃったねー」
「戦闘で苦戦する訳でもないし、さっさと先の階層に行けるのは有り難いな」
「そうですね。普通は、レベル上げをしながらゆっくり攻略を進めないといけませんから、次階層への階段を見つけても、すぐに降りたりは出来ませんからね」
「そうだね~アタシ達はスキルに恵まれてるから出来てるだけだもんね~」
「うん。でも、だからこそ無理しないで慎重に進もうね?」
「そうだな。気を付けよう」
俺達は、基本的にここまで苦戦らしい苦戦をした事がない。
強いて挙げるならダンジョンの気まぐれの時のマーダーグリズリーくらいだろうか?あの時も、俺が油断していなければ苦戦とは言えなかったかもしれないけど...
「取り敢えず、時間的に今日は59階層を見るだけ見て帰ろうか」
「「「は~い」」」
59階層を覗いた俺達は、全員が1体ずつ試しに戦ってみて、掛かっても2回の攻撃で倒せる事を確認して、支部へと転移で戻った。
因みに、雪兎も昨夜の内にレベル9に上がっていたので、今日から魔石1個だけの生活が始まりました。
名前:桃井 雛
年齢:16歳 誕生日:5月5日
Lv:34
MP:242/242
力:297
耐久:269
敏捷:328
器用:234
魔力:169
運:93/100
スキル:レア率固定、剣術Lv9⇒MAX、忍術Lv5、アクセラレーション(New)
※レア率固定効果
ドロップアイテムのレア率がパーティーで倒した魔物の数の1割で固定される
名前:雪兎
種族:風雷雪うさぎ
主人:黒木 春斗
Lv:8⇒9
スキル:突進、氷雪魔法、瞬歩、風魔法、剛力、纏雷、凍結




