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ある日ダンジョン出現に巻き込まれた  作者: 鹿野
2章 目指せSランクパーティー
53/129

#53 まだまだ遠く

 52階層に降りて来たが、景色がガラッと変わっている訳でもなく、新鮮味のない通路と魔物が見えるだけだ。


「あっ!おばあさんがいるよー」

「おばあさん?えっ?何処?どこにいるの?助けなきゃじゃん!!」

「落ち着いて下さい雛さん。おそらくですけど、魔物です。」

「えっ!?でも、ホントにおばあさんだったらまずいじゃん!?」

「雛、ここまで来れるおばあさんなら、助けはいらないんじゃないか?ここ、ダンジョンの52階層だぞ?」

「あっ!そうだった」

「雛ちゃんはいい子だねー」

「唯佳っちだって見間違えたくせに〜」

「見間違えてないよー。ほらー」

「えっ?あっ!ホントにいるじゃん!!」

「あれは糸絡いととむじなではないかと思います」

「ああ、ほのかの言う通り、糸絡り狢で合ってる」

「「糸絡り狢?」」

「山梨県で伝承のある妖怪です。あのおばあさんは本体ではなく、本体は横に浮いている2つの青い炎のどちらからしいです」

「そうなのー?射ってみるねー」


 唯佳がそう言って矢を射った。

 だが、射られた矢は、糸絡り狢の作り出したと思われる老婆に、掴み取られてしまった。


「「「!?」」」

「糸絡り狢の伝承は山梨以外に岩手の方にもある様なんですけど、そちらの伝承では、弓の名手の矢を掴み取ったという話がありました。恐らくは、そちらの話も合わさってるのではないでしょうか」

「それじゃあ、私は役に立てないよー」

「ですが、岩手の伝承では、弓は苦手で読書好きの人が、〝将を討たんとするならまず馬を射よ〟という言葉を思い出して、老婆が矢を掴むと同時に炎を射ったら倒せたそうです」

「おー!やってみるー」


 ほのかの話を聞いて、唯佳が2射連続で射ると、1射目は掴まれたものの、2射目が見事に炎を射抜き、糸絡り狢は光の粒子へと変わって行った。


「やったー」

「どうやら当たりを引いたらしいな」

「唯佳っち、やる〜」

「伝承通りの様ですね。魔法はどうなんでしょうか?」

「試してみるしかないな」

「そうですね」


 検証の結果、ほのかとエレンの魔法も、1発目は老婆に防がれるものの、2連続で放った2発目は止められる事なく炎に当てる事が出来た。


 ただ、2人のコンプレッションファイアーは相手も炎だからか、効き目はいまいちどころか、効いていなさそうであった為、他の魔法を色々と試した。


 結果、1番効き目があったのはやはりと言うべきか水魔法だった。

 まあ、火には水だよね。


 特に新たに創造した〝留まる水流〟は、発動場所を任意で決められる為、炎の所に直接発動させられ、老婆に止められる事もないので、効率がよかった。


 因みに、魔法名が日本語なのは、英語だと微妙に長いかららしい。


 スマホで訳したら、リンガーリングウォーターフローと表示された。

 確かに微妙に長いな。


 近接組も試してみたけど、やはり一撃目は老婆に止められてしまった。


 だが、連続で斬り付けると、2回目の攻撃は通った。


 そこで当たりを引ければ、耐久は低いらしく一撃で倒せるのだが、ハズレを引くと、3回目の攻撃はまた止められてしまった。

 しかも、ハズレを引くと当たりとハズレがシャッフルされるらしく、当たりを引くまでそれが繰り返された。


 だが、雛はハズレを引かずに正解を当てまくっていたし、俺は武器の能力のお陰で、3ヶ所同時攻撃が出来る為関係なし、なので効率を考えて、俺か雛が糸絡り狢に対処して行く事に決まった。


「さて、戦い方も決まった事だし、先に進むとしようか」

「「「は~い」」」


 この階層は、階段を出た所は正面の通路しかなかった為、近接組が道を切り拓き進んで行き、後衛組は、後方に魔物がリスポーンしたら対応する形で分かれ道まで進む事にした。


 分かれ道まで行ったら、51階層と同じく後衛組が結界を張って後方の魔物を止めつつ、進む時に後方の魔物を一掃してから進む事にした。


 ここで困った事態が判明した。

 コンプレッションファイアーは、対象に接触した際に大きな爆発を起こして、周りの魔物にもダメージを与える事で、後衛組3人でも短時間で大量に魔物を倒す事が出来た。


 だが、先程創造した留まる水流は、単体魔法の為一掃するのに向いていなかった。


 消費MPを増やしても、威力が増すだけで範囲は拡大されなかった。


「失敗しました。水魔法の範囲魔法を考えるので、時間を少しだけ頂けませんか?」

「ああ、いいぞ。そうしたら、一旦階段まで転移で戻るか?その方が落ち着いて考えられるだろ?」

「そうですね。申し訳ありませんが、そうして頂けますか?」

「はーい。じゃあ、みんな集まってー」

「唯佳、結界越しでもいいのか?」

「うん。大丈夫だよー」

「唯佳っち有能だね~」

「えへへーじゃあ、行くよー転移」


 唯佳の言う通り、結界越しでも問題なく階段まで戻って来られた。


「もうちょいで剣術スキルがレベルアップしそうな気がするんだよね~、春斗っちはどう?」

「俺はまだっぽいかな」

「そっか〜待ってる間に魔物を斬ってるね~」

「ああ」


 雛のバトルジャンキー感が増してる気がするな〜

 ほのかが魔法を考えている間、3人の雛が楽しそうに魔物を狩りまくっている。


 返り血を浴びても、魔物を倒せば光の粒子に変わってくれるので、凄惨な見た目になっていないのが幸いだ。


「お待たせしました。1度試させて下さい」

「ん?分かった。お~い雛!ほのかが魔法を試したいらしいから、一旦戻って来てくれ」

「は~い」

「では、行きますね」


 雛が戻って来たのを確認して、ほのかが魔法を放った。


「レイジングストリーム」


 ほのかの詠唱と共に激流が呼び出され、通路の魔物を押し流して行く。


 押し流された魔物は、激流の中で光の粒子へと変わって行く。


「これなら糸絡り狢も一撃です。少し消費MPが多いのが難点ですけど」

「あれ?これは調整出来ないん?」

「出来はしますけど、威力の面でも効果範囲の面でも心許なくなってしまうんですよ」

「広範囲魔法だし、ある程度は仕方ないだろうな」

「そっかー」

「今のでMPどのくらいなん?」

「今ので消費MP20ですね」

「おー結構使うねー」

「今までで1番多いね~」

「それだとMP保たないんじゃないか?」

「エレンくんと交互に使えば私は問題はないかと思いますけど、エレンくんのMPが不明なのが心配ではありますね」

「確かにそこは不安だな」

「従魔のステータスも見えればいいのにねー」

「何で見えないんだろうね~」

「まあ、考えても分かんないし、しょうがないさ」

「そうですね。取り敢えず、1度試してみましょう」


 話し合っている間にリスポーンした魔物を、近接組で倒しながら先へと進んで行く。


「エレンはまだ問題なさそうだけど、ほのかはどうだ?」

「私もまだ問題ないです。このペースで行けるなら、特に問題にはならないですね」


 2時間程進んでみたが今の所ほのかもエレンも問題はなさそうだ。


「じゃあ、どんどん進んじゃおー」

「お〜!」


 更に1時間進んで、今日の攻略は終わる事にした。


「可憐ちゃんただいまー」

「おかえりなさい」

「換金よろしくー」


 この支部には専属カウンターがなかったが、俺達が潜る様になって急遽用意された。だけど衝立などはないので、他の人からも丸見え状態である。


 その為、唯佳が空間収納からドロップアイテムを出すのを見てざわめきが起こった。


 今日始めてって訳でもないのに何でだろうと思ったのだが、今日の量は昨日までの比ではないので、それもあっての反応の様だ。


「この糸が52階層の魔物の通常ドロップね。それで、この炎の塊っていうのがレアドロップなのね?」

「ええ、そうです」

「この炎の塊は面白そうなアイテムね」

「ええ、高エネルギー物質で有害物質の排出もなしですから、使い方次第ではかなり使い道が多いんじゃないかと思いますね」

「新アイテムだから糸絡り狢の糸と炎の塊は後日の振込になるわね」

「はい」


 新アイテムが出た際には、各国のダンジョン協会本部内にある鑑定査定専門部門で、金額が決められ、国際ダンジョン協会に報告され、探索者に振り込まれるのはその後になる。


「他はすぐに換金するわね」

「川天狗のドロップアイテムはもう、金額が出たんですか?」

「ええ、通常ドロップもレアドロップも火龍の咆哮が初日に取って来ていたから、どちらも今日金額が確定したわ。だから、昨日の分も一緒に振り込まれるわよ」

「鉄太さん達に感謝ですね」

「春斗、俺に感謝って何がだ?」


 可憐さんと話していると、後ろから鉄太さんに声を掛けられた。


「鉄太さん、お疲れ様です。川天狗のドロップアイテムの金額が出たそうですよ。鉄太さん達のお陰で、早く換金出来る様になったので、感謝しないとなって話てたんです」

「おっ!もう、金額が出たのか?そういう事なら、いくらでも俺に感謝してくれていいぞ」

「お兄ちゃんにじゃなくて、私達にって春斗くんは言ってるでしょ!」

「鉄太、手柄を独り占めか?」

「モテないのはそういうとこだぞ」

「グッ」


 既婚者からの一言はかなり効いたらしい。


「まったく!そんな事より唯佳ちゃん達は、何処まで進めたの?」

「52階層まで行けたよー」


 ザワッ


「おい、聞いたか?52階層って...」

「あいつら山中湖に来てまだ数日しか経ってないだろ?」

「ハッタリに決まってんだろ」

「だよな。いくら何でも嘘に決まってるって」


 唯佳の答えに周囲がざわめく。


「外野がうるさいわね。でも、流石ね。どのくらい時間掛かったの?」

「5時間くらいですね」

「あのスピードで行って5時間?スピードダウンとかはしなかったの?」

「しなかったよ〜」

「スピードは寧ろ上がりましたね」

「あれより早くなったの?」

「戦っている間に、効率化して行ったので」

「効率化のスピードも早いのね...」


 俺達と美紀さんの話を聞いていた周りが、またざわざわしている。


「今の美紀さんの話しぶりだと、あいつらが52階層に到達したって言うの、ホントなんじゃないか?」

「火龍の咆哮は今、51階層の入り口付近で戦ってるって言ってたから、あいつらが51階層に到達したら会っているだろうし、美紀さんの口振りからして、それは間違いなさそうだけど...」

「もしホントにあいつらが52階層に到達してるなら、ここのトップってあいつらなのか?」

「そういう事になるな」

「来たばっかりの奴らがトップって俺は認めないぞ!」


 まあ、ぽっと出のパーティーにトップになられたくはないわな。


「うるっさいって言ってるでしょ!!」

「おめえらが認めようが認めなかろうが、春斗達がここのトップ攻略者だ!」

「美紀ちゃんと鉄太の言う通りだ!悔しかったらお前らもここまで上がってこい!」

「今のお前らじゃ、ただの負け犬の遠吠えだぞ!」


 火龍の咆哮の4人がざわつく周囲の探索者達を一喝する。


「まあ、無理だけはしないで下さいね。自分の実力と相手の実力を正しく比べられない奴は、探索者失格だって、元Aランク探索者の父が言ってましたから」

「春斗くんのお父さんて、元Aランク探索者だったの?」

「ええ」

「ん?春斗、お前の苗字って黒木じゃなかったか?」

「ええ、そうですよ」

「ちょ、ちょっと待て!お前らの地元って八王子って聞いたんだが?」

「はい。そうですけど...?」

「八王子で黒木で元Aランク探索者って、もしかして...」

「お兄ちゃん達知ってるの?」

「いやいやいや、美紀お前知らないのか?逆にそっちの方が驚きなんだが?」


 火龍の咆哮の男性陣は、父さんの事を知っていたみたいだな。


「春斗くんのお父さんて有名人なの?」

「美紀、剣鬼って聞いた事ないか?」

「ケンキ?知らないな~」


 鉄太さんが剣鬼と言った瞬間、周りがまたざわついた。


「剣鬼って言ったか?」

「剣鬼ってあの剣鬼か?」

「他にいるのか?」

「えっ?て事は、あいつあの剣鬼の息子なのか?」


 俺が剣鬼の息子だと分かって、ざわつく周囲を見て、美紀さんがキョトンとしている。


「おじさんここでも有名なんだねー」

「春斗っちパパ凄いね~」

「剣鬼の二つ名は、全国区だと母が言ってましたよ」

「俺は俺なんだけど、まあ仕方ないね」

「そうね。春斗くんは春斗くんだけど、黒木部長の息子であるのも事実ですからね」


 改めて父さんの偉大さを知る事になったな。

 Bランクになって、近づけたかと思ったんだけど、父さんの背中はまだまだ遠いね。


 あっ!そういえば雛の剣術スキルはレベルアップしたらしい。


名前:桃井ももい ひな

 年齢:16歳 誕生日:5月5日

 Lv:32

 MP:231/231

 力:281

 耐久:255

 敏捷:309

 器用:222

 魔力:157

 運:93/100

 スキル:レア率固定、剣術Lv8⇒9、忍術Lv5

 ※レア率固定効果

 ドロップアイテムのレア率がパーティーで倒した魔物の数の1割で固定される

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