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ある日ダンジョン出現に巻き込まれた  作者: 鹿野
1章 学校ダンジョン
46/129

#46 渡瀬 勇斗の想い

8月18日(日)


渡瀬 勇斗視点


6月18日に俺達が通う八王子聖明高校はちおうじせいめいこうこうに新しく出来たダンジョンが昨日、出現から僅か2ヶ月という短期間で攻略された。


50階層という知られている中では最も浅いダンジョンだった様だが、それでも攻略までの期間は短かったと思う。


しかもこのダンジョンは、学校からの要請で在校生しか入る事が許されていない。


その為、高レベル探索者はおらず、精々がレベル25前後の先輩達がいる程度だった筈だ。


低階層の内の適正階層は、レベル=階層と言われており、その先輩達が攻略したとしても驚きに値するのだが、ここを攻略したのは俺と同じ1年生4人のパーティーだった。


俺のクラスメイトであり友人、そして何より恩人でもある黒木 春斗率いるクローバーというパーティーが攻略したのだ。


探索者になったのは、俺の方が約3ヶ月近く早かった。


春斗含めクローバーのメンバーは全員、7月2日に探索者活動を始めたらしい。

つまり1ヶ月半程の短期間で50階層まで攻略してしまったのだ。


ダンジョン協会の職員の人達曰く、新人のダンジョン攻略最短記録を年単位で大幅に更新したらしい。


嫉妬心が芽生えもしない程に圧倒的な才能の差を実感してしまう。


まあそれ以前に、自分では取って来る事が出来ない魔物のドロップアイテムを、あっさりと取って来てもらった時点で勝負する相手から、尊敬の対象になっていたんだけど。


春斗達が取って来てくれた素材のお陰で、ばあちゃんの病気の薬を作ってもらえる事になった。

感謝してもしきれない大恩だ。


流石にただでもらう程図々しくはないので、ローン払いだけど購入させてもらった。

値引きしてくれるという言葉に甘えてしまったけど、なるべく早く返済したいと思っている。


かなり稼いでいるらしく、急がなくていいと言ってくれたが、1,000万円の借金は、借りてる側としても早く返済してしまいたいと思ってしまう。


俺がリーダーを務めるパーティー、フォーフレンのメンバーも協力してくれると申し出てくれ、返済はパーティー名義でやっていく事にしてくれた。


いい奴らと組めて幸せだ。


という事で、俺達は今日もダンジョンに潜っている。


「いたわよ。ビッグボア1体よ」

「さくらは動いて奴を撹乱してくれ、俺と廉は左右から攻めるぞ。茜は弓で牽制しつつ狙えるなら急所を狙ってくれ。行くぞ!」


俺の掛け声でメンバーが一斉に動き出す。

昨日降りて来たばかりの2階層、本来なら1階層でレベル1の2人がレベルアップしてから来るべきだが、みんなで話し合って少し危険だが、2階層でレベルアップと金策をする事にした。


昨日は無事に全員が怪我なく帰還出来た。

今日も無事に全員が怪我なく帰還出来る様に油断なく戦えている。


「よっしゃ~倒せたぞ!」

「廉、ナ〜イス!」

「みんな怪我してない?」


とどめを刺した廉とさくらがハイタッチをしている所に、後衛から弓を射っていた茜が近付き声を掛ける。


「ああ、平気だ」

「私も大丈夫だよ。勇斗は?」

「ああ、俺も大丈夫だよ」

「よかった~」

「時間もいい時間だし、そろそろ帰るか?」

「そうだな」

「「さんせ〜い」」


俺達が帰ろうとしたその時、後ろから声を掛けられた。


「お疲れ、もう終わりか?なら、支部で待ってればよかったかな」

「春斗?どうしたんだ?こんな所で」


声を掛けて来たのは、春斗だった。


「昨日、珍しいアイテムを2つ手に入れてな。1つは唯佳が使う用で俺達がキープしたんだけど、もう1つはフォーフレンに貸し出そうって事になってな、あ〜勿論いらないなら押し付ける気はないから断ってくれ」

「珍しいアイテム?」

「ああ、これなんだけどな、確か石井さんの武器って弓だったよな?」


春斗の手にあったものは、鮮やかなパステルブルーの弓だった。


「確かに私の武器は弓だけど、もう持ってるよ?」

「これはちょっと変わった弓でね、矢を番えなくてもいい弓なんだよ」

「「「「はっ?」」」」

「MPを1消費して魔力の矢を射てる弓なんだよ。勿論、普通の矢を番えて射つ事も可能だよ」

「春斗、それどうしたんだ?わざわざ買ったのか?」

「まさか、そこまでしないよ。これは、49階層から出て来たサファイアクイーンって魔物のエピックドロップなんだ」

「エピックドロップ?」

「ああ、ドロップには、通常ドロップとレアドロップがあるのは知っているだろ?実はレアドロップよりも珍しいエピックドロップっていうのがあってな、これはそのエピックドロップとして出て来たアイテムなんだ。名前は夢幻の弓、効果はMPを1消費して魔力の矢を放つ。威力は魔力によって変わるっていう感じだね」

「「「「.....」」」」


俺達4人は春斗の言葉に固まってしまった。

レアドロップの上があるなんて聞いた事もないし、仮に春斗の話が本当なら、とんでもない価値があるアイテムって事になる。


しかも、49階層から出て来た魔物のエピックドロップなんて尚更だ。


「石井さんならMPも多いし、普通の矢と併用していけば使い熟せるだろうって事で、俺達4人で意見が一致したんだよ」

「いや、春斗。流石にこれは...」

「そ、そうだよ黒木くん。これはちょっと...」

「まあ、俺が試しに射ってみるから、それから判断してよ」


そう言うと春斗は、誰もいない方向に弓を向けた。


「あっ!何か来るよ!」


うちのパーティーの斥候を務めるさくらが警戒を呼び掛ける。

方向は、春斗が弓を向けた方だ。


「うん。ビッグボアが1体だね。射つよ?」


春斗はなんて事ない様に言って、MPを使って作ったと思われる矢を放った。


「ブヒッ!」


矢は飛び出して来たビッグボアの眉間からお尻まで貫き、更に先にある大木に大穴を開けて消えて行った。


当然、貫かれたビッグボアも光の粒子へと変わり消えて行った。


「これは流石に貸し出すだけだよ?もし壊れたら、俺に言ってくれればスキルで直せるから、いつでも言って来てね。ああ、これの貸し出し料は取る気はないよ。ただし、貸し出すに当たり条件が1つだけ、死なない事。それだけは守ってね?」


春斗の言葉にハッとした。

借金返済の為に、少し無茶を選択した俺達の事を知って、心配してこの弓を持って来てくれたんじゃないかと思った。


エピックドロップというのは本当だろう。

偶々、出て来たのがこの弓だったんだろう。

それでも、こんな貴重なアイテムを貸し出してくれるという申し出をしてくれた春斗に、目頭が熱くなってしまった。


「茜、春斗の好意に甘えさせてもらおう。そしてそれを、死なないという約束の証としよう」

「勇斗、うん。黒木くんありがとう。有り難くお借りするね。私達は絶対に死なないよ。私がこの弓で、誰も死なせないから!」

「うん。期待してるね?」

「任せて!」


俺達は全員泣き笑い状態で、お互いの顔を見て笑い合った。


「春くーん。これ、凄いよー」


そこに、春斗の幼馴染でパーティーメンバーの1人でもある白坂さんがやって来た。


手には木とダイヤモンドみたいな物で出来た弓を持っている。


「唯佳、試し射ちはもういいのか?」

「うん。ゴブリン倒しまくって来たよー」


白坂さんは結界を張る事も出来る光魔法の使い手だ。

本来なら魔法発動体となる杖を持っている筈だと思うんだけど?


そう不思議に思っていると、白坂さんの弓が杖に変わった。


驚いていると


「不思議でしょー?これねー春くんが作ってくれたのー」

「「「「えっ?」」」」

「アイテム融合っていうスキルがあってな、唯佳の杖と昨日手に入れたもう1つのエピックドロップで出た弓を融合したら、こうなったんだよ」

「「「「.....」」」」


春斗、もう言葉にならないよ...

俺のクラスメイトは、戦闘以外も規格外の存在だったらしい。


この後、2人と一緒に帰還する事になったのだが、凄いのは春斗だけじゃなかった。


クローバーのメンバーで、唯一実力を目にした事がなかった白坂さんが、転移スキルで支部まで一緒に転移させてくれた。


転移スキルなんて聞いた事がない。

転移は、転移陣で行うものでスキルとは関係ないものだと思っていた。


春斗が以前、パーティー内で1番普通なのは自分だと言っていたけど、あれって本当なのかもしれない。


いや、春斗も十分に規格外の存在ではあるんだけどな...

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