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ある日ダンジョン出現に巻き込まれた  作者: 鹿野
1章 学校ダンジョン
17/129

#17 ほのか先生の薬学講座②

「みんな!よかった無事だったのね?」


 転移陣で戻ると、可憐さんがホッとした顔で駆け寄ってきた。


「はい。全員無事です」

「よかった。〝ダンジョンの気まぐれ〟が5階層で起きたって聞いたから、心配していたのよ」

「ああ、マーダーグリズリーが出ました」

「低階層のとはいえ、よりによってボスが出るなんてって、春斗くん達見たの!?」

「はい。出現地点が俺達の40mくらいの所だったので、回避出来ずに戦闘になりました」

「えっ!?戦ったの!?よく無事でいてくれたわ」


 可憐さんは、俺達4人を抱きしめてくれた。


「あ、あの可憐さん?まだ報告が残ってて、マーダーグリズリーは俺達で倒したので、5階層はもう安全です」

「えっ?倒した!?」

「「「「はい」」」」

「......えっ?」


 信じられないといった顔で見つめて来る可憐さんに俺達は満面の笑みで返した。


 その後、専属カウンターに移動して、今日の成果を出して行く。

 その中にはクマのドロップアイテムもあり


「これ、熊の胆(くまのい)だわ。マーダーグリズリーのレアドロップ。ホントに倒したのね」

「はい。信じてくれました?」

「ええ、マーダーグリズリーと戦って、怪我なく戻って来てくれてよかったわ」

「春斗っちは、最後に油断して怪我してたけどね~」

「あっ雛!シーシー!」


 雛に言わない様にジェスチャーするが後の祭り。


「春斗くん怪我したの?でも、何処も怪我してる様には見えないし、防具も壊れてないけど?」

「怪我は唯佳っちの回復魔法で治してもらって、防具はリペアで自分で直してたからね~」

「そうなのね。探索者をやっていれば怪我は付き物よ。でも、油断して攻撃を受けた事はちゃんと反省しないとダメよ。いいわね?」

「はい。すみません」

「春くん。ヨシヨシ。」


 唯佳が慰めてくれている。


「今日の事は、おばあちゃん達にも報告しとくね?」

「えっ!?」

「ちゃんと怒ってもらおうね?」


 唯佳、慰めながら死刑宣告しないで...


「反省しようね?」

「はい...」


 どうやら、あの状況で油断して攻撃を被弾した俺に、だいぶご立腹の様だ。


「ところで、熊の胆ってな〜に?」

「熊の胆とは、熊胆ゆうたんとも呼ばれる漢方の1つです。鎮痛、鎮痙ちんけい、消炎、鎮静、解毒などの効果が期待されており、熱性疾患や小児の熱性けいれん、妊婦の子癇しかんにも適応しています。また、胃痛や胸やけ、二日酔いのむかつき、吐き気、便秘、胃弱にも効果的です」

「また、分かんない言葉が〜子癇って何〜?」

「子癇とは、妊娠高血圧症候群つまり妊娠中毒症の患者が妊娠20週以降に初めて発症するけいれん発作で、てんかんや二次性けいれんが否定されるものです。分娩前にも分娩中にも産褥期さんじょくきにも起こりうる病気で、異常な高血圧と共に痙攣または意識喪失、視野障害を起こした状態の事です」

「うう~テスト勉強よりムズいよ~」


 今日もまた、ほのか先生の薬学講座が開かれている。


「それで、熊の胆って高いの?」

「ええ、マーダーグリズリーの熊の胆は、1個で買取価格300,000円ね」

「「おー!」」

「他の物も換金しちゃうわね」


 今日は物が少ないので計算は早く終わった。


「お待たせ。今日はマーダーグリズリー以外はオオシロアリタケしか倒さなかったの?」

「いえ、途中でホワイトアントも何体か倒したんですけど、アイテムをドロップしなかったんです」

「あら、あなた達にもそんな事あるのね。まあ、分かったわ。それじゃあ、まずは極小魔石が302個、小魔石が1個、熊の胆が1個、オオシロアリタケが180個、合計で420,700円よ。小魔石は1個500円での買取になるわ」

「短時間しか潜ってないのに、過去最高来た~」

「10階層のボスも、1体だけなら無傷で倒せる事が分かりましたね。油断しなければ」

「うっ」

「そうだねー私の結界も最低でも5回は耐えられるって分かったしねー」

「ふふっそれじゃあ私は、マーダーグリズリーの事を報告しに行くわね。気を付けて帰るのよ?」

「「「は~い」」」

「じゃあ可憐さん、また明日」


 俺達は可憐さんに挨拶をして帰路に着いた。


「あれ?ほのかはバスじゃないのか?」

「バスですよ。この先のファミレスの所から乗ります」


 ほのかは俺達の中では唯一、バスで通っている。


 八王子駅発大学病院行きの路線だが、大和田経由じゃなくて、左入さにゅう経由の比較的新しい路線だ。


 ほのかの家の近くとうちの高校の前を通る路線で、乗換なしで通って来れる。


「じゃあ、途中までみんな一緒だねー」

「楽しいね~」

「ふふっこれからは毎日こうしましょうかね?」

「「お〜さんせ〜い!」」

「ふふっじゃあ、そうします」

「なあ、ほのか?ほのかのお母さんのお店って壊れた装備の買い取りってやってたよな?」

「はい。状態によっては雀の涙程度の買取額ですが、買い取ってはいますね」

「それって買い取ってどうしてるんだ?」

「金属は鋳潰いつぶして再利用するか、リペアで直して使える物は直しています。金属以外の物は、リペアで直すか再利用出来る所を選んで素材として使うかですね」

「それって少しだけでも俺が買う事って出来ないかな?リペアの練習をしたいんだけど」

「そうですね。母に確認してみますね」


 そう言うとほのかは電話を掛け始めた。


「あっお母さん、忙しい所すみません。少しお願いがあって、パーティーメンバーがリペアを覚えまして、その練習用にお母さんの会社で買い取った壊れ物を購入したいらしいんですが、はい、はい、分かりました。彼にはそう伝えます。ありがとうございます。えっ?い、いえ、彼とはそんな関係じゃ、えっ?そ、それはあのその、の、後程。えっ?も、もう!お母さん!ま、まだそんなんじゃないから!!も、もう切るよ!」


 ほのかが珍しく動揺していたけど何かあったのかな?最後は言葉遣いも違っていたし、家族にはいつもはああなのかな?


「んんっ!春斗くん。売ってくれるらしいです。1度本社まで来てもらって、氏名、連絡先、住所、引き落とし用に探索者番号の登録をさせて頂ければ、必要な時にネット注文して頂くだけで、ご自宅に配送させて頂くとの事でした」

「お〜ありがとう。ほのか」

「いえこの位、気にしないで下さい」

「ほのかっちは最後、何で焦ってたの?」

「そ、それは、の、後程」

「分かったーじゃあ、女子メンバー専用コミチャでね!」

「女子メンバー専用コミチャ?」


 コミチャとは、コミュニケーションアプリの1つで、無料で通話やメール、チャット等が出来る。


「ゆ、唯佳さん!?」

「ゆ、唯佳っちシーシー!!」

「ん?あっ!!」


 3人がこちらに視線を向ける。


「いや、女子だけで話したい事もあるだろうし気にしないでいいよ」


 女子の密談には関わらないのが1番である。


「春斗くん。すみません。でも、こういうのも必要なので...」

「春斗っちごめんね~」

「うん!ありがとう!」


 謝る2人とお礼を言う唯佳。付き合いの長さの差が反応に出てるの面白いな。


「それでほのか。いつ行けばいいんだ?あと、本社って何処?」

「えっ?あっ!?すみません。いつ行けばいいか聞き忘れました。帰ったら聞いておきます。あと、場所は八王子駅前のお店の上が本社になっています。当日は私も一緒に行きますね」

「ああ、ほのかが一緒ならありがたいな」

「じゃあ、その日はダンジョンお休みだね~」

「そうだねー」


 その後、雛と別れほのかと別れ、それぞれの家路に着いた。そして


「お兄ちゃんは正座!!」

「春斗?油断して怪我したってどういう事かな?」


 凛と智佳姉に正座させられている。


「お兄ちゃん?唯佳姉達を守ろうとして魔物の前に行くのはいいよ?でも、それで怪我したら唯佳姉達に余計な心配をさせるんだよ?唯佳姉達に心配させるのはダメだよね?反省しなさい!」

「はい」


 怒られてる理由が、怪我した事じゃなくて、唯佳達を心配させた事なのは、仕方ない。凛は唯佳と智佳姉の事、好きだもんな。

 一方智佳姉はというと


「春斗?命のやり取りをしている時に油断しちゃダメだからね!今回は生きてたからいいけど、死んじゃったら唯佳の回復魔法も効かないんだよ?」

「はい」


 普段明るい智佳姉が涙を溢しながら怒ってくれている。

 ホントに心配してくれているのが伝わってくる。ああ、ちゃんと反省しよう。

 2度とこんな思いをさせない様にしよう。


「春斗、2人だけじゃなくて私も言いたい事はあるけど、2人が怒ってくれたから私からは一言だけ。あんまり心臓に悪い事はしないで頂戴ね。私はもう年なんだから、心臓が止まってしまうわ」

「ごめん。これからは気を付けます」

「お願いね」


 その後、帰宅した両親と唯佳の両親にも怒られ、反省しながら眠りに着いた。

ほのかが使っているというバス路線は架空の路線です。実在しません。

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