#16 ダンジョンの気まぐれ
7月16日(火)
「おはよー」
「おはよう〜」
3連休明けの教室で、久しぶりに会ったクラスメイト達と挨拶を交わす。
「よぉ春斗!久しぶり!」
「ああ、陸人久しぶり」
「それにしても、相変わらず...桃井には足を向けて寝られないな」
陸人がしみじみと見つめる先では
「ひゃぁぁー!もう、雛ちゃんおっぱい急に揉まないでよー!」
「だって気持ちいいんだも〜ん」
「だから、も〜んじゃなーい!」
「唯佳さん、失礼します」
「へっ?ひゃあっ!」
「なるほど、これは確かに気持ちいいですね」
「でしょ〜?」
「雛ちゃんはでしょ〜?じゃなーい。ほのかちゃんまでー」
「あら?私は急ではなかったですよ?」
「そうだけどーでもダメー」
「あらあら、困りましたね」
「ね〜」
「2人共おっぱいから手を離しなさーい!」
いつもの光景にほのかまで加わっていた。
「お〜委員長まで!美少女3人でなんて。ありがたやありがたや...」
「お前、それ女子から嫌われるぞ?」
「春斗、お前には分かるまい、美少女3人に囲まれてパーティーを組んでるお前には!!」
「お、おう。何か悪かったな?」
陸人の言葉に複数の男子が頷いている。
ガラガラガラ
「は~い席に着いて下さい。ホームルームを始めます。まず、残念な連絡です。このクラスから退学者が出てしまいました。先週のテストにも参加していなかったので分かるかもしれませんが、三森 秀君が先週の月曜日付で退学となりました。」
先日、ダンジョン内で俺に斬り掛かってきて返り討ちに合った三森は、あれ以来登校していなかった。
まあ、警察に捕まっているから当たり前なんだが、結局そのまま退学となった様だ。
一般人よりも力の強い探索者が暴力を伴う事件を起こした場合、より重い刑が課される。
それは、模擬戦や訓練などでなければ、相手が探索者であっても同じであり、未成年者であっても同じ扱いがされる。
「先生、三森のやつ何かやったんですか?」
「三森君は、探索者としてダンジョンに入り、そこで他の探索者の後を着け、その探索者に斬り掛かったとの事です。幸い襲われた探索者に怪我はなく、三森君を捕えてダンジョン協会に連れて行ったそうですが、探索者による暴力行為は、たとえ未遂であっても一般人よりも重い刑が課されます。このクラスにも他に探索者をしている人がいますが、くれぐれも力に溺れない様にして下さい。お願いします」
先生の話を聞き教室はざわついたが、俺の関与は気付かれなかった。
ホームルームが終わり、その後は淡々と授業が進んで行き、いくつかのテストが返された。
「ウッソ!雛がこんな点採るとかおかしい!」
「まさか雛に負けるなんて〜」
「ふっふっふ〜いつまでも昔のアタシと思うな~」
「ふふふ、委員長と唯佳に教わったんでしょ?」
「そうだよ~」
「「何それズルい!!」」
「パーティーメンバーだからね~」
「「うう~」」
どうやら今回のテスト、雛も今の所いい点が採れてる様だ。
「お待たせ〜さあ、ダンジョンに行こう〜」
「テストはいい点だったみたいですね」
「うん!お陰様でね~」
「雛ちゃん頑張ったもんねー」
「ご褒美って事で、エイッ!」
「ひゃあっ!」
「はあ~幸せ」
「こらーご褒美じゃなーい!ブラがズレちゃうー」
「雛さん、ダンジョンに行きますよ?」
「は~い」
「ほのかちゃんありがとうー」
「更衣室なら直に触れますからね」
「確かに!ほのかっち流石!天才!!」
「ほ、ほのかちゃん?変なアドバイスしちゃダメなんだよ?雛ちゃんホントに揉むんだからね?」
「さあ、行こ〜!」
「ふふっはい!」
「雛ちゃん?ホントにダメだよ?聞いてる?」
何か雛、おっさんより質が悪いな。ほのかまで雛に乗っかってるし...
あと、男子。前屈みになってるの他の女子にバレてるぞ?
そんなこんなでダンジョン協会の更衣室で着替える。
新しく作っていた建物に男女それぞれの更衣室が設けられていて、専属持ちの俺達には、男女別の更衣室付きの個室が与えられている。
新人なのにこんなに贅沢させてもらっていいのだろうか?
更衣室を出て、可憐さんの所に行く。どうやら、一昨日の疲れは抜けた様だ。
「みんないらっしゃい。昨日は楽しかった?」
「うん!温泉行って牧場で遊んで来たのー」
「あら、いいわね」
「アタシも友達とオケ歌いまくった~」
「そうなの?喉は平気?」
「平気〜」
「私も兄と弟とゆっくり買い物が出来ました」
「ふふっ男手があると助かるわよね」
「ええ、ほんとに」
それぞれ、昨日は休みを満喫出来た様だ。
あとほのかは、お兄さんと弟くんの買い物に付き合うって言ってなかったっけ?結局は付き合わせた側なの?男手があると助かるって荷物持ちでしょ?付き合う側がさせる事じゃないよね?
「そうだー今度、旅行に行くんだけど。みんなも一緒に行こうー?」
「いいね~私はオッケ〜だよ!」
「私達が一緒に行ってもいいんですか?」
「たぶん大丈夫だよーおばあちゃんに言っておくねー可憐ちゃんも行くでしょー?」
「えっ?私もいいの?」
「勿論だよー紗奈ちゃんも誘おうー」
「う~ん考えておくわね」
「うん!」
どうやら、今度の旅行は大人数になりそうだ。
「おばあちゃんオッケーだってー可憐ちゃんと紗奈ちゃんもどうぞだってさ」
唯佳確認取るの早いな。そしてばあちゃんも返事が早い。
そんなやり取りの後、俺達はダンジョンに潜った。
「6階層への階段は、ここから2時間程行った所らしい。今の俺達なら、走れば20分ってとこかな?どうする?」
「アタシはもうちょいここで戦いたいかな~もう少しでコツが掴めそうなんよね~」
「お付き合いしますよ」
「うん。私もいいよー」
「ありがと〜」
「じゃあ、今日はここで狩るか」
「「「はい」」」
俺も何かが分かりそうな気がしていたので有り難い。
「オオシロアリタケを中心にって事で行くか」
「「「は~い」」」
そこから2時間弱、俺と雛は狩って狩って狩りまくった。唯佳はいつも通り、ほのかは唯佳と一緒にサポートに回ってくれた。
狩りを始めて1時間、俺の剣術スキルがレベルアップした。
更に1時間、もう帰るかという所で、雛の剣術スキルもレベルアップした。そこから、何体かづつ倒してみたが、一撃で確実に倒せる様になった。
「俺も雛もこの階層は一撃で倒せる様になったな。明日からは、6階層に行こうか?」
「そうしよう~2人共今日は付き合ってくれてありがとね~」
「ふふっ仲間なんですから気にしなくていいですよ?」
「うんうん。そうだよー」
「えへへ、ありがと」
「それじゃあ帰るか」
「「「は~い」」」
狩りを終え、帰ろうと転移陣の方へ振り向いた瞬間、40m程先に雷が落ちた。
ダンジョン内は、天候の変化や時間の経過はあっても、雷は落ちない。
ただ1つの例外を除いて。
雷が落ちた場所に大きなクマが立っていた。
これがただ1つの例外、〝ダンジョンの気まぐれ〟と呼ばれる現象で、本来ならもっと深い階層にいる筈の魔物が突如現れる時に起こる。
「な、何?」
「クマの魔物なんてこの階層にいないよ?」
「これはまさか...」
「唯佳!結界だ!!」
その瞬間、クマがこちらへと突進して来た。
「け、結界!!」
間一髪唯佳の結界が間に合った。
「マーダーグリズリー。10階層のボス...」
「へっ?は、春くん?このクマ10階層のボスなの?」
「な、何でそんなのがここにいるん!?」
「〝ダンジョンの気まぐれ〟。深い階層にいる筈の魔物がどういう訳か本来より低階層に出現する現象です」
「ほのか、今使えるMPを使い切るくらいの魔法を創ってあいつに当てれば、あいつを倒せるか?」
「オーバキルになりますね」
「なら、無理なく撃てる程度でいいけど、確実に仕留められる魔法を創造してくれ。」
「分かりました。少し時間が必要ですが...」
「分かった。唯佳の結界がいつまで持つかも分からないから俺が外に出てあいつの気を引く。その間に頼む」
「春斗くん、それは危険です!」
「そうだよ!春くん危ないよ!?」
「分かっているけど結界が壊されると全滅の可能性がある。それだけは避けたい。俺も死ぬ気はないからなる早で頼む。じゃあ、行ってくる!」
「ちょっと待った!」
「雛?」
「アタシも行く」
「いや、雛。危険だぞ?ダメだ!」
「いや、それをやろうとしてる春斗っちには言われたくないんですけど~アタシだってこのパーティーの、クローバーのアタッカーだし!春斗っち1人に危険な事はやらせない!」
「雛...そうだな。俺達はクローバーのアタッカーだ。役割を果たすぞ!」
「うん!」
「俺が合図したら影縛りであいつの気を逸らせ、気が逸れたら結界から出て攻撃を仕掛ける。狙いはあいつの足だ。踏ん張りが効かないようにすれば、立っていられなくて結界への攻撃もまともに出来なくなる筈だ」
「うん!分かった!」
「よし!行くぞ!!」
「影縛り!!」
雛の影縛りで気が逸れた瞬間、俺と雛は結界を飛び出した。
それに気付いたクマが雛の方を向いたタイミングで、俺がクマの右膝の裏を斬り付けた。
「グアァァァ」
クマが痛みを訴える様に声を出す。だが、あまり深い傷は付けられていない。
クマは、斬り付けた俺に反撃しようと身体をこちらに向ける。
そのタイミングで、今度は雛が左膝の裏を斬り付けた。
「グアァァァァァ」
痛みに身体を仰け反らせたのを見て、更に俺も斬り付ける。場所は先程と同じく右膝の裏
「纏雷」
今度は俺の最大威力の纏雷を纏っての一撃だ。
これは手応えあり。どうだ!とクマを見ると、右膝から下を斬り飛ばすことに成功していた。
「影縛り」
雛が影縛りで残った3本の脚で立つクマを抑えた。
影縛りをどうにかしようとクマが暴れようとしている。
「準備出来ました!」
ほのかの声で俺と雛は、クマから距離を取ろうとバックステップを踏んだ。その時
『ドンッ』
ほんの一瞬、ほのかの方を向いてしまった俺に、四つん這い状態のクマが力を込めて振った腕が、影縛りを引き剥がし当たってしまった。
「春斗っち!!」
「春くん!!」
雛と唯佳の悲痛な声が聞こえる。
クマが体勢を崩していたお陰で、致命傷ではないがかなりのダメージを受けてしまった。
だが、その攻撃を受けた事でクマとの距離がだいぶ開いた。
「ほのか!!」
呼吸をするのもキツいが、ほのかに指示を出す為に声を張った。
「アイシクルステイク」
ほのかの詠唱と同時にクマの真上に、大きな氷柱が現れた。
その氷柱は勢いよくクマへと落ちて行き、四つん這いになっているクマの胴体を消し飛ばした。
その瞬間、クマは光の粒子に変わり、姿を消した。
攻撃を受け、起き上がれずにいる俺の下へ唯佳が全力で駆けて来た。
「春くん!今治すからね!ヒール!!」
唯佳の回復魔法を受け、俺の傷は全て治った。
身体を起こした俺に、唯佳といつの間にか近くに来ていた雛とほのかも抱き着いて来た。
無言で抱きしめられ、困惑していると、身体を離した3人から怒られてしまった。
お説教も終わり、クマの攻撃で壊れてしまった革鎧をリペアで直し、転移陣へと向かった。
そういえば、大きな怪我ってうちのパーティーでは初めてだな。
名前:黒木 春斗 所属:クローバー
年齢:16歳 誕生日:6月26日
歩数:454,610歩
Lv:3
MP:30/30
力:30
耐久:29
敏捷:30
器用:28
魔力:17
運:76/100
スキル:ウォーキング、サーチLv4、剣術Lv3⇒4、纏雷、リペアLv1、鑑定
※ウォーキング
10万歩毎にスキルを1つ取得又は、既存スキルのスキルレベル1上昇
名前:桃井 雛
年齢:16歳 誕生日:5月5日
Lv:3
MP:32/32
力:27
耐久:21
敏捷:31
器用:27
魔力:19
運:93/100
スキル:レア率固定、剣術Lv3⇒4、忍術Lv1
※レア率固定効果
ドロップアイテムのレア率がパーティーで倒した魔物の数の1割で固定される




