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Y・Hファイル  作者: 白百合リーフ
林堂 友理サイド
PR
33/33

第33話 「閉ざされし者(後編)」

ここから先、残酷描写が多く含まれております!

激重空気が多々あり、ご注意下さい(マジで)

学校襲撃とは別ベクトルのグロですテス。


訂正:学校襲撃の際に出てきた金鬼こと瞬の名前変更

 (しゅん)駿(しゅん)→→(じゅん)になります!

翌朝・・・

羽田市の学寮兼一般住宅マンションでは、

主に8割が妖怪三輪学校の学生達で占めており

そこには芽亜や日向…居候の千秋が住まう場所。

そしてこのマンションの7階、

707号室にもお馴染みのメンバーが

1人暮らしを送っている事を

まだ知られていない人物がいた。

何を隠そう……雫だ。

実の所、この家は式神様と別れる前に

最後のプレゼントとして貰ったのがマンションで

その代わり前に住んでた土地の広~い一軒家は、

現在も売りに出されている。

まだ小学生だった雫が住む場所に困っていた

昔とは違い、今では安定した生活を送れていて

雫には大き過ぎる家だが何も困る事はない。

が、1人暮らしを経験してる日向でさえ

家の中は質素でありながら

必要最低限かつ使う頻度のあるとされる物は、

表に出していないだけで

あの家には多く取り揃えられている。

一方、雫はというと1人暮らしの家とは

思えない程の現実味のない荷物の少なさ…いや

少なさ通り越して全くないに等しいだろう。

強いて言うなら、

あらかじめ設置されてあった家具ぐらいで

引っ越し当初と何の変わり映えもない中、

1人なりに(いびつ)な暮らしをずっと送ってきたのだ。

掃除の行き届いた埃一つない部屋、

遮るような障害物もない

風通しの良過ぎる空気が入り込んで来たり

どこからか聞こえてくるピーと鳴り響く電子音、

スリッパも床に敷かれる筈のカーペットも無ければ

テレビや電子レンジなどが置いてあっても

使った形跡すら無かった。

電気も付けずに、ベランダの窓枠一面には

真っ白な曇り空が隠していたのは、

透き通るような晴れ空だった。

燦々と降り注ぐその光は昨日よりも遥かに強く

リビングのDT(ダイニングテーブル)の椅子に座ってる

彼女は今、家に居るとは思えない静けさ

というより無言で固まった状態から動く事もなく

ただその大きな目は壁の一点をじっと見続けるだけ。

この様子から見て雫は、

普段から[普通]を心掛けているようで

本当は精神年齢があの時からずっと止まったまま

何をするかも、何をやるべきかも決められない

未熟な子供そのものだった。

このまま何もしない1日を送るのかと思った矢先、

物音を立てずに幽霊のようにスッと立ち上がる。

壁を見つめていた目で雫はリビングに続く

2つの扉の内、右の部屋へと入っていった。

そこはリビングとは、

また違った殺風景な空間が広がっており

カーテンの無い窓の外には突然の大雨が降り始めて

現在この羽田市の山方面が天気雨となっている。

正面ベランダ側は少し曇っていたものの晴れて

マンション横である右の部屋に入ってからは、

静寂だった部屋にザーザーと雨音を奏でる音が

まるで、古小屋を見つけて雨宿りをしてるような……

そんな雰囲気がした。

この部屋は雫の自室なのだが、

物は疎か押し入れの収納スペースでさえも空っぽで

明らかにリビングと比べて物を置いた痕跡もない。

一体、雫はこの部屋に何をしに来たのだろうか?

それはすぐに答えが出た。

リビングでは虚空を仰ぐ事しかしなかった彼女が、

何もない自室に戻ってまでやりたかった事とは

もう一眠りしたいが為の行動だったのだ。

休日の子供らしい自分の欲に素直に従い、

押し入れの(ふすま)が常に半開きなその隙間を通って

硬い硬い上段部分の床で

ポワッと小さなあくびをしながら

身を縮めて眠り込む。

徐々に下がっていく瞼に薄目開けの状態が、

しばらく続いて目をパチパチさせながら

押し入れの中が暗く静かな場所のお陰で

無事、眠りに着く事が出来た。

雫「………スゥー……スゥ…スゥー…………スゥ……」

11時頃に寝た雫のこの眠りは意外にも深く、

気が付けば夕方にまで日が落ちていたのです。


その夜、8時過ぎ頃・・・

バッシャッ!!!!!!!!

突然、何かが裂かれるような奇怪な音が

森中に響き渡ったのだ。

カラス「ア″ーア″ーア″ァー!!!」

それに驚いた黒い大群が一斉に木々から立ち退いて

バサバサと慌てた様子で森を離れていく。

その地上では背の高い草をもぐらのように掻き分けて

カサカサカサと素早い動きで木や(つる)、森の地形を

上手く使いながら必死に逃げる影。

その影が通った道には、

草木に黒い血がべっとりと付いていたり

飛沫血痕だったりで血の足跡などなど、

無事では済まない程の出血量が物語っていた。

今思えば、自分の痕跡が相手に悟られないように

逃げながらも消すべきだったと後悔する。

目的意識が逃げる事以外にも[生きる]という

無自覚の本能に執着してしまったが為に、

あまりにも多くの痕跡を残し過ぎた。

???「…はぁ……はぁっ…はぁ………んはっ……

(まずい!非常に、まずいっ!!

どうすれば、一体どうすれば俺は助かる?!

ゆっくり考えてる暇はない(焦)

とにかく、逃げないと…逃げ……ないと

逃げるってどこへ??

俺はっ………俺は、これからどう…なるんだ?

やめろっ!

今はそんな事を考えるな、止まるな!!

脚をもっと……動かせっ!

ここから逃げる事だけを考えろ!!!

どうする、どうすればっ…いいんだよぉ(汗)

アイツを撒く為には、

何か……自分の代わりになるものはっ!!)」

自分より背の高い草木に囲まれて

何とか手足を必死に動かしながら視界を確保するも

前も後ろもろくに確認できず

追われてるかも怪しい中、

気が付けば滑落してしまったようだ。

???「…え、うわあぁぁぁっ!?!!!!」

ドサドサとゴロゴロと止まる様子がない速さで

勢いよく木や地面に容赦なく叩き付けられる。

???「……ダハッ!(汗)」

急斜面を転がり落ちる最中、

更に何度も空中に投げ出されて

地面にも何度も打たれ転がり続けたのです。

その時間は一瞬であったものの

あまりにも長く、自分以外の周りがスローに見えた。

ようやく勢いも収まり

見るからに痛々しい傷だらけの姿となった男は、

ぶつかった衝撃からか片腕を失っていた。

瀕死の重体ではあったものの

それでも、必死でその体をゆっくりと起こした。

???「・・・。

……う″っ、いっ…ててて。。。はあ……はぁっ…

俺みたいなこんな頑丈な……体じゃなかったら

とっくに事故死の可能性で

即刻、冥界行きだっただろうにぃ……今一度、

有り難…迷惑なこの体には感謝しないとな(汗)

にしても、こんな情けない姿を

誰かに見られないよりはマシだし、

俺だけが大変な目に遭うのはいつもの事だが

未来が知ったらきっと大目玉食うなこりゃ。。。

これから……どうすっかな?

でもまずは、

誰かに連絡を取ってぇ…げっ!?嘘だろ!!」

確実に重くなった体で

その場に座り込むのに精一杯だった男が、

何の気無しにスマホを取り出して

確認すると左画面には圏外と表示されていたのだ。

余りにも強過ぎる衝撃に跳ね上げた体に痛みが走り

運悪くバランスを崩して横へ倒れてしまい、

更なる激痛が彼を襲う。

男性「……アダッッッ!!イタタァ(涙)

はぁ…くっ、とにっかく……ここから離れねぇと

そうだ、俺は今…逃げなきゃいけないんだ」

???「……その必要はない」

女性の声だ。

一瞬、テレパシーのような含みのある声が

内側から聞こえた気がした。

男性「ハッ!?(焦)」

その声を聞いた時にはもう手遅れで

次の瞬間、夜空を舞う流星の如く

鋭い弾道が上空から何やら降って来るのと

同時に、地面にとてつもない衝撃が走った。

何とこの衝撃は、

森全体をも巻き込んだ壮大な仕掛けが

発動する合図だったのだ。

突如として空から飛来してきた女性が、

男性の頭部を鷲掴み自分の体重よりも

遥かに重い負荷に襲われて

片腕を失った肩からモクモクと黒い煙が吹き出し、

男性の動きは完全に封じられた。

尚、男はそれに対抗し得る力を持っておらず

されるがままになってる一方で

大規模な重力の餌食になっているのは、

彼だけではない。

森にも多大なる被害が振り掛かっており、

周りの木々達がバッタバッタと倒木されて

半身の木もあれば、

地面が剥き出しとなる程に森はほぼ壊滅状態。

大地には亀裂が入り、分裂を引き起こされると

この状況から立ち上がる事は不可能となった。

男性「ア″ッッッッ!!ア″ア″ァァァ!!!!」

分裂から更に分解に分解を重ねて大地が、

意味もなく蹂躙(じゅうりん)される様は恐ろしく

命が削られるような悲鳴のような音に、

男性の断末魔は虚しく掻き消された。

ミシミシと頭蓋骨が軋もうが構わず、

女は強い力を加えながら口を開く。

玉藻前「金鬼がこの様とは、何事だっ!

これでは隣県から来た甲斐がないではないか。

それに、隠密行動もろくに出来ぬ…

そもそも妖力操作もままならない

出来の悪い妖怪相手に気付けんとは

お前、気配察知というものを知らんのか?

ほんの僅かな殺気、溢れ出る何らかのオーラ、

この大地に張り巡らさせた妖気の膜に

引っ掛かった時点で見る術は、

いくらでもあった筈なのに。。。

もう少し抗おうと思わんのか!!

これくらいで根を上げて動けんとは、

最近の若者は拍子抜けにも(はなは)だしいぞ。

だがな、あの事件から色々あって

私もちと勉強してな♪

妖力の多い私が妖気をちょろっと操作しただけで

溢れんばかりの力が抑えられるようになった。

が、しかし……

この程度…妖怪にとっては基礎中の基礎、

お前はそんな初心者相手に負けたんじゃ(笑)

どうだ、恥ずかしくないのか?悔しくはないのか??

……っ((じゅん))

ウフフッ、悔しくない訳ないよな???

こんなにもアッサリと魂を狩ってもしょうがない

私と遭遇した自分の豪運さに感謝すべきさね。

ここは一つ、お前の誠意とやらを見せてくれぬか?

今ここで・私の前で・奮い立ってみよ!

……く″うぅぅっっっっ(純)

・・・。

…うううぅあ″あ″あ″あ″ぁぁぁぁ(純)

・・・・・・。

あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″ぁぁぁ!!!!!!(純)

・・・・・・・・・。

何だぁ…その情けない声は??

奮い立てと言うた筈だ!!(怒)

この私に威勢の良さを見せてくれさえすれば

少なくともこのような窮地からは、

助けてやらなくもなかったが……やめだ。

今日の私は少々、虫の居所が悪い!

そういう事だから

貴様には、命よりも重い罰をくれてやる。

タダでは済むと思うなよ?(笑)」

玉藻前の話が終わるまで

金鬼の頭をガシッと掴まれた状態のまま

重力負荷に身を晒されており、

(はな)から見逃すつもりも無かったのだ。

もはや、八つ当たりである。

自分のご機嫌取りに

相手に正解も不正解も求めていない

あるのは、理不尽な運命(こたえ)のみ。

冥界へと(いざな)う彼女は死神のようで

そんな訳の分からない化け物が神を気取って

不幸にもそれを引いてしまった純。

彼には隠居する家も無ければ場所もなく

森で暮らす事はいつもの事だった…….

普段通りの生活を送ったからこそ起きた事故、

今まさに純の命はこの女によって(もてあそ)ばれている。

純(とんでもない重力が俺目掛けて

重たい負荷によって身を(むしば)み続ける。

体の感覚は徐々に奪われていき、

麻痺していく体が軽く浮遊する感じがした。

もう全身の感覚や力が抜け落ちていって

何が何だか初めは分からなかった。

けど、最悪な光景が目に浮かんだ。。。

それを見た時には、

高所から落下したような速さで何かにぶつけられ

俺は、そこで意識を失った)

グチャッ・・・

玉藻前の手によって掴まれた金鬼の頭部は、

黒い血飛沫を上げ首無し遺体となって

その場に、力無く残されていた。

純の言う浮遊感の正体、

それは金鬼の頭や体が重力に逆らいながらも

ゆっくりと持ち上げられていたからで

その(かん)、重力は確かにあった。

それが玉藻前の耳上よりも容易に超える高さまで

引き上がった途端、急に重力が止み

僅か数秒の内に頭を叩き付けられたのです。

その威力は、金鬼の特性でもある鋼鉄が、

鉄のように硬くなった地面にまで作用して

玉藻前の馬鹿力と平均よりも妖力数値の高い金鬼は

自分の特性と妖力によって板挟みとなり

結果、圧死した事になる。

声や音も…肉片すらも飛ばずに、

血だけが勢いよく飛んだ。

その血が自分の美貌を汚そうが今はそれに構わず、

玉藻前は舌舐めずりをして怪しい笑みを浮かべた。

(むご)たらしい最後を迎えたとはいえ、

頭を潰されようが金鬼はまだ生きている。

体がそこに、残されている限り。。。

頭を攻撃されたくらいで死因には遠く及ばず、

気絶するその反応を見て

本人の意志など初めから必要としていなかったと。

玉藻前にとって、それは当然の事であり

血となり肉となる魂を奪う他ならない。

金鬼の体を魂へと変えさせて

もっとも周りに被害を受けた森はもはや原型もなく

薙ぎ倒された大地の上をのうのうと歩いて帰る姿は

殺し慣れた潔さの現れだった。


更に、その夜の9時半頃・・・

玉藻前「……あぁ、そうだ。

これを機に組織の内部調査も見直す必要がある。

手始めにまずは、

私がその者に見合った仕事を任せておきながら

辞退や棄権した裏切り者には

一度、裁きを与えに行かなくてはならん」

ばぁやさんが営んでいる

桑我町(くわがちょう)の古着屋さんの玄関前まで来て

ふと、そう思い立ったのだ。

何故そうなったのかと言うと

玉藻前のその日、その時の気分によって

仕事が与えられる仕組みはもはや日常的な薊陣営。

それに対し、大多数の人達は喜びやる気に満ち溢れて

期待以上の成果を持ち返って来る事が多々ある。

が、中には初めはやる気を見せる人もいれば

何らかの恐怖や常軌(じょうき)(いっ)した行動に、

とてもじゃないが付いていけないと独自で判断する

常識人に分類される。

玉藻前「(ある奴は、

自分から申し出たから都合が良いと踏んで

許可を出したが数日経って棄権した者。

ある奴には、自分の計画が破綻して

投げやりになっている所を

私自らが指名したにも関わらず、

突然、[仕事を降りる]と辞退した者。

そんな事が続いたもんだから

今の今まで少し根に持っていた。

そして、何より申し出た奴の家はこの近くで

かつ鬼と同居してるとの情報を奴が組織に来た際に

[彼女だけは狙わない]という口約束の下、

本人から聞かされていた事を思い出す。

玉藻前「丁度良い。。。

ついでと言っちゃ悪いが、奴も裁きに行こうか♪」

そう言って体から滲み出るそのオーラは、

玉藻前の悪い癖、悪巧みからの行動故であり

何より……

[薊陣営の(おさ)の機嫌を損ねてはいけない]事が、

絶対的規則である。

ここは、柄谷町のとある空き地………

飾梨と紅葉が出会った場所に玉藻前が足を踏み入る。

閻来「ん?なに???」

真っ暗な家の中にいた閻来は、

1階に(くだ)る階段を降りてる途中で気付く。

どうしてか、嫌な予感が働いたからだ。

閻来「……こっち??」

彼女が向かった先は台所、

入り口付近で台所の隅々まで暗闇ながら

目視で確認すると

一度、見た時には無かった裏口扉の前に

真っ黒い影が仁王立ちしている。

閻来「たっ、玉藻前様っ!?!!!!

どうしてうちにいらっしゃってるんですか?!

今とっくに夜の9時…過ぎてますが

た、大変……とりあえずお茶!

でも残りの茶葉ってあったかしら??(焦)

あ、前に私が買った物が確か~ここにぃ」

獣人となった玉藻前が来訪した事に驚きつつも

少しでも[もてなす]という思いが先行し

慌てて食器棚の下段からお茶っ葉に手を伸ばす。

玉藻前「そう(かしこ)まらんでも()いぞ。

こんな夜分遅くに勝手に来たのは、

他ならぬ私の方さね…すまんな、閻羅閻羅」

閻来「いえ、とんでもございません!

むしろ、私は大歓迎です。うちに来てくれる事が♡」

玉藻前「フッ、そうかい♪

なら……お言葉に甘えようではないか(笑)」

閻来「はい、是非そうして下さっ………」

形だけとはいえ、本人から[了承]してしまったが為に

玉藻前は赤くて鋭い爪を瞬時に立てて

とてつもない速さで閻来を引き裂いたのです。

黒い煙と血飛沫がブワァーーッと

視界を一瞬、埋め尽くす勢いで吹き出した。

目線を少し下げて見ると

首、胴、足を3つに分断されており

同時に手に持っていたお茶っ葉の下筒も

一緒に斬られていてパサーッと散り散りになって

黒い茶葉が溢れる。

閻来「……えっ?あっ。。。

・・・に、げて……ハルちゃ…ん(涙)」

突然、玉藻前に自分が殺された訳も分からず

……でも陽花にだけは逃げて欲しいという

最後の願いとして名を呼んだ時には、

玉藻前が宙を舞い鉛よりも重い尻尾が

頭部から足先に掛けてもろに一撃を喰らってしまい

閻来の体は無くなり目の断面だけが残されたのだ。

こうなってしまえば、

閻来はもう現界に留まる事すら許されず

強制的に冥界へと引きずり込まれてしまう。

閻来は知っていた。玉藻前が直々に

薊陣営の誰かの目の前に唐突に現れる時、

褒美として[妖力付与]の為に訪れるか

もしくは、罰則(ペナルティー)という名の死を意味する事を。

こう見えて閻来は、

薊陣営の(はし)くれではあるものの貢献はしてる方で

必要死も(いと)わない冷徹さを持ち合わせている。

それでも冥界から現界に復帰する為には、

送られた経緯が全て洗い出され罪に問われれば

最低でも1週間は掛かる。

それ以上は、半月くらい掛かる所……

閻来は普通の3日程度で済んでいるのは

殺しまではしておらず殺しの手助けをしただけで

その程度では罪にはならないのだ。

閻来の成果が平均的な所、

それ以下の処遇を言い渡される人達の最後を

日頃からその目に焼き付けられてる事もあり

閻来は当然、知っていた。

玉藻前様と直前まで話している中で

どこか不機嫌そうな口上だったのが、

ずっと気掛かりだった。

でも、その原因も分かって

閻来は条件反射で受け入れてしまうのは、

彼女もまた薊陣営に毒された被害者である事を。


同時刻、場面は変わり・・・

町の光も届かぬ柄谷町の平谷山(ひらややま)では、

真っ黒い夜空で覆われて闇世の奥から

首下まで長い水色髪の女性が露わになる時、

雲に隠れていた月の光が周り照らしてくれる。

目先まで届きそうな前髪に

眩しい光を抑える為に顔に手をやって抑えた時は、

普通だった陽花が瞬きをしただけで

その目に宿していたハイライトの光が消え、

一気に生気を失った目をしていた。

陽花「あら?……わたし、今まで…なに、を??

空が暗い。肌寒いし、

今は夜で季節は秋……もうすぐ冬ね、これは。。。」

いつものキリッとした凛とした雰囲気はなく

無表情さが顔に染み付いてるせいか

ずっと前からこうだったと錯覚する程の変わりよう。

感情が希薄(きはく)で普段の彼女を知ってる人からすれば、

何を考れているのか分からず

別人レベルで怖がられる対象だが、

本人は至って真面目に、今の状況を淡々と把握する。

陽花「い、え…家の場所はここを真っ直ぐ。

それからここをこっちで……ん?空き地??

・・・あっ、確かこの表にあった…筈」

あちらこちらに視線を配り、

陽花の家は平谷山から見て真っ直ぐ行って

左に曲がってすぐの所。

しかし、本人は自分の家がどこにあるのか分からず

特徴を見つけるのも一苦労で

毎回、家の裏手にある空き地に着くのがやっと。

この工程を何十回もの時間を掛けて繰り返す事で

自然と思い出すようになった。

そして家の前に来るや否や

1分間、自分の家の外見を観察し記憶して

ようやく家の中へと入っていく。

陽花の魂を目当てに家の奥で

じっと息を潜める獣が待ち伏せているとも知らずに。

耳を澄ませて陽花の位置を把握しようと試みるも

音や気配が全く感知できない目標(ターゲット)に、

一瞬の焦りが見えたがそれも杞憂(きゆう)に終わった。

あの玉藻前でさえ気付けなかった

陽花の高度な気配遮断は独学で習得したもので

次第に物音や雑音を立てずに暮らす方が、

彼女は安心するようで常日頃から使っている。

その洗練された力は、

今の彼女にも色濃く残されていたのだ。

玄関に入って目の前には、

階段と台所へ繋がる通路から横に見えるのは

お手洗いと洗面所に分かれた部屋。

暗い家の中とはいえ、

陽花の能力でもある暗視が備わっていて

影ですら見通す目を持っている。

帰って来たばかりだったからか

彼女は手を洗いに洗面所へ近付いた所、

ある匂いに気付く。

陽花「……茶葉??台所からだわ」

そうして獣が居座る台所へ

陽花自ら飛び込んで行ってしまい、

入り口から中の様子を伺って見ると

閻来だと暗くて見えづらかった黒い茶葉は、

鮮やかな緑色の葉が床に放たれていた。

陽花「こんな茶葉…家にあったかしら??」

床一面に広がった茶葉を

カサカサと優しくかき集めていると背後から

並々ならぬ殺気を感じ取り、

間一髪の所でシンクの前へと飛び移る。

玉藻前「へぇ~こりゃ驚いた。

ようやく、歯応えのある鬼とご対面かい(笑)

・・・誰?(陽花)

この期に及んで相手に名を聞く暇があったら

自分の身を守ってから言いな!!」

そんな捨て台詞を吐きながら

彼女の目から一時的に玉藻前の姿が見えなくなり、

左右に揺れる目線が上に引くと

普通より少し高い台所の天井スレッスレまで昇って

獣足に変化した踵落としが繰り出される。

陽花「……っ!」

降って来るその足を迎え撃つ形で

彼女は左手を後ろへと引き、

右の手の平に圧縮させた空気を乗せて撃ち出す。

ギイィィィーーン!!!!!!・・・

その攻撃は、玉藻前の姿勢を崩す程の威力で

相手の行動を怯ませて打ち負かした瞬間、

今度は陽花から畳み掛ける。

玉藻前の目の前まで接近すると

先程の右手を瞬時に、黒い手刀へと変えて

攻撃速度をより高めたもので相手の懐を貫く。

彼女の攻撃は確かに、玉藻前の体を貫いた。

貫かれたのと同時に玉藻前も反撃しており、

目に見えない攻撃によって

陽花のお腹と左肩に風穴を空けたのです。

玉藻前「カハッ!

…はぁっ……はぁ…はぁ……はぁっ…はぁ……」

陽花「・・・。

……攻撃以外は、ほぼ捨て身の技になるから

こうなっても仕方ないか。。。」

急所とも言われる場所を正確に撃ち抜かれ、

片膝を付かせる程のダメージを負わされた

玉藻前を他所に目の前には瀕死の筈の陽花が、

ピンピンとしており傷口の容態を冷静に眺めている。

それを見て息絶え絶えの口で、彼女にこう尋ねた。

玉藻前「ず、随分と…余裕そうだねぇ?

その瀕死の体で

これからどうやって戦うつもりだい(苦笑い)」

陽花「ん?辛そうなのは、あなたの方でしょう。

余裕??瀕死か。。。確かに、そうだね(笑顔)

……でも、出来ないとは言ってないよ」

玉藻前「あぁ?それは、どういう事だ」

両手を包み込むようにして重ねると

手の平に向かって、[回呪(かいじゅ)]とそう言って

フッ…と優しく息を吹きかける。

その中心に黄緑色の発光体が浮かび上がり、

陽花の周りを一瞬で彩ったのです。

玉藻前「なっ!

まさか回復持ちだと、その傷でか!?(焦)」

発光体が蝶々型となり完全体になった1羽の蝶が、

傷に触れただけで2つの傷口が塞がったのだ。

陽花「……まだ、やりますか?」

玉藻前「・・・ハッ!!まだ、やる…か。。。

この私に何をほざいておる??

でも……流石、あの閻来を見惚れさせた鬼だねぇ(笑)

何の話?(陽花)

覚えていないのも無理はない。

私が殺したんだからな、お前の大切な奴を♪

生者が死者となって冥界に行けば、

この世界じゃ私しか知り得ない事だよ!!

さて、遊びはここまでだ。

どうやら私にも相性と言うものがあるらしい。

な・ら、お前の心に植え付けられた恐怖を

呼び覚ましてやろうか」

陽花「私に……?ありません」

玉藻前「そんな事は無いさ♪

人間…誰しも怖いものはあるさね。必ず、な?

今思い出させてやるよ、暗雲(あんうん)っ!」

陽花の攻撃は未だ塞がってはいないが削られた妖力は

モクモクと体内に吸収されていき元通りになって

すぐ妖力を大量に消費させる暗雲を使う。


それは、いつの日かに誠也が見た

あのだら~んとした前屈みの姿勢で

背中からドス黒い霧が放出され

一気に、モノトーンな空間に閉じ込められる。

陽花「・・・。

(……見えない。

この暗さ、

視界が霧に覆われてて余計に黒く見えるだけで

暗視とは違う…別の何か、、、

コレを払える保証もないし、まだ根拠に欠ける。

迂闊(うかつ)には動けない、どうすれば。。。)

……ん?アレ…は???」

陽花の目線の先には、

人影らしき影が見えるもしばらくして消え

一つ…また一つと別の場所から現れサーッと流れて

こちらの様子を伺っている視線に気付くとまた消える。

対象が見えなくなっても彼女は警戒を怠る事なく

構え続けて気配を探ろうと目を瞑った。

ドックン……ドックン…ドックン!・・・

その時、ふとこんな事が頭を過った。

それは砂嵐が走る記憶のノイズ、

黒い霧が発生した森の中に閉じ込められて

低い視点でそれを駆け抜けていく視界。

[はぁっ…はぁっ!]と整える暇の無い息遣いで

誰かから慌てて逃げていて周りの草陰が

ガサガサッと一斉に揺れ出す音に驚いて思わず、

足を止めてしまう。

少女の前後に、

人影がカーテンにユラユラと横に流れていくのを感じ

いくつもの影が通過したかと思えた次の瞬間、

少女の顔スレッスレに

黒い影と赤い目の光を放つ何かが、

下から突き上がって来たのです。

黒い影「アギャア”ア”ア”ァァァァ!!!!!!」

・・・・・・・・・・

陽花「……っ(汗)

な、にぃ??今の…記憶は。。。ハッ……!?」

謎の記憶によって

暗雲の中で黒い何かが出た事で警戒を緩めてしまい、

前を向き直してみると

先程の情景が今の陽花でも同じ事が起こったのだ。

その衝撃は、彼女の生気の無い目に

薄っすらとハイライトが蘇る程だったが、

最後に出て来た黒い影が玉藻前に変異した事に

気付くのが遅れて回し蹴りを受けてしまう。

陽花「………あ”ぁっ…(汗)」

バダン!と勢いよく背中を打った事で空間が歪み、

暗がりの台所へと引き戻される。

玉藻前「これが、お前が持つ恐怖さ~♪

自分でも意外…だっただろう?

うぅっ……(陽花)

(む?何だ、この違和感は。。。

前にも似たような事があった気がしないでもないが、

うーーん。まぁ…気にするだけ無駄か)

さぁ貴様の魂を差し出せ!

そうすれば、私と1つになれるぞ。

光栄に思うが()い(笑)」

ズシッとした重たい足が床を(きし)ませながら

ジリジリと陽花の元へと迫って来る。

一方、精神的にもかなり来ていた彼女の中には、

未だにあの情景が再び目に浮ぶ。

陽花「……っ。

(だ…れなの?あなたは、私のなに??私は……誰?)

最後に、私に何か言い残す事はあるか?(玉藻前)

・・・・・・・」

玉藻前「フンッ!

何も……無いのだな?(笑)

そうか。良いじゃないか、それで!!

この世に未練や思い残す事もないのだろう~?

それで良いんだよ。

お前は確かに強い、強いがそれ故に

閻来が隣に居る時のお前は非常に惜しい。

孤高の強さというのは、

一生を懸けて己の孤独と常に戦い競うもの。

それが他者との交流をする事でその力は弱まり、

行く行くは思い描いた通りの道へ進めなくなる!

だから邪魔な閻来を消した。

あやつは別件で排除したに過ぎないが、

それも全てお前さんの為さね!!

もっと上の高みへと進み

その才能を発揮して私達を愚弄(ぐろう)する者、

愚かな人間共にその才能を世に知らしめてやるのだ♪

そうすれば、同じ孤独と才能を持つ者同士……

きっとお前さんも私と同じ景色が見られるぞ。

どうだい、名案だと思わんか?(笑)」

玉藻前からそう提示されたのは勧誘だった。

こんな絶望的な空間で陽花を誘うという考えは、

彼女がたった今、決めた気分によるもの。

その言動には理解を示す事は出来なかったが、

それでも、これだけはすぐに答えを出せた。

陽花「………ない。

んん??(玉藻前)

私に才能があるとか、孤高がどうとか

そんなものは要らないっ!

そんな事より…も私は、私を

必要としてくれる人なんてこの世に1人も……」

フラッシュバック・・・

???「要らない…だなんて

そんなに自分を卑下しないでくれ、幼き子よ。

・・・(睨む少女)

ふーん……少し警戒されているようだな。

では、こうしよう。

君はこの妖魔界で最強とも呼ばれる妖怪が、

2人に居るのは知っているか?

・・・(少女)

その者達は、

小規模でありながらそれぞれ別の組織を持っていた。

色々、妾も少し考え直し2人を見習って

鬼族だけの組織を作ってる真っ最中でな〜?

今じゃ、ちょいとばかしヤンチャで危なっかしくも

賑やかな子達で溢れ返ってるんだ。

お陰で以前より毎日が楽しくて退屈はしない(笑)

妾は、元気っ子相手もそれはそれで嬉しいけれど

純粋にあなたのような少しでも心の優しい子が、

組織に居てくれるだけでも十分、役にも立てる。

それに、その力は…誰かを[癒す力]だ♪

前線に立っていながら私達を癒せちゃうなんて

こんな良い人材、他に居ないさ。

つまりは……鬼族の長からの勧誘という話にはなるが

妾は、別にこれを断ってもそれで良いと思っている。

何故だか分かるか?

???(少女)

それは君達のような幼き子達には、

生きる上で必要な選択を日々…迫られるからだよ。

ちゃんとした判断を持ち、ちゃんとした意志を持って

その行動を実際に取れるかどうかを見極める為の〜

いわば、抜き打ちテストみたいなもの。

あなたの……これからが掛かった大事な儀式。

まずは自分の手で選ぶといい、

それもまた成長の一環だ。

自分の信じる道を切り開いてこその選択で見つけた

出会い一つ一つを大切に過ごせば良い。

妾の勧誘は、な?

未練や進路……今後に悩む子達を導いたり、

1人でも救えるなら救うといった思いから

成り立っている。

この手を取るか…取らぬかは、君自身が決めなさい!

……あなたは他と違って話がよく分かる子だ♪

だからこそ妾もこうしてきちんと伝えられるんだよ」

自分とそう変わりない姿で

手を差し伸べてくれる紅桔梗髪の少女が、

着物姿で優しく微笑んだ。

それを見て水色髪で片目を隠した女の子は、

瞳を潤ませて目から熱いものが流れた。

それが、少女の初めて流した涙だった。

フラッシュバック終了・・・

陽花「……っ!?

・・・・・。

そうだ、全部……思い出しました。

な、んで…私っ……今まで

こんな大事な事、忘れてたんだろ(涙)」

玉藻前「・・・。

そうかい、そういう事なら交渉決裂だね。

見損なったよ!!

お前とは少し分かり合えると思ったんだがな~

とんだ見込み違いだったようさね。

大人しく私の前から消えろぉ!目障りだ(怒)」

目頭を熱くした涙が顎筋へ流れていくと

目元を暗くさせた陽花の体から赤いオーラが、

一瞬…過りそこから明らかに空気が変わった。

それは、玉藻前も予想だにしなかった

劇的なまでの陽花の進化が目にも止まらぬ速さで

左の太腿(ふともも)から胸元、頭上にかけて

鋭い足捌きが玉藻前の衣服を貫通して引き裂く。

玉藻前「ハァッ?!

……ア”ア”アァァァァァッッッッ!!!!!!」

逆Sの字のような軌道を描いて

片耳を削がれた傷口から垂れた血が片目を閉ざし、

体中の血液が台所の至る所に飛び散る。

そこには、四大妖怪の威厳はどこへやら

その辺に居る普通の妖怪と

何の変わりない動きで激痛による痛みに耐えながら

床を転げ回っていたのだ。

玉藻前「ア”ッーア”ッーア”アアァァ!!!!!!

きぃ、きっ…さまああぁぁぁぁぁ!!!(激怒)」

陽花「何ですか?

私は正当防衛として

至極、真っ当な事をしたまでです。

あなたこそ、

そろそろお帰りになってはいかがですか?」

相手を威嚇するような無駄のない立ち姿に

桃色の瞳には自信に満ちたハイライトが宿っていた。

これ以上ない程の形勢逆転と言わんばかりに

四大妖怪の玉藻前を前にしても一歩も引かず、

いつでも相手の急所を付けるように構えている。

危機迫るこの状況から陽花の魂を狙わず、

ここから立ち退くのが賢明な判断……

だが、玉藻前は違った。

この期に及んで、未だ不気味な笑みを浮かべており

致命傷を二度も負わせた脅威たる相手に

まだ余裕そうな顔付きだった。

陽花「まだ、懲りてないのですか?

そうですか。。。

では、今度は確実に…仕留めます!」

冷たくそう言い放った陽花の目は、

桃色から赤みがかった緋色の瞳へと変わり

床を蹴り上げて一気に間合いを詰めた。

玉藻前「・・・ニヒッ(笑)鎮まれぇっ!!!!!!」

陽花「……っ!!」

玉藻前の一言によって

彼女の体にノイズが走り、動きが止まったのだ。

陽花「???

な、何をっ?!(汗)

止まれ、その場で(ひざまづ)け!顔を上げろ(玉藻前)

ぐっっっ…んん?………っ!?」

玉藻前「これは、頂いておくぞ?さようなら♪」

何らかの方法で体がジャックされ

膝を付かせて少しでも抵抗しようとするも

それも虚しく顔を上げさせられた後、

彼女を待っていたのは

自分の魂を最後に抜かれた瞬間だった。

魂を抜かれた事で抜け殻となった体は、

ふいに後ろへと倒れていき

玉藻前に見守られながら体が徐々に消えていく。

陽花「(あっ、またわ…たしっ……は。。。

最後まで…お役に立てないままなの?ごめんなさい。

……折角、あなた様の事を思い出せたのですから

もう一度…お会いしたかったです)

申し訳ございません、———様」

その名を口遊む時には、

もう既に玉藻前の前から姿を消した後だった為に

上手く聞き取れなかった。

本人は玉藻前の排除を

最後まで出来なかった事を心から悔いていた。

そこが、彼女の想いに反してしまい

役に立てていないと思い込んでいるが、

玉藻前のあの深傷はちゃんと意味のある功績となる。

何故なら。。。

玉藻前「このっ!!クソがっ!

つくづく鬼共は私の邪魔を、私に恥を…私に刻んだ

この忌々しい傷を負わせるとは何事だ!!!(怒)

今すぐにでも喰らって

こやつを消し炭にしたい所だが、

[貴重な回復源]を無駄には出来ぬ。。。

このぉ……このおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!」

と陽花の体が消失した所を

執念に、ドスドスと踏み付けては

怒りを何度も何度もぶつける。

自分の足が血を流そうが無くなろうが構わず、

この激しい(いきどお)りを抑えられるのなら

いくらでも踏み潰した。

だが、それが消える事は無かった。

玉藻前「もう許せん!

この世から、この世界から1匹足りとも

鬼を…鬼の血を引く者全て狩り尽くしてやる!!

今に見ていろおぉぉぉ!!!(怒)」

彼女はこの時、知らなかった。

その考えが自らの破滅を招く事になるとは

……決して、[敵に回してはいけない相手]に

手を出したのだから。


翌朝・・・

学校は相変わらず、騒然としていた。

一昨日の事もあり

1学年だけが知っていた筈の友理の情報が

全校生徒の耳にまで行き届いていたのだ。

そのせいか朝から友理の調子を見に来ようと

わざわざ1年Aクラスの廊下前に、

大量の上級生達が束になって集まっている。

いわば、野次馬である。

それには目もくれず、友理は相変わらず包帯姿のまま

いつも通りのルーティンを過ごしていた。

それを見て上級生達までもが

恐れ(おのの)く声や心配の声が溢れる中、

ゴニョゴニョ話の大合唱を巻き起こしていて

廊下に居る先輩達がカオスになっており

逆に友理以外のAクラス全員が、

鬱陶しがっていたのだ。

すると、情報を流したであろう

女子生徒が今更ながら[何でこんな事に~…(汗)]と

後悔している所に友理と目が合った。

まるで待っていたかのように、

その目には怒気を含んだ鋭い眼光を放っていて

今までの友理ではまずあり得ない形相もあり

一気に顔が青ざめて1人ガクガクと震えていた。

それを他所に、桜もまた別の事で萎縮(いしゅく)していたが

周りの雑音のお陰か表情も徐々に和らいでいき、

真剣な眼差しを机の下に送っている。

そこへ木からひらひらと落ちていく葉っぱが止まり

ふと周りの音が消え、クラスの人に気付かれる事なく

駒は友理の目の前に現れた。

駒「……昼休み、お話したい事があります!

絶対に来て下さいね。友理さん!!

ん?あ、はい…(友理)

うぅ、絶対ですよっ!」

そう言って目の前から駒の姿が忽然と無くなって

振り返ると駒はいつの間にか席に座っていた。

野次馬の声も、迷惑がっているAクラスの生徒が

声を大にして発言する声、台風が接近しているのか

教室の窓をバンバンと叩く音が一斉に流れた。

友理「・・・。

そっか、駒ちゃんは……そうだった。。。」

駒の力に何かを確信した友理の囁き声でさえ、

上級生との言い争いによって揉み消される。

友理(騒がしいにも程がある。

もう少し静かに出来ないかな~…というより

どっか行って欲しい。

まぁ、そんな都合の良い話ある訳ないが……)

と諦めかけたその思いに応えるように、

あの人が仲介に来てくれたのだ。

神恋(かれん)「皆さん、廊下ではくれぐれもお静かに

ここは1年生のクラスがありますし、

何より私達の学年にまで声が聞こえていたので

少し注意しに来たのですが、出来ますよね♪」

男子生徒「す、すみませんっ?!!!!!

わざわざ四宮様が来て貰っちゃって

直ちに、帰らせて貰います!!なぁ?!(焦)」

女子生徒「は、はいっ!勿論ですとも(汗)」

全員「で・はっっっっ!!!!!!」

神恋「あっ…廊下は、走ってはいけませんよ!」

全員「はい、そうでした。すみません(滝汗)」

更に注意されてガクガク歩きで

階段を登っていく姿を見て

神恋は、微笑みながらAクラスの皆んなに

お詫びと評してお辞儀をしていた。

A組一同「四宮様、何もそこまでっ!!

あ、頭をお上げ下さい?!!!!!(焦)」

神恋「いえいえ……皆様には、

とてもご不快になられたと思いますので

この程度…何ともございません。

お気になさらず。。。

……それでは皆さん、今日も良い学校生活を♪」

Aクラス一同に深々と1分間の礼が終わると

その場を潔く離れていった際、

神恋は友理を友理は神恋を見ていた。

それはどこか冷たく相手を見下すような目、

生徒達に笑顔を振り撒く人気者と

必ずクラスの中心に居る人気者とは、

思えない表情に気付く者は居ない。

双方の距離が遠かっても尚、

友理は目元を暗くさせながら前を見続ける。

未だに、Aクラスの空気は最悪で

野次馬が居なくなれば

皆んなの矛先は友理一点のみとなる。

神恋に向けていた申し訳なさなど微塵も感じさせない

人気者の枠では、もはや運勢の差だ。

これに対し、友理は何も言わない。何も思わない。

何故なら、人間の愚かさを…醜さを知っているし

これから手の平返しが来ようとこまいが

それも人間の摂理だと。

その時まで、待っていればいいと

だから何もしない。。。


昼休み・・・

朝に宣言した通り

自然な流れで友理を教室から出せるように

駒は先んじて透明化する。

2人行動してる所を他の人達に見られると

また面倒な事になり兼ねない。

そうすれば、友理がどこへ行こうが

気にも留める人は居ないと考えたからだ。

だが、その考えは甘かった。

もう1人、駒と同じく話したがっていた雫と

相対する事になるとは、

駒の計算には無かった唯一の存在。

一目散に、友理の手を取り

どこかへと風のように走り攫われてしまったのだ。

駒「……友理っ!?(焦)」

男子「え?友理???」

友理(・・・。

大丈夫!!こっちは、私が何とかするから

駒ちゃんは気にせず先に行ってて!)

その声が聞こえた時、

駒は追うのを少し躊躇ったが…今の姿なら行けると

必死に2人を追いかけた。

屋上・・・

雫「……はぁっ…はぁ……はぁっ…はぁ……はぁっ

…はぁ……はぁっ……り、んどうさん…は。。。

何でっ!どうして!

私との連絡を取ってくれなかったんですか!!」

屋上に来て聞きたい事が言いたい事が

先張り過ぎて荒い息を整える間もなく、

体力の限界すらも跳ね除けて

今にも泣きそうな目を潤ませながら

ようやく言葉にして言えた。

友理「・・・」

雫「どうしてっ、何も言ってくれないんです!

私…じゃ、私じゃ力不足だからですか!?

2日前だってそうです。

放課後まで私、ずっと……林堂さんの事を

ずっと待ってたんですよっ!!(涙)

私1人だけじゃ話せないから

芽亜さん達にも協力を仰いで。。。

でも…でも、何も返ってこなかった!

その怪我だって交通事故……だって

芽亜さん達から初めて聞かされた時は、

私の知らない所で何もかも話が飛躍し過ぎてて

もう何が何だか分からなかったです。

でも、そんな事があったなんて

林堂さんからは何も聞けてませんし、

何も言わないのは何か訳があったんですよね?

だから自分を納得させようとしたけど、

駄目だったんです!!

やっぱり林堂さんの口から言って貰わないと

自分は納得できない!

何より…私を必要としてくれなかったぁ!!」

友理「・・・っ」

フラッシュバック・・・

???「私を必要としてよ、友理♪

ねぇ、良いでしょう!

私だって友理の力になれるなら本望なんだよ☆

だから、一緒に頑張ろうよ!!ふふ」

そっと———が手を握ってくれた

あの時の温もりが私には忘れられなかった。

咄嗟に取ってくれたその行動に

私の心が救われたのは、

ただの偶然だろうとその時は思っていた。

けれど、それは違った。アレは。。。

フラッシュバック終了・・・

雫「私は本当に、林堂さんの力になりたかった!

私に出来る事は少ないけど、

相談でも、何でも困ってる事があるなら助けたい!!

私に……何か1つでも…1にも満たない

ほんの些細な事でもいいから

林堂さんの力に少しでもなりたい、友達だからっ!」

自分の両手を掴みながらそう言うと

不安な気持ちを押し殺して勇気を出した。

その時、2人の周りを

ビュービューと吹き乱れる風の鳴き声が

より一層、強さを増していく中で

彼女は長い沈黙の末、口を開いた。

友理「・・・。

……友達??

私、雪乃さんの友達になった覚え…ないんだけど。

・・・えっ?(雫)

思い込むのは勝手だけど、

それってただの私の役に立って

自己満足がしたいだけ…なんじゃないの?

そんなっ……私、そんな事!(焦る雫)

良いじゃ~ん、それで。。。(笑)

だって、他人のピンチにわざわざ駆け付けて

端から友達でも…何でもない

赤の他人の為に助けたいって事でしょ♪」

雫「他人じゃない!!

林堂さんは、他人……なんかじゃ…ないもん(泣)

う”っ、ゔぐぅぅぅ…ハァーッ……ハァーッ。

私はっ………私は、ただっ!

林堂さんの状況もろくに知らされてないし、

交通事故の怪我だって

実際に、今こうして見るまでは想像も付かなくて

自分に何が出来るのか必死に考えたんです。

でも、分かんなくなっちゃってぇ……(涙)

思ってた以上に重症…だったから。。。

私の力じゃどうにもならない問題かもしれない

けど、このまま林堂さんを皆んなが除け者扱いにして

1人になってる姿を見るのは出来ない。

私だってぇ……見てて辛かったからぁ!!

はぁ……はぁ…はぁ……はぁ………はぁ…はぁ…………

だから…私が絶対、側に居ますから

信頼できる誰かと一緒にいれば、

きっと何とかなりますよ!

それに、お友達がピンチな時は助けて

当たり前の存在…なんですよっ!!

だからお願い、手伝わせて」

いつも以上に真剣な顔で真剣な眼差しで

こちらを見てくる雫は自信を持って手を差し出す。

その手は小刻みに震えていたが、

きっと…彼女なら必ずこの手を取って応えてくれると

根拠もないそんな淡い気持ちを抱いてしまった。

友理「・・・はぁ、雪乃さん。

は、はいっ!(雫)

言いたい事は全て吐き出せた?これで満足した?

だったら、もう…こんな話、やめにしよう。

こんな無意味のない時間に費やすだけ無駄だよ。

雪乃さんは必死に私を説得してるみたいだけど

それで私の意志が変わる訳じゃないし、曲がらない。

そう決めてるの。だから……邪魔しないで」

雫「・・・え?何で??

何でぇ、どうして…そんな事が言えるんですか?

無駄じゃない、無駄な時間なんかじゃ。。。

そうです。

いつもの…いつも通りの林堂さんに戻って下さい。

何だか様子がおかしいです!!

目を……目を覚ましてっ!」

友理「私は、この通り普通だよ。

ずっとずっとずーーっと前から

雪乃さんと出会った時からそうだったでしょ」

雫「違う!違います!!

少なくとも出会った時は

そんな風には感じなかったですし、

林堂さんはそもそもこの世界では

右も左も分からない[人間]だって言ってた。

私だけで調べてたら、きっと辿り着けなかった事を

先輩達と出会って火車との一件で

林堂さんも私達と同じ[妖怪]って分かった!

それが、どんなに嬉しかったか。。。

だって私には、

人間がどういうもなのか話には聞いていたけど

にわかには信じられなくて理解が出来なかったから

最初は凄く怖ったんですよ?!

実態もよく知らなかったけど、

林堂さんと関わって…事情を知った上で

お友達にもなれた!!

それから色んな事を特別部隊で勉強して学んで

沢山の経験を今もこれからも積み上げられる。

今がその途中なんですよ!

私も少しずつだけど、強くなってると思います。

林堂さんも自分が妖怪って分かって

自分が何者なのかちゃんと突きとっ……」

友理「もういいよ、そんな…どうでもいい事。

どうでも良くなんかない!!(怒り雫)

・・・。

私が誰で、私が何者だとか探してくれた時は、

素直にありがとうって…今なら言える。

だけど、これは私自身が一番分かってる問題なの!

軽々しく他人の事情に、

踏み込めるなんて思わないでくれる?(睨)」

雫「……っ(汗)

じゃ、じゃあ…特別部隊として

先輩達と一緒に活動したあの時間は

一体、なんだったんですか?!」

友理「さぁ?そんな昔の事、忘れちゃった」

雫「忘れないで下さい!

あんな…あんな、皆んなとの大切な時間を…………

忘れる方がどうかしてます」

友理「・・・。

もういいでしょ?

やり場のない気持ちを私にぶつけても

本気だったのは、雪乃さんだけで

私にとってあの部活は、良い意味でも悪い意味でも

お荷物でしかないただの集まりだったじゃない。

ほら、こんな最低な事も普通に言えるくらいには

本当の私は冷酷なんだよ。

(いや)になった?(きら)いになった??

それなら、さっさと私から離れて

どこかでその気持ちを叫んで来たらどうなの?」

雫「・・・。

はぁっ……はぁ…はぁっ……酷い…ですぅ。

酷いです!私が……こんなにも…こんなっ……にも

林堂さんの事を心配…にぃ………(泣)」

友理「言い訳は聞かない。。。

まるで、こっちが悪者みたいに見えるじゃない。

ここまで言わないと分からないの?

これ以上、足手纏いな雪乃さんとは

今日で友達ごっこもお終い!!!

・・・っ!(雫)

あなたは、あの子とは違う。。。(小声)

帰りなさい、あなたの…お友達の所へ」

雫「・・・。

……はい、分かりました。もう戻ります」

友理「そうして…」

息を吸う事さえもままならない重たい空気が、

屋上を支配する。

顔をプイッと背けるだけの友理と

ぎこちない動き方で後ろを振り返る雫の目は、

どこか疲れ切っていて生気のない顔で

まだ夕方に差し掛かっていないにも関わらず

雫の肌が白く見えた。


屋上を出ていく際も

互いに振り返る事もなくヨサヨサと揺れながら

出口へと入ってく雫の横を

透明化を解いて待っていた駒の存在にすら

気付かないまでに疲弊していたのだ。

駒「・・・」

そこから屋上に居る友理の様子を覗いてみると

友理は、街の方を向いており顔は見えなくとも

その背中には悲しみを帯びて立ち尽くしていた。

駒「……っ(涙)

・・・スゥー…はぁ。。。

……あの友理さん、ここまで勝手に付いて来て

2人の会話を盗み聞いてしまってごめんなさい。

・・・(友理)

でも友理さんの事情については、

正確には私もまだ知らない事だらけだと思いますが

それは、詮索しません。。。

そうすると決めたので。

ですが…これは……あまりにも

さっきの方が報われない気がしていて。

あそこまで厳しく

突っぱねる必要があったのですか?」

友理「・・・。

今の私にとって彼女は、

邪魔で障害になり得る…だから仕方ない事なの。

そんなに、ですか?(駒)

……うん。。。

私が何の為に、この世界に戻って来た意味が………

目的が…消えるには十分過ぎる程度かな。

……っ!?(駒)

雪乃さんを私から引き剥がそうとする度に、

あの子が何回もチラ付いた。

まるで、その子に止められてるみたいで

それはそれで嬉しかったけれど、

目の前に居る彼女は彼女ではない。

ちょっと似てたって…だけ。。。

だから、その場限りの嘘を吐いてでも

彼女を無理矢理、引き剥がすしか方法が無かった。

低級妖怪の彼女と上級妖怪の私達では、

住む世界も過ごした時間も…欠点だって弱みになる。

その武器を使ったに過ぎない。

一番、心に深く突き刺さる言葉を。。。」

駒「そ、それだと……

その場限りの嘘じゃなくなるじゃないですか!?

それじゃあ余計、関係が戻らなくなりますよ!!

良いの。私にはあの子が居るから(友理)

・・・っ(汗)

本当に、本当にそれで良いんですか?

それをして苦しむのは友理さん自身……なんですよ」

友理「分かってる。分かっているさ。。。

そんな事、だが…私にはあの子の助けがあったから

支えてくれたから上手くいっていた。

それなのに、私は長い時を過ごしておきながら

友人付き合いとか……人間関係だとか

まともに取り合わなかった償いが災いしたのだろ?

・・・(駒)

それで良いんだよ。

自分で勝手に引き剥がしたんだから自業自得、

私だけが背負っていけば良い話だ」

駒「・・・。

…本当に、私が今まで接してきた

友理さん……なんですもんね」

友理「何度も言わすな。

あの時、駒ちゃんにはそう伝えた筈だ。

分かるだろう」

駒「……はい。

だから、未だに信じられないんです。あの時の事を」


回想・・・

これは2日前の夜、玉藻前が無人トラックを使って

友理に正面衝突した直後のこと。

キュウゥゥゥ!!!!!!!!!!

友理「……あっ………」

遠くの方から僅かに聞こえた筈のブレーキ音が、

突然、真横にまで急接近していて気付いた時には

(まばゆ)い光が視界を埋め尽くした。

次の瞬間、それはあまりにもたった1人の体で

受ける衝撃とは思えない程の電撃が全身を駆け巡り

とてつもない速さで後方へと吹き飛ばされてしまい、

同時にトラックの荷台部分が破裂する。

バンッッッッ!!!!!!

友理の体がフワッと宙を舞いながら

やがて空気抵抗を受けていき、

頭から地面に落下しただけに留まらずそこから

反り返る勢いで足、臥位(がい)、背中といった順に

もう4回転ほど打ち付けられた。

それから静かに行き着いた場所は、

反対側の横断歩道の白線上に覆い被さる形で

友理が倒れていた、その時だった。

2つのカバンに空いた大きな穴から小さな人影が、

四つん這いの状態で出て来たのだ。

駒「うぅ……ふわ~(あくび)

んん??

何ですか、今の大きな音はーー?

・・・え?友理さんっ!?!!!!(見開く)

友理さん、大丈夫ですか!

返事をして下さいっっっ!!!(焦)」

ポテポテと足音を立てて

木霊姿の駒が急いで駆け寄っていくと、

重い体を一生懸命に揺さぶった。

駒「ねぇ、友理さん!!友理……さんっ!

起きて…起きて……返事をして下さい。

友理ぃ~さあぁん………(涙)」

揺さぶった体はほぼ微動だにしておらず、

自分の力の弱さによる絶望と

友理が消える前に、せめて声だけでも聞きたい思いで

木に止まるコアラのような格好で友理にしがみ付く。

駒「うわあ”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁんん!!!(泣)」

必死で必死に腕にしがみ付く木霊が

今、耳元で大泣きしており山でもない街で

その鳴き声が激しく木霊したのです。

すると、そんな駒の声に反応したのか否や

体が突然、浮き上がる感覚…ではなく

実際に空高く放たれた駒の重心が背中にいき、

道路に叩き付けられる。

その衝撃も、凄まじいものだった。

ズデーーンッ!!!・・・

駒「……ア”ッ、アッ…ぁはあっ?!

イ”ダイィィ!!!!!!痛ぃい!痛い痛い!?(泣)」

道路沿いで今度は、

ワンワンと犬のように鳴き喚いていて

状況が状況なだけに

後ろで服を(はた)いてる友理なんかよりも

そっちのけで痛みに悶えている。

駒「う”ゔぅぅぅ!!(涙目)

痛ぃい~痛ぃい~たいたいよぉぉぉっ!

駒ちゃん、大丈夫そ?(友理)

ムリムリムリ、無理ですぅ!!

こんなのぉぉいくら何でも耐えられません(泣)」

友理「じゃあ治してあげるね」

さりげなく駒の背に触れない程度で手を伸すと

瞬く間に白い光に包まれて

そよ風に頬を優しく撫でられる感覚を覚えた時には、

既に痛みが引いていたのだ。

友理「はい、これで大丈夫。簡易的な治療だけど

このくらいの打撲程度ならすぐ治るんだよね」

駒「へぇ~凄いですね!

あっという間に痛みが無くなりました。

ありがとうございます♪わぁ~本当に治ってる!!

良かった、これでよかっ……ん??

ん?どうしたの(友理)

・・・。

ギャアアァァァァ!?!!!!!!!!!

何で生きてるんですか?!(汗)

ていうか、その回復っ!自分に使って下さいよ!!

何で何事もなかったかのように、

振る舞ってるんですか!?逆に怖いですぅ!

冥界の死者として現れたとかですか!!(バツ目)」

友理「え?だって無傷だし、

あの程度で死ぬなんて事ある訳ないじゃん」

駒「・・・。

……バッ、化け物だああぁぁぁぁぁ?!!!!!」

友理「うん、ありがと♪(即答)

何故にそこでルンルンなんですか?!(駒)

だって、久々に言われたからね。

昔は恐れられて当然だったのが懐かしくて

何だか嬉しいなって思って、つい(笑顔)

いやいやいや、怖いですよ!普通に考えて!!(駒)

うん、だからありがとう。思い出させてくれて」

駒「何もしてませんっ!(焦)」

友理「じゃあ、そろそろここから離れよっか。

ゔゔぅぅぅ……ん?何でですか??(駒)

トラックに轢かれた影響で

今この街全体が炎のパレード化しちゃってて

犯人の目を欺く為とはいえ、

再現するのは流石に骨が折れたね~

もたもたしてると時期に、ここも燃えるよ?

そういう事は早く言って下さい!逃げましょう(駒)

ハハッ、冗談だよ~☆ちゃんと鎮火はしてるし、

広範囲に幻術を展開させてるだけだから

この街には、もう火の手は回ってないよ♪」

駒「もうっ!

冗談…言ってる場合ですか、さっさとささ???

美味しいよね~(友理)

笹は、美味しくないですよ?

……てか火災が嘘っ!?しかもトラックにっ?!(焦)

今更~でも凄いでしょ☆驚いた??(笑う友理)

ムキイィィィィ!!(ピキッ)

もう、もう~…もういいですっ!

お腹空きましたし、疲れました!!

もう一歩もここから動きたくありません!

今日は、私がお泊まりに来てるので

友理さんがぜ~んぶやって下さいね!!」

両ほっぺ共に、ぷっくらと膨らませた木霊が

拗ねて腕を組んでいる図。

友理「はいは~い、良いよ。

私も丁度……駒ちゃん持ちたい気分だったから

さぁ、おいで♪」

駒「なんか嫌です。。。

じゃあ置いてっちゃうよ?全速力で(友理)

いいです、分かりましたっ!

てか何で全速力で走るんですか!!

私達、木霊への嫌がらせですか!!!

本当に轢かれたんですか、この人っ!?

もうプリプリしちゃって可愛い奴め☆(友理)

やっぱり離して下さあああいぃぃぃぃ!!!!(叫)」

ジタバタと暴れてみるも

友理の手中に収まってしまえば、

本来なら身動きが取れる筈なのに

今回は全くビクともせず

逆に、怖くなってしばらく大人しくなったとさ。


帰宅・・・

友理「じゃあ作って来るね~

部屋でもリビングとかでも待ってて良いよ」

駒「は、はい。

さ、さっきはああ言いましたが

そこまで張り切らなくても良いので(汗)

軽くですよ!

大丈夫だよ〜もう、どこも痛くないから☆(友理)

そう…ですか。。。」

つい先程、ムキになり過ぎて勢いで言ったとはいえ

本人が大丈夫と言われてしまえば、

何も言えなくなってしまうのだ。

それから1時間も経たない内にこの家のどこに、

そんなご馳走があるのかと問いただしたくなるくらい

豪華な食事を満喫したのであった。

友理の部屋にて・・・

駒「・・・」

この部屋に来てからといい、

ぽっかりと黒く塗り潰された木霊の目は、

徐々に伏せていき眠そうな眼差しで

動き回る友理を追っていた。

止まったかと思えば、また動き出すを繰り返し続けて

10分が…経過しようとするも未だ何かを探している。

友理「えっと、やっぱりこっち?

いや、あっちかな??

うーーーん。でもこの前、見たしな~

あ、でもでも!!まだ向こうはまだかも。。。

あの~……さっきから何を探してるんです?(駒)

確か、ここら辺にぃ…え?あ~教科書だよ。

あ、あったあった!

やっぱり床下収納に仕舞ってたか~♪

通りで無い訳だ!!」

駒「いや、何で床下収納に

教科書……仕舞ってるんですかっ!

どういう管理したら、そうなるんです?!」

友理「ふっふふ。いや、これ昔のなんだけど。

へっ?(点目な駒)

現代の教科書と昔ので何か違うのかな~って

同じ学校に通ってた事を思い出したんだよね☆」

駒「昔って。。。

友理さん、今いくつなんですか?(汗)

——————だけど??(友理)

えっ!?え?えぇーっ?!!!!!

いやいやいやっ!!全然、そんな風には……

ていうか、それだったらもっとこう~

なんか体に変化とかありません?

それじゃあ、だって……」

友理のあり得ない言葉に対し、

眠い(まなこ)がひっくり返る程の衝撃を受けて

駒は、友理の全身をひたすら見続けた後に

153cmしかない幼稚な体を見て

どこかしらは変化がある筈と指摘した所。。。

友理「・・・。

駒ちゃ~ん、他人の劣等感(コンプレックス)に触れるのは

あんまり良くないと……そう思わない??(笑顔)

ギャーー何でもございませんんん!?(焦る駒)

まぁ確かに他人にそこまで言わせる私も悪いが、

何なら私も前々から疑問に思ってただ・か・ら

そう思うのも自由だよ?

でもね……私だってもう少し大きくなりたいとか

憧れはあった。確かにあったさ。

でも仕方のない事だなんて

世の中、探せばいくらでも溢れてるんだから

そもそもこの話題に触れていいのは、

私の仲間と———だけにしてるんだよ。

それでも血で血を争うくらいには、

ギッタギタにしてやるが。。。

えっ?!い、いい今…なんて言いましたか!(駒)

ね~駒ちゃん、それでもこの話を持ち出す?

出すなら、、、私としては、

駒ちゃんをタダでは生かしておけない!

……いかっ!?(焦る駒)

そのくらい無謀な自滅を招く事になるから

私は、お勧めしないって言ってるの。

分かった?(怒)」

駒「ひえぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!(泣)」

友理の怒りの笑顔を間近でしかも頭を固定されていて

物理的に目が離せずにいた数十秒間は、

地獄よりも恐ろしかった。

そこから開き直るのは早く教科書へと興味を逸らす。

友理「さ~てさてさて。

昔のと今ので、どれくらい違うかな~♪♪♪

ビジッ!!!・・・

あっ……ちゃった。。。」

駒「ん??何がですか、あっ…(汗)」

床下収納から古い教科書を引っ張り出して

ページを捲るワクワク感から持ち替えた所、

紙の束とは思えない程の音と共に

紙吹雪が床に落ちていく。

それを息を吹き返した駒も見て唖然としていて

変わり果てた姿で現代の教科書が発見された。

友理「ど、どうしよう!(焦)

これ明日~使う教科書なのにっ!?

あぁ~あ。

やっと久々の体を取り戻せたっていうのに、

また力加減…間違えちゃった(汗)

どうしよう、これ。まだ戻るかな?」

そう言って紙吹雪となった教科書に手をかざすと

見た事もない魔封陣が突如として展開され浮遊する。

小箱のような形へ線が伸びていき、

そこへ金色の光柱が発現したのを見て

駒はずっと怪訝そうな顔をしていた。

そんな駒の反応を他所に[んんー…]と唸っており、

時期に[はぁ~……駄目か]と呟いて

その柱をそのままにして別の事に取り掛かり始めた。

駒「え、これ…放置するんですか?!」

友理「え?いや、だって~

明日、使う物が今日中に直らないんじゃ

もう手の施し用がないもん。

修復には砂時計並みに時間が掛かるからさ~

それ、あまり触らないようにね。溶けるから」

駒「は、はぁ……溶けるっ!?(汗)

よく分かりませんが、分かりました。

ん?古い教科書は読まないんですか??

……あー、もう飽きた(友理)

えぇーーっ?!!!!!

あんなに、探しておいて読まないのですか!!

また別の機会に見る時、

無くしてたら困るのは友理さんの方ですよ!?

というか、こんな散らかってましたっけ??

前は、綺麗好きだって言ってませんでしたか。

それに…先程の言葉、

[久々の体を取り戻せた]って言いましたよね?

本当に、あなたは私が出会った

友理……さん…なんですよね??」

友理「・・・そうだよ。

私は、正真正銘の林堂 友理っ!

そうじゃなかったら、トラックに轢かれた時点で

とっくに駒ちゃんを殺してる。

そうしないのも、

今まで…私が弁えてきた軌跡のお陰だね。

駒ちゃんやAクラスの皆んなと過ごした時間、

学校の先生や先輩方……

私が関わった全ての人達との思い出も記憶も

全部、私が持ってる。

全員、私の友達で仲間だよっ!!んふふ♪

これが私が私である証明、少しでもなった?」

駒「うん、なってる。

ちゃんとなってる…と思います。

それは本当にそう思いたい……ですが、

やっぱりどこかまだ信じられない自分が居て

信じたいのに信じられなくて……ごめんなさい」

友理「いい、そう畏るでないぞ…駒。。。

……っ(駒)

今まで、ろくに事情も話せなかった

得体の知れない妾の事を信じ気にかけ、

共に歩んでくれた事はとても感謝している。

ありがとうな、駒♪

・・・友理さん(涙する駒)

特別に、妾の正体を事前に話しておこうと思う。

これから誤解を生まない為にも、それでだが……」

駒「・・・いえっ!

私はそれを、受け取る事は出来ません!!

さっき…ようやく気付きました。

友理さんは友理さんなりの事情を抱えているのは、

何となく理解はしてるつもりです。

でも、だからと言ってその話を

私だけが簡単に聞いて良い筈がない気がして

そういうの……贔屓?は、欲しく…ない!

贔屓じゃない。そんな事は決して……(友理)

それに、友理さんにだって目的があって

帰って来たって御守りを渡してくれた際に、

話してくれましたよね!!

だったら私はそれを尊重します。

その答えだけは

元々、決めていたその後でも構いません。

待っています、私はっ!だから、だ…から………

そんな苦しい顔をしないで下さぃい(涙目)」

その時の顔は、苦悶に満ちた表情をしていた。

彼女は何度も明かそうと決めておきながら

何も言えない自分が心底、情けなく思っており

申し訳なさから駒にだけは、

どこかで伝えたいと前々からぼやいていた。

ずっと自分が何者なのかも知っているし、

自分は何故、ここに居るのかも目的があるから

だけど世界の穢れなど、

全くの無縁な駒と日々を過ごして来て

自分を偽り続ける事に随分と心を痛めてきた。

それくらい駒に情が移っていて

自分の拠り所でもあり心の支えにもなっている

駒にだけにはいつかは明かしたい…だが、

そうもいかないから未だ苦しんでいる。

本当の仲間達に真実を明かすまでは。。。

友理「・・・っ。

本当にすまない、隠し事ばかり多い愚かな妾を……

許して欲しいとは言わぬが(涙)」

駒「それは違います、友理さん!

人は誰しも色んな悩みや

隠し事を抱えている生き物なので

むしろ気にする必要はありません!!

ですから、気にしないで下さい♪

それに友理さんにとって、

それは弱みでもあるかもしれない。

それでも…それだけは、守り通して欲しいです」

友理「・・・。

フフッ、守り通す…か(笑)なら簡単な話だな。

何てったって……今の私には、

こんなにも頼れる従者が側に居るのだからな♪

(もうあの頃の………

妾…1人の世界では無いのだった)

良かろう、そういう事にしてやる。

本当に感謝してもし足りないぐらいだ。

このご恩は、

君がとんでもなく困った時にでも必ず返すよ」

駒「良いんですよ、これくらい(笑顔)」

友理「それに恐らく、駒ちゃんに話す時は

かなり後の方になるだろうが。。。

それでも構いません!私はずっと待ってますから(駒)

そこまで言うのなら、もう何も言うまい。

忙しくなるのは明日からなんだ。

これだけは先に駒ちゃんには話しておこう。

これから言う事は、

他の皆んなには黙っていてくれないか。

はい?(駒)

もし、私が皆んなから見限られようと嫌われようとも

駒ちゃんは学校での私と一切…関わらない方がいい。

十中八九、

私といれば駒ちゃんまでもが標的(ひょうてき)にされる。

その時は私を見捨てて、

他の者達の様子を見守っていて欲しい。

無闇に証拠もない中、口出しするのも禁止だ。

まぁ家とかなら心置きなく

私に愚痴って貰って構わんがな☆

……っ?!で、でも…それじゃあっ……(駒)

頼む!!

これだけは…君にだけは、

そこまでの責任を背負わせる義理はない。

安心しろ♪私も駒という隠れた味方が居る事を

分かった上で臨むつもりだ。

ここから先は、他の人達との短い間かもしれんが

長きに渡る沈黙の戦いに備えておかないといけない。

駒も心して掛からないと

より一層、苦しむ羽目になるぞ!

アレは、あまり甘くみない方がいい。

轢かれたという話を話すか話さないかは、

私自身が決める。

向こうから歩み寄って誤解が解けるか

どうかは正直、私でも分からんが

それまで駒ちゃんには、私から一定の距離を保って

安全な場所から見ていてくれれば、それでいい。

・・・どうして、そこまでしてっ……(駒)

私はもう、この妖魔界に帰って来る前から

とっくに覚悟は決めておる。

それだけは駒のせいではない、悪いのは

妾の…いや妾達の人生を狂わせた奴ら…………

ソイツらを無茶苦茶にしてやらない事には、

妾達のこの先の平和が掛かっているのだ!!」

真っ直ぐな目、鋭い目付き、

表情からも見て取れる程の怒りに満ちており

並々ならぬ壁を乗り越えての決意で

今まで、その思いを1人で背負って生きてきた。

友理の人生について

以前にも同じようにぼやいていた言葉を

思い出しても尚、駒には想像も付かなかった。

想像すらも出来ない駒でさえ、

どうしようもなく溢れて止まない涙が出るだけ

相当、辛い思いを何倍も味わってきたのだろうと

それだけは分かって尚更、涙が止まらなくなる。

そんな駒を見て友理は優しい笑みを浮かべて

勉強机のある方へと足を進めて行き、

一番下の引き出しから緑の箱を取り出した。

その中から1つの包帯を手首に巻き始めると

ちっちゃい手で涙を拭いに拭った木霊は

今、呆気に取られている。

普段から包帯を巻き慣れている手付きで

物の数分であらかた全身を巻き終え、

最後に頭と来て目に差し掛かった所で

ようやく駒の口が動いた。

駒「あ、あのー……そ、れは?」

カタゴトに言う駒に対し、

一度チラ見した上で[ん?あ~…なんて言うかな]と

顔を(ほころ)ばせながら口にする。

友理「昔の仲間にそう言われたんだよ。

だから、その頃の名残り♪

私、軽い怪我とか骨折とかしても

痛みに鈍いせいで自分ですら気付きにくくて

いざって時に動けるっちゃ動けるけど、

なーんか違和感あるな?くらいで済ませてたから

その影響で。。。

それも結構、重傷じゃありません??(駒)

そうなのかな~?分かんないけど。

それで、ある人からの提案で

怪我した時は何かアピールして欲しいって

リクエストされてね~

最終的に、こうなったって感じ!」

駒「な、なるほど。そんな経緯があったんですね。

でも、それって……逆効果じゃないですか?」

友理「うーーーん、あ…そうそう。

確かこの方法を試しにやった時、

他の皆んなからは満場一致で不評だったよ」

駒「やっぱり。。。(汗)」

[でもって!]と本人に、

何らかのスイッチが入ってしまい

その話題についてしばらくの間、

[戦場でこの姿で居るとこんな優位性があって]と

徹夜かけて熱弁された事で駒はこう思った。

駒(恐ろしい人だな……)と遠い目をしていた。


回想終了・・・


そして、今に至る。

駒「それで、友理さんは。。。

これから……どうするつもりなんですか?」

駒からして見れば、

友理はそもそも怪我もしていないのに

昔の名残りとかで未だ包帯姿のまま居続ける意味も

ましてや、友理だけが敵に回されている

この状況でわざと嫌われにいく意味が、

いまいち理解できなかったのだ。

もうこれ以上、皆んなが友理を責め立てている所を

黙って見過ごす事だけは、

はっきり言って自分には出来ないとそう結論付けた。

本当の意味で皆んなを裏切っているような罪悪感と

初めは唯一の味方である事が嬉しい反面、

中立の立場でもある駒は揺らいでいた。

駒の何気なく放った一言を言った瞬間から

空気が、周りの音が、駒の声すら聞こえなくなった

静寂とした空気に包まれる中、

友理は予想外、想定以上の言葉を口遊む。

友理「・・・あぁ。

それなんだが~……気が変わった。

まず手始めに、世間ではあまり騒がれていないが

今密かに鬼族を狩っている奴を殺すつもりだ」

その言葉を聞いて思わず、

駒は物凄い速さで友理の方に顔を向けており

そこにはいつもの可愛らしい表情からじゃ、

想像も付かない程に目をかっぴらかせて

小さく[……え?]と戸惑いの声を漏らす。

それと同時に嵐の前の静けさから

一変、突風が学校全体に襲い掛かり

2人の空気を遮ったのだ。

風に煽られて荒ぶる2人の髪を他所に、

驚いた顔のまま横向きの状態から固まる駒と

友理は暗い後ろ姿だけが映される。

顔は見えなかったが、

揺るぎない目付きには怒りが込められていた。

駒「・・・。

だっ、ダメ…です!そんなっ……事しなくたってぇ

友理さんは善良に真っ当に生きていけますし、

それだけは…しないで欲しいですぅ!!

お願いです、どうか……どうかっ(涙目)」

友理「・・・悪いが、それは約束できない。

いくら駒ちゃんからのお願いでも

これだけは譲れない……そうか。。。

駒ちゃんには、まだ話していなかったな?

何ですか、、(駒)

私はな〜もう後戻りできない程度には、

極悪人…いや、それ以上だな♪[大罪人]なんだよ。

私がもしこれから先、冥界に行く羽目になったら

現界して復活する事は恐らく無いだろう!

0%……いや、1000%あり得ないかもしれない。

だから今更、善良ぶって徳を積んだ所で

この妖魔界で爪痕を残せば

簡単には消えやしないし絶対に覆られぬ事だ。

私は、昔…星の数ほど誰かの命を葬ったし

村も街も散歩ついでに意味もなく破壊した。

消し去った人達の事を思い返しても

同情や罪悪感、心が痛むとか悔やむ感情も

昔も今も私の中には存在しない。

だって……この世全ての悪事を制覇したのは、

世界で私ただ1人だろうしな。

・・・(駒)

信じられんだろ?

だが、これは紛れもない全て現実で起こした事件だ。

極悪非道にも程がある奴が、

何食わぬ顔で皆んなと同じ学校で学生に扮し、

白とか黒とか善悪で悩むよりも

その出入り口をコントロールしてこその至高。

それを持ってして皆んなを欺き続ける。

それぐらい他は、全くもってどうでもいいんだよね。

そんな事の為だけに精神をすり減らされるよりかは、

次の獲物を探す方がよっぽど大事だね(笑)」

駒は自分が思っているよりも

友理の圧倒的なまでのカリスマ性に当てられた事で

それを自分と比較してしまう。

何も知らない皆んなの敵であり影であって

友理の協力者でもある自分は、

こんなにも違う世界に居たんだと思い知らされた。

駒「・・・っ。

……そう…だったんですね。。。

友理さんは私なんかよりずっと長く生きているから

そういう見方も出来るんですよね。

羨ましぃいです、本当に……(涙)」

友理「そうでしか生きれなかった妾の道だよ。

駒ちゃんと私は、全く違う考えがあって

全く違う道を選べるのは当然の事だ。

私達の共通点は、

あくまでも一時的に結ばれてるだけの利害関係で

それも均衡を保てているのが、

不思議なくらい危うい関係だけどね」

駒「……っ!

それでも私は、友理さんの事を信じたいんです」

利害が一致してるだけとか一時的なものだとか

何故か駒でさえも突き離そうとする友理に対して

条件反射でそう言ってしまった。

友理「・・・。

うん、分かってる。

でも私は、それに期待は出来ない。

期待し過ぎるが余り、

その後に起こる事を視野に入れておかなければ

務まるものも務まらなくなる。

これは、妥当な判断なの。いいね?」

駒「……??分かり…ました。。。」

友理「それじゃあ、私達もそろそろ帰りましょう。

あっ……その〜(駒)

ん、まだ何か?」

駒「・・・。

そ、うすると最初から決めていたのなら

今度はちゃんと友理さんの方から

先程の方と仲直…りしてあげて下さいね。

理由は何であれ、絶対にっ!」

友理「……分かった、機会があればやってみるよ。

友理さんっ!!(駒)

そういえば…最近、クラスの皆んなが

昼休みが終わる10分前くらいには、

既に着席してる事が多いから

あまり長居しては駄目よ、気を付けて。

そ、そんなに早くにですか?!(焦る駒)

えぇ、何やらあっちはあっちで

話し込んでるようだから。。。」

駒「おかしいですね。

私が居る限り、そんな所…見た事がありません」

ボソッと呟いた聞き逃さなかった友理は、

左下に目線を落とし、目を閉じて

[さぁ、行こ]と駒の手をそっと引くと

やや早歩き気味にその場を後にした。

教室に友理が先に戻ってみると

やはり駒とごく僅かな生徒以外は。

ほぼ全員が着席しており後から駒も入って来ると

皆んなの目がいつもより怖く感じた。

その目は相変わらず友理を追っていたとはいえ、

何だか友理に向ける鋭い視線が

心做しか軽減されているようにも見受けられる。

真顔だった友理の口が少し笑った所を

一瞬、見せてすぐ無表情に切り替わるのと

同時に先生が入って来た。

先生「5限目、始めるぞ~!!」


放課後・・・

Aクラス一同「ありがとうございました!!!」

女子生徒「バイバイ」

女子生徒2「うん、バイバーイ!」

男子生徒「また、明日な~」

男子生徒2「おぉ!お疲れ」

ホームルームが終わってそれぞれ教室に残る組と

用事で速やかに帰る人達が出ていく。

その中でも友理は、

淡々と残り僅かな片付けを済ませて

1人でに帰ろうした所を

朱色髪の生徒にこう言われたのだ。

恋花「友理ちゃんもまた、明日ーっね!!」

と久々に恋花に声を掛けられた事で

友理の動きが一瞬、固まった気がしたが

いつもの調子で声を発する。

友理「うん、また~バイバイ。恋花さん♪」

と小さく手を振りながら

教室を出ていく友理の姿を見送た所で

駒も帰ろうとすると恋花に手招きされた。

恋花「ちょっとちょっと、キノちゃん!

今日、残れたりする?

は、はい。構いませんが??(駒)

そういえば、さっきの昼休みお留守だったから

まだ聞いてないよね☆

よし、キノちゃんも居る事だし……

用がある人以外は皆んな集まってるね?

それじゃあ昼休みの続きを話そうか!」

津鬼達や(はく)、明と他生徒ときて

お馴染みのメンバーを前に花梨と恋花が前に出る。

そこへ…バッと教室の視点が暗転し映像は途絶えた。

ギイィィィィ・・・

鉄製の重たい扉を開けた先には、

真っ白い曇り空が一面に広がっている景色だった。

この頃には風も徐々に強まってきたり弱くなったりと

表情がコロコロ変わるみたいに、葉っぱや砂が舞う。

まだまだ台風の卵なだけあって

これから成長を見せる勢いを肌でそう感じた。

友理(こっち側の気持ちはこうも虚しいのだな〜

ここまでしないと分からないとは所詮、妾は。。。)

顎を少し上げて澄んだ瞳で空を仰いでいると

その横顔を覗き込むようにして

黒髪の青年が顔を出す。

???「あーねさん、元気ないね~どうしたの?」

友理「傀来か。。。

いや……丁度、

昔の事を思い出していた所だったんだ(苦笑い)

んーー?まぁいっか!やぁ、久しぶり(傀来)

久しぶりだな、元気にやっていたか?」

傀来「当然だよ♪

あんな身近に居て~

久しぶりっていうのもなんか変な話だけど」

友理「まぁな?

予定していたお披露目より

随分と早まってしまったがまだ2人くらいなんだ。

仕方ない。だが…今一度、

お前達には感謝しなければならない♪

んん?何々、俺なんかしたっけ??(傀来)

違うよ。この退屈しか取り柄のない日常には、

もう飽き飽きしてた所でな~♪

ようやく開放されるって意味で、だよ(笑)」

傀来「あ~そういう事ね!!

でも…それってお互い様でしょ。

それもそうか。でも良い気はするだろ?(友理)

フンッ、まぁ~ね☆☆☆

あ、そうそう。(あね)さんっ!

良いニュースと悪いニュースがあるんだけど、

どっちから聞きたい??

ん~じゃあ良いニュースから聞こうかな(友理)

オッケー♪

姐さんから頼まれてた件、俺が調べ上げた限りだと

ここ3日間で急速に鬼族だけが襲われる事案が

立て続けに増えてるみたいなんだ。

未だ帰って来ない行方不明の人も含めて

ざっと組織の半数近く…いや、それ以上の鬼が

玉藻前によって狩られてる事が分かった。

俺が確認できたのは精々、2日程度でしたが~

以前から鬼族を狩っては魂を保管していたと

(あざみ)の奴らにポロってたからほぼ確実です。

前にほら〜姐さんが所属してる特別部隊でしたっけ?

その中の2人が玉藻前と戦っていた

あの時点で数人ほど捕らわれてたそうです。

で現在、爆発的に被害が加速したって感じ!!

そうか。。。残念だな(友理)

ニュースには、かなりのラグがあったので

情報としてはあまり信用できないし~(3口)

それと、こっちが本命♪

奴を尾行した所、

玉藻前は今…栃木県の櫻湖(さくらこ)市内に

かなりの頻度で出入りする所を確認してるよ!

流石に、何かまでは把握できてませんし

あまり近付き過ぎると、

今度はこちらの存在に勘付かれる恐れもあったので。

アイツ、耳だけは特に良いからなぁ〜」

友理「いや、十分だ。

そこまで把握してくれてるだけでも有難いのに

……昔と比べたら、更に腕を上げたんじゃないか」

傀来「いやいや~お安い御用ですよ☆」

常に自慢げなニッコニコ笑顔で応える

その裏には、ただならぬ怒りが隠れている。

それを分かった上で

友理も満面の笑みを浮かべて応えていたのだが、

それが急に真顔になって一言だけ告げられた。

友理「それで?」

傀来「……悪いニュースの方なんですが~

率直に言うと昨晩、陽花がやられた。

そうらしいな…(友理)

まぁ俺は玉藻前の尾行ついでに、

その場に居合わせてはいましたけど

結構、良い所まで行ってたんだよ?

しかも記憶取り戻す以前に

玉藻前をかなりの勢いで追い詰めてましたから

俺らに出会わなくとも

どっちにしろ、あの人は普通に強いね!!

あの子は、戦闘の才も有ったからな(友理)

女狐も女狐であんな偉そうにしてる癖に

昔から変わらない鈍臭い所が目立って

陽花に真正面から痛いとこ突かれてましたし、

正直、拍子抜けした~見ててつまんなかったもん!

それで何回か陽花がピンチになる度に、

すぐにでも助けに入りたかった。けど……」

友理「あぁ。。。

記憶を取り戻す為とはいえ、彼女にはあまりにも

(こく)な事を思い出さなければなかったからな。

正直…今後もこれが続くとなると

何だかやるせない気持ちでいっぱいだ。

すまない、まさか……よりにもよって

玉藻前が陽花の下に行くとは思いもしなかった」

傀来「いえ、姐さんがいつでも未来予知を

所持している訳じゃありませんから仕方ないですよ。

同じ夜にも陽花の前に(じゅん)もやられてた。

アイツは、記憶すらまだ取り戻せてもいませんし

最低なやり方で殺されてました」

友理「そうか。

玉藻前によって理不尽にも奪われた魂達を

せめてもの救済をしなければならないな。。。」

傀来「それなんですが、もし姐様が宜しければ〜

肉体の原型が消し炭になるまで

俺が突き刺しに行きますよ?

そうすれば、肉体の修復期間だけで少なくとも

2ヶ月くらいは遅らせる事も可能ですし~」

と両手いっぱいに握り締められた

異形なナイフを複数、所持してる傀来は

既にでも玉藻前の事を殺す気でいたが。。。

友理「・・・いや、いい。

まぁ要らぬ心配だとは思うが、

それで奴が戻ってきた時に傀来がやられては

こちらとしても後々、困るからな。

そういえば、昔からそうだったな?

組織の一員になったばかりの子達が

何かしらの危害を加えられた際、

我先に(いくさ)を仕掛けては

1人で町の1つや3つ平気で破壊させて

帰って来るお前達の事だ。

仲間の為に思い遣ってくれるのは、

とても嬉しい事だが…………

それでは、妾の出番が無くなるではないか。

……っ!(傀来)

今こうして成長したお前達の前に現れても

何の疑いも無しに昔と同じように接し、

その後を変わらず着いて来てくれた。

こんなにも私に尽くしてくれたんだ♪

ここは、少し妾に任せてはくれぬか?(笑)

お前達の怒りや悲しみ、

仲間を想う心は私にだって当然…あるからな。

この世界に帰って来て

随分と長い間、奴を野放しにしてきた報いを

与えてやろうじゃない☆」

傀来「・・・。

それって、俺も見物しに行ってもいい?!

ん?まぁ巻き込まれない場所でなら何でも(友理)

はあ♪やったぁーーー!!!!!(笑顔)

じゃあ、この後すぐにでも行って

県境辺りから見てるよ!

それでも足りないと思うけど~(笑)」

広々とした屋上の空間を

嬉しげにそして、非常にワクワクとした顔付きで

はしゃぎながら駆け回っている。

※尚、彼は平常運転である。


???「物騒な奴だ。

昔と違って今も進化し続けてる私達でさえ、

未知数の主人(あるじ)様の力を分かっての言いようだろうな?」

傀来「あ、雄鬼だ」

友理「おぉ〜体育館振りだな」

と屋上の更に上の建物に乗っている雄鬼の姿は、

黒を基調とした色にやや緑がかった閻魔騎士の正装で

足丈まで長い黒いズボン、

腰から燕尾(えんび)のような(ひれ)(なび)かせながら

颯爽と友理の目の前に現れては早速、跪いた。

雄鬼「お久しぶりございます、我が主人」

友理「そういうのは()いと昔から言っているだろう。

妾の組織に入ったからには、

皆、仲間であり平等である必要がある。

それが例え、組織の長であろうと規則として

当時、そう決めておいた筈だ」

雄鬼「それでも(わたし)は主人が何と言おうと

私がそうしたいからそうしているまで

お気になさらず」

友理「久々に言われたとはいえ、全く慣れんな……」

傀来「てか、良いの~そんな態度とって??

閻魔騎士のエース様であろうお方が、

閻魔様よりも敬うってなったら

それって裏切り行為に値するんじゃないの(笑)」

雄鬼「・・・(怒)

そもそも裏切ってなどいないっ!

私は閻魔大王様も我が鬼族の主人様、

どちらも同じように

敬意を評しているだけに過ぎません。

これからも関係を継続して

閻魔騎士…同様に掛け持ち致します」

友理「そ、それで良いの……本当に(ジト目)

・・・。

まぁ相変わらず2人は、

良い意味でも何も変わっちゃいないな♪

逆に安心したよ。

勿論 (だよ)です(2人)

それで、雄鬼の方は何か収穫はあったのか?」

雄鬼「はい、実は……

千葉県の吾妻市(あずまし)(けん)につきましては(くだん)の通りです。

あ~…それか。その話なら確かに聞いているな(友理)

その後、主人様がおっしゃられた通り

日本全国を渡り歩いて分かった事があります。

先程の吾妻市の住宅街周辺以外にも

細部まで捜索に当たった所、莫大な核が別で

3点ほど同じ場所で確認、出来ました」

傀来「おっ!!じゃあそっちが本命そうだ☆

流石、閻魔騎士だね♪

エース様の目は伊達じゃない(笑)」

雄鬼「・・・。

いかが致しましょうか、主人様?」

友理「どう、か。。。

うーん、私は別に放っておいても

私達にとって関係のない事だからな。

壊しても壊さなくても

こちらの不利に働く事はないが……

強いて言うのなら、

わざわざ街中に集中して核を設置している点だな。

その街はこれから徐々に支障をきたす恐れもあるが、

地中に宿る妖気を常に吸い上げてる事から

建前でもあり、囮でもある(コア)

もはや核ではなく欠片(シェア)に当たる。

いざという時に自分だけ

強化する為の道具としか思っていないのだろう。

仲間など見捨てて当然という奴らしい考え方だ。

こうなると吾妻市の方は、

早めに手を打った方が良さそうだな。

妖気は、後からいくらでも蓄積させれば

自然と磁場が回復するだろうし

恐らく、さっき雄鬼が言ってくれた通り

その3つの場所が本命あるいは、

何らかの計画に今後、関わって来るのだろうな」

雄鬼「そういえば。。。

以前、玉藻前は天狗に抗争を

早々に仕掛けては敗れています。

もしかすると、その落とし前で何か……」

友理「そんな話、前にもあったな〜」

傀来「どうする?今の内に全部、壊しとく??

それとも~…アイツが自信満々な頃合いを見計らって

同時にぶっ潰すとかっ!!

おぉ、それ良いな☆名案だ!(友理)

じゃあじゃあ本命の場所は雄鬼に抑えて貰って

絶好的なタイミングで破壊すれば、

当然、奴も怒り狂って

無鉄砲のまま襲って来るんだろうな♪

そうなれば、アイツ簡単に倒せるし単純だから(笑)」

友理「どうせなら、、こういうのはどうだ?

その絶好的なタイミングとやらを

私達の組織が復興した記念すべき日に

薊陣営に抗争を仕掛けるといった手も取れるぞ!!

しかも奴らの問題を解決する為にも

まずは、一掃しない事には変わりないからな」

傀来「わぁっ!

何それ、絶対…楽しいじゃん!!そっか☆

もうその時になったら皆んな揃ってるだろうから

楽しい抗争が出来るね(笑)」

ケラケラと楽しげに笑う彼に乗っかる形で

抗争を仕掛けると言い出す友理に

更に、キラキラした目で同調する。

昔からこの2人は、

意気投合しやすい程に親しい中で戦闘に対しても

レクリエーション感覚で楽しむのが傀来と友理。

それを遠い目で

しばらく見続けなければならない雄鬼が

心底、憐れに思えた。

雄鬼(混ぜるな、危険だな……)

友理「フフッ♪

まぁそのお楽しみは、最後にとっておいて

今は奴を消した後で話し合おうか。

雄鬼、3つの(コア)の場所を教えてくれないか?

承知致しました(雄鬼)

・・・・・・。

ふむ、なるほど~とことん…ズル賢いものだ。

悪知恵だけは、無駄に働くもんな☆(笑う傀来)

あぁ……全くだ。

さて、私はこれから玉藻前の排除へ向かう。

雄鬼も来たければ、着いて来るといい

まぁ…見たいならの話だが。。。

そうだった。ねぇ、雄鬼も行こうよ!!(傀来)

・・・はぁ……分かった(雄鬼)

ンフフッ、それじゃあ行くとしようか!」

Uの字に笑う口元が映るのと共に

片目と全身の包帯を一気に引っ剥がし、

上に葬られると風によって攫われてしまい

真っ白い帯が次第に黒く染まって跡形もなく

消えてしまったのです。

カンッ!と屋上の柵を踏み付けて

高く飛び上がっただけの勢いで翼を生やさずとも

普通に空を飛んでいる3人の背景には、

濁った曇り空から太陽が現れていた。


同時刻・・・

ここは、1年D組の教室。

もう帰り始めている他のクラスとは違い

つい先程まで、

何かしらの招集を受けていた先生方が帰って来て

ホームルームを終える事が出来たのだ。

ようやくDクラスも帰れるという所で

担任の先生に一言だけ付け足された。

先生「これから台風が東京に直撃するみたいだから

各自、下校したらちゃんと家に帰るようにっ!

しっかり家で待機するんだぞ?

はぁーい(一同)

それじゃあ、また明日」

ガラガラ・・・

男子「えぇ~マジかよ、台風ダル過ぎだろ」

男子2「ホントだよな~

台風1つで今日の部活…中止になるんだぜ?

ツイてないわぁ」

女子「迷惑通り越して私達への嫌がらせだよね」

女子2人「ねぇーーっ!」

なんて話を男子組と女子組でそれぞれ話しながら

教室を出ていくと教室に残ったのは

雫と芽亜、美夏の3人となった。

いそいそと忙しなく

自分の荷物をリュックに詰め込んでいき、

必死に押し付けている。

芽亜「いやぁ~それにしても

皆んな、いつにも増して愚痴ってたねぇ(苦笑い)

まぁ(あたし)も人の事、言えないんだけど

でもそうも言ってられないのもまた現実。。。(涙)」

あ、そうだ!ユキっち~

今日もユリりんの事、待ってみたりするの?

だったら(あたし)、今日も残れるよ」

美夏「私もだよ~!!」

雫「・・・」

だが、2人は知らなかった。

友理から友達じゃないと

今までの思い出は全て忘れたと言い出し、

挙げ句の果てには関係を解消させられて

ほぼ絶縁状態である事を。

雫「・・・もう、いいんです。

林堂さんの事は…………忘れて下さい。

えぇ!何でっ!?どうしたの急にぃ(芽亜)

本当にっ!!何でも…ないので。。。

それでは、お先に帰ります……っ」

あんなにも必死に友理と話したい、訳を知りたい。

とにかく2人っきりで対面し合えば

何とかなるだろうと考えたっきり2人は、

あの続きを把握していなかった。

だから既に、目的を見失い諦めている雫の状況に

芽亜達は呆気に取られており

帰ろうとする雫の背中を見続ける事しか出来ない。

その時だった、ある事を思い出して(かかと)を返す。

雫「あ、あの~…その林堂さんとは

全く関係のない話になるのですが、

一つ……お2人にお聞きしたい事があります。

???(2人)

・・・お2人は、クラスについて

どう考えていますか?」

美夏「クラスってぇ。。。

あのクラスだよね??(芽亜)

……上級妖怪達から嫌になる程、

自慢してくるあのクラスの事…ですよね?」

雫「うんうん!」

と高速で頷く雫を見て

2人は再び、お互いの顔を見合わせる。

芽亜「クラスかぁ……クラスねぇ~

(あたし)もこう見えて結構、悩んだ時期もあったな。

でも、結果的に分かんなかったんだよね~

私自身が強くなったビジョンも浮かばないし、

何より時間を掛けてゆっくり努力するのって

私、向いてないからムリ〜!!」

雫「ど、努力は大切ですよ!

私達なりの抵抗であって

欠かせない大事な日課です(汗)」

芽亜「うんうん!!

ユキっちの言いたい事もよ~く分かるよ☆

だから…根気のいる作業って

大真面目にやり過ぎると

その都度、達成した人だけが数値化されるものを

やった所で意味が無いんじゃ、

やる気が削がれて変に疲れると言いますか~

現実を直視するようで嫌になっちゃうんだよね。

・・・(俯く雫)

ふっふふ。でもって私は、こう考えたのっ!!

姿形やクラスが変わらなくても

少しでも何か変化があるだけで

望みはまだあるし、

何なら…低級妖怪のレッテルがあっても

(あたし)は良いと思うんだ!

……???(点目な雫)

ふふ♪(美夏)

だって、それは今は駄目な話でも

いずれ到達すべき壁だと思わない?

AクラスがSクラスになるみたいに

力を付ける為に必要な試練だし、

それを乗り超えてこその高みじゃん☆

それなら、いつか……Dクラスの私達や

他の低級妖怪が上に行く事も

可能性としては少なからずあるかもしれない!!

その時は、低級妖怪でも成れるって事を広めるべき!

それにクラスなんて………

取って付けたような勲章…みたいなものなんだから

それを背負ってでも他のクラスに、

貢献?希望を持たせる事にも繋がるでしょ☆」

美夏「え?何その例え!?

取って付けたって芽亜ちゃん。。。

クラスの事、

クリスマスツリーの飾りみたいに思ってたの?

ふふっ……おかしい。

でも、芽亜ちゃんらしいね」

芽亜「でしょでしょーっ!!

確かに、そういう考えも出来るね(美夏)

ふふ♪

まぁこれは、持ち前のポジティブマインドが

何でも変換できるお陰で

私は色んな事で乗り越えられるってわ・け☆」

美夏「良いな~私も欲しい!」

雫「・・・。

(あ、あれ?今、どこかで似たような言葉を

前にも聞いた事がある気がする。

どこだろう?何だっけ???

取って付けた……違う。クリスマス…違う。

ツリーの飾り、、飾り??

……ハッ?!そうだ、[飾り]!!

えっと確か~これを言ってたのは……….)

・・・っ!

(そうだった、先輩。

新條先輩が以前にも同じ事、言ってた!?(汗)

・・・。

お2人共、ありがとうございます!!

へっ?(2人)

(わたし)、たった今用事が出来たのでこれで失礼しますね。

……え、あちょっとぉ!?!!!!(芽亜)

本当に、ありがとう!さよなら♪」


バタン・・・


足早に教室を去っていく雫は、

徐々にそのスピードを落としていき

1年生フロアの長廊下の途中で止まる。

雫「えっと~…私達のクラス以外で

帰りが遅くなったのはB組の人達だけ。

それが同じように、

他の学年にも連動してるなら先輩も遅れてる筈っ!

とりあえず……連絡を取ってみよう。

まだ校内に居れば良いのですが。。。

(どうしても聞きたい!!

先輩がどうしてその考え方に辿り着いたのかを)」

リュックを床に置いてスマホだけを取り出して

早速、日向のRiin(リイン)に送った。

[突然、すみません。

先輩っ!まだ学校に居ますでしょうか?!

折行(おりい)ってお話したい事がありまして!!

今どこに居ますか?]

と後先、考えずに急いで

書き込んで送ってしまったが為に

内心、バックバクのドッキドキで

既読が付くのを待った。

1分…3分……5分と刻一刻と時間が進んでいき

雫のあの考えはただの推測に過ぎず、

遅れたのは私達だけで2年B組の日向達のクラスは

もうとっくに帰っていて

その帰りで気付いていないのだと。

そう思うと、何だか不思議と力が抜けて

膝から崩れ落ちると目に涙が溜まり始める。

彼女の心は、修復不可能なまでに

既にボロボロで精神的にも危うい心持ちが故に

こんな些細な事でさえ、

不安が積もりに積もって押し潰される思いで

今にもその灯火が消えそうだった。

目から頬に伝って涙の雫が離れた途端、

スマホがブーッ!と揺れたのだ。

その返信に驚いた雫は慌てて涙を拭い、

心臓の鼓動を落ち着かせながら

ボヤけた視界でゆっくりとスマホの画面を覗く。

雫「……っ!?(汗)

はぁ…はぁ……はぁ………な、かにわ?」

そこには、日向から[中庭に居るよ]とだけ来ると

すぐに[何かあったの?]

と日向は何の当たり障りのない返しに、

ドキッと図星を突かれてかなり驚いた。

雫は突発的に始まった校庭で100mトラックを

先輩達と走って以来、色々な事に巻き込まれて

気持ちの整理や感情のままに突き進んでいた。

誰かの為にいっぱい考え悩みに悩んだものの

結局、分からない事だらけで…

分からないなりにそれを放置しないで

必死に理解しようとする余り疲れてしまった。

その結果が家でボーッとする事で心を無にし、

心を一時的にでも保護していたのだ。

これ以上、外的から攻撃されても傷付かないように

でもそれが今……全部、消えた。。。

誰かに自分の声が届く事を

自分を知ってくれる人が側に居る事を

再認識させてくれた日向が、

この瞬間だけ(まこと)と重なる事を知った。

雫「・・・っ。

う”ぅっ……ヒクッ…会いたい!

真さんに会いたいよぉ。。。(涙)

皆んなにもぉ………う”ゔぅぅぅぅ!!

はぁっ…はぁ……はぁっ…はぁ……はぁっ………

い、行かなきゃ。

私からでも……皆んなに会いに行くんだ!

前に進みたい、進む勇気を…持つ為にも行かなきゃ。

・・・先輩に会いたい」

ひとしきり泣き終えて決意を固めた雫は、

目の位置にスマホを上げると

[今から行ってもいいですか?]そう呟く。

それに秒で既読が付いて

[うん、大丈夫だよ。

あと今日は、3年生と2年生側の中庭の方だから

間違えないようにね]

そう返された。

雫「ん?3年生と2年生側の中庭って??

……一度、外に出ないと?!急ごう」

キュッと上履きが床と擦れて

長廊下を猛スピードで走って行った所、

曲がり角から突然、薄黄色髪の女性が出てきた。

雫「あ…っ!」

神恋「……あら?

あなた、1年生ね。学校はもう慣れまして。

え?何で分かったんですか!?(雫)

リボンの色を見れば、分かります。

そ、そう…でした。すみません(焦る雫)

どうして、すぐ謝るのです?

もう少し自信を持っても良いんですよ」

雫「……わ、私には必要ない事なので。

・・・すみません!

急いでるので、これで失礼しまっ……(汗)」

そう言って半ば、強制的にでも

切り上げたかったのには理由があった。

1つは、これから日向と待ち合わせしている事と

もう1つが今、雫の目の前に居る

この学園一の人気者と話している事自体、

他の誰かに見られたら

また周りからの印象が悪くなる事を

嫌っての行動だったのだ。

そこへ運悪く螺旋階段を降りて来る

男女2人が、リボンの色からして青いので

2年生である事が見て分かった。

雫「……っ?!

(まずい!!

四宮さんと一緒に居る所、見られたら

またあの目で見られる(涙)」

ハイライトの無い目を見開いてビクビクとしながら

男女に向けた目を腕で隠した。

男子「そんで、さっき熊谷先生が~

お得意の怒り芸を真似した奴の後ろに

本人が本当に現れて

顔を真っ赤にさせて怒っててさ(笑)

真似した奴と顔がまるっきり同じだったんだよ」

女子「え~何それ、私も見たかった!!

それで真似して怒られた人って

その後どうなったの?」

男子「それがさっ!ここからが面白いんだよ♪」

真似した奴の顛末を話す事に夢中になっている中、

至近距離で真横に居た雫と神恋に見向きもせず

何事もなく遠ざかっていく2人の声に、

頭の上に沢山のハテナが浮かんだ。

雫「んっ?あれ??

(この距離で気付かれて…いない?

目も合わなかったし、陰口も叩かれない。

未だ別の話で盛り上がってる。。。

え、何でどうして……?????)」

神恋「・・・。

急いでは駄目、同じ過ちを繰り返さない為にも

まずあなた自身が自覚をなさい。

じゃないとまた、

相手の思惑通りに呑み込まれるだけよ」

雫「えっ!?

ま、待って下さい!それは、どういうい…みぃ……」

去り際に告げられたのは心当たりしかない言葉。

そう言うと神恋は、

下駄箱の方へと向かい外の淡い光に当てられて

まるで溶けたかのように姿を消してしまった。

確かに、雫は以前にも日向の過去に関係する人に

知らなかったとはいえ、

ごく自然な形で仕組まれた罠に(はま)

操られてしまった際も

今と同じように少し急いでいた時だった。

雫「・・・。

四宮さんの…この香り、どこかで?

何だか懐かしい気持ちになります。

アレは確か。。。

あっ!!新條先輩の所に行かないと(汗)」


中庭・・・

雫「……こ、これはっ!

本当にこの学校の生徒さんが育てたもの…なの?」

そこは、どこかのバラ園のような庭園で

異国の剪定されたお庭が広がっていて

何処ぞの貴族が、

ティータイムでもしそうな白い建物もあった。

日向「ねぇー凄いよね」

雫「いやいやいや!!

何でそんなに他人事なんですか?!

2年生の先輩達だって育ててるんですよね!」

日向「まぁ多少は?

でもここは主に、3年生の委員の作品であって

2年は周りとちょっと手入れするくらいで

別の所とはいえ、ここは窮屈だから

まだ1年の方が気が楽かな」

雫「これで…ですか(汗)分からない。。。」

日向「ふふ。それで、何を話したいの?

あっ……そ、そのぉ~(雫)

もしかして忘れてたの??」

雫「ちょ、ちょっとここに来るまで

色々とありまして頭が真っ白になった挙句、

この庭園なので。。。

驚きと驚きがあり過ぎて若干、疲れました(焦)」

日向「???」

雫「え、えっと~……ですね。

どこで聞いたかは忘れましたが先輩がいつの日かに、

クラスの事を[飾り]とおっしゃっていた時の事を

思い出したのでどういった経緯で

そのような考えに至ったのか

どうしても、お聞きしたくてぇ…お話をと(汗)」

日向からしたら突然、斜め上の事を聞かれて

目を何回もパチパチさせて戸惑っていたが、

対して雫はこの3日間、クラスについて

不信感や不安……嫌悪感を同時に抱えた事で

考えれば考えるだけ分からなくなり、

途方に暮れていた。

日向「・・・?

んーー……あ~その話か。。。

なっ、な…なんですかその間はっ!?(雫)

あーいや、雪乃さんに話してなかったっけって

思ってつい記憶を遡ってたんです。

まぁ雪乃さんが今した話を

前にも全く同じような形で聞かれた事があったから

少し記憶の混濁(こんだく)が起きてただけだよ(滝汗)

前にも、ですか?(雫)

あ、うん。機嫌を悪くしたらごめんね(汗)

実は昔~……と言っても

高等部に入って半ば頃だったかな。

瞳にも[何故、飾りというのですか?]って

言われた事があって」

雫「そ、それで…どう答えたのですか?

というか……そんな前からっ?!」

日向「うん、そうだよ。

まぁ結論から言っちゃうと

クラスについては、気にするだけ無駄だと思う。

雪乃さんだって本当は、とっくに気付いてる筈だよ。

定められたクラスを変える事は出来ないって事を。

・・・(雫)

目の前に階段があるとするなら上がる事は簡単…でも

クラスの階段は、そこから動く事も許されない。

ホント、窮屈な世界だよね~

……じゃ、じゃあ諦めるって事ですか?(雫)

・・・。

そうとは限らないかもしれない…ってだけ

現状では、まだ何とも言えない。

だからって無理に今受け止める必要は、

……正直、無いんじゃないかな?

だってそれは、

自分で自分の首を絞めてるだけで苦しいし、辛い。

何より自分がもっと嫌いになるよ。

クラスを変える1つの答えに無作為に探せば、

きっと…今の雪乃さんじゃ

向き合えるとは到底、思えない。

答えを急ぎ過ぎてるから。。。

……っ(雫)

そんな人が必死になって見つけたものが、

現実を更に突き付けられた上で

最悪な結果が待っていたとしても同じ事が言える?」

雫「・・・。

そ、れじゃあ…遅いんです、駄目なんですよ(涙)

私が友達だと……そう思ってた人から

友達じゃないって言われて…それがショックで

だけど、それは私がDクラスなのがいけなくてぇ………

でも、どうしても見限られたくないんです!

だからっ……だからぁ。。。

何か追い付く為の方法があるなら

それを、突き止めたくてぇっ!!(泣)」

友理に言われた言葉を間に受けてしまった雫は、

どんどん訳の分からないどツボに嵌っていき

どうしたらクラスを変えられるのか

どうしたら特別部隊の皆んなに追い付けるのか

その答えを探し出さないと

気が済まないまで追い込まれている。

初めは、こんな事をしても意味がない事ぐらい

分かってた。分かってはいたが……

このまま肯定してしまえば、

どちらに転んでも雫は立ち直れないだろう。

思った以上に彼女はかなり深刻に、

悩んでいる事を知る一方で日向は顎に手を添えながら

やや疑問げに首を傾げていた。

日向(・・・え?そうなの??

友達じゃないって言われたら

……普通は傷付くものなの…?そうなんだ。

うーん、でもアイツ……に言っても

特に効いてなかった気がするんだけど。。。)

回想・・・

これは、千秋の一件を引きずったまま

高等部に上がって少し経った頃。

あの2人…陸と奏太以外とは

極力、人と距離を置く事が続いていて

気が休まる時間が少なく気分転換に

昼休みはよく屋上に行く事が習慣付いていた。

緩やかな風の音しか聞こえてこない

ガヤガヤした騒々しい教室とは明らかに違い、

この屋上で本を読む事で心を落ち着かせてきた。

だが、それにはある1つの問題があった。それは……

???「よぉ、昼飯もう食ったか!!

・・・(日向)

なぁ?いっつも何の本、読んでんだっ?!

・・・(日向)

次って移動教室だろ?急がねぇとまずいよな!

・・・(日向)

なぁ~なぁって、無視すんなよっ!!

それでも俺の友達か?」

とそこまで言われた所で

ようやく、本を閉じて口を開いた。

日向「……友達になった覚えないんだけど」

男性「おっ!?やっと喋る気になったか☆

入学当初から根気強く話し掛けた甲斐があったぜ!

で、何で俺がお前を友達って呼んだかだっけ?

そんなの俺が勝手に認めた奴にしか言わねぇし、

今んとこお前だけだよ♪喜べ!!(笑)

あっそ。。。(日向)

・・・。

そんな態度、取れるのも今の内だぞ~?

何てったって俺が本気を出せば…どうなるか

一度、試してみるか!」

と日向の背後をうろちょろするばかりで

ここまで文字通り手を出していなかった男は、

未だ本に視線を落としている日向の肩に

触れかけた所、軽くすり抜けられて立ち上がった。

日向「……折角、静かな場所を見つけたのに

これじゃあ本も読めない。

話かけてないでくれる。。。

あと、屋上にも…もう来ないで」

そう言って男をひと睨み効かせた所で

冷たく言い放ってから屋上を去る日向の後ろ姿を見て

男は何を思ったのかこう呟いたのだ。

男性「ハハッ、面白ぇ奴~(笑)」

その後も相変わらず、

千秋とは別の意味で悪い粘着質に付き纏われ

めげずに絡んで来る彼の事をいつしか日向は、

ほんの少しだけ心を許していた。だけど…………

回想終了・・・

日向「・・・」

今、目の前に居るのは彼ではない。

何が正解か分からなくなった悩み続ける雫を見て

どう言ったら伝わるのか

どうしたら彼女を傷付けずに立ち直せられるのか

長考するに思えたその時、

ふと開いた口元だけが映されてその口が笑った。

日向「……じゃあつかぬ事を聞くけど、

雪乃さんは誠也に勝てるの?」

そう、日向が導き出したのは

肯定でも否定…から入るのではなく

あり得ない無理難題な質問を提示する事だった。

その言葉を聞くや否や雫は、

先程まで悩んでいた顔が嘘のように吹き飛んだ。

雫「へっ?

無理…無理無理無理っ!無理です!?!!!!

だ、だってぇ………アレは~

そう簡単に倒せるような…そんな人じゃっ(バツ目)」

誠也の名前が出るや否や拒絶並みの反応速度で

手を白旗みたいにブンブン振っていて

誠也が見たら2日は凹むだろう。

日向「そっか、無理か。。。

弱点さえ分かれば、僕でも簡単に勝てたから

雪乃さんもいけると思ったんだけどなぁ♪」

雫「・・・えっ?!だ、え、今なんて??」

日向「多少ですけど、ね?

今の所~……2人のSクラスになら

一対一でも勝てますよ。

高等部の後期最後辺りに

学年問わずで行われる模擬戦大会が、

近々、今年も開催されるんだけど~

その時から誠也には勝ててたし、それに………

クラスが[全てじゃない]と思うんだ」

雫「えっ?

クラスが…全てじゃないとは、どういう事ですか」

日向「あのね?ここだけの話、

これは考え過ぎてる雪乃さんだから言うよ。

この学園の理事長…つまり鬼頭(きどう)さんは規則に秩序、

戦闘にはとんでもなく容赦がなくて

有名なのは知ってますか?

会った事がないので、分からないのですが(雫)

そうだね。。。

そもそも廊下を歩く機会もほぼ無い人だから

知らないのも無理ないのかもしれない。

でもあの人に、後からクラス分けの話を聞いてみたら

鬼頭[あ~アレか?

あれは結構、適当に振り分けてやったから

デカい態度を取る奴は真のSクラスではない。

ソヤツらは、Aクラスもどきの妖怪だ!!

ん?面接とかで使う用紙もあったか、だと??

……あー、確かにそんなものが一度あったな。

が、残念ながら

生徒一人一人の妖怪としての実力や適性なんぞ

我が把握する程の暇は持ち合わせておらん。

まぁ精々、興味を引くものがあればの話だが

そのような記憶が無いという事は燃やしたのだろ!

よって、この話は今後も持ち込まないよう

たった今、禁止する事になった。

そこんとこ宜しく頼むぞ♪

特別部隊の新條 日向]ってさ。

あの人、結構な気分屋だからしょうがないよね」

雫「・・・。

て、てててて適当っ!?

高等部からより本格的なクラス化が始まるとか

何とか言っていたのに適当なんですか!!

えぇ~?!えっ!え??」

日向「うん、普通はそういう反応になるよね。

目の前でこういう事をアッサリ聞かされると

ずっと気にしてた僕が馬鹿馬鹿しく思ってさ~

まぁ収穫はそれだけじゃなかったんだけど。。。

しかも全校生徒、妖怪の名前から判断して

理事長の独断と偏見で勝手に付けられた事だから

もう飾りとしか言いようがなかったので

僕も勝手ながらそう思うようにしたんです。

その前から大分、怪しかったけど

まさか…あの理事長が怠ってるとは、

誰も疑いようがないもんね」

雫「は、はいぃ。

それだけ凄い方なのでしたら

そうなりますよね、存じ上げられませんが」

日向「はあ~……分かった?

雪乃さんの考えは間違ってはない。

けど、それを気にし過ぎるのも…良くないと思う。

無理がある事を言ってるのは僕も分かってるつもり

それでも、いつまで経っても変わらない事ばかり

答えを探し続けるのは、変に疲れるだけだよ。

それに………少なくとも…僕よりかは、

才能がある雪乃さんはまだ、これからの話だから

もう少しくらい頑張ったって良いんじゃないかな?

これ…から。。。(雫)

うん、とりあえず精巧で精密な審査を受けていない

SクラスとAクラスがごっちゃになってる現状、

全クラス対象だけど……ここまで来ると

口出しする事も出来ないし、

そもそも権利が無いからデカい態度を取ってる奴は

あんまり気にしないように」

雫「あ、はいっ!!そうですね♪

・・・ん?という事は、

[あの人]は本当のSクラスじゃない??」

日向「いいや?

[あの人]は、正真正銘のSクラスだよ。

ただ自分の力に鈍感なだけ」

雫「そう…なのですか???」

日向「うん、そういう事〜

……誠也のはちょっと他と違って特殊みたいで

それこそ気にしない方がいい。

アレは本人次第で大きく変化するものらしいから

僕らがどうこう言うつもりも出来ないよ。

…でも、それは雪乃さんにも。。。(ボソッ)

はい?(雫)

……ううん、何でもない。

そろそろ学校の門が閉まる時間だね。

帰ろうか、もう行かなくちゃ」

雫「は、はい!私もその~ご一緒しても。

勿論だよ、同じマンションでしょ?(日向)

そ、そういえば…そうでしたね(恥)忘れてました」

日向「さぁ行こっか」

白い建物から遠ざかるように、

2人は中庭を後にして庭園の花々から

飛び立つ2匹の白い蝶と青い蝶がいた。


緑に連なる自然豊かな山奥では、

登山家が知る人ぞ知るルートを登り

とある山道を抜けた先に、

山登りからしか得られない景色や天候…

この2つの要素が掛け合わせる事で

完成すると言っても過言じゃない。

それは空き家の位置が、

都道府県みたいな形を成した街並みで

集落のように連なっていた。

それを囲う8割が緑で一体化したとされる

絶景的景色は、

今じゃ全域の緑が全て枯れ果てていたのです。

木の枝部分が変に湾曲した形で萎れていて

海にまで通じる川が街の中に流れていたが、

水の一滴すら見当たらないし

家は建ち並んでいるものの人の気配もなければ

活気、溢れる賑やかさもなくこの静かさだ。

大地も砂利が混じったような色合いで

所々…剥き出しになっている。

そこへ枯れ果てた大地の上を

赤い光線が凄まじい速さで通過していき、

それが通り過ぎてから時間差で

無数の強風が発生させる異常現象を

目の当たりにする。

あの未確認飛行物体の正体は玉藻前、

数十秒前に攫った獲物と共に飛行してる姿だった。

(わし)が獲物を足で捕獲するように玉藻前も獣人の姿で

体を密着されてがんじがらめており、

方向を変えずに一通に飛んでいく。

玉藻前「全く、変に手こずらせおって~

こんなんだからガキという生き物は、

つくづく腹が立つねぇ♪

ほら、あと少ししたら

貴様の墓場となる場所へ到着するぞ?

……っ(焦る???)

死という概念は、一瞬で通り過ぎるものさねっ!

まぁ気付かずして死ぬか気付いてから死ぬか…は、

貴様の好きにすると良い♪アーハッハッ!!(笑)」

死神にして悪魔のような笑みを滲ませながら

クスクスと口を歪ませる彼女は、

盛大に高笑いを披露していた。

少年らしき子は、玉藻前に捕まってからといい

最初こそ恐怖があったものの

人生最大の窮地に追いやられた事で

普段は、働かない冷静さを手繰り寄せて

こんな事が頭を過った。

彼女の[あと、少しで着く]という単語を聞いて

まだ時間に余裕があると思い込み

気を緩めた途端、それを見計らっていたかのように

直様、玉藻前が[もう着くぞ]と訂正し直したのだ。

???「……っ!?」

それは少年にとって想定外の事で

今もっとも絶望的な言葉を突き付けられる。

死がすぐそこにある事を敢えて伏せた上で

ほんの少しの猶予があると(そそのか)

対象者に安心させたり、油断させる為の嘘であって

全くもって猶予でも何でもない。

相手にただぬか喜びをさせて絶望に落ちる顔を

間近で見たいだけの死を弄ぶ道化師のよう。

玉藻前「あ~すまんすまん(笑)

すぐ目の前にあったもんだから

貴様の魂をもう狩りたくて狩りたくてねぇ?

少々、気持ちが(かたぶ)り過ぎて

私とした事がとんだ早とちりをしたわぁ♪

だが、私にそう思わせてくれるほど

お前の魂は魅力的かつ極上である事だ!!

つ・ま・り☆

(しか)るべき措置を取らせて貰うっ!

即刻、死へ導いてやろうぞ」

少年(……ね、(ねえ)ちゃあ″あ″あ″ーーーん)

玉藻前が自身の体に少年を絶えず離さない体勢から

栃木県のとある街に降下しようと試みる。

その瞬間、彼女には見えていなかったが

ほんの僅か…だが細くて黒い光が真横を通過し、

被害も特に出さずに風だけが肌に伝わって

振り向いた頃には何もなかった。

玉藻前「・・・?

(何だ、今のは。。。

よく分からんが…今、確かに

私の肩を触れられたような感じがしたが……

いや、まさかな?

この私に追い付ける者など早々におらん。

仮にあったとしても、それは…もう)

……さぁ、貴様の魂を狩り取る時間だっ!!

ハハハッハッハッハーッハッハ!!!!!!」

三白眼に目をかっぴらいて不適な笑みを浮かべながら

彼女は減速せずに、

一直線で街に飛んで来た勢いのまま

流星の如く対象者を自身の体から引き剥がし、

あり得ない遠心力で全身を地面に叩き付けたのです。


栃木県 櫻湖(さくらこ)市・・・

その衝撃からか少年の体は、

身元不明の…死体のような特定し難い残忍な方法で

黒い肉片(にくへん)の塊に変わり果てる程の威力を誇り、

そうする事で対象者の意識を奪った。

その塊が自然と灰になって朽ち果てていく様を

しかと見届けた所で自身の手に秘められたものを

確認するかのように手を開ける。

そこには、、、

[ハッ!]という息を呑むような悲痛な声を上げて

[何故だ?……何故、ここに無いっ!?]

側から見てもそうとしか言いようもない

尋常じゃない焦りようで

塊が消えた瓦礫の下を執念に探し始めた。

だが、見つからない。

玉藻前「何故っ?!何故だ、何故だ!!

私のやり方は間違っていない筈っ!

無法地帯に劣化させたこの土地で

生者の魂を一時的に死に追いやれば、

私の計画の…一部にぃ……(汗)」

櫻湖市は現代では、

珍しい近未来化の進んだ住宅地なのだが

彼女の視界の端々には(かろ)うじて建っている建物と

瓦礫の山々がそこかしこに広がっていた。

この街では妖怪達が生活する事によって

永久に増え続ける妖気を

自動的に吸い上げて街全体に起こる

あらゆる災害に備えると言った仕組み。

玉藻前はこの土地の技術に目を付けて

薊陣営の拠点とし暮らす事で継続されており、

皆んながノルマに出払っている頃合いを見て

妖気を蓄積し続けてきた。

だが、それだけでは効率が悪いのか

玉藻前は頭をフル回転させて導き出したのが、

生者を逝かす事までは行かなくとも

彼女の持つ能力なら、それを可能に出来る。

[生者を擬似的に死者に仕立て上げる]

そうする事でシステムが死者と誤認し、

より効率的に妖気が莫大に増加されて

地脈から吸い尽くせる算段だったのだ。

玉藻前にとって妖気は、

妖力よりも使い勝手が非常に良く

それらを独り占めする事である計画を立てていた。

が、玉藻前は何を思ったのか

その場で膝から崩れ落ちるや否や

後方から来る少女の気配にすら気付かないまま

ぶつぶつと何か言っている。

[よくもまぁ…]という怒気を含んだ声に

ようやく耳と気配で察知し、

かなり驚いた様子で固まり彼女は冷や汗をかく。

???「ここまで好き勝手に暗躍して

さぞかし楽しんでくれたな?

……だが、鬼族だけを狙ったのは

流石にお粗末にも程があるぞ。。。

やるなら、もっと徹底的にやるべきだったな。

私自ら出向かせたからには、

少しでも仲間の無念を晴らせるのなら…悪いが

その余韻に浸ってられるのは、

これで最後だと思えっ!」

玉藻前が彼女の姿を捉えようと振り向いた時には、

あまりにも一瞬の出来事で

その存在を認識するよりも自分の身に起きた異変に

目線を向けるのに必死だった。

彼女が目撃したのは、

自分の体が真っ二つに斬り放たされた瞬間で

同時に、強力な重力が玉藻前に襲いかかる。

斬り離された下半身だけは負荷に耐えられず消失し

妖力が一気に半分まで削ぎ落とされてしまい

地面には、上半身を張り付かせるので精一杯。

玉藻前の強靭な肉体をもってしても

少女の見えない攻撃により

意図も容易く斬られた事から只者ではないと判断。

皮肉にもいつの日かの金鬼襲撃時と

全く同じ構図と状況下の中、声を上げた。

玉藻前「ガハッ!ぐっ、ぐうぅぅぅ。。。

はぁ……はぁ…はぁーっ………はぁ…はぁ………はぁ…

な、何者だっ!!!(汗)」

少女「お前如きに名乗る名などない」

四大妖怪の玉藻前相手だろうが、

かなり堂々としており凜とした佇まいで

ひと睨みを効かせる程度には、

少女の肝が据わっている。

玉藻前「ハンッ、名乗る名が無いだと

さては…無名の妖怪とやらの類か?

いいえ、別にそういう訳ではないわ(少女)

なら教えてくれないか♪

この私の体をこうも簡単に斬れた理由さね」

少女「時間稼ぎをしてるつもり?

そんな簡単な答えに付き合ってる暇は無いの。

あなたは、もうここから逃げる事も許されないし

始めから逃すつもりも更々ないんだけど」

玉藻前「おうおう♪

言ってくれるじゃないの若造が、

さて……はこの私を知らぬ口振りか?

(こんな小娘如きに使うのも癪な話だが、

致し方あるまい。

何てったって私の体をこのようにした奴の事、

あの手際の良さは、

相当な手練でなきゃ出来ない事だ!!

あやつが妖魔界の脅威たる者…そうなれば、

私にしか使えぬ秘技を今使う時っ!

そうすれば、天狗の契約を無事に完遂し()

私の計画も完成させて一石二鳥☆

今度こそ、あの時の屈辱を晴らす時が来たぞ)

調子に乗っていられるのも今の内だぞ、小娘(笑)

喜べ、お前が妖魔界の脅威になり得る存在なら

たった今、私はお前を排除する!!!!!!

妖魔界の脅威??何の話だ?(少女)

この状況でしらばっくれてももう遅い……悪いが、

こっちにはこっちの事情があるんでね?

それを教えられる程、私は安くもないし

お前を排除する事には変わりない!

・・・なるほど、カラスの仕業か(少女)

……(ん?

コイツ、烏天狗の使いの者を知っているだと??

まぁあの老害の事だ。

奴に何か有った所で心配など無用、

それこそ無駄な気遣いさね)

図星か(少女)

さぁ、どうだろうな?

私もそれなりに奴とは長い付き合いではあるが、

よく分からんからな!!

(つくづく訳の分からぬ小娘だ、念には念を兼ねて

いくつかの魂を喰らう必要がある。

ならば、とっておきの奴を

小娘に下そうじゃないか♪)」

そう言って下半身のないほぼテケテケ状態の玉藻前は

重力を受けていながら飄々とした態度で

意外にも冷静な判断が取れていた。

そして至極、真っ当な行動に出ようと

自身の懐に手を伸ばす。

玉藻前「・・・」

そこには、入っている筈の予備の魂があるにも

関わらず中身が空っぽだった。

そこにいくら手を伸ばしても

何かに当たるどころか生温かい風が通るばかりで

自分の身に何が起きているのか分からなかったが、

彼女は非常に焦っていた。

玉藻前「無い!…無いっ!?無い!!

(無い……だと??何故だ!?(汗)

どこだっ!どこへやった!!

鬼族の魂は、私の元には何十人…何百人もの

玉藻前だけが持つ事を許されている

魂の保管庫にあって無くすなどある筈がっ?!)」

少女「ねぇーねぇー!!

あなたが探してるのってもしかして、コレの事♪」

玉藻前「あ”ぁん?……なっ!?そ、れはっ(汗)」

今は、そんな事をしてる場合じゃないと

邪険に扱う声色で目線を上げた所、

思いがけない状況に彼女は目を疑ったのだ。

それは制服姿の少女もとい友理の周りには

蛍のような人魂のような形をした

青くて淡い光を放つ球が、

薄暗い空の下で無数に浮遊している。

その中でも友理は2つある球の内、

1つをじっと見つめた。

すると、台所の情景が鮮明に読み取れる。

友理「・・・。

……その場に駆け付けられなくて、すまなかった。

怖かったよな?

二度も同じ目に遭ってさ、

泣きたくなるような…辛い思いをさせた。

でも、もう大丈夫だ。

私がこうしてお前達を……仲間の(みな)

もう一度、引き合わせる為にここへ帰って来た!

世間に溶け込めるような一般人の振りをする生活は

これで辞めにしようではないか。

正義の為に振るう力が、悪をも跳ね退ける力が、

我々にある限り私達…鬼族は不滅だ!!」

光る球「……うん♪」

そして、もう1つの球を同じように見つめると

森で起こったその惨状が垣間見えてきた。

友理「話には聞いてはいたが、これは酷い有様だ。

あの剛腕で鉄の鎧を持ってしても敗れたのか?

大変な目に遭ったものだ、昔から不運な奴だな。

・・・。

あ~……そういえば、

彼女から昔…そう言われておったな?

今の鬼族は、通常より遥かに

[弱体化]を食らうとか何とか。。。

お前もそのような最後を遂げたのだな。

苦しかったよな?

殺す気があるならすぐ殺せば良いものを

奴は、欲求を晴らす事が出来ないから

相手を痛ぶってからじゃないと殺さないんだ。

全く、仕方ない奴だっ!

とはいえ、それも杞憂に終わったぞ?

私お得意のスタイルでもう奴をねじ伏せた所だよ。

心配など要らぬ、お前や仲間達の仇は私が果たそう」

光る球2「……うん」

友理「それでこそ、私が認めた仲間達だ!!(笑顔)

さてと、しばしお前達とはこれでお別れだね?

ここで見た事は綺麗さっぱり忘れさせて貰う。

ん?なぁ~に♪

ちょっとした私からの細やかな悪戯(いたずら)だと

思ってくれればいい。

近い内にまた、会いに来るさ!

私はこの世界に居る、ここに確かに居るよ。

それだけは、忘れても忘れないでおくれ♪

[さぁお前達の帰りを

ずっと心待ちにしている人達の元に、

還るべき所へ行きたまえっ!!]」

そう強く宣言した友理の声に反応するかのように、

光る球達は更に眩いを光を放って

花火が光速で空へと打ち上がったみたいに

それぞれの所へ飛んでいった。

台所に魂が戻ると床に仰向けのまま寝ている陽花は

消えた時と違って穏やかな表情を浮かべて

一筋の涙を流した。

完膚(かんぷ)なきまでに森だった場所は、

純の光る球が戻った事で

生い茂っていた緑の大地へと蘇ったのです。

実は、帰還する直前で友理が妖気を纏わせて

送った事で森はすぐにでも元通りとなり、

頭も復活した純は地べたに

うつ伏せの状態で寝息を立てる。


魂が空高く分散された様子を眺めて前を向き直ると

嘲笑うかのような顔で友理はこう続けた。

友理「いやぁ~凄い数だったね☆

あんなに鬼族を狩り尽くしてたなんて

正直、驚いたな~(笑)

こんな短期間で…いや、長期間にも及んで

鬼族を監禁とはある意味、偉業だね!

あっ♪ついでにお前が今まで集めた魂は、

鬼族限らず全部の魂を返還したから

あの手は、封じさせて貰ったよ」

玉藻前「……おまええぇぇぇっ!!

何故、お前が私の力を…持っている!!!

それは私のだ!私だけの力を、他の奴などに

こんな小娘なんかにぃっ!!!!!!

返せぇ!今すぐに、その力を返せ(怒)」

近所の小型犬が特定の人にだけ吠えるように

キャンキャン吠え出し始めたと思えば、

顔を真っ赤にして怒りを露わにする。

友理「うるさいな~ちょっと黙っててくれない?」

玉藻前「・・・」

思っていた事を友理が口にすると

先程の怒りや威勢はどこへやらピタリと止んだ。

友理「あ、でも〜これから私が話す事には、

ちゃんと受け応えして貰わないと困るから

特別に許可してあげる。

一応、先に言っておくけど、

間違っても私に攻撃的な態度を取ったら

どうなるか……四大妖怪の貴方なら分かるわよね?

答え方によっては、

あなたの生死に関わる問題なんだから

自分の命だけは大切に、私語は謹む事。分かった?

じゃあ気軽に話すと良い♪」

玉藻前「……チッ。

(こやつ、[私よりも自分の方が格上です]と

優位に立ちおってぇ!

私の上に立つ者は全て虫唾が走るってのにぃぃぃ)

それで一体全体、私から何を聞きたいんだい?

言っておくが、私にそんな事の為に聞いたとて

お門違いにも程があるし

語れるような情報はあいにく持ち合わせなど。。。」

自分はそもそも知らないの一点張りで

言い逃れるようとする彼女を見て簡潔に尋ねた。

友理「じゃあ2日前の夜に心当たりは?

2日前の…夜だと??はて、何かあったか(玉藻前)

へぇ~シラを切るんだ。

それとも、記憶力に乏しい叔母(おば)さんって事?

その若さで??その見た目で???

ほら、ちゃんと思い出してよ?お・ば・さ・ん」

玉藻前「誰が叔母さんだ!!

私に、馴れ馴れしくそう呼ぶn………」

友理「質問に答えろ」

緑色の瞳のまま怒り口調で言い放つと

それに渋々、応じるかのように応えた。

玉藻前「……っ!?

・・・たぁ、確か~その日はへ…蛇鬼を狩ってぇ

それからぁ……それから。。。(焦)」

友理「蛇鬼か、、まぁ及第点と言った所か?

私の少し前にも狩られた奴を先程、見かけた

きっとソイツなのだろう。

少し…前???(玉藻前)

あぁ、そうだとも。これはとある少女の話だよ。

その日は偶然、少女は学校でうたた寝をしていてね?

いつもより帰りが遅くなったんだ。

でその帰り道、運悪く少女は事故に遭ってしまった。

まさか、、何者かにトラックを遠隔で操作されて

仕組まれた罠によって、バーーン!!!さ♪

……っ!(玉藻前)

もう察しが付いているだろうが、

その少女とやらは何を隠そう………私だよ」

初めはニコやかな口調で楽しげに話していたが、

その答えが自分だと語った彼女は

徐々に、徐々に声のトーンを落としていった。

それに言い返す言葉も見当たらず、

ただ目の前の少女が生きている事実に

顔色を悪くする。

玉藻前「なん…だとぉ、馬鹿なっ?!

だが、あの時……私は確かにこの手で消した筈!!

何故……生きているっ!?

妖力が多ければ、自らの妖力で圧死するし

妖力が少なかろうと

アレ程のものを正面からぶつかれば、

普通の妖怪なら無事では済まされないっ!

街にだって多大なる被害を出して

一緒に燃やしてやった!!

いいいぃ、今更…何が目的だっ!(滝汗)」

友理「そう怯えるでないぞ、玉藻前。

いや、前澤(まえざわ) (たまき)さん♪

……っ?!ど、してぇ………それを(玉藻前)

フフッ、気付いていないとでも思ったか(笑)

確か~あれは1度目の騒ぎだったかな?

お前が事件を起こすよりも前…偶然、私の知り合いが

ばぁやさんのお店に立ち寄った時点で

薄々、勘付いてはいたさ。

確信したのは、

店の奥から懐かしい気を感じたものだから

ごく自然な流れで入って行った所。。。

そこには昔からろくに、妖力操作も出来ないお前が

妖気だけは一丁前に扱えていたのを見る事が出来た。

妖気の完全遮断を可能にするのはお前だけ……

その時の私はこう思ったよ。

[コイツは、表向きの顔とは

別に見え透いた嘘の皮を被った愚かな奴]だと

すぐに分かった」

玉藻前「そんな前から気付かれていたとはね~?

確かに、それは…認めざる終えない

が……しかしながら

その推測は少々、ドが過ぎるのではないか?

妖気の完全遮断を断てるのは、

この妖魔界では私だけじゃない!!

四大妖怪全員…が出来る事なんだよ♪

何も、私が玉藻前である証拠などない。

それに比べて小娘……お前はなんだ??

先程から黙って見ていれば、

お前の妖気は着実に漏れ出ているぞ?

妖気は妖力と違って意識さえすれば、

誰でも扱えるもの。

こんな簡単な事も出来なかったら

いずれ、現世に居ながら

裏で[妖怪失格]の烙印(らくいん)を押され、

即刻、幽閉という名の死刑として扱われて

もう2度とこの世界に戻る事すら許されんぞ」

玉藻前の体からは、

妖気など微塵もはみ出ていないのに対し

友理はかなり広範囲に絶えず妖気が放出されていて

煙のようにモクモクと上へと上昇し続けている。

ほんの数分前まで顔を引きずらせていたにも関わらず

徐々に、自分のペースを掴んで来たのか

相手を脅し返せるまでに回復した玉藻前の体は、

未だ重力の餌食に晒されている。

彼女に少しでも余裕が生まれれば

その重力負荷による攻撃は、

玉藻前の強靭な肉体の前では短い時間で慣れていき

擦り傷程度では再生し続ける傾向がある。

友理「幽閉か、、それも面白いな。

貴様に相応しい場所じゃないか(笑)

何だと!?(玉藻前)

まぁ冗談はこの辺にして…そうだな。

じゃあ今、ここでこの妖気を取っ払う方法を

見せてやろうか!」

そう言って右手をバッと高々に掲げた途端、

今の重力負荷の約3倍が

一気に玉藻前を襲い彼女の居た場所だけでなく

コンクリにまで無数のヒビが入り

ニ、三重にも穴を空け続けた。

一瞬、白目を剥きかけたが

すぐにでも意識を取り戻した玉藻前の目の前には、

信じられない光景が映されていた。

それは、四方八方からいくつもの台風が渦を巻いて

より勢いを増して猛スピードで寄って来たのです。

やがて、ものの数分で8つの台風に囲まれ

地面を削りながら着々とこちらに近付いて来る。

玉藻前「何だコレは。。。

な、何なんだお前はっ!!!!!!」

友理「世界各国に散らばった台風の目を

今この日本にこの場所に引き寄せたまでだよ☆

どうだ、妖気の漏れ具合は収まっただろう?」

玉藻前「……っ(汗)」

先程、友理の体から溢れんばかりにはみ出していた

妖気は今じゃ人並みくらいまで抑えられていて

ほぼ人間と同等のものだった。


友理「それに、誰が四大妖怪という名を勝手に付けた。

(いにしえ)の時代より[六大妖怪]、、、

今や1つ空席だが、[五大妖怪]が通称だっただろ?

いつから2席も消えた。

はぁ?四大妖怪が元は5人???何を言う(玉藻前)

はぁ……まだ分からんのかこの鈍狐(どんぎつね)は。

仕方あるまい、、よく聞け玉藻前っ!!

……っ!(玉藻前)

[妾の言葉を、忘れたとは言わせん。

次に私の仲間に手を出すものなら

その時は仲間の情報次第で、貴様を抹殺する!!!]

この言葉に、見覚えは…あるな玉藻前(笑)」

玉藻前「???」

初めは友理の言っている事がピンときていなかった。

それが徐々に、頭の隅に追いやられた先程の言葉が

その当時の記憶と情景がリンクし、

これまでの事が一気に流れ込んで来たのです。

玉藻前「……っ!?!!?!!?!!?!(滝汗)」

彼女はその記憶を知っている。

何故、今まで忘れていたのか

いや…忘れてた方がまだ幸せだったかもしれない。

何故なら彼女の奥底に根付いたあの忌々しい恐怖(トラウマ)は、

悪夢と共に再び呼び起こされてしまい

今と全く同じ状況である事を自覚したのだ。

玉藻前「ずっと忘れていればいいもの…を。。。

よくもぉ思い出させてくれたな?

貴様は……お前は、本当にっ!

顔を見るだけでイライラしてしょうがない

つくづく腹立たしい奴だ。

・・・[酒呑童子(しゅてんどうじ)]!!(怒)」

酒呑童子「フンッ、ご名答~(笑)

流石、昔ながらの妾の……悪友だ♪」

怪しげに笑ったその顔で

ユラユラと揺れながら歩み寄って来る。

その際、友理の制服が…青緑色の粒子となり

台風が吸い上げた黒い妖力を風に乗せて

体に纏わり付かせると漆黒の着物へと換装する。

それと同時に、重力負荷も解除させたが

肉体的ダメージの回復はまだ追い付いていない。

酒呑童子「私の事を思い出して貰った

ついでとして聞きたい事が2つある。

1つは、この10年で何か変わった事はあったか?」

玉藻前「10年……もう10年も経っているのだな。

そうみたいだぞ(酒呑童子)

ふむ、そうだな。。。

私から言える事は…あまりないが、

強いて言うなら河童とはあれから会えているのか?

確か先代が居なくなる前に連れていた子と

一度……顔合わせした程度だったろ。

奴は現在、学校に通ってるみたいなんだ。

ほら昔、天狗と3人でめちゃくちゃに大暴れして

烏天狗にこっ酷く叱られたあの学校だよ。

まだあったんだな。。。

まぁ別に学校に通わなくても

四大…五大妖怪である事には変わりないのだが、

何故か奴だけは、

執拗(しつよう)に学校へ行くと言って聞かなくてね?

そういう年頃なんじゃない(酒呑童子)

正直、私も詳しくは知らん」

酒呑童子「志童は、そうだな。。。

片手で数えられるくらいには会話はしたな。

そうか、それ以来か」

玉藻前「そういえば、そんな名だったな。

ん??

学校と山籠りしか人生空っぽなアイツに

そんな頻繁に、会えるものなのか???」

酒呑童子「まぁね?

こっちにもちょっとした事情があって、

その件で会う事が多くなったんだ。

なるほど?(玉藻前)

それで、他には??」

久々の会合という事で

付き合い的には短くも長い方の彼女に、

ほんの世間話を交わすように続けて話を聞いた。

玉藻前「うーーん。あっ、そうだ。

これは最近……天狗から共有された話なのだが

あやつ…烏天狗が時々、

こちらの様子をチラ見しているらしいぞ?

気を付けろ」

酒呑童子「通りでここ数日、視線を感じる訳だ~

相変わらず、心配性な奴だな。

様子見くらい自分の足で来いとあれほど。。。

全くだ、乙女の私生活を何だと思っておる(玉藻前)

乙女???

お前の見た目はもう乙女ではなく半分…………」

玉藻前「誰が老けただっ!

それを言ったら酒呑童子、

お前はほぼ烏天狗と同じくらい生きているのだから

私の方が圧倒的に若いに決まってるじゃないか!!

あ”ぁ?(黒目な酒呑童子)

……わっ、私が無礼な態度を取ってしまい

誠に、申し訳ございませんでしたぁ(汗)」

急に塩らしくなって頭を低くし出す五大妖怪。

酒呑童子「うん、そうだよね?

すぐ謝れて、偉い偉いね~三十路(みそじ)なのに。

三十路じゃないわ!二十歳(はたち)だっ!!(玉藻前)

まぁ、それはさておき。

おいっ!?話を逸らすな!(玉藻前)

2つ目、これは皆んなに聞き回っている所なんだが

残るはお前と烏天狗だけだ。

それで単刀直入に聞こう、10年前……………

妾達、鬼族の村を滅ぼしたのはお前か?」

先程の五大妖怪仲間としての会話から一転、

急激に空気が凍り付くような質問を問われる。

友理は至って真剣で鋭い目付きで

彼女の返答を待った。

玉藻前「・・・。

ん?そんな事があったのか??」

酒呑童子「あぁ、そうだ。

お前の仕業じゃないのならそれで構わないが、

そのせいで妾は今まで消息を絶っていた。

これを知っているのは閻魔大王達だけ…

でも五大妖怪が四大妖怪になっていたり、

この世界に酒呑童子が居た事すら

(みな)の記憶から忘れ去られている。

まぁ十中八九、奴らの仕業だが

今更ながら呆れてしょうがない……」

玉藻前「クズ共の集いが考える事さね。

あまり深く考えるなよ、悩むのが馬鹿らしくなる。

お前が言うな、お前が?(酒呑童子)

ふーむ、そうか。鬼族の村が滅んだ、か。。。

……ハンッ!

それは凄い、いや凄いってもんじゃないねぇ(笑)」

酒呑童子「関心してる場合か?

その影響で私が人間界に行く羽目になったんだぞ。

お前って奴はろくに仲間の心配すらも出来ないのか。

あぁ、それは失敬♪何だか面白くてな(玉藻前)

おいぃ…笑い事じゃない!!

妾達にとって、これは由々しき事態だ。

奴らを私が根絶やしにしない事には。。。

フフフッ(玉藻前)

何を笑っている。そんなに、おかしいか?」

この期に及んでまともに取り合わない

彼女に対して、友理は不信感を抱き再び睨み付ける。

台風の壁で風が遮断されているにも関わらず、

不規則に揺れ出す彼女の髪が(なび)く。

玉藻前「すまんすまん。

だって、そこまで

ムキになるお前さんを見たのは初めてだから

それが、おかしくて…つい……な~んちゃって♡

お前達の村を燃やしたのはこの[私]だよっ!

やっと私の中で引っ掛かっていたものが消えて

少し余韻に浸っていた所さね(笑)」

酒呑童子「・・・ほう?」

不意に玉藻前の口から語られた真実に思わず、

顎に手を添えていた腕が力無く下ろされる。

どうやらあの鈍狐には、

かなり空気が読めない性格も相まってか

未だ事の重大さに、気付かないまま

自慢げな顔でそう口にしたのだ。

先程のその態度に合点がいったのか

友理はドス黒い憎悪と赤黒い怒りが溢れ出し、

共存し合う筈の感情の色が互いに拒絶し合うまでに

全身からフツフツと湧き上がる妖気が滲み出す。

彼女はここに至るまで

果てしなく長い道のりを振り返る。

これまでの苦労は一体、何だったのか

人間界で過ごしたあの時間は無意味で無駄だった?

・・・違う。

私にとってその時間だけは、

決して……かけがえのない有意義なもので

今まで経験したどの中でも飛び抜けていて

それがあったからこそ投げ出さず

今、こうして生きていられる。。。

どうしても忘れられなかった。

仲間達と離れ離れになったあの時の苦しみや憎しみ

怒りが今まで蓋をしていた[復讐心]が露わとなる。

これから先、これを超えるものは

きっともう無いだろうと断言できるまで。

[殺す、殺す、殺す殺す…殺して………やる!!]

そんな言葉を吐きそうになったが、

あともう少しの所で喉奥へと仕舞い込み

一切、顔に出さずとも

拳を握り締める力がより一層、強くなっていく。

すると友理の感情に影響されたか

薄暗い曇り空に真っ黒い雲が倍速でやって来たのだ。

玉藻前「ん?何だか雲行きが怪しいな。

何が起こっているんだ??」

酒呑童子「フフフフフッ、そうだ(笑)

そういえば、あの時の礼がまだ…だったな。

礼だと?感謝されるような事したか??(玉藻前)

あぁ、お前のお陰で

いつまで経っても戻らなかった私の妖力が

あの夜の衝撃で何の因果か完全復活を果たせた。

改めて、礼を言うよ」

玉藻前「ほ、ほう。そう……なのだな。。。

そ、れは良かったな酒呑童子~(滝汗)」

友理からそのような事を聞いた玉藻前は、

毒薬でも飲んだのか急激に血の気が引いていき

みるみる内に青白い顔色へと変化する。

酒呑童子「ん♪どうした、そんなに怯えて?

い、いやぁ…何でもないさね(玉藻前)

そうか??それなら……」

少しずつ友理から距離をとっては後退っていく

玉藻前にはこの光景が既視感でしかなかった。

こういう時は大体、、、

ろくな目に遭わないと身の毛もよだつ感覚を覚え

小刻みに震える姿は、まさに子狐そのもの。

酒呑童子「・・・そうそう、思い出したよ。

お前が犯した1度目の事件で

私の……いや、私達の宝を攫ったんだって?

もうその時から

とっくにお前を殺す以外の殺意は沸かなかったよ。

初めて仲間からそう聞かされた時は、

つい…我を忘れて仲間に当たってしまったが

宝にまで手を出した時点で万死に値する」

暗い目元から赤い眼光を覗かせながら

黒い着物の袖で口元を覆い、

とてもつまらなそうな顔で彼女を見下した。

玉藻前「・・・チッ!

このぉ…お前さんとはよく気があったから

忘れていたが久々に再会したら、いつもこうだ。

それは、お前の日頃の行い……だろ?(酒呑童子)

ううぅうるさいっっっ!!!

も、元はと言えば、

昔からお前は私と会う度に突っかかって来たり

何かと変な言い掛かりを付けられ勝負してきたりと

私の事を殺し過ぎなんだよ!!

本物の化け物なんかと一緒にされる私のような者が

一緒に比べられる世間の目が

この上なく理不尽…だと思わないのか?!」

酒呑童子「ふむふむ、それは確かにそうだな。

適当な言い掛かりを付けて勝負を仕掛けた事は、

詫びるが……我ら鬼族を勝手に敵視しておいて

勝手に殺し回る奴に、

理不尽と言われる筋合いはないと思うが?」

玉藻前「……黙れぇっ!黙れ、黙れ黙れぇぇ!!

お前に、私の何が分かると言うのだ(怒)

そんなもの…私の都合で勝手に決めた決定事項、

私のルールに乗っ取って何が悪い!

それを理不尽と言うのだよ(酒呑童子)

……っ~〜言っておくが、こんな私にしたのは

他でもないお前達のせいだからねぇっ!!

どいつもこいつも強者狂いの化け物達が」

酒呑童子「・・・。

何とか言ったらどうだ、酒呑童子っ!(玉藻前)

お前が昔から私達の事を憎んでいたのは、

知っていたが…どこまで言っても一貫して

私は悪くないの一点張りか。。。

自分を守る為に言い訳を並べる子供みたいで

大人として恥ずかしくないのか?

そんな身勝手な理由で何回も起こされちゃ、

ここまで大事(おおごと)にはなって無いんだよ。

その区別もまだ、分からぬか!!(怒)

……っ!(玉藻前)

そうか。

お前をそんなにした覚えは

私や他の者達も恐らく無いだろうが、

それを私達が悪いと責任をなすり付けるのであれば

良いだろう、その責任…妾が受け継ごう♪

なっ、何をするつもりだ!?(玉藻前)

なぁ~に、ちょっとばかし……

強行手段に踏み切るまでだよ?

特別に苦しまずとも…殺してやろう(笑)」

粉々になった瓦礫の上を歩いてきて

ゆったりとした足取りには、

如何にもこの状況を嬉々として進んでいく。

玉藻前「くっ、来るなあああぁぁぁぁ!!!!

私にぃ……この私に、近付くな!雷霆(らいてい)っ!!」

ゴロゴロゴロと鳴り止まない雲から稲光が走り、

その内の1つが友理目掛けて

一直線に、雷が直撃する筈…だった。

本来の彼女ならそこから大立ち回りして避ける

と玉藻前は予想していたがそれは大きく外れ、

友理はその場で首を傾げるような仕草で

ふいっと頭を少し動かしただけで軽く避けられて

髪を結んでいた黒シュシュに雷が命中したのだ。

黒い着物に身を包み髪を下ろした姿の友理は、

まるで人が変わったかのような大人の色気と余裕が

溢れ出ていてまた違った一面を見られた気がした。

少し焦げ目の付いたシュシュを掴み取り、

ドス黒い笑顔を彼女に向けてニコッと笑う。

酒呑童子「ホント、往生際が悪いね~

妾共々、道連れにするとは悪友ならではの考え方だ。

けれども、この台風は

必ずしも妾を倒せたとて消滅はしないし

お前を呑み込んで道連れにするまで止めない☆

……そもそも天候を使って

確実に当てるなら、まだしも…当てられないとは

それでも鬼族を殺した馬鹿か?

いいか、(いかづち)とはな。こう扱うのだよ♪」

つい先程、玉藻前が使った巨大な雷雲を掌握(しょうあく)

分散された稲光を即座に一点に集めさせて

大きな光の柱となって彼女諸共……電撃(らいげき)

その身に受けたのです。

それは、脳天に直撃したのと同時に地面を打ち砕くと

思考が徐々に消え失せていき全身痙攣を引き起こし、

もう立っているのか倒れているのか

それすらも曖昧なる程。。。

獣人となっても尚、彼女の美しさは枯れる事なく

むしろ努力の末に築き上げた美貌も

今じゃ悲惨なもの。

玉藻前「……あっ、あぁ…ぁあ………ぁぁぁ」

酒呑童子「これで終わりだ」

友理の容赦のない一言を告げられた彼女は、

唯一…この思考だけは脳裏に焼き付いていた。

玉藻前(やめろ、やめてくれっ!!

あと…あと、もう少しの所でぇ……

天狗の契約を果たせるんだ!

そして行く行くは、

奴に仕返しを…そうじゃないと気が済まない。

ここで死んだら私の努力が全部、全部…………)

フラッシュバック・・・

天狗「この契約を期限以内に果たさなければ

もし、仮にあなたが死んだ場合は

この話は白紙とします。

そうなりたくないなら、完遂なさい」

フラッシュバック終了・・・

酒呑童子「3、2、1……ゼロ、廻撃(かいげき)っ!!」

カウントダウンを終えるのは、

それ(すなわ)ち玉藻前の死を意味する宣告。

着物の袖が風でパタパタと煽られながらも

そんな玉藻前を見ても依然として、冷静に構える。

手の甲の骨を突き立てて力を込めると

腕を捻るように上に掲げて風圧を利用し、

2人を囲っていた黒い台風の壁を吸引する事で

一気に右腕に集約された風の力を用いて

振り上げた拳を下ろした。


その威力は、膨大且つ住宅街を

半分程くり抜かれたかのような地面の抉れ具合、

焼け痕から見るに山の一つや二つ

軽く更地にするのも容易い災害級なもの。

それをほぼ戦闘不能の玉藻前に向けて

真正面から放ったのだから只では済まされなかった。

胴体はすぐにでも吹き飛ばしてしまい、

地面を大きく削った衝撃からか目の前が

砂粒や煙、石ころが一斉にこっちに飛んで来る。

爆風の影響は友理の居る所にまで及んだのだが、

腕に纏っていた残りの風を

盾として使用する事で何事もなかったのだ。

爆風で立ち上がった砂煙は留まる事を知らず

それを見て少々、呆れているご様子。

酒呑童子「全く我ながら厄介な力だな(汗)

しかし、さっきのアレをそのまま野放しにすると

後で二次災害を起こし兼ねないしな~

ふむ、どうした事か。。。

……あっ、そうだ。その手があった☆

よ~し、まずは空からだ♪」

拳をポンッとさせて何か閃いた友理は、

未だモクモクな砂煙を見て

普通に待っていては消えないと判断してなのか

この街の向こう…海の彼方まで未だ途絶える事なく

突き進む廻撃を何とかする事になった。

酒呑童子「(こんなものの為に呪文など要らぬわ)

・・・ここかな~?ほいっ!」

水平線上を綺麗に廻撃が猛スピードで通過するのと

水飛沫の波で海が真っ二つに引き裂かれ、

海底の肌を露室させる程度には飛来していく。

それを急遽、

遠隔に切り替える事はそこまで難しくもなく

その物体を斜め上に向かって小回りさせながら

元々の威力のまま大気圏まで突入させたのです。

真っ白な雲に穴が空いて

それが空一面に波動が天地へと行き渡り、

雲一つないオレンジ色の夕焼け空が顔を出す。

酒呑童子「これくらい当然の報いかな(笑)

最近は曇ってばかりで

変わり映えのしない毎日だったが、

まぁ…これはこれで良いだろう♪んっ?」

夕焼けの太陽を眺めながら地上に目線を戻した所、

砂煙が薄まっていく中から

上に浮上する一本の影が出てきたのは、

何と息絶えた玉藻前の頭部だった。

それは白目を剥いており、

口の形が読み取れないまでに黒い血で染まっていて

首から上は形を成して残っていたが、

それも時期に黒い塊となり塵となっていったのだ。

半身消滅、重力負荷、雷撃、廻撃……と

散々な目に遭っていた玉藻前は

最後、衝撃以外の痛みを伴う事なく消滅しただけ

まだ良心的な方だろうと思った筈だ。

そんな最後を見届けた酒呑童子は、

昔から変わらぬ粗暴の悪さや空気の読めなさ、

目的の為なら視野が狭まる事から

自己中心的な彼女に情や憐れみの心など要らない。

あるのは。。。

酒呑童子「あーあー魂の原型にまで傷付けちゃったね

これは、相当な時間を要するな。

いや~…それにしても久しぶりに

全力……とまではいかないが、

手加減なしって最高ーっ!!

その代わり、いつも通り大惨事だけど。。。

こりゃ直すのに苦労するだろうな~

3人掛かりで何とか出来るかな??うーーーん。

まぉいっか♪どうにかなるっしょ、うん!

こ~んなにも清々しい気持ちになれたのは、

いつ振りだろうか…あまり思い出せないが……

終わり良ければ、全て良しと思えばいいか。

ひとまず、玉藻前…お前は[冥閻(めいえん)で反省して来い]」

とそんな言葉を紡いで、

少し遠くの方に目線を一瞬だけ飛ばすも

何事もなかったかのようにその場を後にする。

2人の元へ・・・

友理「たっだいま~♪

お疲れっ!(傀来)

お勤め御苦労様です(雄鬼)

おい……まだ堅苦しいぞ、雄鬼(ジト目)

そういう所、何とかならんのか??

久々の主人様自らのご活躍ですから(雄鬼)

あっそ。。。(呆)

それで、ここから見ていてどうだった?」

雄鬼「流石の一言です」

傀来「そりゃあ~…久しぶりにあんなの見たら

やっぱり酒呑童子って凄くて羨ましい限りで

昔から日常的に見ていた光景が恋しいぐらい

大・大・満足でしたよ☆

おぉ~それは、良かったよかった♪(友理)

うん……ただ俺はちょっと物足りなかったかな。

え、何で??(友理)

友理……意図的に手加減したでしょ?

酒呑童子ならあの街丸々…いや、もっとかな。

栃木県とその周辺の県を道連れにも出来たよね??」

友理「……あ、バレた。

普通に考えてあの規模が小さ過ぎるもん!!(傀来)

一応、半分…消えてるだけでも十分だがな(雄鬼)

まぁ傀来の言う通り私が本気を出せば、

それくらいなら平気で出来る。

でも加減したのは、

ただ単にあの街が特別だったってだけ。。。

ここ最近では少しずつだが……

都市開発がボチボチ進みつつあるし、

1つでも多くこの先の未来の為にも

何か残せるものがあるなら、

出来る限り残した方がより良いのが

閻魔騎士の考えだろう?

全くその通りでございます、主人様(雄鬼)

そういうのは、もういいぞ(呆れ2)

本来、壊す為の力でしか無かった私達にとって

繁栄とは、縁もゆかりも程遠い……もの。

それを壊す事で正気を保ちたい奴は壊せば良いし、

壊すだけの人生なんて御免だと言うならば

自分で制御したりと

すぐにでも行動に移せる人も居るように、

考え方は人それぞれだ。

もし、心のどこかで本当に…大事だと思えたら

それは断固として守り切れ!

それが例え、物でも人でも。。。

フンッ……やっぱり友理は、優しいね(傀来)

今更、何を言うておる?

妾はお前達の命を預かり拾った時から優しいよ」

傀来「それもそうだね♪」

雄鬼(少なくとも私から見ても

人によって関わり方…全然、違いましたよ(汗)

友理「・・・そうだ。

先程、お前達と別れる直前に話していた例の件だが

本格的に考え直さなければなくなった。

奴が再び、現界次第…早急に仲間を集める必要がある。

それはまた追々となるが、頼めないか?

あ~……あの件ですね、お任せ下さい(雄鬼)

え?本当にやるって決まったって事っ?!(傀来)

あぁ、間違いない。

奴の口からそう聞かされたからな」

傀来「やったーー!

じゃあじゃあ折角だからさ~

早速、[阿修羅]を復活させるのも良いんじゃない?

鬼族の幹部なんだし♪

それもそうだな、だが…アイツは。。。(友理)

大丈夫ですよっ!!

酒呑童子のあの力があれば、絶対に行けますから☆」

友理「うーーーん、まぁそうか。

奴も奴で所詮、悪ガキのままだったからな~

久しぶりにガツンとやってみるか♪

やったやった!(傀来)

でも、やっぱり……

一番は休める時に休んだ方がいい。

この先、長い戦いが待ち受けているんだ

それに備えて情報収集もだが、休む事も欠かさず

時期が来たら効率よく仲間を集めていくぞ」

2人「了解っ!」

傀来「わぁ~楽しみだな☆☆☆

こんなにも早く抗争が出来るなんて

今からめちゃくちゃ待ち通しいよ!!」

友理「それは私も同じ~♪

何てったって我が鬼族が関わるのだから

その土地を跡形もなく消し去る勢いで

頑張っちゃうよーーっ!」

傀来「勿論ですよ(笑顔)」

雄鬼「それだけでは、勘弁して下さい(汗)

とはいえこうも言ってられないのが、

現状なんですが……はぁ」

友理「それじゃあ各自、解散って事でまた明日♪」

雄鬼「はい、こちらこそ本日はわざわざお越し頂き

ありがとうございました、主人様!!」

傀来「とびっきりの機会に立ち会えて良かったよ!

また明日~友理に会えるの楽しみにしてる」

友理「もう流石に…先走り過ぎだってば~

表向き、傀来とは仲の良いただのクラスメイト……

急に距離が近くなったらそれこそおかしいし」

傀来「冗談だよ~☆

でも学校の隙間時間に、

またこうして会える事は増えるでしょ?

まぁ…それもそうか♪私も嬉しいな(友理)

俺もですよ、ついでに雄鬼も~」

雄鬼「我々はどこまでもお供しますよ、主人様」

腰に手を当てて無邪気な顔でウィンクする傀来と

毅然とした態度でこちらに手を差し伸べる雄鬼達、

その姿はまるで主人に一生を掛けて

付き従える騎士のように見えた。

友理「(鬼族は皆、忠誠を誓い過ぎるが余り

やたらと過保護になったりお節介焼きなるのは

いつまでも変わらないんだろうな。。。

……今なら少し大王の気持ちが分かる気がする(汗)

お前達の意志、確かに受け取った」

2人がまだ小さかった頃を思い出しながら

親目線になって穏やかな笑みを浮かべる友理は、

不意に罪悪感を抱き始めた。


デパート前・・・

黒い空の下、羽田市の端っこ側には田舎にしては

珍しい大きめなデパートが構えているのだが

自動ドアから1人の一つ目が出てきたのだ。

中位(ちゅうくらい)の袋を1つ持っていて

他のお客と比べて買うものが極端に少なくとも

帽子を被りながらの彼女は満足した顔付きで

徒歩圏内にあるマンションへと足を進めた。

カサッ…カサッと買い物袋の中の重りが動く度に

心地の良いリズムが赤信号によって止められる。

それから進み、また止まるを繰り返し

不運にもマンションに行き着くまで

全部の信号に引っかかっていたものの

それでも彼女は、笑顔を絶やす事はなかった。

目視でマンションの角が見えてきたと思ったら

あっという間にマンションの目の前に辿り着く。

そこに着くや否や雫は何を思ったのか

つい先程まで浮かべていた笑みが消えて

突然、瞳が潤み出し視界が揺れるのを見て

我を忘れてどこかへ走り去ってしまった。

葉木公園・・・

ギーコ……ギーコ…と鉄と錆びたブランコに

揺られながら空を眺めて呟く。

雫「……あれ?

さっきまでこんなに空、晴れてたっけ??

ふふっ、果物みたいで美味しそうです♪」

夕焼け色が瑞々しいみかんのようで

明るくて、暖かくて、心が少し浄化された気がして

思わず、子供らしい無邪気な笑みを浮かべていた。

ガサガサガサッと買い物袋の中を覗き込んで

手を入れてみると[丁度、良いかも]そう言って

静かに公園を立ち去った。

この公園を道路が四角く囲わており

加賀江市の住宅街のど真ん中に位置する所で

それぞれ公園の角に沿って歩道が引かれ

他の道路より広めに作られているのだ。

公園を出た雫は、

真っ先に羽田市のマンションから近い歩道を選んで

渡ろうとしたが、また赤に切り替わってしまう。

雫「……あっ」

まるで、信号が意志を持って雫の行く手を阻んで

考えるチャンスを与えているかのようだった。

しかし、彼女にとってはそれは違った。

その沈黙が彼女には悪夢としか思えなくて

目元を暗くさせていた。

雫(また、逃げた。

だって現実から目を離す方が楽だったから………

責められる前に私が居なくなりさえすれば、

[皆んなは]平穏に暮らせる。

無名の妖怪が[生まれた]せいで

また周りの人達に悪影響が及ぶくらいなら一層。。。

で、でも……どうして、どう…してぇ…………

[私だけ]が逃げなきゃいけないのぉ?

皆んなを見捨てて、1人で逃げた恨み??

それとも私が生きてるのが悪い??

教えてよぉ、誰かっ!!(涙)

止めどなく溢れ出て来る涙を制御する事も出来ずに

頬に、顎下に流れていき地面にポタポタ落ちる。

1人で考えれば考える程、1人で抱えれば抱え込む程

自分がより嫌いになる。

あの後、下校して日向と帰れた事は良かった…けど

家に帰ればまた1人になって虚空を見て

静寂に呑まれるのが嫌ですぐに買い物へ出掛けた。

普段からまともに、

デパートに行く頻度も少なく

年に3回程度……何かを買っても1人分だけで

心のどこかで皆んなが生きているなら

探したい!探しに行きたい、でも安全な暮らしから

抜け出す勇気は雫には無い。。。

だから動けない。

苦しい、悲しい、辛い、でも時折り楽しい気持ちを

生を実感してしまったから

思うように動けなくなっていた。

昔は散々、逃げ回っては隠れて…逃げてを

平気で……ううん。全然そんな事なかったけど、

それでも生きる為には必要な事だと

そう信じて今まで生きて来た。

それが、今は逃げる癖だけが中途半端に残って

どうしたらいいか分からない時に限る。

普通だった筈の当たり前が過ぎる日々は、

彼女にとって

悲しくも楽しい思い出になりつつあった瞬間。

それが、突然…友理という1つのピースだけが

目の前にある筈なのにノイズやブレが生じて

自分の中から消えようとしている。

掴みたいのに、届かないピースを

ただ見つめる事しか出来ない歯痒さに

今まで抑えてきた感情が静かに暴れ出す。

雫の心が次第にぐちゃぐちゃになる中、

歩道を渡ろうとした事もすっかり忘れて

信号が青に切り替わっても気付かないのは、

これで5回目だ。

その5回目で1台の軽トラが曲がろうとしていて

歩行者が居る為、しばらく待っていたのだが

一行に渡る気配がしないままハンドルを切って

曲がった所、反対側の歩道に友理が現れたのです。

雫を見つけた安堵からか笑みが溢れてしまう友理は

着物から制服に変えており、

ゆっくりと歩道の上を歩いて行くと

そこには憔悴(しょうすい)し切った雫の顔を見て

思わず引きずった顔で足を止めそうになったが

逆に踏み切り、雫の腕に手を伸ばした。

パンッ!という音と共に温もりを感じ取った雫は、

現実に引き戻された時の目が大きく見開いて

友理を認識すると耳元で[こっちに来て]と言われた。

雫「……えっ?」

突然、視界に入ってきた友理に驚く間もなく

言われるがままに公園に引き戻される。

そして、いつも以上に早く走るもんだから

公園に着く時には息切れをしていた。

雫「はぁ…はぁっ……はぁ…はぁっ………はぁ……

り…んどう……さぁん、どうしてここに?(汗)」

友理「・・・」

雫「……林堂…さん???」

友理「・・・。

ねぇ、雪乃さん…いや、(しずく)。。。

……っ!(雫)

いい加減さ、私達…下の名前で呼ばない?

え??(雫)

・・・だって~初めて出会った頃から

今まで苗字呼びで一貫してたでしょ。

それが、ずっと気になってて!!」

雫「・・・」

友理「私はそう思ってたんだけど、どうかなって!

……だ、だから………っ(震え声)

えぇっと…その〜……本当にごめんね、雫」

いつも以上に明るく振る舞う友理の開口一言目は、

まさかの名前の呼び方について話を振って

気を逸らそうに思えた言動から一転。

切り出し方のやり方も分からない

不器用ながらの思いからだった。

雫(その時の林堂さんは、初めて悲しい顔を見ました。

今まで私が経験した人生では、

到底…言い表せないようなとても苦痛な叫びが

気のせいかもしれないけど…聞こえた気がした。

私の悲しみと、彼女の悲しみなんて比べても

無駄なのは分かってる。

彼女の涙が何なのか知りもしない自分でも

不思議と悲しさが込み上げてきて

いつも眩しい笑顔で周りを照らしてくれる太陽が、

今では同い年ぐらいの子供の姿をして泣いている。

それに、私は何をすれば良いのか戸惑ったけど

でも…こうするべきだと思った)

分からないなりの少女の気持ちが、

不器用な慰めにしか出来なくても

雫は自分に出来る最大限の事をしてあげた。

雫「大丈夫、大丈夫ですよ。林堂さん」

それは、いつの日かに真がやってくれた

安心するお(まじな)いで腕に抱く事だった。

友理「……っ(驚)」

その行為に少しハッとしながらも

下がった両手を雫の背中に回してそっと近付ける。

1分経った所くらいで離れようかと思った雫の肩を

ガッと掴まれて更に驚く中、

至近距離まで顔を近付けされてからこう言った。

友理「友理…って呼んで欲しいなぁ~☆

えっ、ぇぇぇえええーーーーっ!?!!!!(雫)

早~く、早く呼んで♪

何で嬉しそうなんですか面白がってませんか?!(雫)

ねぇ、良いでしょ?一生のお願い!」

雫「ふぇ!?え、えっと~………

ゆっ、ゆゆゆ……友理…さん。。。(赤面)

さんは無しだよ!!じゃないと帰らせない(友理)

えぇーっ!嫌です、絶対に嫌です嫌です!!

良いじゃん、何も減るもんじゃないんだし(友理)

減ります減ります!私の心がっ!!(焦)

ねぇ?ねぇ〜〜ってば!(友理)

無理ですよ、ゔゔぅぅぅ。。。

……じゃあ逆に聞きますが

今日の事、林堂さんこそ…どうして

私とまともに取り合おうとしなかったんですか!!」

と友理はここぞとばかりに、

名前呼びチャンスを逃すまえと畳み掛けるものの

ムキになった雫が反撃したのはあの時の事。

それを持ち出された途端、

彼女は何も言えなくなってしまうのだ。

友理「・・・。

そ、れは…今はまだ何も話せない。。。

……っ、じゃあまだ呼ばなくて良いですね!!(雫)

ごめん…こんな何も言えない

秘密ばかりの私を友達だと思ってくれて」

雫「・・・。

き、気に掛けるくらいそんなの当然ですっ!

え?(友理)

林堂さんの事情は全く分かりませんが、

それでも…友達がこうして打ち明けてくれるだけで

私は今、とっても嬉しいです♪」

小さな握り拳を両手でぎゅっとする仕草をして

今までに見た事もないニッコリ目で

純粋無垢な笑みを浮かべていた。

友理「……ふふっ。

・・・そっか、ありがとね………雫(笑顔)

じゃあ近い内に、

下の名前で呼ばせられるように私も頑張るね!」

雫「そ、それは…頑張らなくて大丈夫ですっ!!」

さっきまでのニッコリ目が嘘のように、

バツ目に早変わりする雫を見て

友理は悪戯っ子な顔をして走り出したのだった。

ここから先、ネタバレ注意・・・









皆様、いかがだったでしょうか?


怒涛の展開構成を楽しめたのなら嬉しいです♪

さてY・Hファイルの主人公、林堂 友理は

人間ではない事は8話でとっくに判明していました。

が、問題の正体は分からずじまいで

とうとう32話で解禁です!!

それが、まさかの「酒呑童子」だった事は

皆さん分かりましたか?

ヒントとしては、

四大妖怪のメンバーで大体は予想が付いていた人も

中にはいるかも知れません。

それが何と、妖魔界全体が記憶を消されていたなんて

こんなにもスケールデカデカ要素だとは、

誰も予想、出来なかった事でしょう!(多分)

四大……ゔぅん!!ややこしいですが改めて、

[五大妖怪]である事が分かった所で

次々と謎が解けたり、増えたりしましたね。

今回、必要悪の玉藻前さんには

めちゃくちゃ散々な目に遭って貰いましたが

自公中心的キャラは使い勝手が悪い意味で良くて〜

櫻湖市の場面はより説得力のある理由にするのに

相当時間が掛かりました。

でも本当に、これはまだ序の序口なんですよ〜

何故なら??

鬼族の組織は全体的に

玉藻前よりも性格が悪いからです!

読んだ方なら分かりますよね?(圧)

まぁまぁ玉藻前のほぼ自白とも言える証言が、

やけにアッサリしてるかと思ってるそこのあなた!

大丈夫です、全然…大丈夫じゃないですが……

鬼族と獣人達の戦いは、

林堂 友理サイドのお話の根本となるものなので

まだまだ続きます!!それも、乞うご期待☆

それとこの話で描き切れなかった日向と千秋の件は、

すみませんが次回とさせて貰いますm(_ _)m


あと、学校襲撃の後書きに描いたクラス基準も

かなり大雑把ですがクラス差の闇は深いとだけ。

いやぁ〜そういうシビアな世界観と格差社会は、

めちゃくちゃ作者個人が大好物で

雫の葛藤は痛いほど、分かります。

あと、芽亜のポジティブマインド前のネイティブも

世の中、[努力努力]と簡単に物を言いますが

それで叶うなら最初から努力なんてしませんよ。

皆さんも一度は経験した事がありませんか?

必死になってやっても、やる気があってやっても、

やる気も湧かない興味もない事に努力しても

それが出来ないなら、無意味な事だと私は考えます。

なので、私のモットーでもある下記を覚えて下さい!

・皆んなが出来て当たり前の事を…私は出来ない。

・私だけ当たり前に出来て皆んなには出来ない。

  ↑

これだけでも私は誇っても良いと思うんです♪

言いたい事がごちゃごちゃしてるのは、

平常運転なので読むだけ読んでくれたら良いな〜〜〜

作者の個人的主観・・・


そして、クラス差について

第28話[双星のアリウム]で日向も葛藤していますが

諦め半分、まだ頑張りたい半分もあって

だけど日向はもう知っています。

メインキャラの友理を除いて

その他生徒もまだ知られていない情報を日向だけは、

既に持っている事が多いです。

それも頭に入れた上で読み返すとまた変わると思います

ある意味でも日向は一つ上の先輩として

ちゃんとしているとも言えます。


えぇ…長くなってしまいましたが、

友理の過去編は1話跨いでもう1話跨ぐかもです。

それくらい友理は—————年くらいは生きてるので

超・超大作第2弾ですね!

残る半年…月1ペースで投稿できれば、

何……とか、何とか間に合うと思います!!

それでは張り切って頑張りますので

引き続き暖かい目で読んで頂ければ有難いです。


白百合リーフの追加補足コーナーでした・・・

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