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人界魔討伝〜三魔〜  作者: 人工サンマ
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第十五魚 筋肉

 闇ありし所にサンマあり。

 死をもたらす災厄の化身。

 サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。

 だが、人は希望の光を手に入れた。

 人を守り、人を導く存在。

 人は彼らを称えてこう呼んだ。

『日魔星』


(前奏)

 ゆけ〜さんまの戦士〜

 魔を討つ戦士よ〜

 秋刀魚を掲げて〜

(オォォォォ~)

 鳴り渡るサンマの咆哮

 終わりを告げる魔笛

 散りゆく人の運命(さだめ)

 響く

 慟哭を聞け

 さんまの戦士よ

 叫べ!

 怒りの声

 振るえ!

 怒りの秋刀魚(やいば)

 戦え!

 怒りの戦士

 正しき心

 秋刀魚の一太刀

 魔を討つ戦士 三魔〜!!


  『戦え!日魔星』(字数稼ぎ)


 闇夜に轟く銃声。

 放たれし一発の凶弾。

 それが今宵の惨劇の始まりであった。

 凶弾に貫かれ、赤い花を広げ地に倒れた男は自分の命が絶たれるなど微塵も考えもせず、己が死する瞬間でさえ感じることはなかった。

 それはある意味、幸福なことなのかもしれない。

 男は続く惨劇より逃れることが出来たのだから。

 サンマランド。

 それが今宵の惨劇の舞台である。

 舞台の幕が上がる。

 幾つの命が果てるものか…。


 三魔が修行に出てから十日程、時が経った。

「全く、いつまであちらにいらっしゃるの」

 今この場にいない三魔に文句を言いつつ、自室で待機する。

 日はとうに落ち、サンマの出没が増える時間となった。

 三魔がいない間、この管轄は任されている。

 自分の誇り(プライド)と彼の信頼にかけて一人たりとも犠牲者を出すつもりは無い。

 秋刀魚大銃(サンマシンガン)を入念に整備し、サンマとの戦いに備える。

 先日、サンマッハなるサン魔を討ったが、それ以降サンマの出没はない。

 されど、気を抜くことなど許されるわけがなく気を張っていた。

 秋刀魚大銃の弾数を確認し、整備を終えた瞬間であった。

 …微かに銃声を聞いた。

 張り詰めていた気は一層引き締まり、鼓動が早くなる。

「誰が…?」

 秋銃魚(さんま)を扱う日魔星は自分以外もいるが、特訓のための射撃場は離れており、防音設備もされている。

 何らかの要因で、秋銃魚を敷地内で撃った?

 逡巡する。

 のだが、何らかのという理由付けを超える嫌な予感というものを感じる。

 そのため、気を引き締めていた。

 続く銃声。

 明らかな異変である。

「…襲撃!?」

 ありえないことでは無いが、考えたくもない。

 以前、三魔を狙ってサン魔忍なるサン魔が潜入してきたという。

 敷地内はサンマイクロカメラで一応の防犯設備が施されているが、完全などと言うには程遠い。

 身を壁に、窓から外を除く。

 屋敷を囲うように広がる森林は、まるでそれ自体が意志を持つ生き物のように見えた。

 魔窟、言い様のない不安感に呑まれるようだ。

 辺りを探っているうちに再び銃声。

 流石に自分以外も異変を感じたようで、屋敷内が騒がしくなる。

 一部の日魔星…四人ほどが外に出て、庭を中心に異変を探っている様子が見て取れた。

「敵がいるかもしれないというのになんと不用心な…」

 半場呆れつつ呟く。

 直後であった。

 銃声と共に、日魔星の頭部に赤い花が咲き倒れた。

 唐突に飛び散った仲間の一人に、残りの三人が驚愕する。

 一瞬の出来事であった。

 その一瞬のうちに、残る三人は肉塊と化した。

「っ…!?」

 上空より、巨躯のサンマが現れ、またたきの間に日魔星を肉塊と変えたのだ。

「オラはサンマッスル!!同胞を手にかけた恨めしき日魔星よ!!かかってくるがよい!!」

 サン魔が吼える。

 マッスルという名に恥じない、筋骨隆々としたサンマは偉丈夫が如く、庭で仁王立ちしている。

「来るが良い!!我が同胞、サンマッハを屠りし怨敵よ!!」

 サンマッスルが吼える。

 先日のサン魔の仲間…?

 サンマッハ、サンマッスル、そして恐らく銃火器を使うサン魔がもう一体。

 この三体に繋がりがあるのならば、何らかの共通目的があって人界に現れたのではないだろうか。

 その可能性は捨てきれない。

 と、するならば奴らの目的は…?

「詮無きこと…ですわ!」

 一喝し、窓口へ銃口を突きつけ発射(ファイア)

 轟音と共に、サンマッスルへ銃弾が迫る。

 虚をつかれたサンマッスルは銃声でこちらへ身を向けたが、回避は間に合わない。

 サンマッスルは直立したまま銃弾の雨を浴びる。

「ミンチにしてあげますわ!!」

 マガジンが空になるまで撃ち続けると、漸く秋刀魚大銃をさげる。反動を気にしないで打ち続けられるのはサン魔力の賜物である。

「効かぬわ!!」

 銃口を下げると同時にサンマッスルが吼える。

 銃弾はサンマッスルの足元に全て転がっていた。

「な、なんてサンマ…ですの」

 驚愕を隠しきれずに、声を漏らす。

 そして、次の瞬間、右肩から衝撃が駆け痛みが体を襲う。

 反動のまま、床に叩きつけられる。

「う…撃たれた?」

 銃火器を扱うサン魔がいるとは察していたが、注意が甘かった。

「サンマタギ!邪魔をするな!」

 サンマッスルが仲間と思われるサン魔へ叫ぶ。

 痛みに呻きながら、マガジンを入れ替えると部屋の出口へ向かう。

 屋敷内にいる日魔星と合流しなければ。

 これは明確な襲撃だ。

 しかも、不幸なことに強敵である。

 悔しいが、他の日魔星の協力を得たいところだ。

 身を屈め、出口へ。

 ドアに手をかけてると、背後より衝撃音。

「逃げるな、日魔星」

 サンマッスルが壁を突き破り、部屋まで入ってきたのだ。

「くっ…!!」

 振り返ると同時に右肩の痛みに耐えながら秋刀魚大銃をぶっぱなす。

「茶化しいわ!」

 サンマッスルは銃弾の雨をものともせず、一歩一歩迫る。

 やはり効かない。

 すぐさま転身し、部屋の外へ走る。

「逃げるなと言うておろう!」

 背後よりサンマッスルの足音が聞こえる。

 幸い、屋敷内部は廊下が広くないため、巨躯をもつサンマッスルは動きづらいようで速度は早くない。

 …しかし、どうする?

 武器が効かない以上、どうやって奴を討ち倒す?

 術を模索しながら廊下をかける。

 なるべく複雑に、右へ左へと曲がりながら。

 そして…曲がった先に二体のサンマが現れた。

 反射的に秋刀魚大銃を向ける。

 サンマッスルからは多少は距離を取れたはずだ。

 このまま、走り続ければ追跡をかわせるだろう。その後、どこかに身を隠しながら討つ方法を模索すればよい。

 それが今の私にできる最善であるからた。

 しかし、目の前に現れたサンマで容易くその策は打ち破られる。

畜生(sit)ですわ」

 轟音を鳴らし、二体のサンマを討つ。

 早くこの場を離れなければ。

 思考するよりも早く、体を動かす。

 が。右の壁が崩れ、巨腕が伸びてくる。

「…!?」

 回避しようと身を捩るが遅し。

 巨腕はいとも容易く私の体を握り、宙へ浮かせる。

「ようやく捕まえたぞ日魔星」

 壁が崩れ去り、サンマッスルが現れる。

 巨腕が握り締められ、圧迫される。

「がはっ!!」

 骨が軋み、痛みで秋刀魚大銃を落としてしまう。

「このまま果てろ」

 一層、力が込められ意識が遠のく。

「こ…こんな所で…」

 歯を食いしばり、目を開く。

 死ねない。

 死んてなるものか。

 精一杯、サンマッスルの手の中で藻掻く。

 しかし、無情。

 一切、サンマッスルが込める力に変わりはない。

「死んで…なるもですか!!」

 叫ぶ。

「秋魚女、あなたはもっと大人しい子ではなかったのですか?」

 凛とした声が響く。

 サンマの死体が転がる廊下の先。

 そこに、彼女…母秋刀魚が立っていた。

「何奴?」

 サンマッスルが一瞬、力を弛め母秋刀魚を目にする。

「私?私はね、お母さんよ」

 瞬間、衝撃が走る。

 母秋刀魚が立っていた場所はひび割れ、尋常ならざる力で踏み込まれた跡。

 そして、サンマッスルの巨躯は浮いていた。

 サンマッスルの胴体に、母秋刀魚の拳が突き刺さっていた。

「ぐぼっは!」

 衝撃を一身に浴びたサンマッスルは呻き声を上げ、握りしめていた拳を開いた。

 私の体は宙を滑り、落下する…ことはなかった。

 気がつくと、私は母秋刀魚の腕に抱きとめられていた。

 その細腕から想像できぬほどがっちりと私を抱え、母秋刀魚はにこやかな笑みを浮かべていた。

「秋魚女、ああいうお転婆な子とは遊んじゃダメよ」

 私をゆっくりと床へ下ろすと、母秋刀魚はサンマッスルへ向き直る。

「お母さんに任せなさい」

 母秋刀魚が文字通り、飛翔しサンマッスルを殴る。

 サンマッスルの顔面に叩き込まれ、巨体が揺らぐ。

「なんつう重い拳!気に入ったぜ!」

 膝を着く既のところでサンマッスルが耐え、反撃(カウンター)を放つ。

 まだ空中へ身を預けたままの母秋刀魚へ巨腕が唸る。

 迫る拳を母秋刀魚はヒラリと身を捩り躱す。

 地に足をつけ、右ストレートを放つ。

「気に入ったぞ」

 その拳をサンマッスルは受け止め、不敵に笑う。

 返すように、母秋刀魚が笑うとそれが契機だったと言わんばかりに互いの拳が放たれる。

 それはまさに(ラッシュ)であった。

 互いに無防備(ノーガード)で身を晒し、対敵へ拳を振るい続ける。

 策などない。

 ただ純然たる力と力のぶつけ合い、闘争である。

 鮮血が飛び、何かが砕ける音が鳴る。

 然れど互いに引きはしない。

 むしろ、互いに距離を狭め、拳をぶつけ合う。

「これは本当に人とサンマの戦いなの?」

 目の前の光景に目を疑う。

 振るわれ続ける剛拳は、互いに対敵を絶滅させうる必殺の拳であると直感する。

 しかし、膝を着くものなどいない。

 揺るがす、引かず、殴り合う。

 命の火を燃やし続けるだけの闘争。

 永遠に続くのではないかと錯覚すら覚える戦いに、不意に終わりが訪れる。

「ぐっ…!」

 母秋刀魚の拳を浴び続けたサンマッスルの膝がほんの一瞬震える。

 それだけであった。

 その一瞬が終わりへと続く。

 母秋刀魚の拳がサンマッスルの顔面に叩き込まれ、巨躯が揺らぐ。

 サンマッスルの拳が止まり、隙ができる。

 それを機に母秋刀魚の拳がサンマッスルの胴体を穿いた。

「ごばっ!!」

 サンマッスルの口から鮮血が飛ぶ。

「終わりよ」

 穿いた拳を母秋刀魚がゆっくりと引き抜くと、サンマッスルの体が後方へ倒れる。

「……あんたみたいな強者と闘えて…よかったぜ」

 今際の際に立つサンマッスルはしかして、笑みを浮かべ母秋刀魚を見据える。

「ええ。あなたも中々強かったわよ」

 身を屈め、母秋刀魚がとどめを刺す。

 その後、母秋刀魚が立ち上がると私の方へ振り返る。

「はしたないところを見せちゃったかしら?」

「い、いえ」

「そう?よかったわ」

 答えると、母秋刀魚が私の方へ歩き出すが、足取りがふらついている。

「母秋刀魚!?」

「ごめんなさいね…。流石にちょっと貰いすぎたわ」

 呟くと、壁に背を任せ母秋刀魚が座り込む。

「あとはお願いね、秋魚女。私はちょっと休むわ」

 そのまま母秋刀魚は静かに寝息を立て始めた。

「さ、母秋刀魚!?まだサンマが…」

 困惑しながらも、母秋刀魚を抱え近くの部屋で横にする。

 まだ、サン魔はいるはずだ。

 母秋刀魚のおかげで一体倒せたが、以前油断ならない。

「…あとは任せてください」

 部屋を後にし、他のサン魔との戦いに向かう。


 惨劇はまだ終わらない…。

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