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人界魔討伝〜三魔〜  作者: 人工サンマ
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第十二魚 光速

 闇ありし所にサンマあり。

 死をもたらす災厄の化身。

 サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。

 だが、人は希望の光を手に入れた。

 人を守り、人を導く存在。

 人は彼らを称えてこう呼んだ。

『日魔星』


(前奏)

 ゆけ〜さんまの戦士〜

 魔を討つ戦士よ〜

 秋刀魚を掲げて〜

(オォォォォ~)

 鳴り渡るサンマの咆哮

 終わりを告げる魔笛

 散りゆく人の運命(さだめ)

 響く

 慟哭を聞け

 さんまの戦士よ

 叫べ!

 怒りの声

 振るえ!

 怒りの秋刀魚(やいば)

 戦え!

 怒りの戦士

 正しき心

 秋刀魚の一太刀

 魔を討つ戦士 三魔〜!!


  『戦え!日魔星』


「ふんっ!!」

 掛け声とともに、サンマスラオが背負っていた丸太の如き太きサンマ…サン丸太を投げる。

 剛腕より放たれしサン丸太は一直線に俺へと向かってくる。

 集中。

 サン丸太が迫る刹那の一瞬に俺の意識は一度沈む。

 身体中に巡るサン魔力の流れを秋刀魚へ。

 弾かれるようにサン丸太へ向かい一閃。

 サン丸太は空中で二つに分かれ、俺の足下に落ちる。

「甘いわっ!!」

 次は怒声が飛んでくる。

 そして、再びサン丸太が放たれる。

 先程同様に…いや、以上に意識を落とす。

 サン魔力の流れを感じとり、秋刀魚へ。

 一閃。

 足下に散らばったサンマをしり目に、サンマスラオへ顔を向ける。

「よいか、散魔ノ太刀とは即ち心刀一鉄の極地よ。主のそれはただ単純にサン魔力の出力を上げて秋刀魚の切れ味を一時的にあげているに過ぎない」

 サンマスラオに指摘される。

 心刀一鉄。

 日魔星に伝わる剣技の極地として目指していたが、更にその上を目指さなければいけないのが現状だった。

 サンマスラオの元に訪れ、直ぐに修行を開始しもう二日程経つが、まだその糸口を掴めずにいた。

「秋刀魚へサン魔力を流すと考えているうちは決して届かまいぞ。もう一度考えるがよい」

 サンマスラオはそう言い残すと、滝の奥にあるサンマイホームに入ってしまった。

 休憩しろ。サンマスラオなりの合図であった。

 その場に座り込み、気を弛めすぎないほど解くと、秋刀魚と向き合い考え込む。

 秋刀魚と一体になる。

 その考え方は理解出来るが、果たしてどう実践するか。

 改めてサンマキシマムとの力の差を認識してしまう。

 奴はその極地に至っていたのだ。

 必ず俺もそこまで辿り着かねばならない。


 三魔さんが紀伊半島へ修行に行って二日たった。

 傷が治ったばかりだというのに、直ぐに修行に向かうとは相変わらずのストイックさで少々呆れてしまうのだけど、三魔さんらしいといえばらしいのかもしれない。

 けれど、しばらく顔を合わせる機会が無くなるのだから、挨拶ぐらいはしてくれてもバチは当たらないのではないか。と、寂しい気持ちもある。

「まぁそんな関係じゃないでありますからね…」

 ぽつんと独り言を漏らす。

 寂しさをまぎわらすために特訓をすることにする。

 こんな不純な動機で特訓をするなど、三魔さんが知ったらドヤされそうな気がするなと考えてしまう。

「三魔さんの修行、上手くいってるでありますかね…」

 独り言を漏らしながら、射撃所に行く。

 秋刀魚銃(サンマグナム)などの銃火器を扱う日魔星はまだ少数派のため、射撃所は最近新設されたばかりで綺麗だ。

 普段は利用者はほとんどおらず、自分一人の貸切状態なのだが、今日は珍しく先客がいた。

「うわっ…であります」

 射撃所の奥で、派手な音をたて秋刀魚大銃(サンマシンガン)で模擬弾を撃ち続けている女性…秋魚女だった。

 三魔さんの古くからの知り合いのようで、ことある事につかかってくるため、あまりいい印象はなかった。

 幸い、秋魚女は奥の方で特訓をしているため、入口付近で特訓を行えば絡まれることも無いだろう…と希望的観測を込め、いちばん手近な射撃台に着く。

 秋刀魚銃に模擬弾を装填して構える。

 サン的に向かい発砲する。

 秋刀魚銃の反動が大きいため、連射は効かず、一定間隔を置いて続けて撃つ。

 六発撃ち、全弾命中する。

 止まっているサン的に当てるぐらいわけない。

 続いて模擬弾を装填すると、サン的は左右に揺れ動き始める。

 先程同様に全弾撃ち、今度は四発命中させる。

 動くといっても、左右に動く程度のサン的に対して二発外すとは…と悔しく思いながら、もう一度チャレンジする。

 動きをよく見て、タイミングを図る。

 無理に自分から照準を合わせる必要は無い。

 相手の動いを照準に合わさせればいいのだ。

 ゆっくりと息を吸い込むと、止める。

 時の流れがゆっくりに感じるほど集中すると、サン的が照準に入る瞬間を図る。

 果たして、放たれた模擬弾は全弾確実にサン的を貫いた。

 家尽くした秋刀魚銃を下げ、一息つく。

「ふぅ…」

「あら、お見事ですこと」

 気を抜いた瞬間、背後から声をかけられる。

「お褒めいただいてありがとうございます…であります」

 素直にお礼を言いながら、振り返ると秋魚女が立っていた。

 秋魚女に褒められることなど一度もなかったため、お礼を言いながらも構えてしまう。

「本当にお見事ですわ。その秋刀魚銃。どんなへっぽこ日魔星が使ってもかなりの性能を発揮するのですもの」

「…それはそちらの秋刀魚大銃にもいえることでありますね」

 やはり、秋魚女が私を素直に褒めるわけがなく、嫌味を言われ嫌味を返す。

「へっぽこどころかこうも生意気だと本当にどうしようもありませんわ」

 秋魚女は大袈裟に肩を竦める。

「敬える先輩ではないでありますからね。用事がないなら離れて欲しいでありますよ」

「用事?いまからクソ生意気な小娘を蜂の巣にしてやるところですわ」

「自分は無駄な所がデカいせいで、脳みそはちっさくなってしまったオバサンを七輪の金網にしてやるところであります」

 秋刀魚銃を構える。

「上等だコラ」

「キャラがブレてるでありますよ?」

 射撃台に緊迫した空気が走る。

 互いに己の愛銃を構えて引き金に指を伸ばす。

 その時であった。

「南西二十キロの工場で三界発生。待機中の日魔星は至急サンマの討伐に向かえ」

 サンマイクから指示が出される。

 現在、このサンマランドに日魔星は多くない。

 昨今のサンマの大量発生により、各地へ日魔星が派遣されているのだ。

 それに、このサンマランドお付の三魔さんは不在だ。

 必然的に私が出動するべきだ。

「命拾いしたでありますね」

 秋刀魚銃を下げ、射撃所を後にする。

 駐輪場まで行くとサンマウンテンバイクに跨り、現場へ向かった。


 現場の工場に着く。

 まだ昼で明るい。

 昼間のサンマの出現頻度は低く、どことなく嫌な予感がする。

 フェンスを超え、敷地に入ると三界の中に。

 一応サン魔力を探る。

 無論、サン魔力をダダ漏れで人界に居座るサンマなどほとんどおらず、それらしきものは感じられない。

 自動車部品などを作る工場のようだが、昼間だと言うのに人気が感じられない。

 町工場のようで、さほど大きくはなく従業員数は多くはないと感じられるのだが、それにしても静かだった。

 用心しながら、本工場の中へ入る。

 場内に入って最初に感じたのは血なまぐささだ。排気ガスやゴムの匂いよりも、強烈な血の匂いがした。

 所々に人間だったものの一部がばらまかれており、まだ稼働しているレーンにより千切れた腕や足などが場内を彷徨っていた。

 そんな光景に一瞬、呆気を取られ次の瞬間にサンマの姿を捉えた。

 ちょうど私が立っている入口から対岸にある隅で、通常のサンマよりも小さい、一般的な成人男性と同じぐらいの大きさのサンマが血肉を貪っていた。

 幸い、こちらに気づいている様子はなく、慎重に照準を構える。

 ここからでは遠く、弾が当たっても仕留めきれない。

 サンマを照準に捉えたまま、音を立てないように近づく。

 血肉を貪るのに夢中になっているのか、全く気づく気配のないサンマへ迫り、だいたい四十メートル程のところで足を止める。

 これぐらいの距離であれば仕留めきれないにしても、致命傷を与えることが出来るだろう。

 呼吸を殺して発砲する。

 音が爆ぜ、サンマへ向かって鉄の塊が飛翔する。

 着弾--することはなかった。

 弾丸が放たれるその瞬間まで、血肉を貪っていたサンマは、一瞬にしてその場から消え去った。

 視界からも消えうせたサンマに混乱し、辺りを見渡す。

「そっちじゃないぜ、嬢ちゃん」

 背後、二十メートル程先から声が響く。

 そこにサンマ…サン魔がいた。

 すかさず、照準を合わせる。

 しかし、合わせた瞬間にまたもやサン魔が視界から外れる。

「物騒な嬢ちゃんだ」

 背後から手が伸びてきて肩を掴まれる。

 身体中に悪寒が走る。

「触るな…であります!!」

 サンマーシャルアーツの裏拳を放つ。

 しかし、サン魔を捉えられない。

 既にサン魔は遠くへ離れていた。

「速い…!!」

 尋常ならざる素早さに戦慄する。

「そうだぜ、俺はとてつもなく速い」

 サン魔は縦横無尽に場内を飛びまわりながら声を響かせる。

「なんだって俺は…最速のサン魔、サンマッハ様だからな!!」

 サンマッハと名乗るサン魔に翻弄され、照準を定められない。

 手詰まりか…と考えしまうが、諦める訳には行かない。

 サンマッハは縦横無尽に場内を飛び回っているが、こちらを攻撃してくる様子はない。

 恐らく遊ばれているのだろうが、好都合と言えよう。

 その動きを何とか目で追う。

 完璧に捉えられる訳では無いのだが、その軌道は直線的であることに気づく。

 で、あるならば。

 軌道を読んで、サンマッハが向かう先に撃ち込めば当たる可能性はある。

 飛び回る影を目で追い、発砲する。

「そんなトロいのは当たらねぇぜ!!」

 当たらない。

 銃弾は影が通り過ぎた空間へ吸い込まれていく。

 続いて発砲する。

 が、同じ結果である。

「嬢ちゃん、それだけか?つまらねぇなぁ」

 一転して、サンマッハは私の方に向き直るとこちらまで跳躍する。

 迫るサンマッハ。

 反射的に発砲するが、それすらも避けられる。

 ---死。

 恐れで視界が霞む。

 瞬間、轟音が鳴り渡る。

 そして、私に迫るサンマッハは身を翻し、後方へと跳ぶ。

 サンマッハと私の間を銃弾が走った。

 音の発生点に目をやると…

「さ、秋魚女…でありますか?」

「あら、貴方、おサンマをキメてらっしゃるの?この私がサンマに見えて?」

 秋刀魚大銃を構えたまま、秋魚女が声を放つ。

「へっ、面白そうなやつが来たじゃねぇか」

 サンマッハはもう私など眼中に無いと言わんばかりに、秋魚女へ飛びかかる。

「伏せてなさい、小娘」

 私が伏せると同時に秋魚女は秋刀魚大銃の弾をバラまく。

「はっはっはっ!!追い込み漁みたいだぜ!!」

 サンマッハの軌道を覆い尽くさんとバラ巻かれる銃弾を避け、サンマッハが秋魚女へ迫る。

「あ、危ないであります!」

 悲鳴にも似た声を上げる。

 サンマの鉤爪を浴びれば一溜りもない。

 しかし、秋魚女は迫る鉤爪を退いていとも容易く回避する。

「速い程度で私に勝てると思って?」

 攻撃し、無防備なサンマッハに向かって秋刀魚大銃を向け掃射。

 飛び交う弾丸がサンマッハの肉を削ぐ。

「ちっ…!!」

 サンマッハは数発浴びながらも、距離を取りつつ射線から外れる。

「あらあら、先程から逃げてばっかりですのね」

 秋魚女はサンマッハを挑発し、余裕の笑顔を浮かべる。

「人間如きが!!」

 挑発されたサンマッハは怒りを露わにする。

 秋魚女はサンマッハに向かい、再び秋刀魚大銃を構える…が、銃弾が放たれることは無い。

 弾切れである。

「けっ、脆弱な人間風情が。オモチャが使えなければ何も出来ねぇじゃねえか」

 サンマッハは容赦なく秋魚女へ突撃する。

 秋魚女の危機を悟り、直ぐに秋刀魚銃を放つ。

 しかし、一発たりたもサンマッハに掠りすらしない。

 私は咄嗟に目を閉じてしまう。

 静寂。

 何かが倒れる音。

 …恐らく秋魚女だろう…。

 いかすかない人だったが、その死を確かめるのが怖かった。

 だが、今この場にいる日魔星は自分だけである。

 …例え、刺し違えてもサンマッハを討たなれけばいけない。

 震える瞼を押上げ、現実を直視する。

 そこには、秋刀魚で貫かれ無惨に床へ這いつくばるサンマッハと、それを見下す秋魚女がいた。

「へっ…?」

 間抜けな声を上げてしまう。

「残念でしたわね。私、使わないだけで秋刀魚大銃以外にも近接武器(おもちゃ)を持ち合わせておりますの」

「ぐっふっ…」

 サンマッハが血を零す。

「女だと侮りまして?私、金サンマ級の日魔星ですの。そこの小娘と一緒にしないでくださいまし」

 秋魚女はそう告げると、秋刀魚大銃に弾を詰めサンマッハへと近づいていった。

「どうしましたの?もう逃げませんの?」

 その一言で、秋刀魚に貫かれたままサンマッハは秋魚女に背を向け、這って入口へ向かう。

 秋魚女は一歩、一歩、ゆっくり歩きながらサンマッハに近づくと追いつき、その頭に無情にも銃口を押し付けた。

「グッパイですわ」

 秋刀魚大銃が火を吹く。

 弾丸がほぼゼロ距離でサンマッハの頭蓋に叩きつけられ、骨を砕く。

 数秒の掃射が終わると、そこには無惨なサン魔の死体が転がっていた。

 その死骸から秋刀魚を引き抜くと、秋魚女は私に向かって口を開く。

「いつまでそうしてらっしゃるの?さっさと後片付けをして帰りますわよ」

 少し面を食らうが、サンマイクを通じて戦後処理を頼むと秋魚女へ近寄る。

「あなた、この程度のサン魔も倒せないの?」

 秋魚女はいつも通り、悪態をつき始める。

「それは…申し訳ないであります」

「謝っている暇があるなら、強くなりなさいな」

「ごもっともであります…」

 流石に言い返せる立場ではなく、真摯にその言葉を受け止める。

「あら、なんですの?その態度。いつも通り生意気な口を聞いてご覧なさい」

「…流石に助けられた直後にその様な態度はとれないであります…」

「何を勘違いなさって?私はただ目の前のサン魔を屠っただけでしてよ。貴女など眼中にありませんでしたわ」

「それでも、助けられたであります。ありがとうございます…であります」

「全く、いつもその態度だと可愛いのですが」

 お礼をすると、秋魚女は少し早足で歩き始めた。

「感謝しているなら、態度で示して欲しいですわ」

 秋魚女は歩きながらそう述べると、私の方へ秋刀魚を投げた。

 慌ててそれを受け止める。

「その秋刀魚、優雅さにかけていて好きじゃありませんわ。それに重いですもの。サンマランドに着くまで貴方が持ってなさい」

「…分かったであります」

 秋魚女の秋刀魚を抱えながら、彼女の後を追ってサンマランドへ帰投した。

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