表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人界魔討伝〜三魔〜  作者: 人工サンマ
12/77

第十魚 再起

 闇ありし所にサンマあり。

 死をもたらす災厄の化身。

 サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。

 だが、人は希望の光を手に入れた。

 人を守り、人を導く存在。

 人は彼らを称えてこう呼んだ。

『日魔星』


(前奏)

 ゆけ〜さんまの戦士〜

 魔を討つ戦士よ〜

 秋刀魚を掲げて〜

(オォォォォ~)

 鳴り渡るサンマの咆哮

 終わりを告げる魔笛

 散りゆく人の運命(さだめ)

 響く

 慟哭を聞け

 さんまの戦士よ

 叫べ!

 怒りの声

 振るえ!

 怒りの秋刀魚(やいば)

 戦え!

 怒りの戦士

 正しき心

 秋刀魚の一太刀

 魔を討つ戦士 三魔〜!!


  『戦え!日魔星』


 慣れない病院のベットで目を覚ます。

 サンマキシマムに敗北し、大きな傷を負った。

 幸い、マリアンヌのおかげで何とか一命を取り留め、今こうやって療養することが出来る。

 マリアンヌは頭が上がらない。

 本当はすぐにでも鍛錬を始めたいのだが、ICUを出られたのは昨日。

 流石に昨日の今日で鍛錬を始めたらマリアンヌに申し訳ない。

 特にやることもなく、ベットの上でじっとしていると、ドアをノックされる。

「どうぞ」

 ドアの外にいる人物に声をかけると、母秋刀魚(サンマザー)とサンマッドドクターが入ってきた。

 人に友好的なサンマイルド。そのようなサンマもいると聞いていたが、実際会うのは初めてだった。

「休んでいなくて大丈夫ですか?」

「見てのとおり、休ませてもらっているさ」

 肩を竦め、主張する。

 実際、これ程ゆっくりした時間は久しぶりだった。

 恐らく、直近ではマリアンヌと出かけた時だろう。

「こちらの方が話があると」

 母秋刀魚に促され、サンマッドドクターが前へ出てくる。

「一応初めましてってやつかね。あたしはあんさんの恩人ってやつだよ」

「存じております。大変お世話になりました」

 ベットの上からで申し訳ないが頭を下げる。

「礼はあたしじゃなくて、マリアンヌの嬢ちゃんにするんだね。デートの一つや二つ連れて行ってやりな」

「勿論お礼は致しますが、デート…?とにかく誠心誠意、彼女にお礼致します」

「日魔星という人種は何奴も此奴も…」

「それで…本題の方は?」

「今のが本題なんだがね。まあいい。あんさん、またサン魔剣士に遭遇したらどうするだい?」

「無論、戦います」

「…勝てると思うのかい?」

「…例え勝てなくても、サンマを討つためなら」

「犬死だよ。それかまた生きながら得るためにマリアンヌの嬢ちゃんの世話になるか?」

「それでも、俺は日魔星だ」

「ああそうさ。日魔星だ、サンマと戦うがいいさ。…でもね、死ぬのに戦うのは違うよ。そいつは日魔星がやることでも、人がやることでもない。ただのサンマ野郎さ」

「…ならば、どうしろと…。俺はやつに完膚なきまでに叩きのめされた。俺ではやつに勝てない。そんなこと自分でも分かっているさ」

「勝てるようになるまでだろう。あんたは唯一その素質がある」

「素質…?」

「あんたは秋水一族だからね。それを体得できるんだよ」

 サンマッドドクターはそこで話を切ると、力強く言った。

「唯一絶対の人外の矛。サンマを絶つ剣。<<散魔ノ太刀>>をね」

「散魔ノ太刀…?」

「そうさ、そいつなら必ずサン魔剣に対抗出来る。なんせ…」

「サンマッドドクター。そこからは私が話します」

 それまで傍らで話を聞いていた母秋刀魚が割って入る。

「…そうか。そいつは悪かったね」

「いえ」

 母秋刀魚はサンマッドドクターに断りを入れると、いつになく神妙な顔つきで俺に向き直った。

「どこから話せばよいのでしょう…。三魔、貴方は自分の名前に疑問を持ったことはありませんか?」

「…何故、三魔なのかと。奴らと同じではないかと。それでも世襲制ですから受け入れてきました」

「そうですね。貴方の名前、三魔は代々受け継いできた名前で、サン魔界の三魔と同じ名です」

「何故…?」

「今から百五十年程前の江戸末期。一度、サンマとの戦いに決着が着いたことを知っていますね?」

「はい。当時最強と謳われていた二人の剣士により、人外に現れようとしたサンマの始祖が討たれ、終止符が打たれたと」

「その通りです。補足するとその二人の剣士は双子だったのです。そして…秋水一族の人間でした」

「俺の…先祖?」

「その通りです。貴方の先祖が一度戦いに終止符を打ったのです。そして、訪れた平和の終止符も…」

「どういうことですか…?」

「秋水一族は少し特別で、普通の人間よりもサン魔力が高くなりやすい家柄です。そのため、自ずと日魔星の名家として古くから重宝されてきました。彼らは長い歴史の中でサンマを絶つ剣、散魔ノ太刀を継承し多くの人を救ってきました」

 母秋刀魚は一度息を飲んだ。

「しかし…長い歴史の中で邪な考えに囚われる者も現れました。そういったもの達により、サン魔剣が生み出され、一族の中でも極一部によりひっそりと受け継がれてきました」

「サン魔剣が…俺の先祖から…?」

「ええ。やがて、時が流れ遂に秋水一族の者により戦いに終止符が打たれました。…問題はその後なのです。サンマの始祖を討った双子のうち、弟。名を秋水日馬(しゅすいかずま)と申します。そのものがサン魔剣に魅入られ一族の中で謀反をおこしたのです」

 母秋刀魚は辛そうに語り続ける。

「その謀反は一族の内乱まで発展し…そして、兄と弟の戦いになりました。決着は相打ち。一族のものは日馬の幼い息子を残し、全てが息絶えました」

 母秋刀魚は一度一拍置いた。

「先程からサンマの始祖を討ったと申しましたね。…それは完璧に正しい言い方ではありません。実際は、始祖の力を封じたのです。そして、封じた力は秋水一族で管理していました…。ですが、その封印は内乱により解かれ…」

「つまり、俺は戦いと平和に終止符を打った愚かな一族の末裔って訳だ。指図めこの名前は戒めってところか…?」

「穿った言い方になりますが…その通りです」

「…この名前の事は分かった…。が、あのサン魔剣士については…?」

「それは正直…わかりません。この話とともに、サン魔剣の事は極一部の者に伝えられていますが、ただ一人もそれを再現しておりません。そもそも、サン魔剣は秋水一族にのみ扱えるものであり、貴方の傷の状態でサン魔剣だと仮定しておりますが、本物かどうか…」

「…とにかく、サン魔剣については置いておくとして、散魔ノ太刀はどうやって修めれば…?」

「そこであたし…もとい、あたしの知り合いの出番なのさね」

 母秋刀魚に変わり、サンマッドドクターが話し始める。

「サン魔剣にしろ、散魔ノ太刀にしろ名前と僅かな伝承が伝わってるにすぎないのさ。実際はあんさんの体の中に流れる秋水一族の血だよりってわけさ」

「だが、そんなものどうやって?」

「修行するに限るさね。まぁ勿論、普通の修行じゃ埒あかない」

 サンマッドドクターは一拍置くと、自慢下に話し始めた。

「サンマスラオ。あたしと同じサンマイルドにして、数少ない散魔ノ太刀について知るサン魔さね」

「サンマスラオ…」

「そいつにあんさんを紹介してやる。どうだい?奴の下で修行してみる気は無いかい?」

「お願い致します」

 サンマッドドクターに頭を下げる。

「いい返事だ」

 満足そうに言うと、詳しくは傷が癒えてからだ。と病室を後にして行った。

 散魔ノ太刀。

 必ずものにして、あのサンマキシマムを討つ。

 決意を新たに、俺は傷が癒えるのを待った。


 母秋刀魚とサンマッドドクターが訪れた日から二日たった。

 サンマイナスイオンやサンマッドドクターに治療により、だいぶ回復してきたがまだ退院には時間がかかるだろう。

 相変わらず暇をしていると、廊下の方から騒がしい声が聞こえてきた。

 病院で何をしているんだ…と半場呆れていると、声は俺の病室の前で止まり、変わりにノックの音が聞こえてきた。

「どうぞ」

 入るように促すと、マリアンヌと秋魚女が部屋に入ってきた。

「三魔さん、お体問題ないでありますか?」

「三魔、サン魔如きに遅れをとったですって?」

「体は問題ない。不覚をとった情けない」

「よかったであります」

「ほんと情けないですわ」

「…一度に喋るのやめてくれないか?」

「静かにしてほしいであります」

「静かになさって」

「気が合うんだな」

「そんなことないであります」

「そんなことありませんわ」

 二人がコントを繰り広げる。

「二人で一緒に来るなんて仲良く思えるがな」

「たまたま鉢合わせただけであります!」

「この小娘が勝手についてきただけですわ」

「…とにかく二人とも来てくれて嬉しいよ」

 二人に礼を述べる。

「…それで、貴方を襲ったサン魔とは一体どのようなサンマで?」

 秋魚女が切り出す。

 俺はまず、サン魔忍について話す。

「サン魔忍…恐らく、件の小学校で私がお相手したサン魔ですわね…。この私から逃げ果せたのだもの、ただのサン魔では無いとは思っておりましたが、それ程とは…」

「いや、サン魔忍にやられたわけではないんだ。奴を討って直ぐに、サンマキシマムと名乗るサン魔が現れたんだ」

「サンマキシマム…でありますか?」

「あぁ。恐ろしく強いサン魔だったよ。今の俺では…勝てない」

「さ、三魔さんでも敵わないなんて…」

「…今ではの話でしてよ小娘。三魔、あなた倒すすべに心当たりがあるのでしょう?」

「その通りだ…といっても俺次第なのだが、サンマスラオというサンマイルドに修行をつけてもらえることになった。そこで奴を倒せるほどの力をつけるしかない」

「三魔さんらしいであります」

「修行はいつからですの?」

「サンマッドドクターが紹介してくれると申し出てくれたが、詳しい話は傷が癒えてからだ。あと二、三日といったところか」

「すぐ…でありますね」

 マリアンヌが寂しそうにつぶやく。

「すぐに修行を終えて帰ってくるさ」

 何の確証もないのだけど、答える。

「…私、今日は忙しいでのよね。それでは」

 秋魚女が唐突に言い放つと、部屋を出ていこうとする。

「そうか…忙しいところ来てくれてありがとう」

「今日だけですわ」

「確かに、何度もお見舞いに来てくれるなんてお前らしくないな」

「あなたに言っておりませんわ」

「…?」

 秋魚女はそれだけ告げると病室を後にした。

 マリアンヌと二人っきりになる。

「あの人、いい所もあるでありますね」

「あいつは良い奴だよ」

「……そうでありますね」

「あぁ」

 それだけ口にすると少しの間、互いに口を閉じた。

 何となく、もどかしい。

「…その、世話をかけたな」

「た、たいしたことなかったであります」

「いいや、マリアンヌがいなかったら死んでいたよ。ありがとう。助けてくれて」

 心を込めて、深く感謝する。

「どういたしまして。で、あります」

 マリアンヌが微笑んだ。

 その微笑みが心地よく感じる。

「その、返しそびれてありましたが、これ」

 マリアンヌは懐から七輪を取り出した。

「申し訳ないであります、実はちょっと汚してしまったであります…」

「いいんだ、預かってくれていてありがとう」

 七輪を受け取ると、懐へ入れる。

 やはり、七輪がないと落ち着かない。

 七輪の懐かしみを感じ、気を解しているとマリアンヌが口を開いた。

「自分、三魔さんにずっと伝えたかった事があるであります」

「なんだ?」

「実は自分、あのサンマエストロとの戦いの時が初めてではなくて、もっと昔に三魔さんに助けられていたであります」

 それから彼女は自分の過去を話し始めた。

 二年前…彼女の家族がサンマに襲われ両親が殺されたことを。

 そして、窮地にあった自分を俺が救ったことを。

 俺が彼女にとってヒーローであったことを。

 彼女が俺に憧れて日魔星になったことを。

 聞いてるうちにむず痒くなる。

「今の自分があるのは三魔さんのおかげなのであります。だから三魔さんにずっとお礼を言いたかったのであります」

「その…なんだ、気づいてやれなくてすまない」

「いいでありますよ。きっと、三魔さんにとっては自分は大勢の中の一であります。だから、切り出すのがちょっと…憚っていたであります」

「なんというか…こういうことが初めてで凄く照れくさい…」

「三魔さんらしいでありますよ」

「そうか…?」

「はい」

 マリアンヌは明るく笑った。

「やっぱり、三魔さんはヒーローでありますよ」

「だから照れくさい。それに、俺にとってマリアンヌは十分にヒーローだ」

「そうでありますか?照れるでありますよ」

 明るく、元気に笑う彼女をみてよく笑う人だと思った。

 彼女の笑顔を見ていると、不思議と安らかな気分になる。

「…三魔さん、もうこんな目に遭わないでくださいね」

「…あぁ。心配するな、もう二度と負けたりしない」

「約束でありますよ?」

「約束だ」

 日魔星の誇りにかけて。

 そして…マリアンヌの笑顔を曇らせないために。

 照れくさくて、とても口には出来なかったが心の中で密かに呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ