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マガツモノ  作者: しータロ(豆坂田)
第一章(後半) 光の射す場所

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第29話 江東社②

 ジャンはマキアと話す前にあらゆることを調べ尽くしていた。経歴や交友関係などすべてだ。

 その中でマキアが以前勤めていたという解体業者のことを知った。

 マキアが解体業者を辞めた理由は不自然だ。借金があるというのに無断で辞めても追及されず、今の今まで放っておかれていた。加えて部下からの報告でマキアが自分と別れた後すぐに暗殺者から襲われていること報告されている。

 その時点で江東社とマキアの間に何かがあったこと、一か月ほど前にあった解体業者の事故などから、江東社が何かを隠蔽しているのは予測できた。

 その上で、暗殺者が返り討ちにあったことなどから、ミルゲスが八方塞がりなことを予測し、今回江東社の事務所を訪ねた。

 インターホンを挟んで軽薄な笑みを浮かべるジャンはミルゲスに告げる。


「あんたが現状を打開するとしたら、俺を頼る以外ないっすよ」


 変わらない軽薄そうな言葉でミルゲスに語り掛ける。ミルゲスからしてみれば何故か自分の素性を知っている上に、提案まで持ちかけられている状態。当然、ジャンを信用するわけにはいかなかった。


「誰だ……お前は」

「誰だ……だなんて口の利き方がなってないな。だけどまあいいか。紹介してあげよう」


 インターホンに内蔵されたカメラにジャンがレイダー証を見せる。


「三番街のリーダー。ジャン・カトレウス。以後お見知りおきを」

「三番街……なんでそんな――待て……なんでリーダーお前が俺なんかのところに」

「それはさっき説明したっしょ。マキアっつうガキを殺処分するため。調べた限り、あんたマキアを殺したいらしいじゃん。俺が手伝ってあげるって言ってるんだけど?」

「なんで殺し屋から俺のところまで……」


 殺し屋との関係は最重要機密事項として管理されていた。どこから情報が漏れたのかは分からない。当然、現場に居合わせていればある程度のことは予測できるかもしれないが、江東社にまでたどり着くのはどう考えてもおかしい。


「三番街のリーダーである俺が地下都市で知らないこと、あるわけないじゃん」


 解体業者が事件を起こしたこと。

 以前、マキアがそこに勤めていたこと。

 解体業者が事件の詳細を隠蔽していること。

 そして今回マキアを襲った暗殺部隊のこと。 

 少し調べればこれらすべてが繋がっていることぐらい、ジャンには容易に気がつける。


「マガツモノの事件、隠蔽してるらしいじゃん」

「……なっ」

「その反応はアタリってことかな。随分と分かりやすいじゃん。女だとつまらな過ぎて萎え萎えってところだけど、ま別にどうでもいいか」


 話を戻して。


「俺、あんたの、弱み、握ってる。オーケー?」

「なんだよ」

「とりま中に入れてくれるよな?」


 相手はレイダー。

 江東社の弱みを握っている現状、断ることはできなかった。


「分かった。ドアのロックを外す。真っすぐ二階に上がってこい」

「出迎えはないのか?」

「誰が」

「あーあーいやいい。男に出迎えられてもキモイだけだわ」

「ッチ。開けるぞ」

「はいはーい」


 ミルゲスが玄関のドアを開ける。それと同時に壁に飾ってあった散弾銃を手に取る。

 もはやジャンが三番街のリーダーであろうと関係ない

 これ以上面倒ごとが増える前に仕留める。

 相手がレイダーでも完全に不意を突けば殺せる。

 

「……」


 静かに階段を上るジャンの足音を聞く。

 一歩、二歩、三歩……歩み近づいて来る。

 音はやがて扉一枚挟んだ場所で立ち止まった。

 そしてジャンが扉の手をかけた瞬間、ミルゲスが引き金を引いた。 

 散弾銃ならばミルゲスが扉を挟んだ後ろ側にいようと、扉ごとぶち抜いて弾丸を浴びせることができる。それに一瞬でも散弾銃を構えている姿を見られてしまえばレイダーであるジャンは対応できてしまう。

 それほどまでにレイダーの反射神経は恐ろしいのだ。

 だからこそ扉越しで絶対に相手が気が付かない瞬間を狙って撃ち殺す。

 一発では殺しきれていない可能性が高いため、ミルゲスは続けて何発も撃ち込む。

 扉は穴だらけになり先の廊下が見えていた。

 当然、《《そこにジャンの死体は無かった》》。


(死んでいないッ?!)


 直後、ミルゲスの視界が誰かの両手で塞がれる。


「んっん~だめ、だめだめ。レイダー相手に喧嘩売っちゃ駄目。殺すぞ、てめぇ」

「……」


 後ろから聞こえてきたジャンの声を聞いてミルゲスは散弾銃から手を離した。


「降参だ……殺したきゃ好きにしろ」

「潔い。でも、まだ有効価値はあるから殺さない。安心しろよ」


 目元を覆う手が無くなりセルバンは解放された。そして振り向いてみると自分が先ほどまで座っていたソファにジャンが座っていた。


「まあ座りなよ。幾つか提案したいことがある」

「ったく」


 悪態をつきながらミルゲスはジャンの対面に座る。


「まず確認だけど、お前はマキアっつうガキを殺したい。これはオーケー?」

「ああ。理由は……分かるだろ」

「隠蔽のこととかだろ、ま、それはどうでもいいんだけど」


 ミルゲスの意思を確認したところでジャンは本題を切り出す。


「さっきも言ったけど、そのマキアの殺害、俺がやってあげてもいい」

「なんでだ」

「ちょっとくら邪見にされちゃって、目障りなんだよね。彼。だから殺しておきたいなって」

「……もし殺すとして、どうやって殺すつもりだ」


 マキアを非合法の手段で殺すことはできない。ジャンならばマキアを殺せるかもしれないが、それだと江東社の真の目的である情報の漏洩防止という目的が果たされない可能性がある。

 だからこそマキア殺害は容易ではないのだ。

 

「例えば人質を取る。あるいはこっちも弱みを握る。ミルゲス(お前)が考えてるのはこんなところだろ。別にそんなことしなくたって簡単な方法がある。聞くか?」

「拒否権はないんだろ」

「んっん~話が早いのは助かるね~。じゃあ今からお前は俺の言う通りに動いてもらう。大丈夫、きちんと俺の想定通りに動いてくれればマキアを殺してあげるよ」

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