新宿-西口-ユニクロでー
西新宿から一駅歩いて、新宿駅西口に。
緑の高架橋はランドマークの『大ガード』。
人を詰めた電車越しに見えるは『リゼロ』や『エヴァ』の大看板、パチンコ店だ。
その高架に沿う様な歩道を歩けば、新宿駅に隣接するリーズナブルな服屋、『ユニクロ』が見える。
私の名前は工藤優菜。
降下探偵事務所所属。
並びに新人研修部隊隊長、代理(仮)。
それと新人。
「最新の流行りは『シンプル』ってのは、探偵にとってありがたい事だ」
服屋を物色しながら俺は背後のそれに語りかけ、続ける。
「周りを見ろ、お前みたいに半裸の狂人は稀だ、目を引く」
「こういうファッションなんですけど」
「尾行中は服着ろ」目立つんだよそれ
「その、、隊長だって、目立つ服じゃないですか?」
俺のベージュコートを指して言う新人、喋り出しに吃りの様なモノが見受けられる。
何かを言いかけたが抑えた、、か、上手く言葉が出なかったか。
「、、言え。」
流石に(コートの事ですか?)なんて察しの悪い事を言わなかったのは評価してやる。
「、、なんて呼べば、、」
「俺か?『おい』とか『お前』とかでいいぞ」
俺を指した発言ならそれで分かる。
「いえ、その、、工藤優菜/「殺すぞ」
新人は軽く跳ねる様な動作をした。身体に備わった、反射の動きだった。
(ひぇぇっ)とか言いそうな『怯』の動き。
「やっぱり怒るじゃないですか、」
「何が?」
全然怒って無いけど?
「ぶち殺すぞ?」
新人は軽く不明な動作をした後、
「やっ、やめて下さいよ、悪かったですから、
名前を呼んだのが悪かったんですか?蔑称って」
「あぁ?」
何の話だ殺すぞ?
「(不明発音)めっ、『名探偵工藤優菜』って言ったら、『それを辞めろ』と、『蔑称だから』と、」
、、、、、
へぇ、、
そんな事があったんだ、
覚えてないや。
「、、聞くが新人。探偵名はなんだ?」
「えっ、探偵名?」
何ですか?と顔で語る。
「《探偵名》。この仕事は《やべーやつ》と関わったり恨みを買ったりするからな、真名隠しは基本よ」
適当な服を右から左へ、鏡に映った自分に重ね合わせる。
「ハンドルネームとかペンネームとか、もっと言えばアカウント名とかで現実の自分を隠したりするだろ?それと同じよ、探偵ネーム。分かる?」
「、、コードネームみたいな?」
「そ」
「それで、、なんで『名探偵』が蔑称何ですか?」
なんだ?察しわる子ちゃんか?
「探偵が名前知られてどーすんの?って」
「あ〜ぁ、」
やっと察しがついた様だ
「何で名前知られちゃったんですか?」
「うるせぇ」
「やっぱりそのコートは目立つからじゃないですか?」
「うるせぇ」
「特徴的で覚えられたんじゃないですか?」
「うるっせぇなぁ、さっさと服買えよ。」
手に取ってもいねぇじゃねぇかオメェ。
「いやぁ、、」と、色々渋る様子の新人
「買え、どうにかしろ」
「どうにかって言われたって〜、ぇえ〜っ、、」
「、、、、、」
このままコイツがグダるのならば俺は実質的にサボれるのでは?
まさに閃きであった。
「、、、、じっくり選べよ、周りを見て、マネキンを見て、衝動では無く論理的に説明出来る様に/動いた 俺を指差す-素手-素早い-
「じゃあそれ下さい」
指の背、綺麗な指だ。人差し指の長さが測れる角度、点では無い。俺の目を指していない、指先は少し下、対象は人体部位では無く
「、、コート?」
はいそうです。の様な事を新人は言ったかも知れなかった。
身体が遅れて汗を流す様に。俺は警戒とか、緊張とかの反動。立ちくらみめいたものを喰らっていた。
「ですから〇〇がうんたらで〜」
ゆっくりと、浅く吸い込む、肺を膨らませる、
その膨らみが吐く、動きが繋がる、繰り返す。
「〇〇××〜ー??〇〇、、」
耳鳴りの様なモノが過ぎた、呼吸は、、まだ続くか。
「一言で纏めろ」何事も無さげに。俺はそう言った、
少なくとも外からの動きには見えないモノだ。
間合いを取りたいと遅れて思った、が、まだ脚を、身体を動かすべきでは無い。
「私が勝ったらそのコート下さい」
私の方が似合いますと、新人は言った。
俺の名は工藤優菜。
降下探偵事務所所属の《名探偵》だ。
新人、ユニクロ、指差される俺。
「私が勝ったらその服寄越せ」と、コートを指してそう言った。
曰く私の方が似合うとかカントカ。
俺は二拍の間で呼吸を整えこう言った。
「おいおい新人そんなに俺の服が欲しくなっちまったかぁ?」
するりと襷掛けしたベルトを親指の間に挟む様に持ち、磨く様に撫で下ろす。
胸を撫で下ろせば緊張が逸れる。逸る心拍を、乱れた心理を、制する。
心の動きを制御する、《在処》という技だ。
「確かに、このコートは選ばれし名探偵にしか似合わねぇが、〜〜〜ーーーー」
口から出る言葉に意識を切り離しながら、俺は新人ってヤツの様子を見る。
ー鍛わった腕、服装は黒のタンクトップ。ー
「ぺらぺらぺらぺら、実はこのベルトは胸ベルトを改造したモノでね、ぺらぺらぺらぺら」
大方、『胸ベルトを切り外して襷掛けになる様に右肩の装飾のベルトから流れるように左腰れ、左腰腰で垂れる様に幅を効かせて、袈裟懸けめいて格好良く見える様にした』話でもするのだろう。
釣られて『レディースの訳が無いっ!と縋る気持ちでベルトを締めたら胸が実る様に強調され絶望した』話でも出るか?どうでもいい。
ー重心が安定している。強い。ー
ーカーボパンツで脚の動きが見えない。靴は覆われているが、スニーカーか?スニーカーであると断言出来ない何かがある様なー
ーベルト、腰は肌見せ、へそピ?鼠蹊部?いや腹斜筋の影か?ー
タンクトップは腹あたりが皺になるほどゆとりがあり、、ここまでだ。十分データは得た。
ー新人は動いた、腕を組む様に、
ギャルピめいて手を翻し腹を見せた指で俺を指した。
腰がS字に曲がる、ポニテの髪が揺れるー
「ーーーーーー」
なんて言ったのか分からなかった。もしかしたら精神防御の為に耳に膜を張っていたのかも知れない。
「、、と言うと?」 と、俺は言った。
歴戦の猛者は身体が勝手に動くモノだ。
「研修で勝ったらそのコートは私のモノそれでい?」
、、
推察するに、俺を非難する内容では無かった様だ。
勝ったら?勝負事が好きなヤツなのかも知れない。
「俺が勝ったら?」
「それは、、」
(何かを言いかけるのを飲み込んで、目線を右下に逸らし手を顎付近に漂わせ、腕を挟み込む、様、に、)
(指を立てて思いついた様に明るく真っ直ぐ目を見て、)
「私のコーディネートを決めさせてあげます。」
「、、」色々と逡巡するのを飲み込んで
「それは、面倒くさくなって投げたのでは?」




