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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第3章

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第106話 北の山


 ヨークウィッチを出てからひたすらに北に進み、ようやく山岳地帯へと入った。

 足元は自然豊かな平原ではなく、岩肌が剥き出している歩きづらい山道であり、これだけでもヨークウィッチから大分離れたのが分かる。


 歩きにくい地面を鬱陶しく思いながらも、速度は落とさず北の山を目指して歩を進めて行く。

 既に近くには複数の山があるのだが、近くにある山はどの山も“北の山”ではなく、ギルド長が籠っているであろうとされる北の山は一際大きく山頂付近が雪がかっている。


 ちなみに随分と前からずっと視界に捉えており、その山を目指して俺は走っている。

 北の山に近づくにつれて遭遇する魔物も多くなり始め、危険とされる北の山にちゃんと近づいているのが視界以外の情報からも分かった。


 それから更に一時間ほど走ったところで、ようやく北の山の麓に到着。

 戦闘を避けてきたのにも関わらず、とにかく時間がかかった。


 俺の速度でも三時間ほどかかったため、入山の最低条件とされているゴールドランク冒険者では、一日かけなければ到着できない距離だと思う。

 強そうな魔物はいなかったものの道中の魔物の数も多かったし、ゴールドランクだったとしても山に辿り着く前に命を落としてしまう気がするが、まぁ関係はないので深く考えずにどう登っていくかを考えよう。


 基本的には整備はされていないものの、ギリギリ道と呼べるくらいの山道に沿って上を目指して登っていこうか。

 最短で登るのであれば、よじ登って一直線で進むのが一番早いと思うのだが……ギルド長は確実にこの山道を使っている。


 道中で見つかる可能性も考え、山道を通って歩きで北の山を登ることに決めた。

 ここからは道中の魔物との戦闘も楽しみながら、道具屋の店員生活のせいで鈍っている体をゆっくりと戻していきたい。

 そんなことを考えながら軽くストレッチを行ってから、俺は登山を開始した。


 北の山までの道も自然そのものではあったが、北の山はまた別格。

 踏み入れた瞬間から完全な自然であり、懐かしさもあって自分の中の感覚が昔に戻っていくのが分かる。

 生き死にのやり取りを行い、一分のミスも許されない緊張感。


 俺の命の危険を脅かす魔物はこの山にいないのだが、自然と昔の感覚になったということは自然がそれだけ恐ろしいものだということ。

 いくら鍛え上げようとも人間という枠組みにいる限りは、到底太刀打ちできない自然の厳しさ。


 忘れかけていた感覚を思い出し、そして更に感覚を研ぎ澄ましながら北の山を登っていく。

 感覚が鋭くなっているお陰で、かなり離れた位置にいる魔物の気配も感じ取れた。


 右手の崖の影に俺を狙う魔物が潜んでいて、左手の穴の奥には俺を狙っている魔物を狙う魔物が潜んでいる。

 初っ端から激しい食物連鎖の歓迎を受けているが、そういうことならば穴の奥に潜んでいる魔物を狩らせてもらうとしよう。


 わざと隙を見せて歩き、右手の崖の影に隠れている魔物の攻撃を誘発する。

 俺の誘いにまんまと乗った崖の影の魔物が攻撃に移り、穴の奥から狙っていた魔物は攻撃に移った崖の影に隠れていた魔物に食いついた。


 そして俺は――崖の影の魔物に噛みついた魔物の土手っ腹に拳を叩き込む。

 強烈な一撃を叩き込まれたことで、穴の奥にいた魔物は悶絶したまま動けずにいる。


 そんな魔物の口からは崖の影に隠れていた魔物も顔を覗かせており、ここでようやく二匹の魔物の姿を見ることができた。

 崖の影から俺を狙っていたのは、猿のような見た目をしているベルクモンキー。

 穴の奥からベルクモンキーを狙っていたのは、羽の生えた虎のような見た目をしているウイングバーグという魔物。


 どちらもマイケルから聞いた魔物だったな。

 ベルクモンキーは難度Dの魔物で、ウイングバーグは難度Bの魔物。


 山に入ってすぐに、プラチナ以上の冒険者ランクが推奨とされる難度Bの魔物が出てきたってことは、やはり北の山の魔物は相当強いことが分かる。

 倒した魔物をどうするか悩んだが、わざわざトドメを刺さずとも放置でいいだろう。


 ウイングバーグに至っては毛皮が高値で売れるのだが、剥ぎ取る時間はない。

 なめす作業もこっちでやらないといけないみたいだし、費用対効果を考えたらまず手は出せない。

 悶絶しているウイングバーグを放置し、俺は山の頂上を目指して再び歩き出した。


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