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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第3章

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第105話 約束


 週末の休日。

 この一週間は本当にハードであり、朝から昼までは配達。


 昼から夕方過ぎまで店番をこなし、終業後から夜までは職人のところへ出向いて入念な話し合い。

 そして話し合いを終えてからは、西の森へと出向いてフレイムセンチピード狩りを行うという日々を送っていた。


 本当はフレイムセンチピードをまとめて狩って、諸々の手間を省きたかったのだが……。

 ヨークウィッチから西の森までが意外に離れており、フレイムセンチピードを探して狩って剥ぎ取りまで行うと、一匹狩るだけで時間的に厳しいものがあった。

 狩ったフレイムセンチピード一匹分の素材は一日でなくなってしまうし、睡眠時間を一時間弱くらいでこの一週間は過ごしていた。


 やっと迎えた休日だが、眠気が酷くこのままずっと眠っていたい気分になる。

 最近は休日を迎える度に睡眠を求めている気がするが、今日も今日とて眠っている時間なんてない。


 忙しくて行けていなかった冒険者ギルドへと顔を出し、マイケルにフレイムセンチピードの件をまず伝える。

 そしてその後は北の山まで赴き、頼まれていたギルド長の捜索を行わなくてはいけない。


 スタナへのプレゼントも買いに行きたいのに、本当にいくら時間があっても足らない日々。

 楽しいし非常に充実した毎日を送っているのだが、久しぶりにゆっくりと体を休めたいのもある。


 贅沢な悩みを抱きながら、シャワーを浴びて無理やり目を覚まし、俺は冒険者ギルドへと向かった。

 一番良いのはギルド長がギルドに戻っていることだが、あまり高望みはしない方がいい。

 

 この後はギルド長を探しに行く――そう自分に言い聞かせてから、応接室の窓から冒険者ギルド内に侵入。

 流石に鍵を閉めても無駄と学んだようで、鍵は開いていたため窓を壊すことなく中に入れた。

 そのままの足取りで副ギルド長室へと向かい、俺はノックをしてから返事を待たずに中へと入った。


「返事を待たずに入ってきた時点で君だとは思ったよ。今回は窓を割ってはいないだろうね?」

「鍵が開いていたから普通に入った。俺だって窓を割りたくて割っていた訳じゃないからな」

「それなら良かったよ。今日はフレイムセンチピードの件と、ギルド長の捜索の約束を果たしに来てくれたのかね?」

「ああ。……というより、ギルド長はまだ戻っていないんだな」

「そうだ。一度も顔を見せていないよ」


 自分の心に言い聞かせていたが、やはり心のどこかではいることを願っていたため、戻っていないと聞いてがっくりとしてしまう。

 非常に面倒くさいが、北の山まで行って捜索をしなくてはいけなそうだ。


「ギルド長捜索の件は引き受ける。約束していた訳だしな」

「本当に助かるよ。私は未だに動くことができそうにないからね。連れ戻せるのも君だけと思うし、君だけが頼りなのだ」

「そこまで期待されるのは困る。死んでいたとしたら、当たり前だが連れ戻すことは不可能だからな」

「そこは心配いらないよ。ギルド長は絶対に死なないからね」


 謎の信頼感があるのか、そう言い切ったマイケル。

 まぁ伝えたことは伝えたし、死んでいたら死体の回収だけ行えば納得してくれるだろう。


「分かった。すぐに北の山に行って、連れ戻しに向かおう」

「ありがとう。私もフレイムセンチピードの件で動いていたよ。君がゴーサインを出せば、すぐに素材を集められる体制は整っている」

「本当か? 必要なのは確定したから、できる限り多くのフレイムセンチピードの素材が欲しい」

「やはり必要となったのだね。すぐにフレイムセンチピードの死体の買取を行わせてもらう。冒険者も喜んで死体を持ってくるはずだよ」

「金はどうしたらいい? 一体辺りどれくらい払えばいいのか教えてくれ」

「お金はいらないよ。色々と助けてもらった恩の一つとして私から返させてもらう。討伐依頼が頻繁に出されているから、高額で買い取りを行うつもりもないからね」


 これはありがたい提案だな。

 こっちとしても高い金銭を支払うことはできないため、ギルドが全負担してくれるというのなら、より高い利益を出すことができる。


「それでいいのか? 遠慮せずにその提案を受けさせてもらうぞ」

「もちろん構わないとも。とりあえず死体が溜まったら、君に受け渡させてもらう。欲しい部位とかっていうのはあるのかね?」

「外骨格だけ欲しいから、できるのであれば処理も行ってもらえると助かる」

「外骨格だけかね? てっきり牙か火炎袋を欲しているのだと思っていたけど、ますます君の考えていることが分からなくなったよ。……とりあえず処理の件についても了解した」

「それじゃよろしく頼む。ギルド長を連れ戻したら、すぐにここに連れてくるから待機しておいてくれ」

「分かった。こちらこそよろしく頼むよ」


 俺はすぐに北の山に向かおうと思ったのだが、情報は聞いておこうと思い直し、北の山について尋ねることにした。


「……ちなみにだが、北の山のどこにいるのかってのは分かるか?」

「いや、申し訳ないが一切分からない。ただ、恐らく頂上付近にいるとは思うよ」

「なるほど。そういうことなら頂上付近を重点的に探してみる」

「ギルド長をよろしく頼むよ。それと私の方から北の山の情報を軽く教えておく」


 マイケルから軽く北の山の情報を教えてもらってから、俺は冒険者ギルドを後にした。

 とりあえず、これでフレイムセンチピードの素材問題は完璧に解決しただろう。


 金銭もかからず、処理まで行ってくれるとのことだし、これは想定以上の成果だ。

 打算的ではなかったが、マイケルを助けておいて良かったと心の底から思える出来事。


 ギルド長の捜索も乗り気ではなかったが、またマイケルに恩を売れるということなら頑張れる。

 頬を叩いて眠気を物理的に飛ばして気合いを入れてから、俺はヨークウィッチを出て北の山を目指した。


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