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毒竜抗争篇:エピローグ①

 ヴァトラス王国の王城の一室で、四人の男女が茶会を開いていた。


 四人のうち二人はアルトとベアトリスである。二人は隣に座り、対面上にもう二人の男女が座っていた。

 対面に座る二人は、もちろんこのヴァトラス王国の国王夫婦だ。国王の名を“レグレス=ジュール=ヴァイトス”、金色の髪と碧い瞳を持つ美丈夫だ。そして王妃の名を“ヴィクトリス=レーナ=ヴァイトス”という。やや赤みのかかった金色の髪に碧い瞳の美女である。

 国王夫婦はアルトとベアトリスの話に熱心に耳を傾けている。端から見れば麗しい美男美女の国王一家の団欒であり、心和む光景であるのだが、交わされている会話の内容が殺伐としていた。

 会話の内容は、毒竜(ラステマ)一党が完全に無力化した話であり、死者こそ出なかったが、血生臭い内容であった。


「アディルという方の剣術は本当に不思議でしたわ。毒竜(ラステマ)の長剣を剣で受けたのに、まったく音がしなかったのです」

「ああ、あれには驚いた。完全にロジャールの剣の力を相殺していたな」

「うん」


 アルトとベアトリスの会話がアディルの技に移行していった時にレグレスは目を細めた。


「アルト、そのアディルという少年なんだが、変わった形の剣を使ってないか? 片刃で反りの入ったような……」

「え? 父上……どうしてそれを?」


 レグレスの問いかけにアルトは少しばかり驚いたようである。アルトの返答を受けてレグレスはヴィクトリスに視線を移すと互いに頷いた。


「そのアディルという少年の家の名は何というかわかるか?」

「えっと……確か、“キノエ”と言ってたな」

「うん。アルトの言う通りよ。アディル=キノエって名乗ってたわ」


 アルトとベアトリスの返答を受けて、レグレスとヴィクトリスは嬉しそうに笑った。


「そうか。あの二人の子か」

「イリナは元気かしら? 久々に会いたいわ♪」


 国王夫婦の喜びの声にアルトとベアトリスは呆気にとられたような表情を浮かべた。話の流れからして、自分達の両親とアディルの両親は知己の関係にあるようである。しかも、良好な関係を築いている間柄のようであった。


「お父様達はアディルのご両親を知っているのですか?」


 ベアトリスの問いかけに二人は即座に頷く。


「ああ、もちろんだ。アドスとは喧嘩友達というやつでな」

「「え?」」


 レグレスの口から出た“喧嘩友達”という単語にアルトとベアトリスは呆気にとられた。国王に喧嘩友達と称される相手がいることは二人の想定を遥かに超えた出来事だったのだ。


「イリナは私の親友よ」

「え? そうなの?」


 ヴィクトリスの言葉にベアトリスは驚きを込めた声で返答する。


「何呆けてるのよ。あなたの義理の両親になる方々よ」


 ヴィクトリスの言葉を聞いたベアトリスは雷が落ちたかのような衝撃を受けた。


「え? え? どういうこと? アディルが私の結婚相手なの?」


 ベアトリスは人生で一番驚いていると言って良いだろう。まさか自分に結婚相手がいるなどとまったく考えていなかったのだ。


「父上、どういうことです? いくらなんでも話が飛躍しすぎではないですか?」


 アルトも驚きを隠せないようでレグリスに尋ねていた。


「ああ、さっきも言ったがアドスとイリナ夫婦と我々は知己でな。特にヴィクトリスとイリナは親友同士の間柄だ。そこで自分達の子どもを結婚させたいという流れになったのはそう不思議な話じゃないさ」

「はぁ……そですか」

「良いかアルト、お前達に婚約者がいないのは、アドスとイリナの子どもと結婚するときの足枷にならないためだ」

「マジ……か?」


 レグレスの告げた言葉はアルトにとってよほど衝撃であったのだろう。普段なら絶対に使わないような言葉を呟いてしまっていたのだ。


「ちょっと待ってお父様……」

「なんだい。愛娘よ」

「アディルと結婚ってできるわけないわ。私は王族だし、アディルは平民よ。身分の差がありすぎるわ」

「そんなものどうとでもなる」


 ベアトリスの疑問の言葉をレグレスは一言で終わらせた。身分制度の頂点にいる者が、身分制度を無視する発言が発せられたのである。その衝撃はアルトとベアトリスにとって決して小さなものではない。


「アディルとの婚姻は王家にとってそれだけ重要だと言うことですか?」

「ああ、単に母親同士が親友だからと言って王族を嫁がせるわけにはいかない。それをすると言う事はそれだけの価値があると言うことだ」


 レグレスの言葉にアルトは静かに頷く。そして、アルトはベアトリスに視線を移した。


「という事だ。ベアトリス良かったな。アディルという結婚相手が見つかったぞ」

「ちょっと待ちなさいよ。いくらなんでも……」

「なんだ。アディルは嫌なのか?」

「べ、別にそんな事……ない……けど」


 ベアトリスは頬を赤くしながらアルトの言葉を否定する。その様子に他の三人は顔を綻ばせた。

 ベアトリスの反応はどう考えてもアディルに対する好意を表現したものであるからだ。


「ああ、当然だがアディル君と結婚するにはお互いの気持ちが大切だ。王家の命令とかでは、あの一族は縛ることは絶対に出来ん。きちんと気持ちを通わせるのだぞ」

「え、あ、はい」


 ベアトリスは顔を赤くしながら、しどろもどろになりながら返答する。


「しかし、ベアトリスは大変だな。恋敵が多いだろう」

「う……」


 アルトの言葉にベアトリスの表情が曇る。アルトのいう恋敵の顔を思い浮かべたのである。


「俺の見た所、現時点でアディルに恋心を自覚しているのはいないな。でも自覚してないだけの事だ」

「う、うん」


 二人の会話を聞いていたレグレスはニヤリと笑いながら言う。


「ああ、別に恋敵と争わないで良いという方法もあるからな」

「え? それって……」

「さて、解釈はそっちでやってくれ」

「えっと……」

「大事なのはお前が幸せになる事だ。その幸せに王家は便乗したいと思ってるのさ。だから難しく考えるなよ」

「はい!!」


 ベアトリスは何かを決意したかのように頷いた。


(う~ん、厳しい戦いだろうが頑張って欲しいな。あいつが近くにいれば楽しくなるのは間違いないからな)


 アルトは心の中で小さく呟いた。降って湧いたような話であったが、アルトとベアトリスはアディル達との関係性が強まることに対して何も不満など無かったのである。


「とりあえず。明日、アディル達の所に行ってみるとしようぜ」


 アルトそう言って笑った。 

 今回の話は修正前の話でも考えていた流れです。形に出来て良かったです。

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