15発:ご利用は計画的に
受付嬢のおねーちゃんに、フリースタイルと呼ばれる自由冒険行に適したザイオン近くのその三箇所について詳しく聞いてみた。
まず、地下迷宮、混沌牧場、浮遊島の3つは、その並び順の通り『地下迷宮<混沌牧場<浮遊島』と探索の難度は上がる。
地下迷宮、つまり、地下にある旧市街が最も初心者向きであり、多くの冒険者がその探索に繰り出している、とのこと。
混沌牧場と呼ばれるエリアは、かなり危険な土地らしく、混沌種と呼ばれる化物の類が跋扈する汚染された大地だと。
あまりにも危険な場所なため、冒険者以外の立ち入りは禁止されているようだ。
浮遊島“マゴニア”は、中宙に漂う巨大な島らしく、普段は目に見えないらしい。
伝説的チックな場所のため、その渡航法すらはっきりとは確保できておらず、英雄探索行に分類されているらしい。
まぁ、要約すると、く分からん、ってこった。
――ついで、に。
これは受付のおねーちゃんからオフレコってことで聞いた話なんだが――
実は、魔王討伐への本筋的な冒険者より、ギルドへの仕事依頼を受注する者やフリースタイル、つまり、地下迷宮、混沌牧場、浮遊島への探索行を優先する者の方が、遙かに多いそうだ。
魔王討伐や魔王がらみの攻略などに従事する冒険者は、全体の1%未満、ほとんどいないらしい。
魔王の勢力は、確かに近年、衰えている。
これは間違いない事実だとのこと。
しかし、それでも魔王の力は絶大で、それに挑むにはリスクがハンパないらしい。
そして、最も重要、且つ、触れてはならない話。
それが――
七聖国は魔王討伐のため、このザイオンに膨大な額の支援金を寄付しているらしい。
勿論、今いるこのギルド『魔王討伐ギルド“魔王殺し”』もその支援を受けている。
七聖国からの多大な寄付のおかげで、このザイオンの豊かさは成り立っており、魔王が討伐されてしまうと都合が悪い者も多いらしい。
謂わば、ザイオンと魔王の存在は、互いに共存関係のような立ち位置にあり、この奇妙な関係性故に、互いが存続し続けることが出来ている、と云えた。
そして、
――冒険者。
冒険者などというものは、カタギではない。
定住を嫌い、漂泊の身にあり、定職に就かず一攫千金狙いの山師であり、法を軽んじ、享楽的、控えめに云ってロクデナシ。
そんな冒険者の希望とも云えるのが、この“はじまり”の街にして“さいご”の街、ザイオンなのである。
つまり――
冒険者達にとっても、魔王の存在は必要不可欠であり、本気でこれを討伐してしまったらザイオンの存在価値が失われ、自分達も喰って行けなくなってしまう。
英雄は、大敵があってこそ初めて成立する、と云わんばかりに。
――故にっ!
冒険者らは、魔王退治に“乗り気ではない”のだ。
うーん、何とも世知辛い世の中。
ファンタジーって、こんな微妙な政治的背景ってあったっけ?
なんと云うか…
ご苦労様、です。
さてはともあれ、俺と幼女神にとっちゃ、そんなスケールのデカイ話は、今のところ無縁だ。
魔王がどうの、ザイオンの財政がどうの、冒険者の腹の内とか、まーったく関係ない。
今の俺達に必要なことは、借金返済、それをするために仕事を探す、しかし、仕事を依頼してもらえる立場にねぇーからフリースタイルで冒険に挑まにゃならん、というお粗末な状態。
取り敢えず、選択肢は1つしかない。
若者に人気、っつ~フリースタイルダンジョン、即ち、地下迷宮への冒険しか選びようがない。
若者に人気っちゅーくらいだから、大した冒険者じゃなくても挑戦できるっぽい。
深い階層はヤバイらしいが、浅い階層なら普通の住人ですら行き来できるらしいので、これしかない。
従って、目指すは地下迷宮!!
だが――
――俺達には、更なる問題がある。
それはッ!
俺と幼女神には、冒険するための“装備”がない。
金もなけりゃ経験もなく、知識もなけりゃ家もない。
あるのは“借金”だけ。
いかに地下迷宮の浅い階層が冒険初心者向けとはいえ、徒手空拳に挑むのは無謀。
剣や鎧、せめて、ひのきの棒でも布の服でもいいから装備しないと流石にマズイよな。
俺なんて尻トルフォきゅんのコスプレのまんまだぜ?
これ、明らかに普通の服よりも露出が高い。
防御力ゼロにも程があるだろ?
仕方あるまい。
あるものは使おう。
そう、ACカードの購入枠。
ショッピングのはじまり、だ!
受付嬢曰く、このギルドの建物の同じフロアに武器や防具ほか、装備品一式を購入することのできるショップがある、とのこと。
実に、至れり尽くせり。
早速、ショップに向かう。
――30分後。
冒険者受付窓口にまで手ぶらで戻ってきた。
うむ――
高いッ!
ちょっとした棍棒で5千~3万エン程度、数打ちの青銅製の剣で2万~10万エン、数打ちの鉄剣で15万~30万エン、数打ちの鋼製の剣で50万エンは下らない。
防具や冒険の必需品などを考慮すると、とてもACカードの限度額では心許ない。
装備品に目一杯使ってしまったら生活そのものが困窮するし、そもそも泊まる宿もない。
世知辛い世の中だ。
何も購入せずに戻ってきた俺達を見て、受付嬢が語りかけてくる。
「装備品でしたら、レンタルもできますよ?」
「な、なんだってぇー!?」




