俺を元気づけに来た二人
俺は命令によって、いつもの基地に招集されていた。
基地の人たちは俺が基地に到着すると、期待しているぞ!と声をかけてきた。
だが、俺にはそんな資格などない。俺は正直、飛び立ちたくなんかない。
俺は今までとは違い、そんな風に声をかけられるのを避けるかのように、与えられた自分の部屋に閉じこもった。
カーテンも閉ざし、薄暗い部屋の中、ベッドに寝そべって、無為に時間を費やすだけの俺。時々、ベッドの上で寝返りを打つ。それだけが、俺の行動である。
そんな時だった。部屋のスピーカーから、呼び出しがあった。
何の呼び出しなのか分からない。
気分的には行きたくなんかない。
しかし、ここが軍である以上、全く無視するわけにはいかない。
俺はむくりと起き上がると、ベッドを降りて、部屋を出た。
向かった先はこの基地の入り口にあるホールである。
基地の中でも、特異なその場所は大きなガラスから差し込む外光が、まぶしいほど明るい空間を作り出していて、その広い空間にゆったりと置かれたテーブルとソファがいくつも並んでいる。
俺がそんな今の俺の気分とは対照的な空間に姿を現すと、懐かしい声が聞こえてきた。
「亮、こっち」
「亮君」
陽香と玲奈が俺に手を振っているではないか。
面会かと予想はついていたが、相手はこの二人だった。
俺は迷った。このまま反転して、部屋に戻ろうかと。
今、俺はこいつらと面と向かって、明るく話をできる気分じゃない。
俺が困惑顔で、立ち止まったままでいると、陽香が走り寄ってきた。
俺はそんな陽香から逃げようと、体を反転させて、今来た道を引き返すことにした。
俺が背を向けてから、マジで走ってきたのか、すぐに陽香に腕を掴まれてしまった。
「どこ行くのよ、もう!」
陽香がふくれっ面で、俺の腕を持って、引き戻そうとする。
俺はその腕を振り払って、逃げて行く気力もなく、そのまま引っ張られて玲奈が待つテーブルまで行くことになった。
「どうしちゃったの、亮君?」
玲奈が俺にそう言うと、今日ここに来た理由を話しはじめた。
なんでも、暗く、覇気も感じられない俺の態度に、不安を抱いたこの基地の軍人さんたちが上層部に上げた報告が、玲奈の親父さんの耳に入り、励ましに行って来いと言われたと言う事だった。
そんな話を黙って聞いているだけで、何も話せないでいる俺に、目の前の二人が困惑顔で顔を見合わせているかと思えば、強い口調で迫ってきた。
「ねぇ、ちょっと亮
私たちが来てんだよ。
そんなつまらなさそうな態度は止めてよね」
「そうですよ、亮君。
何でも言ってください。
協力します」
二人が言っている事も分からない訳ではない。
でも、俺の気持ちはそんなどころじゃない。そんな心の叫びが、声になってしまった。
「俺の気持ちも知らないで」
そんな俺の言葉に、二人の表情が凍りついた事に気付いた。
ちょっと、悪い気がした。この二人には関係の無い事である。女の子に八つ当たりするなんて、恥ずかしい。
「あ、いや、ま、その」
俺は弁解する言葉を見つけられず、ただしどろもどろしていた。
するとテーブルの向かいのソファに座っていた二人が立ち上がり、俺に近寄ってきた。
しまった。
男らしくない態度に文句を言われる。
俺がそう思い、身構えていると、二人は俺の横に座り込み、俺の手をぎゅっと握りしめてきた。
右側に陽香。左側に玲奈。
何?
俺はこれから、何が始まるのかと、おどおどした表情で、視線を二人に行ったり来たりさせた。




