黒幕の迷い
首都の空軍基地より、次々に飛び立つTM-XとYM-1。
前国王派の司令部のレーダーはこのTM-XとYM-1の動きを捉えていた。
その針路の先にはミマサカより越境してきたTM-Xがいる。
合流するのか?
司令部の中は緊張に包まれていた。
お互いを求め合うかのように、一直線に進んでいた二つの編隊。
レーダー上のその先に無数の光点が現れると、二つの編隊の動きを注視していた司令部の軍人たちに驚きの表情が浮かんだ。
誘導ミサイル。
仲間同士と思われていたTM-Xを含んだ二つの編隊。
その編隊間で戦いが始まった。
そのお互いの機数は、ヤマシロの現国王派側と思われる編隊の方が圧倒的に多く、ミマサカ側の編隊が壊滅させられる。
レーダー画面を見つめているみなが思っていた。
次々に消滅していくレーダー上の光点。
発射されたミサイルだけでなく、戦闘機が次々に撃墜されていく。
二つの編隊の戦闘はそう長くは続かなかった。
ヤマシロの現国王派の軍が、送り出した戦闘機部隊が壊滅し、戦闘は終了した。
戦いの様子を注視していた司令部の軍人たちは一様に驚きの表情を浮かべた。
ヤマシロ側の戦闘機部隊を壊滅させるとミマサカより飛来していたTM-Xの編隊は、その針路を西に取り、ミマサカ方面に飛び去って行った。
目的はヤマシロにあるTM-Xの破壊だけだったのか?
この戦いの意味に、ヤマシロの前国王派の軍人たちは戸惑っていた。
だが、一つだけ明白な事があった。
現国王派の軍が保有している航空戦力はほぼ壊滅したのではないかと言う事。
この局面にあたり、前国王派の軍は意志決定の必要に迫られた。
当初の予定通り、ミマサカを討ち、その後首都を制圧している現国王派の軍と戦うのか?
それとも、航空戦力を失った現国王派の軍を先に討つのか?
出された結論はミマサカとの戦いで航空戦力を消耗する前に、首都を制圧するであった。
一方のミマサカ方面より飛来したTM-Xの編隊。戦闘は勝利したが、犠牲も大きかった。
残存する機体はSランク1機、Aランク2機、Bランク2機の計5機だけだった。
大量のTM-Xの裏切り。これが与えたダメージは大きく、もはや戦術の見直しは必至だった。
この騒乱の全ての計画者。TM-X計画の黒幕。御簾の奥の男は椅子の肘掛に自らの右肘をつき、そこから伸びる右手に頬を乗せたまま、思案気にしていた。
男の頭の中に浮かぶ二つの選択肢。
一つは事態の静観と偽りの平和を維持している間の戦力増強だったが、これには大きな懸念があった。
それはこの全ての黒幕が自分であると言う事が、ばれてしまう事である。
ばれる道はいくつかあった。
アイヅ、もしくはミマサカが敗北し、それぞれの国王が口を割る。
おそらくヤマシロの現国王派の軍の下にいると思われる菅原の口から洩れる。
いずれにしても、その時がやって来るのはそう遠くはない。戦力を回復するには時間が無さすぎる。
もう一つは敗色濃厚とは言え、アイヅ、ミマサカを援助し、一気に残存戦力で戦いを挑む。
TM-XのSランクが1機になってしまったとは言え、弱体化した他国の航空戦力を葬るには十分かもしれない。
いくら考えてみても、男は結論をだせない。
一歩間違えれば、身の破滅である。
決断できなかった男はアイヅ、ミマサカの戦力の再分析と2か国の国王の考えを正すことにした。




