人間の尊厳を踏みにじる所業
俺は立ち直れないショックを受けた。
俺をかばって、隊長が亡くなってしまった。
あの時、隊長の命令を聞いていれば、こんな事にはならなかったのに。
全ては俺のせいである。
恐ろしいほどの性能だった敵機。
俺の予想通り、ミマサカ側に現れた。
俺はその強敵を次々に撃ち落していった。
俺がやらなくて、誰ができるんだ!と、俺はうぬぼれていた。
それが、全ての原因である。
そのまま、俺は敵の罠に吸い込まれた。
平日の昼間だと言うのに、俺は自分のベッドの上で人形のように動くこともなく、ぼんやりと天井に視線を向けたまま寝そべっている。
俺の横ではスマホのLEDがずっと点滅しっぱなしで、メールが届いている事を俺に必死に伝えているが、俺はそんなものに構っている気分じゃない。
そんな中には玲奈や陽香のメールもあるかも知れなかったが、俺は見る気がしない。いや、見れない。
俺には人様に合わせる顔がない。
そんな頃、俺の閉じた世界の外側では大きな動きが起きていた。
一つは敵の新型機の謎が解明されたのだ。
敵機は撃墜されるとほとんどが爆発した。
それは燃料に引火して、誘爆したものかと思われていたが、爆発せずに地上に墜落した一機が分解された。
その中にはパイロットは存在せず、ダミーの人形がコックピットらしき空間に置かれており、実際に操縦していたのは、かつて菅原が研究していた戦闘機と同じ、人体から取り出された人間の脳だった。
脳を覆うカプセル状の装置。それは液体の中を浮遊し、機体の加速をある程度そこで吸収する構造になっていて、脳に送られる栄養素と酸素が混入された人口血液が加速に応じて圧力を変化させ、脳の機能が失われにくい構造になっていた。
そして、機体のダメージが飛行困難と判断されると、自爆する装置まで取り付けられていた。
人間の尊厳を踏みにじる所業。
ヤマシロの国民は大いに憤っていた。
そんな戦闘機を開発した者。それはゆかりちゃんの親父さん以外にはありえなかった。
もう一つは、一般人には知らされてはいなかったが、目撃者から口々に広がり始めていた噂。
アイヅよりエドに侵攻し、エドの戦闘機部隊を壊滅に追い込んだ新型戦闘機がエドを横断し、ヤマシロに飛来し、今は首都にある軍の基地に並んでいると言うのだった。
人々はやはり10年前の事件の犯人は、退位に追い込まれた前国王ではなく、軍の一部と松山に守られながら、首都に居座っている現国王の父親だったではと思い始めていた。




