闇夜にうごめく者たち
闇を照らし出す星々と三日月が放つ光が、暗闇の中にうごめく何人もの人影を映し出している。大きな壁を人影が次々に乗り越えていくと、人影が着地した時にさくっと地面を覆う落ち葉が音を立てる。 その先には明かりが消された大きな邸宅がある。
照明も消され、人が活動している気配を感じさせない邸宅に、人影が足音をしのばせて、近づいていく。
二階の一室。ほんの少しだけ開いていたカーテンが揺れたが、暗闇を進む人影はそれに気づいてはいない。
「やっぱりだ。
まさかとおもっていたが、私がつかんでいた情報どおりか」
二階の暗闇の中で、低い男の声がした。
「どうするんだ?」
別の若い男の声がした。
「俺が囮になる。
お前はその隙に逃げろ。
そして、ゆかり、お前は存在が知られていない。
屋根裏部屋に隠れて、騒ぎが収まったら、ここを出て、この国から逃げろ」
「いやよ。そんな事。
また私、一人ぽっちになるじゃない!」
若い女の声がした。
「ここで、皆が捕まってどうする。
逃げろ。いいな」
そう言うと、その人影はその部屋を出て階段に向かって行った。
女の人影がその後を追おうとしたが、もう一人の男の人影がその手を握って、引き留めた。
「お前が逃げなくて、どうする。
お父さんは何のために、囮になると言ったと思ってるんだ」
そう言うとその人影は、その部屋の片隅にある収納式の階段に女の人影を連れて行った。
「分かったな。
上がれ」
「でも、お兄ちゃん」
そう言った時、階下で窓が開く音がした。
「来た!」
そう言って、女の人影を階段に押し上げた。
「早く!」
その言葉に女の人影がその上の部屋に姿を消すと、部屋に残っていた人影が収納式階段を天井に隠した。
「誰だ、お前たち!」
階下から、さっきまでこの部屋にいた男の声がした。二階にいた別の人影も、その声に合わせるかのように、慌ただしく部屋を後にした。




