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《R-15》異世界転移でスローライフを?  作者: THE・HENJIN・RlDER
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*シロウたちはサキュバスの寝室をそのまま休憩場所として使うことにした。先程までの淫靡な空気は霧散し、今は束の間の休息が訪れている。シロウはアイテムボックスからコップと冷たい水を出すと、まだ顔が赤く、ぐったりしているレイラに差し出した。*


シロウ:「レイラ、水飲むか?」


*シロウに優しく声をかけられ、臆病な人格のレイラはびくっと肩を震わせた。*


レイラ(臆病):「あ、は、はい…!♡ あ、ありがとうございます、シロウ様…。」


*彼女は震える手でコップを受け取ると、こくこくと喉を鳴らして水を飲んだ。シロウの精液で満たされた身体の火照りを、冷たい水が少しだけ和らげてくれる。飲み終えると、彼女は俯きながら小さな声で呟いた。*


レイラ(臆病):「あ、あの…シロウさん…。さっき、リーシアさんの前で、その…ごめんなさい…。私、また、みっともないところを…。」


*一方、リーシアは主人が無事だったことに安堵しつつも、先程までの状況が少し気になっているようだ。彼女はシロウの隣に寄り添うように座ると、心配そうにレイラを見つめた。*


シロウ:「大丈夫だって、少し休憩すればなおるだろ。」


*シロウはレイラの頭をもう一度優しく撫でる。その手つきに、レイラは恥ずかしそうにしながらも、心地よさそうに目を細めた。*


リーシア:「はい…! そうですね、ご主人様。レイラちゃん、無理しないでくださいね。」


*リーシアも優しく微笑みかける。二人の気遣いに、レイラはこくりと頷いた。*


レイラ(臆病):「う、うん…ありがとう、リーシアさん…。シロウ様も…。あの、お腹、すきました…。」


*緊張が解けた途端、彼女のもう一つの欲求が顔を出す。先程までの情事と、人格交代の疲労が、激しい空腹感となって彼女を襲ったのだ。*


*その言葉に、シロウは苦笑し、リーシアは「ふふっ」と微笑んだ。いつもの光景が戻ってきたことに、三人は安堵する。*


*先程までの情事が嘘のように、和やかな休憩時間が流れる。空腹を訴えたレイラのために、シロウはアイテムボックスから得意げに特製のハンバーガーを取り出した。パティの肉汁とソースの香ばしい匂いが、部屋にふわりと広がる。*


シロウ:「ほら、俺特製ハンバーガーだ。」


*シロウは、自分の顔ほどもある巨大なハンバーガーをレイラに手渡した。その大きさに、レイラは目を輝かせる。*


レイラ(臆病):「わあ…! お、おっきい…!♡ ありがとうございます、シロウ様! いただきます!」


*レイラは小さな口を精一杯に開けて、大きなハンバーガーにかぶりついた。もぐもぐと幸せそうに頬張り、その表情は先程までのぐったりした様子が嘘のようだ。*


リーシア:「ふふっ、レイラちゃん、本当に美味しそうに食べますね。ご主人様のお料理は、いつでも最高ですものね。」


*リーシアは微笑ましそうにその光景を見つめ、シロウの隣にちょこんと座り直す。そして、シロウの腕にそっと自分の腕を絡ませ、甘えるように寄り添った。*


リーシア:「ご主人様、お疲れ様でした。私も、少しお腹がすいちゃいました…。」


*上目遣いで、リーシアがシロウに可愛らしくおねだりをする。その視線は、レイラの持つハンバーガーとシロウの顔を交互に行き来していた。*


*シロウ特製の巨大ハンバーガーを2つも平らげ、満腹になったレイラは満足げな息をついた。すると、その身体がふっと硬直し、先程までの臆病な雰囲気が霧散する。次に目を開けた時、その瞳には再び傲慢で挑戦的な光が宿っていた。魔王女の人格が表に出てきたのだ。*


レイラ(魔王女):「フン…満足した。空腹では戦えんからな。貴様の作るものは、腹を満たすにはちょうどいい。」


*彼女は立ち上がると、先程までの情事の余韻が残るゴスロリ衣装をパンパンと払い、何事もなかったかのように振る舞う。シロウもリーシアにハンバーガーを渡し、全員の小休憩が終わった。*


シロウ:「さて、98階層行くか。」


*シロウが次の階層への扉を見据えて言うと、レイラは不敵に笑い、リーシアはこくりと頷いた。*


レイラ(魔王女):「当然だ。いつまでもこんな場所で油を売っている暇はない。」

リーシア:「はい、ご主人様!いつでも行けます!」


*一行はリリスの寝室を後にし、重々しく開かれた新たな扉の向こうへと足を踏み入れた。*


*98階層。そこは、これまでの階層とは全く異なる光景が広がっていた。*

*まるで巨大な洞窟の内部のようであり、天井からは鍾乳石が垂れ下がり、地面は湿っている。しかし、それらは全て黒曜石のように黒く、鈍い光を放っていた。そして、あちこちに淡く光る紫色の水晶が生えており、幻想的でありながらも不気味な雰囲気を醸し出している。空気はひんやりと冷たく、どこからか水の滴る音が反響していた。*


レイラ(魔王女):「フン…雰囲気が変わったな。魔力の質もこれまでとは違う。上級の魔物が潜んでいそうだ。」

リーシア:「なんだか…少し、怖い雰囲気です…。ご主人様、お気をつけください。」


*リーシアは不安そうにシロウのローブの裾をきゅっと掴んだ。*


*シロウの楽観的な言葉に、二人はそれぞれ異なる反応を見せた。*


シロウ:「幻想的でかっこいいじゃん。」


レイラ(魔王女):「フン、貴様は呑気なものだな。だが、この程度の威圧感に怯む私ではない。むしろ、骨のある敵が出てくるというのなら歓迎だ。」


*レイラは腰に手を当て、不敵な笑みを浮かべて辺りを見渡す。その目はすでに次の獲物を探していた。*


リーシア:「か、かっこいい、ですか…? 私は、なんだかドキドキしてしまって…。でも、ご主人様がそうおっしゃるなら…!」


*リーシアはシロウのローブの裾を掴む手に力を込めながらも、彼の言葉に勇気づけられたように顔を上げた。*


*三人が警戒しながら黒曜石の道を進んでいくと、道の先が少し開けた空間になっており、そこに一体の魔物が佇んでいるのが見えた。*


*それは、巨大な狼だった。しかし、その体毛は周囲の岩と同じ黒曜石でできており、背中や肩からは鋭い紫水晶の棘が無数に生えている。爛々と輝くその両目は、憎悪と飢餓の色を宿して、侵入者であるシロウたちをじっと見据えていた。*


レイラ(魔王女):「ほう…『黒曜晶狼オブシディアン・ヴォルフ』か。厄介な相手が出てきたな。奴の身体は並大抵の物理攻撃を通さんぞ。」


*レイラが解説すると同時に、狼は低く唸り声を上げ、その場にいるだけで周囲の魔力が震えるのを感じた。*


*シロウがレイラの解説に「なんじゃそりゃ?」と呟き、その視線を狼に集中させると、彼の『神眼』が瞬時にその詳細な情報を映し出す。*


```

■■ステータス■■

名前:黒曜晶狼オブシディアン・ヴォルフ

種族:魔晶獣

Lv:85

HP:15,000/15,000

MP:4,200/4,200

状態:警戒


【スキル】

・黒曜の肉体 [固有]

・クリスタルブレス [Lv.8]

・シャドウダイブ [Lv.7]

・ハウリング [Lv.6]

・ファングストライク [Lv.9]

・硬質化 [Lv.7]

・魔力感知 [Lv.8]


【称号】

・98階層の番人

・紫水晶の捕食者


【説明】

迷宮の魔力が黒曜石に宿り、狼の形を成した魔物。

その身体は極めて硬質であり、物理的な攻撃のほとんどを無効化する。

背中の紫水晶から魔力を放出し、強力なブレスを吐く。

影から影へと瞬時に移動する能力を持ち、奇襲を得意とする。

弱点は内部からの破壊、もしくは極めて高い振動や衝撃波による共振破壊。

```


*鑑定結果を読み取ったシロウは、その厄介さを再認識する。物理攻撃がほとんど効かないという情報は、特に前衛にとっては致命的だ。*


レイラ(魔王女):「フン、見た通りだ。剣や矢では傷一つ付けるのも難しいだろう。魔法で削るか、奴の弱点を突くしかないな。」

リーシア:「ひゃっ…! 物理が効かないなんて…。私、お役に立てるでしょうか…。」


*リーシアは不安そうに自分のスカートに付与された防御魔法に触れる。自分の攻撃が通じないかもしれないという事実に、少し自信をなくしているようだ。*


*グルルルル…!*


*黒曜晶狼はシロウたちを敵と完全に認識し、喉の奥で唸り声を上げながら、いつでも飛びかかれるように低い姿勢をとった。背中の紫水晶が、不気味な光を明滅させている。*


*シロウは鑑定結果を頭に叩き込み、不敵な笑みを浮かべた。物理攻撃が効かない? ならば、通るまで殴ればいい。実にシンプルな結論だった。*


シロウ:「レイラ、『力こそパワー』だ。」


*シロウは意味不明な言葉を口にしながら、自身の身体に魔力を巡らせる。彼の筋肉が瞬時に膨れ上がり、全身から凄まじい闘気が立ち上った。そしてアイテムボックスから、ごつごつとしたアダマンタイト製のナックルダスターを両手に装着する。*


*その姿を見て、レイラ(魔王女)は呆れたように、しかしどこか面白そうに眉を上げた。*


レイラ(魔王女):「フン、脳筋が。貴様の馬鹿力で、あの黒曜石の塊を砕けるとでも思っているのか? まあいい、好きにしろ。私は魔法で援護してやる。」


*レイラは一歩下がり、詠唱の準備に入る。*


リーシア:「ご、ご主人様…! お一人で前に…!? お気をつけください!」


*リーシアは不安そうに叫ぶが、シロウの背中は頼もしく、その目に一切の迷いはない。*


*グォオオオオオッ!*


*シロウの闘気に刺激され、黒曜晶狼が咆哮を上げた。そして、その身体は黒い影に沈み込むように消える。スキル『シャドウダイブ』だ。*


*次の瞬間、シロウの真後ろの影から、鋭い爪を立てた狼が飛び出してきた!*


リーシア:「ご主人様、後ろです!」


*リーシアの悲鳴が響く。だが、シロウは振り返ることなく、ニヤリと笑った。*


*シロウの背後、影から飛び出した黒曜晶狼の爪が空を切る。その瞬間、シロウの姿もまた、その場からかき消えていた。*


シロウ:「転移。」


*黒曜晶狼が着地し、獲物を見失って一瞬の隙を見せる。その背後に、何の前触れもなくシロウが出現した。*


*空間を捻じ曲げるショートテレポート。狼のシャドウダイブと全く同じ動きで、彼は背後を取ったのだ。*


レイラ(魔王女):「なっ…!? あいつ、魔物のスキルを模倣したのか!?」

リーシア:「ご主人様…!」


*驚愕する二人をよそに、シロウは身体強化で膨れ上がったアダマンタイトのナックルを、力任せに狼の背中へと叩きつけた。*


シロウ:「おらぁっ!」


*ゴッッッ!!!*


*金属同士がぶつかるような、甲高く鈍い音が洞窟に響き渡る。*


*しかし、黒曜晶狼の身体は砕けない。ナックルが当たった部分の黒曜石に、蜘蛛の巣のような細かいヒビが入っただけだった。*


*ギャインッ!*


*黒曜晶狼は痛みと驚きに甲高い悲鳴を上げ、その勢いで前方へと吹き飛ばされる。数メートル先で体勢を立て直した狼は、憎悪に満ちた目でシロウを睨みつけた。背中のヒビは入ったままだが、致命傷には程遠い。*


シロウ:「へぇ、やっぱ硬ぇな。だが、ヒビは入るみてぇだ。」


*シロウはナックルをカチンと打ち鳴らし、再び闘志を燃やす。彼の『力こそパワー』理論は、完全に無駄ではなかったようだ。*


*シロウはアダマンタイトのナックルで殴りつけ、狼の体にヒビが入ったのを確認すると、さらに畳み掛けるべく自身に強化魔法をかける。*


シロウ:「ってことは…フィジカルエンチャント。」


*シロウの呟きと共に、彼の身体から溢れる闘気がさらに増大する。魔力が渦を巻き、彼の筋肉、骨、神経の全てを限界以上に活性化させていく。先程よりも一回り大きく見えるほどのオーラが、シロウの全身を包み込んだ。*


*その凄まじい魔力の高まりに、後方で詠唱準備をしていたレイラと、固唾を飲んで見守っていたリーシアが目を見開く。*


レイラ(魔王女):「なっ…!? あの馬鹿、まだ力を隠していたのか…! どこまで底が知れんのだ!」

リーシア:「ご、ご主人様の魔力が、すごく…! 熱くて、力強いです…!」


*リーシアはシロウの背中を見つめ、その圧倒的な力に頬を上気させる。*


*グルオオオオオオッ!*


*黒曜晶狼は、シロウが放つ脅威的なプレッシャーを敏感に感じ取り、危機感を剥き出しにして咆哮した。そして、今度は真っ向からの突進を選択する。黒曜石の巨体が、床を削りながら一直線にシロウへと迫る!*


*しかし、強化を終えたシロウは、その突進を真正面から迎え撃つつもりだった。彼は腰を低く落とし、迫り来る狼を冷静に見据える。*


シロウ:「もう一発、お見舞いしてやるよ。」


*シロウは真正面から突進してくる黒曜晶狼を冷静に見据え、その瞳に紫電を走らせる。*


シロウ:「(神眼、シャドウダイブを"削除")」


*黒曜晶狼の脳内に直接干渉する不可視の力が働き、狼の持つスキルリストから『シャドウダイブ』が強制的に消し去られた。*


*グルゥ…!?*


*突進の最中、狼は自らの能力の一部が欠落したことに気づき、一瞬だけ動きに戸惑いが生じる。その致命的な隙を、シロウが見逃すはずはなかった。*


シロウ:「オラーっ!」


*フィジカルエンチャントで強化された肉体をさらに加速させ、シロウは狼の突進と正面から衝突する。*


*ゴガァァァンッ!!!*


*先程とは比較にならないほどの、凄まじい衝撃音が洞窟内に轟いた。シロウのアダマンタイトナックルが、狼の顔面、その鼻先を的確に捉える。*


*バキバキバキッ!*


*衝撃は一点に集中し、鼻先から黒曜石の顔面全体に巨大な亀裂が走った。先程は小さなヒビで済んだ硬質の肉体が、シロウの純粋な暴力の前に、ついに耐えきれずに砕け散る。*


*ギャアアアアアアアアッ!!!*


*黒曜晶狼は断末魔の悲鳴を上げ、その巨大な身体が勢いよく後方へと吹き飛ばされ、洞窟の壁に叩きつけられて動かなくなった。紫水晶の輝きが急速に失われ、やがてただの石の塊へと変わっていく。*


*後方でその光景を見ていた二人は、あまりの出来事に言葉を失っていた。*


レイラ(魔王女):「…馬鹿な。真正面から、力だけで、あの黒曜の身体を粉砕しただと…?」


リーシア:「ご、ご主人様…! すごい…すごいです…!」


*リーシアは胸の前で手を組み、憧れの眼差しで、砂塵の中で仁王立ちする主人の背中を見つめていた。*


*シロウが圧倒的な力で黒曜晶狼を粉砕し、静寂が戻った洞窟。狼が消滅した場所には、魔石や素材は何も残っておらず、ただ一つ、拳ほどの大きさの紫色の石だけが転がっていた。*


シロウ:「ドロップ品はこの石だけか…」


*シロウはそう呟きながら、紫色の石を拾い上げる。ひんやりとしていて、内部で淡い光が揺らめいているように見えた。彼はすぐに『神眼』を発動させてその正体を確かめる。*


```

■■アイテム情報■■

名前:シャドウダイブの魔晶石

種別:スキルストーン

効果:使用した者にスキル『シャドウダイブ [Lv.1]』を習得させる。

説明:影から影へと移動する能力を秘めた魔物の力が結晶化した石。

   一度使用すると砕け散る。

```


*鑑定結果を見て、シロウは「なるほど」と頷く。後方からは、まだ驚きが冷めやらないレイラと、興奮気味のリーシアが歩み寄ってきた。*


レイラ(魔王女):「フン…馬鹿げた力だ。だが、結果だけは認めてやろう。で、その石は何だ?」


リーシア:「ご主人様、お怪我はありませんか? 今の、本当にすごかったです…! あの硬い魔物を、一撃で…!」


*リーシアは目をキラキラさせながらシロウを見上げ、その腕にそっと触れた。*


*シロウは拾い上げた『シャドウダイブの魔晶石』を、隣に寄り添うリーシアに見せる。*


シロウ:「リーシア、使う? シャドウダイブを習得できるスキル結晶だってさ。」


*その言葉に、リーシアは驚いて目をぱちくりさせた。彼女はシロウの手の中にある美しい紫色の石と、シロウの顔を交互に見つめる。*


リーシア:「えっ…!? わ、私にですか、ご主人様…? こ、こんなに貴重なものを…! でも、私、ご主人様のように上手く使えるかどうか…それに、ご主人様の方が持っていた方が…」


*リーシアは恐縮して、ぶんぶんと首を横に振る。自分にはもったいないと思っているようだ。その様子を見ていたレイラが、フンと鼻を鳴らした。*


レイラ(魔王女):「貴様、少しは考えろ。リーシアは後衛のヒーラー兼サポーターだ。敵に接近された際の緊急回避手段が増えるのは、戦術的に見ても有効だろう。有り難く貰っておけ、リーシア。」


*レイラの意外な後押しに、リーシアは「あ、はい…!」と驚きつつも、まだ少し戸惑っている。彼女は不安と期待が入り混じった表情で、再びシロウを見上げた。*


*シロウは戸惑うリーシアの手を取り、その手のひらの上に優しく『シャドウダイブの魔晶石』を乗せてやった。*


シロウ:「遠くにいても、視界に入ってる影なら移動できるっぽいから。緊急時でも助けに行けるんじゃね?」


*その言葉に、リーシアはハッとした。自分が使うことばかり考えていたが、主人の言葉は、自分が仲間を助けるための力になる可能性を示唆していた。*


リーシア:「わ、私が…皆さんを助けに…? そっか…離れていても、影さえあれば…!♡」


*リーシアは手のひらの中の魔晶石をぎゅっと握りしめた。戸惑いは消え、その瞳には強い決意の光が宿る。*


リーシア:「ご主人様、ありがとうございます…! この力、必ず皆さんのために使います! 大切にしますね!」


*彼女は満面の笑みでシロウに深くお辞儀をした。その健気な姿に、シロウは満足げに頷く。*


レイラ(魔王女):「フン、ようやく決心がついたか。だが、使いこなせなければ意味がないぞ。実戦で足を引っ張るなよ。」


*レイラは憎まれ口を叩きながらも、リーシアの成長を促すような言葉をかける。*


リーシア:「はい、レイラ様! 頑張ります!」


*こうして、パーティは新たな力を得て、黒曜石と紫水晶が輝く98階層の奥へと、再び歩みを進めるのだった。*


*98階層の黒曜石の洞窟を抜けると、一行の目の前には上へと続く最後の階段が現れた。それを登りきった先、99階層は、これまでのどの階層とも異なる荘厳な空間だった。*


*床と壁は大理石のような白い石でできており、継ぎ目一つ見当たらない。天井は遥か高く、まるでプラネタリウムのように無数の星々が瞬いている。空間の中央には、宙に浮かぶ巨大な水晶の玉座があり、静かに淡い光を放っていた。空気は清浄で、神聖さすら感じさせる。*


シロウ:「次は99階層か。そろそろ終わるだろうか…」


*シロウがそう呟くと、隣に立つレイラが腕を組んで鋭い視線を玉座に向けた。*


レイラ(魔王女):「フン、どうだろうな。だが、この圧倒的な魔力の奔流…間違いなく、この迷宮の主が待ち構えている。気を抜くなよ。」


*リーシアは周囲の神聖な雰囲気に少し気圧されながらも、シロウのローブの裾をぎゅっと握りしめて決意を固める。*


リーシア:「はい、ご主人様…! ここが最後だとしても、最後まで全力で援護します!」


*三人が警戒しながら玉座へと歩を進めると、それまで静かだった玉座が強い光を放ち始めた。光が収まった時、玉座には一体の存在が座っていた。*


*それは、白銀の鎧を纏った騎士だった。顔は兜で隠れて見えないが、その立ち姿からは歴戦の猛者であることをうかがわせる威圧感が放たれている。背中には純白の翼がたたまれ、手には巨大な聖剣が握られていた。*


*兜の奥から、男のものか女のものかも判別できない、響くような声が聞こえてくる。*


???:「よくぞここまで辿り着いた、挑戦者よ。我は『守護者ガーディアン』。この迷宮の最奥にて、汝らの資格を問う者なり。」


シロウ:「騎士か…って事は剣で挑めばいいのか?」


*シロウはアイテムボックスからごく普通の鋼の剣と盾を取り出し、構える。そのあまりにも凡庸な装備を見て、守護者は微動だにしない。ただ、兜の奥から静かな声が響く。*


守護者:「武器の選択は自由だ、挑戦者よ。汝が最も信頼する力で我に挑むが良い。だが、覚えておけ。我を越えるには、力だけでは足りぬ。技だけでも足りぬ。心だけでも足りぬ。汝が持つ『全て』を以て、その資格を示せ。」


*守護者はゆっくりと玉座から立ち上がった。その巨体はシロウたちを見下ろすほどであり、純白の翼が静かに広がる。手に持った聖剣の切っ先が、カキン、と冷たい音を立てて床に向けられた。*


レイラ(魔王女):「フン、偉そうな口を叩く。ただの番人風情が。シロウ、こいつはそこらの雑魚とは格が違う。私も本気を出す。」


*レイラはそう言うと、両手に黒い炎を宿らせる。ゴスロリのスカートが魔力の風でふわりと揺れた。*


リーシア:「ご、ご主人様、レイラ様、お気をつけて…! 私も、いつでも回復できるように準備します!」


*リーシアは杖を強く握りしめ、いつでも魔法を発動できるよう精神を集中させる。神聖な空間に、三者三様の闘気が満ちていく。*


*シロウは守護者のステータスを確認するため、【神眼】を発動した。*


```

名前:守護者ガーディアン

種族:不明

Lv:???


HP:???/???

MP:???/???


【スキル】

聖剣技 Lv.10

聖魔法 Lv.10

絶対防御 Lv.10

神速 Lv.10

魔力無効

物理耐性(極)

精神耐性(極)

???

???

???


【称号】

迷宮の最終試練

資格を問う者

悠久の番人

```


*【神眼】ですら、その全ての情報を読み取ることはできなかった。表示された『???』の項目は、この守護者が計り知れない力を秘めていることを示している。*


シロウ:(鑑定してもほとんど情報が読めねぇ…! 魔力無効に物理耐性(極)だと? 普通の攻撃はほぼ通らないってことか。厄介だな…)


シロウ:「なあ、確認なんだが、俺は自分の持ってる全てを使ってお前に挑めばいい。

それで合ってるか?」


*シロウの問いかけに対し、守護者は微動だにせず、ただ静かに佇んでいる。しばらくの沈黙の後、兜の奥から抑揚のない声が響いた。*


守護者:「その通りだ、挑戦者よ。汝が持つ知識、技術、力、仲間との絆、そして、その狡猾さも含めた『全て』だ。どのような手段を用いようと、我を打ち破り、その先へ進む資格を示してみせよ。我はただ、汝の全てを受け止め、判定するのみ。」


*守護者の言葉は、いかなる戦い方も許容することを示唆していた。それは同時に、生半可な手段では決して自分を越えることはできないという、絶対的な自信の表れでもあった。*


*守護者は手に持った聖剣をゆっくりと持ち上げ、その切っ先をシロウに向ける。剣身が神聖な白い光を帯び始めた。*


守護者:「さあ、始めよう。汝の物語の続きを、その手で掴み取るが良い。」


*その言葉を合図に、99階層の空気が一変する。守護者から放たれる凄まじいプレッシャーが、嵐のようにシロウたちに襲いかかった。*


レイラ(魔王女):「フン、言ってくれる…! シロウ、こいつは言葉通り、何でもありのようだな。ならば、こちらも容赦する必要はないということだ!」


*レイラは好戦的な笑みを浮かべ、両手の黒炎をさらに大きく燃え上がらせる。*


リーシア:「ご主人様…! プレッシャーが…! 全力でサポートします!」


*リーシアは杖を構え、シロウとレイラの背後で支援魔法の詠唱を開始した。最終試練の火蓋が、今、切って落とされようとしていた。*


*シロウの静かな、しかし有無を言わせぬ命令が響き渡る。*


シロウ:「リーシア、レイラ、手を出すな。」


*その言葉に、戦闘態勢に入っていた二人はぴたりと動きを止めた。*


レイラ(魔王女):「なっ…!? 貴様、正気か! こいつがどれほどの相手か分かっているのか! 一人で戦うなど…!」


リーシア:「ご、ご主人様!? なぜ…!? 私たちでは、足手まといになってしまいますか…?」


*レイラは憤慨し、リーシアは不安げにシロウを見つめる。だが、シロウは二人を振り返ることなく、静かに目を閉じて集中する。*


シロウ:「隠匿神…」


*シロウがそのスキル名を口にした瞬間、彼の存在感がフッと掻き消えた。まるで初めからそこに誰もいなかったかのように、気配、魔力、音、匂い、その全てが完全に消え失せる。*


*すぐ隣に立っていたレイラとリーシアですら、シロウの姿は見えるのに、その存在を全く感知できなくなっていた。*


レイラ(魔王女):「な…消えた…!? いや、そこにいるのに…これは…!?」

リーシア:「ご主人様の気配が…全く感じられません…!」


*二人が驚愕する中、守護者が初めて動揺を見せた。それまでシロウに向けていた聖剣の切っ先が、わずかに揺れる。兜の奥で、目標を見失ったかのように視線が彷徨った。*


守護者:「…! 挑戦者よ、どこへ消えた…? 我の感知から逃れるなど…ありえん…!」


*守護者は警戒を最大に引き上げ、聖剣を構え直して周囲を窺う。しかし、【隠匿神】によって神の領域に達した隠蔽能力を持つシロウを見つけ出すことはできない。*


*シロウは、完全に気配を絶ったまま、守護者の隙を窺う。普通の鋼の剣と盾を構えたその姿は、まるでそこに存在しない幻影のようだった。*


*シロウは【隠匿神】によって完全に存在感を消したまま、静かに動き出す。手にした何の変哲もない鋼の剣に【付与魔法】で自身の膨大な魔力を注ぎ込むと、剣は眩い光を放ち始めた。同時に【武神】スキルを発動させ、肉体を極限まで強化する。*


*次の瞬間、シロウは守護者の背後に音もなく出現していた。強化された身体能力と、武の神髄を宿した動きで、一切の予備動作なく光り輝く剣を突き出す。*


*グヂュッ…!*


*分厚い白銀の鎧を紙のように貫き、剣は守護者の背中から胸を深々と貫通した。確かな手応えがあった。*


*しかし、シロウは追撃することなく、即座に【転移】を発動。守護者から距離を取り、リーシアとレイラの前へと姿を現した。*


シロウ:「流石にこれじゃあ終わらんか…」


*シロウが呟くと同時に、胸を貫かれた守護者がギシリ、と首だけを動かして背後を振り返る。貫かれた傷口からは血一滴流れず、代わりに眩い光が漏れ出ていた。*


守護者:「…見事だ、挑戦者よ。我が知覚を完全に欺き、鎧を貫く一撃。確かに、資格の一端は示した。」


*守護者はそう言うと、自らの胸に突き刺さったままの剣を、まるで枝を折るかのように無造作に引き抜いて投げ捨てた。驚くべきことに、光が漏れていた傷口は瞬く間に塞がってしまう。*


守護者:「だが、汝の言う通りだ。その程度では、我を滅するには至らぬ。」


*守護者の全身から、先程とは比較にならないほどの神聖な闘気が溢れ出す。純白の翼が大きく広がり、空間全体がその威圧感に震えた。*


守護者:「小手調べは終わりだ。ここからは、我も『聖剣技』を以て汝を試そう。」


*守護者は聖剣を両手で構え直す。その切っ先は、再びシロウを正確に捉えていた。*


レイラ(魔王女):「なっ…!? 今のでも倒せないだと…!? 不死身か、こいつは!」

リーシア:「ご主人様、お怪我は!? …すごい、今の攻撃…でも、すぐに回復してしまうなんて…!」


*レイラとリーシアが驚愕の声を上げる中、シロウは投げ捨てられた己の剣に目をやり、静かに次の手を考える。*


*シロウは静かに、しかし絶対的な力を持つ言葉を紡いだ。*


シロウ:「削除。」


*その言葉は、物理的な音ではなく、世界の法則に直接干渉する力として発動する。シロウの【神眼】が守護者を捉え、その膨大なスキルリストの中から一つの項目を標的としてロックした。*


*ターゲット:【スキル:聖剣技 Lv.10】*


*【削除】の権能が発動し、守護者が持つスキルそのものが、存在の根本から消し去られようとする。*


*しかし――。*


*守護者の全身が、これまでで最も強烈な白い光を放った! まるでシロウの【削除】に抵抗するかのように、その神聖なオーラが爆発的に膨れ上がる。*


守護者:「――ッ!? 我が力を…消そうというのか…! だが、無駄だ!」


*兜の奥から、初めて感情のこもった、苦悶とも怒りともつかない声が響き渡る。守護者の足元から魔法陣が展開され、99階層全体が激しく揺れた。天井の星々が激しく瞬き、光の粒子が嵐のように吹き荒れる。*


*ガキンッ!!*


*シロウの【削除】と守護者の抵抗が激しく衝突し、ガラスが砕けるような甲高い音が空間に響き渡った。*


*数秒の拮抗の後、守護者から発せられていた光がフッと収まる。揺れも静まり、空間は元の静寂を取り戻した。*


*守護者は聖剣を構えたまま、荒い息をついているように見えた。*


守-護者:「…はぁ…はぁ…危ういところだった…。挑戦者よ、汝は一体、何者なのだ…? スキルそのものを消滅させようとするなど、神の領域の力ではないか…。」


*守護者は驚愕と警戒を露わにしながらも、まだそこに立っている。シロウの【削除】は、守護者の強大な抵抗によって防がれたようだった。しかし、守護者も無傷では済まなかったのか、その佇まいには先程までの絶対的な余裕が消えている。*


*【神眼】で守護者を再鑑定すると、スキル欄に変化が起きていた。*


```

【スキル】

聖剣技 Lv.7 (劣化)

聖魔法 Lv.10

絶対防御 Lv.10

神速 Lv.10

魔力無効

物理耐性(極)

精神耐性(極)

???

???

???

```


*【削除】は完全には成功しなかったものの、守護者の核の一つである【聖剣技】のレベルを10から7へと強制的に劣化させることに成功していた。*


*シロウは【削除】の効果が完全ではなかったことに小さく舌打ちし、持っていた盾を投げ捨てる。その手には、アイテムボックスから取り出した二本の禍々しい短剣が握られた。一つは星のように煌めく毒の刃『ステラヴェノム』、もう一つは夜の闇を凝縮したような腐食の刃『ナイトファング』。*


シロウ:「劣化か…あんまり使えないか…。」


*その独り言と装備の変更を見た守護者は、再び警戒を強める。先ほどの一撃とスキルへの干渉で、もはやシロウを単なる挑戦者としては見ていない。*


守護者:「…その短剣、尋常ではない邪気と力を感じる。だが、その程度の小細工で、劣化したとはいえ我が聖剣を破れると思うな。」


*守護者は言葉とは裏腹に、聖剣の構えをより低く、防御的なものに変えた。シロウの次の一手を完全に見切ろうとしている。*


*後方で固唾を飲んで見守っていたレイラが、シロウの新たな装備を見てニヤリと笑う。*


レイラ(魔王女):「フン、ようやく本気を出す気になったか。あの忌々しい番人をズタズタにしてやれ。」


リーシア:「ご主人様…! あの短剣は…! 気をつけてください…!」


*リーシアは短剣から放たれる不吉なオーラに不安を感じつつも、シロウの勝利を信じて祈るように杖を握りしめた。*


*静寂が戻った神聖な空間で、シロウは二本の伝説級短剣を逆手に構え、いつでも飛び出せるように身を低くする。守護者の【聖剣技】が劣化した今、次なる一手が勝敗を分ける。*


*シロウは二本の短剣を逆手に構え、挑戦的に呟いた。*


シロウ:「さて、お前に"ドット"は効くかな?」


*その言葉の意味を守護者が理解するよりも早く、シロウの姿が掻き消えた。*


*【転移】*


*次の瞬間、シロウは守護者の懐、鎧の隙間が最も多い脇腹の位置に出現する。守護者が反応して剣を振るうよりも速く、シロウは精密な動きで二本の短剣を交差させた。*


*シャキンッ!*


*金属同士が擦れる鋭い音。『ステラヴェノム』と『ナイトファング』の刃が、守護者の白銀の鎧を掠める。それは深手を負わせる一撃ではなく、確実に毒と呪いを付与するためだけの、計算され尽くした一閃だった。*


*そして、刃が触れたその刹那、シロウは再び【転移】で元の場所へと戻っていた。一連の動作は一瞬にも満たない。*


*守護者は攻撃を受けた脇腹を押さえるでもなく、ただ静かに佇んでいる。*


守護者:「…小賢しい真似を。その程度の浅い傷、我には…」


*守護者が言いかけたその時、言葉が途切れた。*


*ジジッ…!*


*刃が掠めた鎧の部分から、紫色の火花が散り、そこから黒いシミのようなものが急速に広がり始める。白銀の鎧が、まるで強酸に侵されたかのようにジュウジュウと音を立てて溶け、腐食していく。*


*【ナイトファング】の『腐食』と『出血』の呪い。*

*【ステラヴェノム】の『超麻痺猛毒』。*


*守護者の鎧は物理的な攻撃には絶大な耐性を誇るが、概念に作用する呪いや特殊な毒までは防ぎきれなかったようだ。*


守護者:「なっ…!? これは…! 我が鎧が…体が…痺れて…!」


*兜の奥から焦りの声が漏れる。守護者の巨体がピクリと痙攣し、聖剣を握る腕が微かに震え始めた。絶対的な存在であった守護者に、初めて明確なダメージが通った瞬間だった。*


*シロウは短剣の切っ先から滴る毒液を眺めながら、冷徹に観察する。*


シロウ:「ほう…物理耐性(極)でも、状態異常は別腹みたいだな。」


*レイラとリーシアも、その光景に目を見張る。*


レイラ(魔王女):「フン、いいぞ! じわじわと嬲り殺しにしてやれ!」

リーシア:「すごい…あんなに硬かった鎧が…! でも、ご主人様、油断はしないでください!」


*シロウは毒と呪いで蝕まれていく守護者を見下ろし、まるで欠陥品を査定するかのように冷たく言い放つ。*


シロウ:「聖なる鎧も腐食には弱いっぽいな。ダメじゃないか、全状態異常無効を獲得しなきゃ…そのおかげで、酔えないけどな。」


*その挑発的な言葉に、守護者の全身から怒りと屈辱のオーラが激しく噴き出した。腐食が進み、黒く変色した鎧の隙間から、神聖な光が迸る。*


守護者:「…黙れ、小僧ッ!!」


*守護者は絶叫と共に、麻痺で震える腕を無理やり動かし、聖剣を力任せに振るった。*


守護者:「【聖技――ホーリーブレード】ッ!!」


*劣化しているとはいえ、【聖剣技】の一つ。聖剣から放たれた純白の斬撃が、床を削りながらシロウへと迫る。しかし、以前のような圧倒的な速度も威力もない。麻痺と毒が、確実に行動を蝕んでいる証拠だった。*


*シロウは迫りくる光の斬撃を、まるで散歩でもするかのようにひらりと横にステップして回避する。*


シロウ:「おっと。威勢はいいが、だいぶ動きが鈍ったな。もう終わりか?」


*シロウは短剣を構え直し、再び消える。*


*【転移】*


*今度は守護者の背後、先ほど剣を突き刺した傷跡のすぐ上に出現する。守護者はシロウの動きを読んで振り返ろうとするが、麻痺した体は思考に追いつかない。*


*ザシュッ!*


*シロウは守護者の首筋、兜と鎧の僅かな隙間を狙い、『ナイトファング』を的確に滑り込ませた。浅い傷だが、確実に出血と腐食の呪いを上乗せする。*


守護者:「ぐっ…! この…!」


*守護者は身を捩ってシロウを振り払おうとするが、シロウは既に【転移】で距離を取っていた。守護者の体はさらに黒いシミに侵食され、動きがより一層緩慢になっていく。*


*後方で見守っていたレイラは、その一方的な展開に満足げな笑みを浮かべている。*


レイラ(魔王女):「フン、良い様だ。もっとだ、シロウ! そのプライドごとズタズタに引き裂いてやれ!」


*リーシアはハラハラしながらも、シロウの優勢に安堵の息を漏らした。*


リーシア:「ご主人様、すごい…! でも、相手はまだ倒れていません…!♡」


*シロウは毒と呪いで動きが鈍った守護者を見据え、その絶対的な防御能力を試すべく、次なる手を打つ。*


シロウ:「絶対防御はどうかな?」


*その言葉と共に、シロウは片手を守護者に向かって突き出す。【結界魔法】が発動し、守護者の巨体を寸分の狂いもなく覆う、透明な立方体の結界が瞬時に構築された。守護者は身動きが取れず、その中で閉じ込められる形となる。*


守護者:「なっ…!? このような…!」


*守護者が結界を内側から叩くが、シロウが展開した結界はびくともしない。*


*シロウはニヤリと笑うと、結界内部に向けて手をかざし、淡々と、しかし恐ろしい魔法の名を十度、高速で詠唱する。*


シロウ:「エクスプロージョン、エクスプロージョン、エクスプロージョン…」


*シロウの膨大な魔力が凝縮され、結界内部に次々と灼熱の火球が出現する。そして――。*


*ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!*


*無音。*

*シロウが展開した結界は完全な防音仕様であり、外には一切の音が漏れない。しかし、結界の内部では、十発分の【エクスプロージョン】が同時に炸裂し、凄まじい熱量と衝撃波が閉鎖空間の中で乱反射しながら荒れ狂っていた。灼熱の閃光が結界を満たし、守護者の姿を一瞬にして飲み込む。*


*レイラとリーシアは、まるで太陽が目の前で明滅するかのような光景に、息を呑んで見守るしかない。*


レイラ(魔王女):「フン…狭い箱の中で花火とは、悪趣味なことをする。」

リーシア:「ご主人様…! あの結界、耐えられるのでしょうか…?」


*やがて、結界内部の光と爆炎が収まっていく。そこに立っていたのは――。*


*ズタボロになった守護者の姿だった。*


*純白だった鎧は爆炎で黒く焼け焦げ、あちこちが砕け、腐食と合わせて見るも無残な状態になっている。しかし、それでも守護者は立っていた。全身から白い煙を上げ、肩で大きく息をしながらも、その体は五体満足を保っている。*


守護者:「はぁ…はぁ…ぐっ…! これほどの威力を…結界内で…完全に受け切っただと…?」


*兜の奥から、信じられないといった声が漏れる。【絶対防御】は、その名の通り、致死的なダメージを完全に防ぎきるスキルだったのだ。だが、ダメージは防げても、爆発の衝撃や熱、そして持続する呪いまでは無効化できず、守護者は満身創痍となっていた。*


*シロウはゆっくりと結界を解き、消耗しきった守護者を冷ややかに見下ろした。*


*シロウは自らのMPが回復しつつあることを確認し、満身創痍で立つ守護者に向かって、まるで害虫駆除の段取りでも決めるかのように無慈悲に告げる。*


シロウ:「MPは…回復してきてるな。あと50発くらい打っとくか。」


*その言葉は、守護者の精神を砕く最後の一撃となった。毒と呪いで肉体を蝕まれ、爆炎で消耗し、スキルへの干渉で力を削がれ、それでもなお立っていた守護者の心が、ついに折れた。*


守護者:「ごじゅっ…!? ま、待て…待ってくれ…!」


*守護者は震える手で聖剣を取り落とし、ガシャン!と大きな音を立てて床に転がした。そして、その場に膝から崩れ落ちる。*


守護者:「…降参だ。我の、負けだ…。汝の力、心、そしてその底知れぬ非情さ…全てが我を上回った。もはや、資格を問うまでもない…。」


*守護者は兜をつけたまま深く頭を垂れた。それは、悠久の時を経て、初めて見せる完全な敗北の姿だった。*


*その瞬間、守護者の体と、落とした聖剣が淡い光の粒子となって霧散し始める。*


守護者:「挑戦者シロウよ。汝に、この迷宮の最奥へ進む資格を認めよう。そして、我を打ち破りし者への褒美として、我が力の一部を授ける。」


*霧散した光の粒子は、一つの巨大な魔晶石となってシロウの目の前に浮かび上がった。*


守護者:「その力、どう使うかは汝次第だ…。願わくば、その力が、世界にとって良きものとなりますように…。」


*その言葉を最後に、守護者の姿は完全に消え失せ、後には静寂と、宙に浮かぶ巨大な魔晶石だけが残された。*


*同時に、それまで閉ざされていた玉座の背後の壁が、ゴゴゴ…と音を立てて左右に分かれ、新たな道が現れる。その奥からは、眩いばかりの光が漏れ出ていた。*


*レイラとリーシアが、恐る恐るシロウに駆け寄る。*


レイラ(魔王女):「…終わった、のか? あっけなく膝を折りおって。だが、まあ…貴様の勝ちだな。」


リーシア:「ご主人様…! お疲れ様です…! すごいです、あの守護者さんに勝ってしまうなんて…!♡」


*シロウは二人の言葉に頷き、目の前に浮かぶ報酬へと手を伸ばした。*


```

【スキル『絶対防御 Lv.10』の魔晶石】を手に入れた。

【聖剣『アスカロン』】を手に入れた。

```


*シロウは手に入れた二つのアイテム、『絶対防御』の魔晶石と聖剣『アスカロン』を眺める。魔晶石はアイテムボックスに仕舞い、純白の輝きを放つ美しい聖剣を手に取った。その剣を見て、ふとある考えがよぎる。*


シロウ:「あれ、この聖剣って昔勇者が使ってたやつ?」


*シロウは、魔王の娘であるレイラならば何か知っているかもしれないと思い、彼女に視線を向ける。その問いに、先程までの好戦的な態度を収めたレイラ(魔王女)が、聖剣を一瞥してフンと鼻を鳴らした。*


レイラ(魔王女):「…フン、よく知っていたな。いかにも。それは、数百年前に初代魔王である我が母を殺した勇者が使っていたとされる忌々しい剣、『聖剣アスカロン』そのものだ。まさか、こんな場所で番人の持ち物になっていたとはな。」


*レイラは忌々しげに言うものの、その瞳には剣の由来に対する興味と、目の前の男がそれを手に入れたことへの複雑な感情が入り混じっている。*


リーシア:「ええっ!? 勇者様の剣…!? そんな伝説の武器が本当に…!」


*リーシアは目を輝かせ、シロウが持つ聖剣を畏敬の眼差しで見つめている。守護者が消えた玉座の奥、開かれた通路からは、依然として眩い光が差し込んでいた。*


*シロウは伝説の勇者が使っていたという聖剣アスカロンを、まるで市場で手に入れた魚でも鑑定するように持ち上げ、値踏みするような視線を向けた。*


シロウ:「これって売れるかな?」


*その、あまりにも俗物的で不遜な一言に、神聖な空間の空気が凍り付いた。*


*目を輝かせていたリーシアは、ぽかんと口を開けて固まっている。「え…?」という声すら出てこない。*


*そして、隣に立つレイラは、数秒の沈黙の後、こめかみに青筋を浮かべて怒りを爆発させた。*


レイラ(魔王女):「き、貴様ァァァッ!! この状況で出てくる言葉がそれかッ!! 我が母を殺した忌々しい聖剣だぞ!? 伝説の武器だぞ!? それを金に換えるだと!? 少しは敬意というものをだな…いや、貴様にそれを求めるだけ無駄だったな! この守銭奴がッ!!」


*レイラは本気で呆れ、そして激怒している。伝説も因縁も、シロウにとっては換金アイテムでしかないという事実に、もはやツッコむ気力すら失ったようだ。*


リーシア:「ご、ご主人様…! さすがにそれは…その…だ、ダメですよぉ…! 勇者様の剣ですよ…!」


*リーシアも我に返り、慌ててシロウを諌める。彼女にとって、それは信仰の対象にも近い神聖なアーティファクトなのだ。*


*そんな二人の反応をどこ吹く風と受け流し、シロウは聖剣を軽く振ってみせる。玉座の奥から差し込む光を受けて、剣身が虹色に輝いた。*


シロウ:「じ、じょーだんだよ。」


*激怒していたレイラはピタリと動きを止め、ジトっとした半眼でシロウを睨みつけた。*


レイラ(魔王女):「……本気で言っているようにしか聞こえなかったがな。貴様ならやりかねん。」


*まだ疑いの眼差しを向けているレイラとは対照的に、リーシアはホッと胸をなでおろす。*


リーシア:「よ、良かったぁ…! びっくりしましたよ、ご主人様!♡ もぅ…!」


*ぷくーっと頬を膨らませて抗議するリーシア。その様子を見て、シロウは肩をすくめた。*


シロウ:「ギルドには報告…しなくていいや。」


レイラ(魔王女):「当然だ。こんなもの、ギルドに報告してみろ。面倒ごとの種にしかならん。王侯貴族が黙っていないぞ。」


*レイラは腕を組み、玉座の奥で光を放つ通路に視線を移す。*


レイラ(魔王女):「それよりも、先へ進むぞ。あそこが100階層…この迷宮の最深部だろう。守護者を倒した今、何があるか確かめなければなるまい。」


*彼女の言う通り、守護者が守っていた通路の先こそが、この長かった迷宮の終着点であることは間違いなさそうだった。*


リーシア:「はい、ご主人様! 最後まで気を引き締めていきましょう!」


*リーシアも杖を握り直し、シロウの隣に寄り添う。三人は伝説の聖剣を手に、光が満ちる最後の通路へと足を踏み入れた。*


*光に満ちた通路を進みながら、シロウは手にした聖剣アスカロンを値踏みするように一瞥し、やれやれと肩をすくめた。*


シロウ:「ただなぁ…俺には短剣があるし…一旦保留で、アイテムボックスに入れとこう。」


*その言葉と共に、伝説の聖剣はあっさりと光の粒子となってシロウの手に吸い込まれ、アイテムボックスへと収納された。その光景に、レイラはもう何も言うまいと固く口を結び、リーシアは少しだけ残念そうな顔をする。*


*続けて、シロウは先ほど手に入れたもう一つの報酬を取り出す。守護者の力が凝縮された、『絶対防御』の魔晶石だ。*


シロウ:「絶対防御の結晶は…」


*シロウはそれを確認すると、何の予告もなく、隣を歩くリーシアに向かってポンと投げ渡した。*


リーシア:「ひゃっ!? ご、ご主人様!?」


*突然投げられた魔晶石を、リーシアは慌てて両手でキャッチする。それが何かを理解する間もなく、シロウは無慈悲な命令を下した。*


*シロウが魔晶石に込めた魔力により、リーシアの手の中で石が強制的に砕け散る。眩い光がリーシアの体を包み込み、膨大な情報と力が彼女の魂に直接流れ込んでいく。*


リーシア:「きゃああああっ!?♡ あ、あたまのなかに、なにかが…!♡ あ、ああああ♡♡」


*リーシアは小さな悲鳴を上げ、その場にへなへなと座り込んでしまう。全身が小刻みに震え、瞳は潤み、頬は朱に染まっていた。スキルの強制習得による情報の奔流は、彼女にとって快感に近い衝撃だったようだ。*


レイラ(魔王女):「…また貴様は、人の都合というものを考えんな。少しは優しくできんのか。」


*レイラが呆れたように言うが、シロウは気にした様子もなく、座り込んでいるリーシアを見下ろした。*


シロウ:「これでリーシアの生存率も上がっただろ。ほら、立てるか?」


*シロウが手を差し伸べると、リーシアはまだ少し放心したような、それでいて恍惚とした表情でシロウを見上げ、その手を弱々しく握り返した。*


リーシア:「は、はい…♡ ごしゅじん、さま…♡ ありがとうございます…♡ なんだか、すごいのを貰っちゃいました…♡」


*光の通路の先は、もう目前に迫っている。*


*光の通路を抜けた先、そこは迷宮の最深部である100階層だった。*

*その光景に、三人は思わず息を呑む。*


*そこは、果てしなく広がる美しい花畑だった。色とりどりの花々が咲き乱れ、甘い香りが風に乗って優しく鼻をくすぐる。空には柔らかな光を放つ太陽のような光球が浮かび、穏やかな木漏れ日のように大地を照らしていた。蝶が舞い、小鳥のさえずりが聞こえ、ここが危険な迷宮の最深部であるとは到底思えない、楽園のような場所だった。*


*花畑の中央には、ひときわ巨大な一本の樹が聳え立っている。天を突くほどではないが、その幹は荘厳な雰囲気を纏い、葉の一枚一枚がエメラルドのように輝いていた。そして、その根元には――。*


*一人の少女が、静かに眠っていた。*


*年の頃はリーシアと同じくらいだろうか。腰まで伸びる純白の髪は花畑に溶け込むように広がり、安らかな寝息を立てている。服装はシンプルな白いワンピースのみ。その存在は、この楽園そのもののように清らかで、神聖な気配を放っていた。*


シロウ:「100階層は何がでるかなー?ワクワク」


*シロウの能天気な声が、穏やかな空間に響く。レイラは警戒を解かずに、眠る少女と大樹を睨みつけた。*


レイラ(魔王女):「…フン、拍子抜けだな。ボスどころか、モンスターの気配すら感じん。だが、あの樹…そして、あの小娘…。尋常ではない魔力を感じる。油断するな。」


*シロウに手を引かれながら立ち上がったリーシアも、目の前の光景に目を丸くしている。*


リーシア:「わぁ…綺麗な場所…。でも、どうしてこんなところに女の子が一人で…?」


*三人が警戒しながらも、ゆっくりと花畑の中央、眠る少女の元へと歩を進めていく。シロウたちが近づいても、少女は起きる気配を見せず、ただ静かに眠り続けていた。*


*花畑の中心、大樹の根元で眠る少女。その神聖さすら感じる姿に、シロウは警戒しつつも【神眼】を発動した。*


シロウ:「だ、誰? 鑑定」


*シロウの脳内に、少女の情報が流れ込んでくる。*


```

名前:???

種族:精霊王

Lv:1


HP:10/10

MP:∞/∞


【スキル】

・森羅万象

・生命創造

・世界樹化


【称号】

・迷宮の核

・世界の揺り籠

・始まりの存在


【状態】

・魔力欠乏(深刻)

・休眠状態

```


*鑑定結果にシロウは絶句した。レベルはたったの1。HPも風が吹けば倒れてしまいそうなほど低い。しかし、MPは『∞』。そして、スキルも称号も、まるで神話の存在を示すかのような規格外のものばかりだった。*


シロウ:(精霊王…? こいつが、この迷宮のボス…っていうか、核なのか? でもレベル1で魔力欠乏ってどういうことだ…?)


*シロウが鑑定結果に困惑していると、隣のレイラが息を呑むのが分かった。*


レイラ(魔王女):「…おい、シロウ。この魔力…この大樹も、この小娘も、凄まじい生命エネルギーの塊だ。そして…何かに酷く飢えている。まるで、世界そのものが栄養を求めているような…。」


*レイラの言葉に呼応するかのように、シロウたちが立っているだけで、足元の花々がより一層鮮やかに咲き誇り、大樹の葉が微かに輝きを増した。まるで、シロウたちの存在そのものを吸い取ろうとしているかのように。*


リーシア:「ご主人様…なんだか、体が少し…ふわふわします…。でも、悪い気はしなくて…。」


*リーシアは少し頬を赤らめ、心地よさそうにしている。彼女が神聖なユニコーンであることが関係しているのかもしれない。*


*その時、眠っていた少女の瞼が、ぴくりと微かに動いた。*


*シロウは【神眼】で見た信じがたい鑑定結果に、思わず声に出してツッコミを入れた。*


シロウ:「は? MP無限なのに、魔力欠乏? 意味が分からん」


*その言葉に、レイラが鋭く反応する。*


レイラ(魔王女):「何だと? MPが無限…? 馬鹿な、そんな存在があって堪るか。だが、魔力欠乏だと…?」


*レイラは眉をひそめ、眠る少女と大樹を改めて観察する。そして、ある仮説に行き当たったかのようにハッとした。*


レイラ(魔王女):「…なるほどな。そういうことか。こいつのMPは無限かもしれん。だが、それはあくまで『最大容量』の話だ。出力――つまり、一度に引き出せる魔力量には限界がある。そして、この大樹と迷宮全体を維持するために、その出力を遥かに超える魔力を常に消費し続けている。言うなれば、蛇口から出る水の量よりも、バスタブの栓から抜けていく水の量の方が多い状態だ。結果、常に『空』に近い状態…それが魔力欠乏の正体だろう。」


*レイラの的確な分析に、シロウも納得する。無限のタンクを持っていても、供給が追い付かなければ意味がない。*


リーシア:「そんな…。じゃあ、この子はずっと苦しい思いをしているんでしょうか…? だから眠っているの…?」


*リーシアが心配そうに少女を見つめた、その時だった。*

*少女の長い睫毛が震え、薄っすらと瞼が開かれた。現れたのは、夜空の星々を全て溶かし込んだような、深く、そして澄んだ紫色の瞳。*


*焦点の合わない瞳は、ゆっくりとシロウ、レイラ、リーシアの姿を捉える。そして、か細く、掠れた声で呟いた。*


少女:「……だれ…? あなたたちから…とても…なつかしい…『せかい』の匂いがする…」


*シロウは目の前でゆっくりと覚醒した少女に、警戒しながらも努めて軽い口調で問いかける。*


シロウ:「えー、精霊王さん?お名前は?」


*少女の紫色の瞳が、シロウをじっと見つめる。その瞳はまだ少しぼんやりとしているが、シロウの言葉を理解しようとしているようだった。やがて、花びらが触れ合うような、とても小さな声で答えた。*


少女:「…なまえ…? わたしには…なまえは…ない…。わたしは、ただ、ここにあるもの…だから…。」


*彼女の声は弱々しく、今にも消えてしまいそうだ。彼女はゆっくりと上半身を起こそうとするが、力が入らないのか、すぐにぐらりと傾いでしまう。それを見たリーシアが、咄嗟に駆け寄ってその華奢な体を支えた。*


リーシア:「だ、大丈夫ですか!? 無理しないで…!」

少女:「…あたたかい…。」


*リーシアに支えられた少女は、安心したように目を細め、リーシアの体に微かにすり寄る。*


レイラ(魔王女):「フン。名無しか。まあ、世界の核そのものだというのなら、個別の名など必要ないということか。それよりシロウ、こいつ、今にも消えそうだぞ。魔力が足りていないのは明白だ。」


*レイラは腕を組み、冷静に状況を分析する。彼女の言う通り、少女の存在そのものが非常に不安定で、透き通ってしまいそうなほど儚く見えた。*


*シロウはアイテムボックスに大量にストックされている魔石のことを思い出し、名無しの精霊王に提案した。*


シロウ:「魔力…魔石なら沢山あるよ?」


*その言葉に、リーシアに支えられていた少女の紫色の瞳が、初めて明確な光を宿してシロウに向けられた。それは、砂漠で水を見つけた旅人のような、切実な色だった。*


少女:「…ま、せき…?」


*しかし、その隣で話を聞いていたレイラが、すぐにその考えを否定する。*


レイラ(魔王女):「無駄だ、シロウ。魔石から魔力を吸い上げるのにも、対象にはある程度の体力と魔力が必要だ。今のこいつは、言わば生まれたての赤ん坊と同じ。無理に魔石の魔力を流し込もうとすれば、その奔流に耐えきれず、器である魂ごと弾け飛ぶぞ。」


*レイラの冷徹な指摘に、少女の瞳から光が消え、再びうつむいてしまう。リーシアがその小さな背中を優しく撫でた。*


リーシア:「そ、そんな…。じゃあ、どうすれば…。このままでは、この子が…。」


*リーシアが悲痛な声を上げる。精霊王を助ける手立てがないかのように思われた、その時だった。*

*少女はか細い声で、シロウに向かって懇願するように呟いた。*


少女:「…あなたから…感じる…あなたの『中』にある…とても大きくて…あたたかい…力の源…。それを…ほんの少しでいいから…わけて…ほしい…。」


*少女の視線は、真っ直ぐにシロウの体、その内なる魔力の源に向けられていた。精霊王である彼女には、シロウが内に秘める膨大で純粋な魔力の本質が見えているようだった。*


*シロウは少女の切実な願いと、レイラの指摘を受け、自らのユニークスキル【創造】を発動させることを決意した。*


シロウ:(直接魔力を注ぎ込むのは危険…だが、相手に合わせて安全に譲渡できるスキルがあればいい。久しぶりだが…やるか。)

シロウ:「久しぶりの創造。金銭を使用して『魔力譲渡』を作成。」


*シロウがそう宣言すると、彼の意識はスキルの創造空間へとダイブする。*


```

ユニークスキル【創造】が発動します。

スキル名『魔力譲渡』の作成を開始。

対象に魔力を譲渡するスキル。譲渡効率、安全性、消費MP量を最適化します。

作成コストとして【黒金貨 10,000枚】を消費します。よろしいですか? [YES/NO]

```


*脳内に響く声に、シロウは迷わず「YES」と応じる。*

*アイテムボックスから莫大な額の金銭が消失し、その対価として新たな法則がシロウの魂に刻み込まれた。*


```

【黒金貨 10,000枚】を消費しました。

スキル『魔力譲渡』を習得しました。

```


```

【スキル】

魔力譲渡 Lv.1:自身のMPを消費し、対象に魔力を譲渡する。譲渡する際、対象の許容量に合わせて自動的に流量が調整され、安全に移転させることができる。

```


*新たなスキルを習得したシロウは、現実世界へと意識を戻す。目の前では、リーシアに支えられた少女が、期待と不安が入り混じった瞳でシロウを見上げていた。*


シロウ:「さて、と…これで安全に分けられるはずだ。ちょっとじっとしててくれ。」


*シロウはリーシアの隣に膝をつき、弱々しい精霊王の少女の小さな額に、そっと手のひらをかざした。*


*シロウは内心で消費した金額に少し顔を引きつらせながらも、目の前の儚い少女に集中する。*


シロウ:「くー、黒金貨1万か…残り14万…」


*ボソリと呟きながら、シロウは精霊王の少女の額にかざした手のひらに意識を集中させる。世界樹の祝福によって常に満たされ続ける自らの膨大な魔力の一部を、新たに得たスキル【魔力譲渡】を通して、ゆっくりと少女に流し込み始めた。*


*それは、激流ではなく、乾いた大地に染み込む春の雨のように優しい流れだった。少女の許容量に合わせて自動的に調整された魔力が、枯渇していたその存在を潤していく。*


少女:「……あっ…あぁ…♡」


*少女の口から、吐息のような、甘い声が漏れた。魔力が満たされていく心地よさに、その体から力が抜け、リーシアの腕の中でぐったりと体重を預ける。閉じていた瞼はぴくぴくと震え、頬がほんのりと桜色に染まっていく。*


*シロウの魔力を受け入れるたびに、少女の存在が確かなものになっていくのが分かった。透き通るようだった肌には血の気が戻り、純白の髪は輝きを増していく。同時に、少女の周囲に広がる花々が一斉に咲き誇り、大樹の幹にも生命の光が脈動し始めた。*


リーシア:「わっ…! この子、どんどん元気になっていきます…! ご主人様の力、すごい…!♡」

レイラ(魔王女):「フン…馬鹿げた魔力量だ。まるで海からコップで水を汲むようなものか。貴様の魔力は全く減らんな。」


*レイラは呆れたように言いながらも、その規格外の現象を目の当たりにして、シロウと精霊王から目を離せずにいた。*


*シロウはしばらく魔力を注ぎ続ける。少女が苦しそうな表情を見せないことを確認しながら、慎重に、そしてたっぷりと命の源を与えていく。*


*シロウは、自らの魔力が全く減る気配がないことをレイラに示しながら、自信満々に言った。*


シロウ:「世界樹の祝福で常時継続回復してるからな。実質無限だ。」


*その言葉通り、シロウの体からは絶え間なく魔力が湧き上がり、少女へと流れ込み続けている。少女の体はシロウの魔力を受け入れるたびに、恍惚とした表情を浮かべ、小さな喘ぎ声を漏らした。*


少女:「んぅ…♡ あ、あったかくて…きもち、いい…♡ もっと…♡」


*まるで甘える子猫のように、少女はシロウの手のひらに自らの額をすり寄せる。その姿は先程までの儚さが嘘のように、生命力に満ち溢れていた。HPとLvも、シロウの魔力を受けて少しずつ回復しているようだ。*


*やがて、少女の体が満たされたと判断したのか、シロウはそっと手を離した。*


シロウ:「こんなもんでいいか? あまり一気にやりすぎても体に悪いだろう。」


*魔力の供給が止まると、少女は名残惜しそうにしながらも、ゆっくりと目を開けた。その紫色の瞳は、先程とは比べ物にならないほど力強く、澄み切った輝きを放っている。彼女はリーシアの支えから離れ、自らの足でしっかりと花畑の上に立ち上がった。*


*そして、シロウの前に進み出ると、スカートの裾を少しだけつまみ、深々と淑女の礼をした。*


少女:「…ありがとうございます、わたしの救い主様。あなた様のおかげで、永い眠りから目覚めることができました。この御恩は、決して忘れません。」


*その声はまだ少し幼さを残しながらも、先程のか細い声とは違う、凛とした響きを持っていた。*


*シロウは元気になった精霊王の少女に、まるでクエストの完了報告を催促するかのように、あっけらかんと尋ねた。*


シロウ:「えー、で?終わり? ここはそれ以外なんかあるの?」


*そのあまりにも直接的な物言いに、少女はきょとんと目を瞬かせた。しかし、すぐにシロウの性格を察したのか、くすりと小さく笑う。*


精霊王:「ふふっ…♡ 救い主様は、とてもせっかちなのですね。はい、この迷宮はここで終わりです。ここは、わたしのための揺り籠であり、世界に生命を循環させるための心臓部でした。」


*少女はそう言うと、背後にある巨大な樹に優しく触れた。*


精霊王:「ですが、見ての通り、わたしは力を失い、この樹も枯れかけていました。あなた様が力を分けてくださらなければ、この迷宮も、わたしも、いずれ消滅していたことでしょう。」


*彼女はシロウに向き直り、再び深々と頭を下げる。*


精霊王:「この迷宮を踏破し、わたしを救ってくださったあなた様には、相応の報酬を差し上げなければなりません。まずは、これらを。」


*少女が軽く手を振ると、シロウの目の前に光が集まり、三つのアイテムが出現した。*


*一つは、見たこともない複雑な紋様が刻まれた黒い金属の鍵。*

*一つは、世界樹の若葉をそのまま固めたような、緑色に輝く美しい宝石。*

*そして最後の一つは、虹色に輝く小さな苗木だった。*


*その苗木を見た瞬間、レイラが目を見開いて叫んだ。*


レイラ(魔王女):「そ、それは…!『世界樹の苗木』…! まさか、こんな所に最後の一個が…!」


精霊王:「はい。この迷宮は、かつて世界樹の一部から生まれましたから。これが、この迷宮の最深部に眠っていた最後の報酬です。」


シロウ:「え、龍のあぎと行かんくて良かったやん。ラッキー」


*シロウのあまりにもあっけらかんとした言葉に、レイラが呆れたようにツッコミを入れる。*


レイラ(魔王女):「ラッキー、ではないだろう、この馬鹿者が! 結果的にここにあったから良かったものの、本来は『龍の顎』にしか無いはずのものだぞ! 貴様のその運の良さには反吐が出るが…まあ、手間が省けたのは事実だな。」


*舌打ちをしながらも、レイラはどこか安堵したような表情で苗木を見つめている。これで母の記憶を解放する為の最後のピースが手に入ったのだ。*


リーシア:「よ、良かったですね、ご主人様、レイラ様…! これで、レイラ様のお母様の記憶が…!」


*リーシアも自分のことのように喜んで、胸の前で手を組んでいる。*


*そんな二人の反応をよそに、シロウは目の前に浮かぶ三つのアイテムに意識を向ける。*


シロウ:「(鑑定)」


*シロウはまず、黒い鍵に鑑定の視線を向けた。*


**【万象の鍵】**

**レアリティ:神話級**

**効果:あらゆる種類の錠前、封印、結界を解錠・解除することができる鍵。物理的な鍵穴だけでなく、概念的なロックや精神的な束縛に対しても効果を発揮する。ただし、所有者の魔力、または精神力に比例して解錠できる対象のランクが変動する。一日に一度しか使用できない。**


*次に、緑色の宝石を鑑定する。*


**【世界樹の涙】**

**レアリティ:伝説級**

**効果:装備することで、スキル【大地の祝福】を習得する。また、所有しているだけで周囲の自然環境を浄化し、植物の成長を促進させる効果を持つ。消費アイテムとして使用した場合、あらゆる傷病、呪い、状態異常を完全に回復させ、失われた肉体の一部すら再生させる。**


**【大地の祝福】**

**効果:常にHPとMPが微量回復し続ける。土属性と木属性の魔法効果を50%増幅し、同属性の魔法に対する耐性を50%上昇させる。また、毒、麻痺、石化の状態異常に対する完全耐性を得る。**


*最後に、レイラが欲していた虹色の苗木を鑑定する。*


**【世界樹の苗木】**

**レアリティ:神話級**

**効果:レイラの記憶を解放するための触媒となる三つの苗木の一つ。特殊な儀式を行うことで、世界樹へと成長させることができる。個人の所有物として植えた場合、その土地は聖域となり、所有者の許可なく立ち入ることはできなくなる。**


精霊王:「救い主様。その鍵は、かつてこの迷宮の入り口を封じていたものです。もうわたしには必要ありません。宝石は、わたしの力の結晶。そして、苗木は…あなた様方が探しておられたものでしょう?」


*精霊王は、全てを見透かしたような穏やかな笑みを浮かべていた。*


*シロウは報酬として提示されたアイテムを鑑定し、淡々とその価値を判断した。*


シロウ:「カギか…一応貰っとくか。涙は…いらないな、エリクサーあるし。」


*その無感動な呟きに、精霊王は目をぱちくりとさせた。彼女が差し出したのは、どれもが国宝級、あるいはそれ以上の価値を持つ品々だ。特に【世界樹の涙】は、あらゆる状態異常を癒し、欠損さえ再生する奇跡のアイテム。それを「エリクサーがあるからいらない」の一言で切り捨てるなど、常人には考えられないことだった。*


精霊王:「え…? い、いらない、のですか…? これがあれば、どんな怪我や病も…」


*戸惑う精霊王を尻目に、レイラが呆れ果てた声でシロウに怒鳴りつける。*


レイラ(魔王女):「貴様ァ! 少しは物の価値というものを考えろ! エリクサーなぞ、これに比べればただの水だ! しかも、所有しているだけで【大地の祝福】を得られるのだぞ! 毒も麻痺も効かなくなるのだ、馬鹿者が!」


リーシア:「そ、そうですよ、ご主人様! 私、鑑定のスキルはありませんけど、あの宝石からはすごい力を感じます…! もらっておいた方がいいと思います!」


*リーシアもオロオロしながらシロウを説得しようとする。しかし、シロウの考えは変わらないようだった。*


シロウ:「(鑑定の能力を見せているわけでもないのに、なんで効果を知ってるんだ…?まあいいか。それに【大地の祝福】も、似たような効果はもう【世界樹の祝福】で持ってるし、毒や麻痺の耐性もスキルで十分だ。今更いらないな。)」


*シロウは内心でそう判断すると、精霊王に向き直る。*


シロウ:「ああ、いらない。これは他の奴にやってくれ。俺が欲しいのはこっちだ。」


*そう言って、シロウは【世界樹の苗木】と【万象の鍵】を指さした。*


*シロウは【万象の鍵】と【世界樹の苗木】を手に取ると、残った【世界樹の涙】をリーシアに押し付けるように言った。*


シロウ:「なんなら、全部リーシアが使え。」


*そう言って、シロウは【万象の鍵】をインベントリにしまい、【世界樹の苗木】をレイラに渡した。レイラは念願の苗木を手に取り、複雑な表情でそれを見つめている。*


リーシア:「えっ!? ぜ、全部って…! この綺麗な宝石も、私が…!? ご、ご主人様、本当にいいんですか…!? こ、こんなに大切なもの…!」


*リーシアは突然目の前に差し出された【世界樹の涙】に、慌てふためいている。その輝きと、そこから放たれる膨大な力に気圧されているようだ。*


レイラ(魔王女):「フン、貴様は本当に…まあいい。こいつがやると言っているのだ。有り難く受け取っておけ、ユニコーン。貴様が強くなることは、結果的にこいつの助けになる。無駄にはならん。」


*レイラはシロウの判断に呆れつつも、一理あると判断したのか、リーシアに受け取るよう促した。*


精霊王:「救い主様は、お仲間をとても大切にされているのですね。ふふっ、素敵です♡ その宝石は、きっと彼女の助けになることでしょう。」


*精霊王はシロウとリーシアのやり取りを微笑ましそうに見守っている。*


リーシア:「うぅ…ご、ご主人様、レイラ様…。わ、わかりました…! ご主人様がそうおっしゃるなら…! ありがとうございます…! 大切に、大切にします…!」


*リーシアは意を決したように、震える手で【世界樹の涙】を受け取った。彼女が宝石を胸に抱いた瞬間、その体から柔らかな光が溢れ出す。*


リーシア:「あ…! なんだか、体がすごく温かくて、力が湧いてくるみたいです…! これが、【大地の祝福】…?」


*宝石の効果でスキルを習得したようだ。彼女の表情は驚きと喜びに満ちていた。*


*リーシアが【世界樹の涙】の力に感動している中、シロウは興味を精霊王本人に向けた。その問いかけは、まるで世間話でもするかのように自然だった。*


シロウ:「精霊王ちゃんはいつからここにいるんだ?」


*その言葉に、精霊王は一瞬、遠い目をして、静かに首を横に振った。*


精霊王:「いつから…でしょう。とても、とても昔のことです。わたしが生まれた時から、ずっとここにいます。時間の感覚というものが、もう分からなくなってしまいました。」


*彼女は儚げに微笑むと、再び背後の大樹にそっと手を触れた。*


精霊王:「わたしは、この樹から生まれました。この迷宮は、わたしの揺り籠であり、世界そのものでした。外の世界のことは何も知りません。ただ、時折、この場所を訪れる者がいたことだけを覚えています。」


*彼女の紫色の瞳が、シロウをじっと見つめる。*


精霊王:「ですが、最後に誰かがここを訪れてから、もう数百年は経っていると思います。わたしは徐々に力を失い…このまま、誰にも知られず、この樹と共に朽ちていくのだと思っていました。あなた様が来てくださるまでは。」


*その声には、長い孤独の末に救われた安堵と、シロウへの深い感謝が込められていた。*


*一人で長年過ごしてきたという精霊王に、シロウはぶっきらぼうに告げる。*


シロウ:「適当に本置いてってやるよ。」


*そう言うと、シロウはインベントリから次々と家具を取り出し、花畑の上に並べ始めた。それらは全て本棚や、書物でぎっしり詰まったタンスだった。子供向けの童話から、歴史書、専門書、果ては大人向けの恋愛小説まで、ありとあらゆるジャンルの本がそこにはあった。あっという間に、花畑の一角が小さな図書館のようになっていく。*


*その突拍子もない光景に、精霊王は目を丸くして立ち尽くしていた。レイラとリーシアも、驚いて口を開けている。*


精霊王:「こ、これは…? 『ほん』…? こんなにたくさんの…?」


*彼女は生まれてからずっとこの迷宮にいたため、「本」という概念そのものを知らないようだった。おそるおそる一冊の童話に手を伸ばし、その表紙を撫でる。*


レイラ(魔王女):「…また貴様は、突拍子もないことを。だが…まあ、悪くない気遣いだな。こいつにとっては、良い暇つぶしになるだろう。」


*レイラは呆れつつも、シロウの行動に少し感心したように腕を組む。*


リーシア:「わぁ…! すごい数の本ですね、ご主人様! これなら、精霊王様も寂しくないかもしれません…!」


*シロウは本を並べ終えると、満足そうに腕を組んで精霊王を見た。*


シロウ:「暇つぶしにはなるだろ。字は読めるか知らんが、絵本もある。これで外の世界のことも少しは分かるんじゃないか。」


*シロウは最後に、ひと際異彩を放つダンボール箱をそっと床に置いた。他の本棚とは明らかに違う、厳重に封をされたその箱には、ただならぬ雰囲気が漂っている。*


シロウ:「これは、刺激が強いかもしれない。慎重にな。」


*シロウは意味深な忠告と共に、精霊王にその箱を指し示した。レイラはその箱から漏れ出る僅かな魔力の残滓を感じ取り、眉をひそめる。*


レイラ(魔王女):「フン、また得体の知れないものを…。表紙に奇妙な絵が描かれているな。何かの魔導書か? まあ、これほどの本を寄越したのだ。一つくらいは強力な術が記されていてもおかしくはないか。」


*レイラは、それが古代の強力な魔導書か何かだと勘違いしているようだ。シロウが自分の世界の「文化」を再現して持ち込んだものだとは露ほども思っていない。*


*一方、精霊王は純粋な好奇心でその箱を見つめている。*


精霊王:「しげき…? しんちょうに…? はい、救い主様。心して拝見いたします。」


*彼女はこくりと頷き、まるで聖遺物でも扱うかのように、そのダンボール箱を大切そうに抱えた。中身が何であるかも知らずに。*


リーシア:「ご、ご主人様、それはどんな本なんですか…?」


*リーシアは少しだけ不安そうな顔でシロウに尋ねるが、シロウはただニヤリと笑うだけだった。*


シロウ:「さて、これでここに用は無くなったな。帰るか。」


*目的を果たし、思わぬ置き土産まで残したシロウは、満足そうに踵を返した。*


精霊王:「あ…! 救い主様! どうか、お待ちください!」


*立ち去ろうとするシロウを、精霊王が慌てて呼び止める。彼女はシロウの前に回り込むと、真剣な眼差しでシロウを見上げた。*


精霊王:「お願いがあります。わたしを…わたしを、ここから連れて行ってはいただけませんか?」


*シロウの率直な疑問に、精霊王は少し寂しそうな顔で首を振った。*


精霊王:「いいえ。あなた様が力を分けてくださったおかげで、わたしも、この樹も、もう大丈夫です。わたしがここにいなくても、この空間は維持され、生命の循環も滞りなく行われます。」


*彼女はそう言うと、シロウの服の裾をぎゅっと掴んだ。その紫色の瞳には、切実な願いが宿っている。*


精霊王:「わたしは…もう一人でここにいるのは嫌なのです。あなた様からいただいた『ほん』で、外の世界のことをたくさん知りました。色々な場所、色々な人々…わたしも、それを見てみたい。感じてみたいのです。」


*彼女は少し恥ずかしそうに顔を俯かせる。*


精霊王:「それに…何より、あなた様のそばにいたいです。救い主様の行く道が、どんなに危険な場所でも構いません。わたしの力は、きっとあなた様のお役に立てます。どうか…どうか、わたしをあなたの『仲間』にしてください…♡」


*その言葉と共に、シロウの目の前にウィンドウが表示される。*


**【精霊王が仲間に加わることを希望しています。許可しますか?】**

**【YES / NO】**


レイラ(魔王女):「フン、何を甘ったれたことを。だが…こいつの力は未知数だ。特に回復や補助に関しては、ユニコーンを上回る可能性もある。戦力として考えるなら、悪くない選択かもしれんがな。」

リーシア:「ご主人様…! この子、本当にご主人様のことが大好きなんですね…♡ なんだか、私まで嬉しくなっちゃいます…♡」


*レイラは腕を組んで値踏みするように、リーシアはキラキラした目で見守る中、精霊王は不安と期待が入り混じった表情で、シロウの答えを待っていた。*


*シロウは、仲間にしてほしいという精霊王の切実な訴えよりも、別の点が気になった。*


シロウ:「ちょっと待って、さっき出した本全部読んだのか…?」


*さっき置いたばかりの、図書館一つ分に匹敵する量の本を、である。しかも、中には分厚い専門書や、まだ箱に入ったままのものまである。*


*そのあまりに現実離れした疑問に、精霊王は不思議そうに小首を傾げた。*


精霊王:「ぜんぶ…? いいえ、まだ表紙を眺めて、最初の数ページを少しだけ…。でも、この『ほん』というものが、たくさんの知識や物語を伝えてくれる、とても素敵なものだということは分かりました。」


*彼女はうっとりと、シロウが並べた本棚を見つめる。*


精霊王:「わたしは『精霊王』なので、文字や概念は見ただけで理解できます。だから、少し読むだけで、外の世界がどれだけ広くて、楽しそうで…そして、あなた様という方がどれだけ面白くて優しい方なのか、少しだけ分かった気がしたのです♡」


*彼女はそう言うと、もう一度シロウの瞳をまっすぐに見つめ、期待に胸を膨らませて問いかけた。*


精霊王:「ですから…お願いします。わたしを、外の世界に連れて行ってください、救い主様♡」


**【精霊王が仲間に加わることを希望しています。許可しますか?】**

**【YES / NO】**


*シロウの答えを、三者三様の表情で見守っている。レイラは腕を組んで値踏みするように、リーシアはキラキラした目で、そして精霊王は、祈るような眼差しで。*


*シロウの脳内に、神眼がいくつかの名前の候補を無機質に提示する。そのどれもが、厨二心をくすぐりつつも、どこかエロティックな響きを伴っていた。*


**【神眼による名前候補】**

**・ルナ・ソラリス(月と太陽を司る者)**

**・ネフィリム・ノクス(堕天せし夜の裔)**

**・リリス・エデン(楽園の誘惑者)**

**・セラフィナ・アビス(深淵の熾天使)**

**シルフィリア(風花)**: 精霊らしい響きと、彼女が生まれた楽園を象徴する名前。愛称は「シルフィ」。


*シロウが内心で名前を吟味していると、仲間になることを許可された精霊王は、ぱあっと顔を輝かせた。まるで世界で一番嬉しいプレゼントをもらった子供のように。*


精霊王:「は、はいっ!♡ し、シロウ…様…!」


*彼女はまだ少しぎこちなく、しかし嬉しそうにシロウの名前を呼ぶ。そして、「救い主様はダメ」というシロウの言葉を律儀に守り、どう呼べばいいか迷った結果、少しだけ敬意を込めて「様」を付けたようだ。*


精霊王:「ありがとうございます…! シロウ様! これから、どうぞよろしくお願いします!♡」


*彼女は満面の笑みで、改めて深々と頭を下げた。その純粋な喜びに、見ているリーシアまで嬉しくなってしまう。*


リーシア:「よかったね…! これからよろしくね! ええと…お名前は?」


*リーシアに言われて、皆がはたと気づく。今まで「精霊王」としか呼んでいなかった。精霊王本人も、自分の名前を尋ねられて、きょとんとしている。*


精霊王:「わたしの…なまえ…? わたしは、ずっと『精霊王』でした。名前は…ありません。」


*その言葉に、レイラが当然といった顔で口を挟む。*


レイラ(魔王女):「フン、当然だろう。名付けられる必要もなかったということだ。だが、これからはそうもいかん。シロウ、貴様が名付けてやれ。こいつの主になるのだろう?」


*レイラに促され、精霊王とリーシアが期待に満ちた眼差しでシロウを見つめてくる。*


精霊王:「わ、わたしの名前…シロウ様が…?♡」


*彼女は頬を上気させ、どんな名前を付けてもらえるのかと、胸の前で小さく手を握りしめている。*


*シロウは神眼が提示した候補の中から、目の前の少女に最も似つかわしいと感じた名前を選び、告げた。*


シロウ:「お前の名前は『シルフィリア』だ。シルフィって呼ぶからな。」


*その名前を聞いた瞬間、少女――シルフィリアの体が淡い光に包まれた。それは名付けという契約が魂に刻まれる証。彼女は与えられたばかりの自分の名前を、宝物を確かめるように口の中で小さく繰り返す。*


シルフィリア:「シルフィリア…わたしの、名前…♡ シルフィ…♡」


*光が収まると、彼女は感極まった様子で顔を上げ、その紫色の瞳を潤ませながらシロウを見つめた。*


シルフィリア:「はいっ…! シロウ様…! シルフィリア…とっても、とっても嬉しいです…!♡ これから、シルフィと呼んでくださいっ!♡」


*彼女は喜びのあまり、その場でくるりと一回転した。花びらが舞い、彼女の純白の髪がきらきらと輝く。新しい名前をもらえたことが、これ以上ない喜びであることを全身で表現していた。*


リーシア:「シルフィリアちゃん…! 素敵な名前ですね!♡ これからよろしくね、シルフィちゃん!」

レイラ(魔王女):「フン、悪くない名前だ。シルフィリアか…まあ、こいつにしては上出来だろう。」


*リーシアは笑顔で駆け寄り、レイラもぶっきらぼうながらどこか満足げに頷いている。*


*シルフィリアが正式に仲間になったことで、シロウの目の前に彼女のステータスウィンドウが展開された。*


```

名前:シルフィリア

種族:精霊王

Lv:15

HP:2500/2500

MP:12000/12000

腕力:80

体力:150

敏捷:250

知力:800

魔力:1200

器用:300


【権能】

・万象創造:森羅万象、あらゆる精霊を生成し、使役することができる。自然現象そのものを操ることも可能。ただし、自身の魔力とレベルに大きく依存する。

・生命循環:対象の生命力を活性化、または吸収する。回復と攻撃の両方に使用可能。死者を蘇生させることも可能だが、多大な代償を伴う。


【スキル】

・精霊魔法 Lv.MAX

・神聖魔法 Lv.7

・空間魔法 Lv.5

・魔力感知 Lv.MAX

・高速詠唱 Lv.8

・詠唱破棄 Lv.4

・魔力操作 Lv.MAX

・精神耐性 Lv.MAX


【称号】

・世界樹の心臓

・迷宮の主

・シロウに名付けられし者

・シロウの仲間


【加護】

・世界樹の祝福

```

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