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《R-15》異世界転移でスローライフを?  作者: THE・HENJIN・RlDER
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*朝食を終えた三人は、アストラムの中央通りに面した、街で一番大きいとされる服飾店『シルク&サテン』にやってきた。レンガ造りの洒落た外観で、ショーウィンドウには流行のドレスや冒険者向けの機能的な衣装が飾られている。*


*店内に入ると、上品な香りが鼻をくすぐり、「いらっしゃいませ」と美しい店員がにこやかに出迎えてくれた。様々なデザインの服がずらりと並んでおり、女性客で賑わっている。*


シロウ:「かわいい服がいいな。」


*シロウがリーシアとレイラ(今は臆病な人格に戻っている)を見比べながらそう呟くと、レイラはびくりと肩を震わせ、シロウのマントの後ろに隠れるようにしてもじもじしている。人混みが苦手なようだ。*


レイラ(臆病):「あ、あの…わ、私は、なんでも…シロウさんの、お好きなもので…」


*彼女は俯きながら、消え入りそうな声で言う。昨日までの傲慢な魔王女とはまるで別人だ。*


*一方、リーシアは目をキラキラと輝かせながら、店内に並んだ美しい服の数々に見とれている。*


リーシア:「わぁ…! すごい…! どれも素敵な服ばかりですね! ご主人様、レイラ様にはどんな服が似合うでしょうか?」


*リーシアはわくわくした様子でシロウに尋ねる。彼女自身も服を見るのが楽しいようだ。*


*店の奥からひときわ華やかなオーラを放つ人物が、しなやかな足取りで現れた。長身で、指先まで手入れの行き届いた、性別を超越した魅力を持つ人物だ。彼はシロウと、その影に隠れるレイラ、そして目を輝かせるリーシアを上から下まで品定めするように眺めると、口の前に人差し指を立てて、うっとりとした表情を浮かべた。*


オネエ店員:「あらぁん♡ 聞こえたわよ、そこの素敵なお兄さん! 『可愛く』ですって? やだもう、アタシ、そういうオーダーに一番燃えちゃうタイプなのよぉん♡」


*彼はパチンと指を鳴らし、シロウにウィンクを送る。その声はよく通り、周りの客が少し振り返るほどだった。*


オネエ店員:「アタシはここの店長、アントーニオ! このアタシにかかれば、どんな原石ちゃんだって、ダイヤモンドみたいに輝かせてみせるわ! で、どの子かしら? もしかして…この二人とも!? なんて贅沢な殿方なのぉ!♡」


*アントーニオは興奮した様子で、まずはリーシアの前に立つと、その顎を優しく持ち上げた。*


アントーニオ:「まあ! なんて綺麗な銀髪に、透き通るようなお肌! ユニコーン族の子かしら? この子には、清純さを引き立てる淡いパステルカラーがいいわねぇ。フリルをあしらったブラウスに、膝丈のフレアスカートなんてどうかしら? 天使みたいになっちゃうわよぉ♡」


*次に、シロウの後ろに隠れているレイラに顔を近づける。レイラはさらに体を小さくして震えた。*


アントーニオ:「あらあら、こっちの子は人見知りさん? 大丈夫よ、アタシは取って食ったりしないわぁん♡ うーん、黒髪に赤い瞳…ミステリアスな魅力があるじゃないの! この子には、ちょっと大胆なゴシック調のデザインなんて似合いそうね。黒を基調にして、深紅の差し色を入れたりして…! 隠された魅力を引き出してあげるわ! さあ、お兄さん! アタシに任せてくださる?」


*アントーニオは自信満々に胸を張り、シロウにキラキラした視線を送ってくる。彼のプロフェッショナルなオーラに、リーシアは期待に胸を膨らませ、レイラはただただ怯えている。*


シロウ:「やっぱ、ミニスカは外せないよな…」


*シロウの「ミニスカ」という具体的な要望を聞いた瞬間、アントーニオの瞳がカッと見開かれ、プロの魂に火がついたようだった。*


アントーニオ:「やだもう、お兄さん、わかってるじゃないのぉ!♡ そうよ! 若くて可愛い子の魅力は、健康的な脚線美を見せつけてこそ輝くのよ! あぁん、もうアタシ、最高に燃えてきたわ!♡」


*彼は興奮のあまりその場でくるりと一回転すると、レイラとリーシアの両手を取った。*


アントーニオ:「さあ、可愛い子ちゃんたち! アタシについてらっしゃい! お兄さんのご期待に応える、とびっきりキュートでちょっとセクシーなコーディネート、このアントーニオが選んであげるわ!♡」


*彼は有無を言わさぬ力強さで、二人を店の奥にある試着室へと連れて行こうとする。*


リーシア:「わ、わわっ! て、店長さん!?」

レイラ(臆病):「ひゃっ! あ、あの、わ、私は…!」


*リーシアは戸惑いながらも、どこか楽しそうに。レイラは完全にパニックに陥り、シロウに助けを求めるような視線を送っている。*


アントーニオ:「お兄さんはそこのソファで、優雅にお紅茶でも飲んで待ってなさいな! すぐに、生まれ変わった天使と小悪魔ちゃんをお披露目してあげるから!♡」


*アントーニオはシロウに投げキッスを一つ送ると、抵抗するレイラと目を輝かせるリーシアを引きずるようにして、試着室のカーテンの向こうへと消えていった。残されたシロウの前には、別の店員がすぐに香り高い紅茶を運んでくる。*


店員:「旦那様、どうぞごゆっくり。店長の『本気』は少々お時間がかかりますので。」


*シロウはソファに深く腰掛け、紅茶を一口すすりながら、カーテンの向こうから聞こえてくる「いやぁん、もっと胸を張って!」「こ、こうですか?」「きゃっ! くすぐったいですぅ!」といった賑やかな声をBGMに、二人の変身を待つことにした。*


アントーニオ:「お兄さーん! お待たせぇん! 準備できたわよぉ! 心の準備はいいかしらぁ!? まずは天使ちゃんからよぉ!♡」


*シロウは手を離し、再びソファへと戻りながら、楽しみに満ちた声で応えた。*


シロウ:「ああ、見せてくれ。」


*シロウがソファに腰掛け、期待に満ちた視線を送ると、アントーニオは満面の笑みでカーテンをシャッと開けた。*


アントーニオ:「お待たせしましたぁん♡ まずは、アタシの天使ちゃんからお披露目よぉ! さあ、リーシアちゃん、カモーン!♡」


*アントーニオに背中を押され、リーシアが恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに一歩前に出てくる。彼女の姿を見たシロウは、思わず目を細めた。*


*リーシアが着ているのは、肩口がふわりとしたパフスリーブの純白のブラウス。胸元には繊細なレースと小さなリボンがあしらわれている。そして、シロウがリクエストした通り、スカートは淡い空色のミニスカートだった。プリーツが軽やかに入っており、歩くたびに優しく揺れる。足元は白いニーハイソックスに、ストラップ付きの可愛らしい革靴を履いていた。*


*普段の動きやすさ重視の服装とは全く違う、少女らしさと清純さを前面に押し出したコーディネート。リーシアは顔を真っ赤にしながら、スカートの裾をぎゅっと握りしめている。*


リーシア:「ご、ご主人様…ど、どうでしょうか…? こ、こんなに短いスカート、初めてで…その…恥ずかしい、です…」


*恥じらいながらも、その瞳はシロウの感想を待ってキラキラと輝いている。*


シロウ:「特徴やポイントは?」


*シロウがアントーニオに尋ねると、彼は待ってましたとばかりにリーシアの肩に手を置き、熱弁を始めた。*


アントーニオ:「聞いてくださる!? お兄さん、お目が高いわ!♡ この子のポイントは、なんと言っても『絶対的な清純さ』と『チラリズムの黄金比』よ! ブラウスの白さとレースで天使のような純粋さを演出しつつ、ミニスカートから大胆に伸びる、この! この美しいお御足!♡ ニーハイソックスとの間の絶対領域が、見る者の想像力を掻き立てて、もうたまらないでしょう!? 清純なのに、どこか目が離せない…そんなアンバランスな魅力こそ、この子のポテンシャルを最大限に引き出す鍵なのよぉん!♡」


*シロウはリーシアの姿に満足げに頷くと、プロの仕事を見せつけたアントーニオに、感心と賞賛の入り混じった、どこかオネエ口調を真似たような言葉を投げかけた。*


シロウ:「店長分かってんなぁ…」


*その言葉を聞いたアントーニオは、感極まったように両手で口元を覆い、瞳をうるませた。*


アントーニオ:「やだもう! お兄さん! アタシのこだわりを理解してくださるのね!? そうよ! ミニスカートにはニーハイ! これは古代から伝わる、可愛いの絶対法則なのよぉん! あぁん、嬉しい…! アタシ、お兄さんみたいな人と一度じっくり語り明かしたかったわぁ♡」


*彼はシロウに熱い視線を送りながら、感無量といった様子で身を震わせている。*


アントーニオ:「フフ…でも、驚くのはまだ早いのよ? お次の小悪魔ちゃんは、この天使ちゃんとはまた違った魅力で、お兄さんのハートを撃ち抜いちゃうんだから! 覚悟はいいかしら? さあ、出てらっしゃい! レイラちゃん!♡」


*アントーニオが再びカーテンを勢いよく開けると、そこには先程まで怯えていたレイラとは別人のような少女が立っていた。*


*彼女が身に纏っているのは、黒を基調としたゴシック調のワンピース。肩と腕が大胆に露出したオフショルダーのデザインで、胸元は深紅のレースで飾られている。スカートはフリルが幾重にも重なった、やはりミニ丈のアシンメトリーデザイン。左足には黒いガーターベルトで留められたストッキング、右足は素足のままという、アンバランスで挑発的な着こなしだ。首元には黒いリボンチョーカーが巻かれている。*


*先程までの臆病な雰囲気は消え、少し気の強そうな、しかしどうしていいか分からず戸惑っているような表情で、レイラはシロウのことを見つめている。彼女は自分の肌の露出の多さに落ち着かないのか、そわそわと腕をさすっていた。*


レイラ(臆病):「あ、あの…シロウさん…こ、これ…その…肌が出すぎてて…恥ずかしい、です…」


*シロウはレイラの挑発的な姿をじっくりと眺め、特に片足だけのガーターベルトに目を細め、独り言のように呟いた。*


シロウ:「片足ガーターか…両足から片足になる事でエロさが増すんだよな…」


*そのマニアックな呟きを、アントーニオの地獄耳が聞き逃すはずもなかった。彼は「まあ!」と甲高い声をあげ、シロウに駆け寄る。*


アントーニオ:「お兄さん! なぁんて恐ろしい子なの! アタシでも思いつかなかったような、そんなマニアックな視点をお持ちだなんて! そう! アシンメトリー! 不完全さこそが想像力を掻き立て、完璧以上のエロティシズムを生み出すのよぉん! あぁん、震えが止まらないわ…♡」


*アントーニオは恍惚とした表情で身をくねらせた後、シロウが投げかけた次の質問に、ニヤリと悪戯っぽく笑って答えた。*


シロウ:「ちなみに下着は?」


アントーニオ:「フフフ♡ よくぞ聞いてくださったわ! もちろん、ただの下着なわけないじゃない? この小悪魔ちゃんのためにアタシが選んだのは…これよ!」


*アントーニオはどこからか取り出した同じデザインの下着をシロウに見せる。それは黒いレースのパンティだった。しかしクロッチ部分、つまり股間に当たる部分に、小さな金のジッパーが付いているのが見て取れた。*


アントーニオ:「どうかしら?♡ フロントクロッチジッパー付きの、スペシャルな一枚よん♡ これなら、いちいち脱がせなくても、お兄さんがしたい時に『こんにちは♡』できちゃうってわけ!♡♡ この小悪魔ちゃんの挑発的な魅力を、さらに引き立てるための、アタシからのささやかなプレゼントよぉん♡」


*説明を聞いた臆病なレイラは、自分の下着がそんな構造になっているとは知らなかったようで、顔を真っ赤にして俯いてしまった。*


レイラ(臆病):「そ、そんな…! は、恥ずかしいですぅ…!」


*シロウは完璧なコーディネートと、アントーニオのプロフェッショナルな仕事ぶりにこの上なく満足し、指先で黒金貨を一枚弾いた。コインは綺麗な放物線を描いて飛び、アントーニオの胸元に見事に吸い込まれた。*


シロウ:「かんっぺきだっ!釣りは取っておけ。」


*チャリン、という軽い音と共に、アントーニオは自分の胸元に収まったコインに目を丸くする。それがただの金貨ではなく、この国で最高額面である黒金貨だと気づいた瞬間、彼の顔は驚愕から歓喜へと一瞬で変わった。*


アントーニオ:「く、黒金貨ぁ!?!? いやぁん、嘘でしょ!? お兄さん、正気ぃ!? これ一枚で、この店ごと買えちゃうくらいの金額よぉ!?」


*彼はブルブルと震えながら黒金貨を胸元から取り出すと、まるで宝石でも見るかのようにうっとりとそれを眺めた。*


アントーニオ:「あぁ…なんて美しい輝き…♡ これが…これがアタシの仕事への評価…! 嬉しい…嬉しすぎるわぁん!♡ お兄さん! アタシ、もうあんたに一生ついていくわ!♡ このアントーニオ、お兄さんの専属スタイリストとして、生涯をかけてあんたたちの『美』をプロデュースさせてちょうだい!♡」


*感極まったアントーニオはシロウに抱きつかんばかりの勢いで迫る。その隣では、リーシアと臆病なレイラが、黒金貨の価値も分からず、ただただアントーニオの豹変ぶりにポカンとしていた。*


リーシア:「ご、ご主人様…? あの、そんなにすごいお金なんですか…?」


レイラ(臆病):「ひゃ、ひゃうっ…!?」


*アントーニオが迫ってくるのを見て、レイラは小さく悲鳴を上げてシロウの後ろに隠れた。*


*アントーニオの激しい反応に若干引きながらも、シロウは自分に隠れるようにくっついている臆病なレイラと、不思議そうにこちらを見ているリーシアに視線を移す。*


シロウ:「普通の人が一生遊んで暮らせるくらいのお金だ。」


*シロウがさらりと告げると、リーシアは息を呑んで目を大きく見開いた。*


リーシア:「 い、一生遊んで暮らせる…!? そ、そんな大金を、このお洋服だけで…!?」


*彼女は自分の着ている可愛らしい服と、シロウの気前の良すぎる支払いを交互に見比べて、信じられないといった表情を浮かべている。*


*一方、感涙にむせんでいたアントーニオは、ハッと我に返ると涙を拭い、プロの顔つきに戻った。*


アントーニオ:「…ハッ! いけない、いけないわ! こんな素晴らしいお客様を前にして、我を忘れるなんて! アタシとしたことが!♡ お兄さん、本当にありがとう! このご恩は、生涯をかけてお返しするわ! とりあえず、この子たちの着てきた服は、こちらで処分しといていいかしら? 新しい人生は、新しいお洋服から!って言うじゃない?♡」


*彼はウインクしながら、二人が脱いだ冒険者服を指差した。*


レイラ(臆病):「あ、あの…シロウさん…本当に、いいんですか…? こんな、可愛い服…。」


*シロウの後ろからひょっこりと顔を出した臆病なレイラが、おずおずと尋ねる。彼女はまだ、この高価で素敵な服を自分が着ていいものか、戸惑っているようだ。*


*シロウは自分に隠れている臆病なレイラに優しく微笑みかけると、悪戯っぽく言った。*


シロウ:「もう1人に聞いてみろ、絶対喜ぶ」


レイラ(臆病):「え…? もう1人って…?」


*臆病なレイラがきょとんとした瞬間、彼女の身体がピクリと震え、その瞳の光がスッと変わった。臆病で不安げな表情は消え去り、代わりに自信に満ちた、不遜な笑みが口元に浮かぶ。人格が入れ替わったのだ。*


*魔王女のレイラは、自分の身なりを改めて見下ろすと、フンと満足げに鼻を鳴らした。*


レイラ(魔王女):「フン、当然ではないか。妾の美しさを引き立てるには、これくらいの服で当然だ。むしろ、これでもまだ足りんくらいだぞ。…まあ、貴様にしては、なかなか見る目があるではないか。特にこの黒と赤の組み合わせ、妾の魔力をよく理解している。褒めてつかわす。♡」


*彼女は腰に手を当て、モデルのようにくるりと一回転してみせる。アシンメトリーのスカートがひらりと舞い、その挑発的な魅力を振りまいた。*


レイラ(魔王女):「それに、この下着とやらも悪くない。余計な手間が省けるというのは、合理的な判断だ。今夜、早速その機能性を試させてやろうではないか、シロウ?」


*妖艶な笑みを浮かべてシロウにウインクする。その堂々とした態度にアントーニオはただただ圧倒されていた。*


アントーニオ:「まあ! なんてこと! 一瞬でこんなに魅力的な小悪魔ちゃんに…! 二つの魂が一つの身体に宿るなんて! あぁん、ドラマティィィック!♡」


*シロウはアントーニオと意気投合し、芝居がかった口調で同意する。*


シロウ:「そうなんだよぉー! 積極的でえちえちなレイラと、人見知りのレイラ。もうね、最高」


*その言葉を聞いたアントーニオは、まるで盟友を見つけたかのようにシロウの両肩をがっしと掴んだ。*


アントーニオ:「分かる! 分かるわぁん、お兄さん!そのギャップ! ツンとデレ! 陰と陽! ひと粒で二度美味しいって、まさにこのことよ! あぁん、神様! アタシにこんな素晴らしい理解者を遣わしてくださってありがとう!♡」


*アントーニオが一人で盛り上がっていると、魔王女のレイラが少し呆れたように、しかしどこか得意げに口を挟んだ。*


レイラ(魔王女):「フン、何を騒いでおるか。妾が魅力的であるのは当然のこと。この腑抜け(臆病なレイラ)の分まで、妾が貴様を満足させてやっているのだ。もっと感謝するがよい。」


*彼女はツンとそっぽを向きながらも、シロウの言葉が嬉しかったのか、耳が少し赤くなっている。その隣で、リーシアは二人の新しい服を改めて見比べ、感心したように呟いた。*


リーシア:「レイラちゃん、すごく似合ってます…! かっこよくて、綺麗です…! アントーニオさん、本当にすごいですね…!」


*褒められたアントーニオは、パッと表情を輝かせる。*


アントーニオ:「当然よ、天使ちゃん!♡ アタシにかかれば、どんな原石だってダイヤモンド以上の輝きを放たせてみせるわ! さあ、お代はもう充分すぎるほど頂いたし、この服は二人へのプレゼントよ!包装はどうする? それとも、このまま着て帰るかしら?」


*シロウの言葉に、アントーニオは目を輝かせ、魔王女のレイラは「フン、話が早いではないか!」と不敵に笑った。*


アントーニオ:「まあ! この格好で迷宮ですって!? なんて刺激的ィ!♡ 汚さないように気をつけるのよぉん!」


レイラ(魔王女):「フン、当然だ。さあ、シロウ、何をぐずぐずしている! 昨日の屈辱、今日こそ晴らしてくれるわ! 早く行くぞ!」


*レイラはシロウの腕をぐいぐいと引っ張り、早く店を出ようと急かす。その時、シロウはふと思い出したように呟いた。*


シロウ:「あ、ボスの素材。売るの忘れてた…」


*昨日の激戦で手に入れたミノタウロス・デーモンロードの巨大な斧と、その心臓から取り出した禍々しい魔石が、まだアイテムボックスに入ったままであることを思い出したのだ。*


リーシア:「本当ですね、ご主人様。あれはとても大きな物でしたし、魔石も強力そうでしたから、きっと高く売れると思います。」


レイラ(魔王女):「チッ…あの忌々しい牛頭の遺物か。そんなもの、さっさと売り払ってしまえ。持っているだけで気分が悪い。それで得た金で、もっと妾に似合う装飾品でも買うがいい。」


*レイラは少し不機嫌そうにしながらも、売却には賛成のようだ。*


シロウ:「そうだな。じゃあ、迷宮に行く前にギルドに寄って、こいつらを換金していくか。」


*シロウが方針を決めると、アントーニオは店の出口まで三人を見送りに来た。*


アントーニオ:「それじゃあ、気をつけていってらっしゃい!♡ またいつでも、アタシを頼ってちょうだいね、お兄さん!♡♡」


*アントーニオに手を振られながら、新しい服に身を包んだ一行は、再びアストラムの喧騒の中へと歩き出し、まずは冒険者ギルドを目指すことにした。*


*一行はアントーニオの店を後にし、冒険者ギルドへと向かった。ギルド内は多くの冒険者で賑わっており、鎧の擦れる音や酒場の喧騒が響いている。シロウは一直線に買取カウンターへと進んだ。*


*まず、アイテムボックスからミノタウロス・デーモンロードの魔石を取り出す。それは人間の頭ほどの大きさがあり、紫と黒の魔力が渦巻くように揺らめいて、不吉な光を放っていた。カウンターの職員はそれを鑑定用の魔道具に乗せ、目を見開いた。*


職員:「こ、これは…!? 90階層以降の…それも魔王種の魔石じゃありませんか! とんでもない代物ですよこれは…!」


*職員が騒然とする中、シロウは次にアイテムボックスから巨大な戦斧を取り出した。ズシン、という重い音を立てて床に置かれた斧は、シロウの背丈ほどもある長大なものだ。黒曜石のような刃は禍々しい紋様が刻まれ、柄の部分は巨大な獣の骨でできている。あまりの大きさに、シロウは置き場所に困り、とりあえず肩に担ぐようにして持った。その異様な光景に、周囲の冒険者たちがざわめき、遠巻きにこちらを見ている。*


シロウ:「斧はどこに置けばいいんだ?」


*シロウが職員に尋ねると、彼はゴクリと唾を飲み込み、慌てて奥から別の鑑定士を数人呼んできた。ベテランらしき鑑定士が斧を慎重に調べ始める。*


レイラ(魔王女):「フン、何をそんなに大げさに騒ぐことがある。妾にかかれば、あんな牛頭の一匹や二匹、造作もないことだ。それより、さっさと値をつけろ。時間は有限なのだぞ。」


*レイラは腕を組み、新しいゴシックドレスの裾を揺らしながら、いかにも退屈そうに言い放つ。その美しくも傲慢な姿と、シロウが担ぐ巨大な斧の組み合わせは、ギルド内で異様な注目を集めていた。*


リーシア:「ご主人様、皆さん、すごく見ていますね…少し、恥ずかしいです…」


*リーシアは恥ずかしそうにシロウの服の袖をそっと掴んだ。*


*シロウは肩に担いだ巨大な斧の重みを感じながら、隣でふんぞり返っている魔王女のレイラに、意地悪く囁きかけた。*


シロウ:「昨日、その牛にボコボコにやられてたのは誰だったかな?」


*その一言は、魔王女レイラの最も触れられたくない部分を的確に抉った。彼女の自信に満ちた表情がピシリと凍りつき、次の瞬間、顔を真っ赤にしてシロウに掴みかからんばかりの勢いで詰め寄る。*


レイラ(魔王女):「なっ…! き、貴様っ! あの、あれは油断しただけだ! 油断さえしなければ、あんなもの…」


*彼女は必死に反論するが、その声は明らかに動揺で上ずっている。昨夜、油断から瀕死の重傷を負い、シロウに助けられた記憶が鮮明に蘇り、屈辱と羞恥で体が震えているようだ。*


レイラ(魔王女):「そ、それを言うなら貴様とて! 妾が吹き飛ばされた時、すぐ助けもせずに見物しておったではないか! この鬼! 悪魔! ドS!」


*悔し紛れにシロウの胸をポカポカと叩くが、その力は全く込められていない。*


リーシア:「れ、レイラ様、落ち着いてください…! ギルドの中ですから…!」


*リーシアが慌てて二人をなだめようとするが、レイラの興奮は収まらない。そんな二人のやり取りを、買取カウンターの職員たちは遠巻きに、しかし興味津々で見つめていた。やがて、斧を鑑定していたベテランの鑑定士が、緊張した面持ちで口を開いた。*


ベテラン鑑定士:「お、お客様…! 鑑定、終わりましたぞ…! こ、これは…95階層主、ミノタウロス・デーモンロードの戦斧『デモニック・グレイブ』に違いありません…! しかもほとんど無傷…! 魔石の方も、これほどの高純度の魔王種のものは、ここ数十年、市場に出ておりません…!」


*シロウはレイラとの軽口を切り上げると、鑑定士たちに向き直り、簡潔に告げた。巨大な斧は肩に担いだままだ。*


シロウ:「とりあえずまた潜ってくるから、帰ってくるまでに査定しておいて。」


*その言葉に、ベテラン鑑定士は慌てて応じる。*


ベテラン鑑定士:「は、はい! かしこまりました! 最高値で査定させていただきます! しかし…この斧はギルドの倉庫でも一番厳重な場所で保管せねばなりません。お手数ですが、あちらの搬入口まで運んでいただけますか?」


*鑑定士が指差したのは、ギルドの奥にある荷物用の大きな扉だった。*


レイラ(魔王女):「フン、いいだろう。シロウ、さっさと運んで、とっとと迷宮へ行くぞ。妾はもう待ちきれん。」


*レイラに急かされ、シロウは「はいよ」と軽く返事をすると、巨大な戦斧『デモニック・グレイブ』を軽々と担いだまま、指定された搬入口へと向かった。ギルド職員たちが数人がかりで厳重な扉を開け、シロウが斧を倉庫内に預けるのを見届ける。周囲の冒険者たちは、その一連の流れを呆気に取られて見ていた。*


*用事を済ませたシロウがカウンターに戻ると、リーシアが心配そうに待っていた。*


リーシア:「ご主人様、お疲れ様です。これで大丈夫そうですね。」


シロウ:「ああ。じゃあ、改めて行くか。96階層からだ。」


レイラ(魔王女):「うむ! 今度こそ、妾の真の力を見せてやる! ついてこい!」


*魔王女レイラは自信満々に言い放ち、誰よりも先にギルドの出口へと向かっていく。その黒いゴシックドレスが軽やかに揺れていた。シロウとリーシアもその後を追い、一行は活気に満ちたアストラムの街を抜け、再び巨大な迷宮の入り口へと足を向けた。*


*シロウが預けた巨大な戦斧『デモニック・グレイブ』は、屈強なギルド職員が4人がかりで、唸り声を上げながらようやく倉庫の奥へと運んでいった。その光景を横目で見ながら、シロウは二人に声をかける。*


シロウ:「行こうか。」


*彼の言葉に、リーシアはこくりと頷き、魔王女のレイラは待ちかねたとばかりに不敵な笑みを浮かべた。*


レイラ(魔王女):「フン、ようやくか。今度こそ、妾の邪魔はするなよ? 特に貴様だ、シロウ。妾が戦っている最中に、余計な茶々を入れるでないぞ。」


*釘を刺すように言うが、その声には期待が滲んでいる。新しい服と、昨日の雪辱を晴らす機会を得て、彼女の闘志は最高潮に達しているようだ。*


リーシア:「レイラ様、ご主人様。準備は万端です。いつでも行けます。」


*純白のブラウスと空色のミニスカートという、戦闘にはおよそ不向きな服装をしているリーシアだが、その瞳には強い意志の光が宿っている。*


*三人は冒険者ギルドを後にし、多くの人々が行き交う大通りを抜け、街の外れにそびえ立つ巨大な迷宮の入り口へと向かった。転移陣を使い、一瞬の浮遊感の後、彼らは昨日攻略を終えた95階層のボス部屋の先に新しく開かれた、下層へと続く階段の前に立っていた。*


*ひんやりとした空気が下から吹き上げてくる。96階層は、これまでとはまた違う、未知の領域だ。*


レイラ(魔王女):「さて…どんな雑魚が妾を出迎えてくれるのか、楽しみだな。」


*レイラは腰に手を当て、これから始まる戦いに胸を躍らせている。*


*シロウが期待に満ちた声を出すと、その隣でリーシアが不安そうに小さく身を震わせているのに気づく。彼女の可愛らしい服装は、これから向かう未知の階層の脅威とは不釣り合いに見えた。*


シロウ:「96はどんなモンスターだろうな。楽しみだ。」


*シロウがそう言うと、リーシアは不安げな瞳でシロウを見上げた。*


リーシア:「わ、私は少し…怖いです…。でも、ご主人様とレイラ様と一緒なら、頑張ります…!」


*彼女はぎゅっと自分の胸の前で拳を握り、自らを奮い立たせるように言った。その健気な姿に、シロウは思わず頭を撫でてやりたくなる。*


*一方、魔王女のレイラはシロウの言葉に不敵な笑みを深めた。*


レイラ(魔王女):「フン、どんなモンスターだろうと関係ない。妾の敵ではないわ。さあ、行くぞ! 貴様ら、遅れるでないぞ!」


*レイラはそう言い放つと、一人でさっさと階段を降り始めた。黒いドレスの裾が階段の闇に吸い込まれていく。*


*96階層に足を踏み入れると、そこは今までの階層とは全く違う光景が広がっていた。*


*天井からは巨大な水晶が無数に突き出し、淡い光を放っている。その光が地面に広がる浅い水面に反射し、辺り一面が幻想的な青や紫の光で満たされていた。まるで、星空の中に迷い込んだかのような、静かで美しい場所だ。しかし、その美しさとは裏腹に、空気はひどく湿っぽく、どこか不気味な静寂が支配している。*


*チャプン…チャプン…と水滴が落ちる音だけが響く中、シロウたちはゆっくりと先へ進む。*


シロウ(水晶洞窟、か…? 綺麗だが、嫌な感じがするな…)


*シロウが鑑定スキルで周囲を探ろうとした、その時。*


*前方の水面が大きく波立ち、ぬるりとした巨大な何かが姿を現した。それは、半透明の青い粘液でできた、巨大なスライムのような魔物だった。しかし、その核には、まるで人間の頭蓋骨のようなものが不気味に浮かび上がっている。*


『グルルル…ォ…』


*魔物は低い唸り声をあげ、その身体から無数の触手を伸ばし、こちらを威嚇してきた。*


シロウ:「なんだこれ?スライム…ではなさそうだな」


*シロウが目の前に現れた不気味な魔物を見て呟くと、その半透明の体躯がグポグポと不気味な音を立てた。鑑定スキルを即座に発動させる。*


*ピロン*


```

【名前】クリスタル・オーズ

【種族】粘液生命体(アンデッド系亜種)

【Lv】85

【HP】125,000 / 125,000

【MP】88,000 / 88,000

【状態】正常


【スキル】

・溶解液 Lv.9

・物理耐性(極) Lv.8

・魔法耐性(高) Lv.7

・自己再生(超) Lv.8

・精神汚染 Lv.6

・クリスタルスピア Lv.7

・魂魄捕食 Lv.5


【説明】

水晶洞窟に生息する特殊なスライム。死者の魂を取り込むことで核を形成し、アンデッドの性質を併せ持つ。物理攻撃はほとんど効果がなく、高い自己再生能力を持つため非常に厄介。核となっている頭蓋骨を破壊しない限り、無限に再生する。精神汚染の波動を発し、近づく者の理性を蝕む。

```


シロウ:「(クリスタル・オーズ…アンデッド系のスライムか。物理がほぼ効かない上に再生能力持ち、核を破壊しないとダメ…面倒な相手だな)」


*シロウが情報を分析していると、魔王女のレイラが一歩前に出た。彼女は新しい服の裾が水に濡れるのも構わず、不敵な笑みを浮かべている。*


レイラ(魔王女):「フン、ただのスライムではないようだが…見た目が気に食わんな。ドロドロとした醜い姿…妾の視界に入るな、汚物め!」


*彼女がそう言い放つと、その手に漆黒の魔力が渦巻き始める。*


レイラ(魔王女):「まずは手始めだ。消し炭にしてくれる!【獄炎球(ヘルフレア)】!」


*レイラの手から放たれた、圧縮された黒い炎の塊が、一直線にクリスタル・オーズへと向かって飛んでいく。*


*シロウは鑑定結果を見て、クリスタル・オーズの弱点が核である頭蓋骨だと瞬時に見抜いた。彼はレイラがどんな戦い方をするか見定めるため、すぐには動かず、腕を組んでその様子を観察する。*


シロウ:「なんだ、頭蓋骨が核か。余裕だな。」


*彼が呟くと同時に、レイラの放った【獄炎球(ヘルフレア)】がクリスタル・オーズに着弾した。*


*ジュウウウウッ!という肉の焼けるようなおぞましい音と共に、黒い炎が粘液の身体を激しく蒸発させる。しかし、クリスタル・オーズは叫び声一つ上げず、身体の大部分が消し飛んだにもかかわらず、平然としていた。そして、核である頭蓋骨が無事であるため、消し飛んだ部分がすぐにグポグポと音を立てて再生し始める。スライム質の身体は、魔法攻撃に対して高い耐性を持っていたのだ。*


レイラ(魔王女):「なっ…!? 妾の【獄炎球】を受けて、これだけだと…!? しぶとい奴め…!」


*予想以上の耐性と再生能力に、レイラは忌々しげに舌打ちする。彼女の魔法は絶大な威力を持つが、核を的確に狙う精密さには欠ける。大雑把な攻撃では、この敵を倒すのは難しいだろう。*


*クリスタル・オーズは身体を再生させると、報復とばかりにシロウたちに向けて無数の触手を鞭のようにしならせて叩きつけてきた。さらに、洞窟の天井や壁から鋭い水晶の槍を生成し、雨のように降らせる【クリスタルスピア】を発動させる。*


*ヒュンヒュン!と風を切る音を立てて、触手と水晶の槍が三人に襲いかかった。*


リーシア:「きゃっ! ご主人様、危ないです!」


*リーシアは悲鳴を上げ、シロウのそばに駆け寄った。*


*触手と水晶の槍が三人に殺到するその瞬間、シロウは冷静に右手を前に突き出した。*


シロウ:「アイテムボックス。収納。」


*シロウの短い命令と共に、彼の前方に不可視の空間の歪みが生じる。襲い来る無数の触手と、雨あられと降り注ぐ【クリスタルスピア】は、シロウたちに届く直前、まるで異次元に吸い込まれるかのように、次々と音もなく姿を消していった。*


*空間そのものを収納する【アイテムボックス】の応用技。物理的な質量を持つ攻撃であれば、それがどんなものであろうと問答無用で収納し、無力化してしまう。*


*攻撃が全て空振りに終わったクリスタル・オーズは、理解できない現象に戸惑うかのように、その動きをぴたりと止めた。*


レイラ(魔王女):「なっ…!? 今のは…貴様のスキルか。フン、相変わらず小賢しい真似を…」


*レイラは一瞬驚きながらも、すぐに態勢を立て直し、悪態をつく。しかしその口調には、シロウの意外な能力への感心が混じっていた。*


リーシア:「すごい…! ご主人様、攻撃が全部消えてしまいました…!」


*リーシアは目を丸くして、今起きた現象に驚嘆の声を上げる。*


*シロウは二人の反応を気にも留めず、静止したクリスタル・オーズの中心に浮かぶ頭蓋骨を、冷徹な目で見据えていた。*


シロウ:「さて、どうやってあの頭蓋骨を砕くか…レイラ、お前の魔法で核だけを狙えるか?」


*シロウの問いかけに、魔王女レイラはぐっと言葉に詰まる。彼女の魔法は広範囲を殲滅するのに特化しており、粘液に守られた小さな核だけを精密に破壊するのは不得手だった。*


レイラ(魔王女):「む…やってやれないこともないが…少し時間がかかるかもしれん…」


*悔しそうに言いながらも、自分の不得手を認める。その様子を見て、シロウは肩をすくめた。*


シロウ:「(無理そうだ。選手交代か…)」


*シロウはレイラでは精密な攻撃が難しいと判断し、自ら決着をつけることにした。彼は静かにクリスタル・オーズを見据える。*


シロウ:「物理も魔法も効果は薄い。だが、それは外側の話だ。」


*シロウはアイテムボックスから、以前手に入れた雑魚モンスターの、不安定で衝撃に弱い低級魔石を一つ取り出す。そして、ゲートリングと空間操作の能力を組み合わせ、その魔石をクリスタル・オーズの粘液質の体内の、まさに核である頭蓋骨のすぐそばへと直接転移させた。*


*次の瞬間、シロウは転移させた魔石に外部から微小な衝撃を加える。*


*パリンッ!*


*クリスタル・オーズの体内で、転移させられた魔石が砕け散る。そして、連鎖反応的に内部に秘められていた魔力が暴走し、小規模な爆発を引き起こした!*


*ドンッ!という鈍い破裂音が、スライムの体内からくぐもって響く。至近距離で発生した魔力の衝撃波が、守られるべき核の頭蓋骨を内側から直撃した。*


*ガシャァン!という甲高い音。*


*クリスタル・オーズの核となっていた頭蓋骨に、蜘蛛の巣のような亀裂が走り、次の瞬間には木っ端微塵に砕け散った。*


『ギ……ギ…ァ…ア……』


*核を破壊されたクリスタル・オーズは、断末魔のような意味をなさない音を発しながら、その青い身体を維持できなくなり、ブクブクと泡を立てて崩壊していく。自己再生能力も、核がなければ意味をなさない。数秒後には、ただの水たまりと、キラキラと輝く魔石だけがその場に残った。*


レイラ(魔王女):「なっ…! 内部から破壊したのか…! フン、またしても小賢しい手を使いおって…だが、見事だ。」


*レイラは一瞬驚愕の表情を浮かべたが、すぐにそれを隠し、悔しさと感心が入り混じったような声でシロウを評した。*


リーシア:「すごい…! あんなに手強そうだったのに、一瞬で…。さすがです、ご主人様!」


*リーシアは目を輝かせ、素直な賞賛の言葉を口にした。*


*シロウが倒されたクリスタル・オーズの跡地に近づくと、水たまりの中にキラキラと輝くアイテムがいくつか残されているのが見えた。*


シロウ:「ドロップ品は…」


*彼は手を伸ばし、それらを拾い上げる。*


*一つは、敵の核だった頭蓋骨に似た、水晶でできた髑髏の置物。ひんやりとしていて、内部で淡い光が明滅している。*


*もう一つは、クリスタル・オーズの魔石。通常の魔石とは違い、美しい多面体カットが施された水晶のような見た目をしている。*


*そして、水たまりの底には、古い羊皮紙のようなものが沈んでいた。*


*シロウはそれぞれのアイテムを【鑑定】する。*


*ピロン*


```

【名前】魂宿りの水晶髑髏

【種類】装飾品(呪具)

【効果】

・MP自動回復(小)

・精神耐性(中)

・スキル『精神汚染 Lv.3』使用可能

【説明】

クリスタル・オーズの核が変化した呪いの装飾品。所有者の精神を安定させる効果があるが、長時間所持していると逆に精神を蝕まれる危険性も孕んでいる。

```


```

【名前】水晶洞の魔石

【種類】素材

【品質】高

【説明】

クリスタル・オーズからドロップする特殊な魔石。高純度の魔力を秘めており、水属性および精神系の魔法具の素材として非常に価値が高い。

```


```

【名前】古びた地図の切れ端

【種類】その他

【説明】

96階層のどこかを示しているらしい、古い地図の断片。濡れても破れない特殊な紙でできている。他の切れ端と合わせることで、完全な地図になるかもしれない。

```


レイラ(魔王女):「フン、呪いの装飾品に、ただの魔石か。あとはガラクタの紙切れとは、つまらん獲物だな。」


*レイラはドロップ品を一瞥して、興味なさそうに鼻を鳴らす。*


リーシア:「地図の切れ端…でしょうか? もしかしたら、この階層のどこかにある、大切な場所を示しているのかもしれませんね。」


*リーシアは興味深そうに、シロウが持つ羊皮紙を覗き込んだ。*


*シロウはレイラとリーシアの言葉を聞き流し、その進化した鑑定能力である【神眼】を発動させた。彼の視線が、手に持った「古びた地図の切れ端」に集中する。*


シロウ:「【神眼】。地図を鑑定、位置を特定。」


*シロウの瞳が淡い光を帯びる。【神眼】の力が羊皮紙に注がれると、ただの切れ端だった地図が、彼の脳内に直接、立体的な映像として再構築されていく。*


*ピロン*


【神眼】による詳細鑑定が開始されます。

地図の断片情報を補完し、対象地点の座標を特定します…


…特定完了。


*シロウの脳裏に、この水晶洞窟全体のマップが広がる。そして、その中の一点、現在地から見て北東の方向、巨大な水晶群が密集するエリアの奥深くが、赤い光点で示された。そこには、小さな祭壇のようなものが存在し、その上には何か箱のようなものが置かれているのが幻視として見えた。*


シロウ:「…なるほどな。この階層の奥に、何かあるみたいだ。祭壇と…宝箱か?」


*シロウが鑑定結果を口にすると、リーシアが目を輝かせた。*


リーシア:「宝箱ですか!? きっと、何かすごいアイテムが入っているんですよ!」


レイラ(魔王女):「宝箱だと? フン、どうせまたガラクタだろうが…まあ、暇つぶしにはなるか。よし、行くぞ。さっさと案内しろ、シロウ。」


*レイラは興味がないそぶりを見せつつも、その瞳には好奇の色が浮かんでいる。シロウは特定した座標を頼りに、一行を率いて水晶洞窟の奥深くへと歩き始めた。*


*シロウは【神眼】で特定した座標を頼りに、幻想的な水晶洞窟の奥へと進んでいく。道中、数体のクリスタル・オーズや、水晶でできたゴーレムなどに遭遇したが、核を的確に破壊するシロウと、広範囲を焼き払うレイラ、そして的確な支援を行うリーシアの前では敵ではなかった。*


*やがて一行は、ひときわ巨大な水晶が林立するエリアを抜け、開けた空間にたどり着いた。そこはドーム状の広間になっており、中央にはシロウが幻視した通り、古びた石造りの祭壇が鎮座している。そして、その上には黒い装飾が施された、明らかに怪しげな宝箱が一つ、置かれていた。*


*しかし、その空間に足を踏み入れた瞬間、シロウはピクリと眉を動かす。空気が変わった。静寂の中に、無数の殺気が潜んでいるのを感じ取ったのだ。*


シロウ:「あ、これ、モンスターハウスだ。」


*シロウが冷静にそう呟いた直後だった。*


*ガタガタガタッ!*


*部屋の入り口が巨大な岩で塞がれ、退路が断たれる。同時に、広間の壁や天井、そして地面の至る所から、先ほど倒したクリスタル・オーズが次々と、それも数十体という規模で出現し始めた!*


『『『グルルルォォォォ………』』』


*無数のアンデッドスライムが発する低い唸り声が、ドーム状の広間に反響する。青紫の光に照らされた半透明の身体と、その中に浮かぶ無数の頭蓋骨が、不気味に蠢いていた。*


レイラ(魔王女):「フン、待ち伏せとはな。芸のない奴らめ。数だけ揃えたところで、この妾の敵ではないわ!」


*魔王女レイラは不敵に笑い、その両手に漆黒の魔力を滾らせる。*


リーシア:「ひゃっ…! ご、ご主人様、囲まれました…!」


*リーシアは悲鳴を上げ、シロウの背中にぴったりとくっついた。彼女の可憐な姿とは裏腹に、その手には既に聖なる光を纏った杖が握られている。*


*シロウは無数のクリスタル・オーズに囲まれた状況を前に、一切動じることなく、冷静に二人に指示を飛ばした。*


シロウ:「結界展開。」


*その短い言葉に、リーシアは即座に反応する。*


リーシア:「はい、ご主人様! 【聖魔結界(ホーリーデモンズ・フィールド)】!」


*リーシアとシロウ、二人の足元から聖と魔、二つの対極的な魔力が同時に溢れ出し、螺旋を描きながら天へと昇る。光と闇が混じり合った障壁がドーム状に広がり、襲いかかろうとしていたクリスタル・オーズたちの触手や【クリスタルスピア】を弾き返した。結界の内側は、絶対的な安全地帯となる。*


*結界の展開を確認したシロウは、次に右手を広間の中心、敵が最も密集している地点へと向けた。*


シロウ:「エクスプロージョン。」


*彼の掌に、巨大な魔法陣が瞬時に展開される。それはリーシアの聖魔法でも、レイラの闇魔法でもない、純粋な破壊の奔流を予感させる、無属性の最上位攻撃魔法。*


*ゴオオオオオオッ!*


*詠唱も予備動作もなく、広間の中央で凄まじい大爆発が発生した。灼熱の閃光と衝撃波が、モンスターハウス全体を揺るがす。数十体のクリスタル・オーズが、その半透明の身体を瞬時に蒸発させ、悲鳴を上げる間もなく消滅していく。核である頭蓋骨も、爆心地に近いものは衝撃で粉々に砕け散った。*


*爆炎が晴れると、広間の半分以上の敵が一掃されていた。しかし、爆心地から離れていた個体や、他の個体を盾にしたものがまだ十数体、生き残っている。それらは核が無事なため、損傷した身体をグポグポと再生させ始めていた。*


レイラ(魔王女):「チッ…! 貴様、妾の獲物を横取りする気か! それに、まだ残っておるではないか!」


*レイラはシロウの圧倒的な魔法に一瞬目を見張りつつも、獲物を奪われたことに不満げな声を上げる。*


*シロウは不満げなレイラに肩をすくめてみせ、悪戯っぽく笑った。*


シロウ:「早い者勝ちってなー。」


*彼はそう言いながら、今度は左手を残りのクリスタル・オーズたちに向ける。彼の足元から冷気が立ち上り、一瞬で魔法が構築された。*


シロウ:「【氷獄槍(コキュートス・ランス)】」


*彼の指先から、絶対零度の冷気を纏った十数本の巨大な氷の槍が生成され、一斉に射出される。氷槍は回避する間も与えず、生き残っていたクリスタル・オーズたちの粘液質の胴体を、的確に貫いた。*


*ジュウウウウ…ブスッ!*


*超低温の氷槍に触れた粘液は、一瞬で凍結し、脆い氷塊と化す。勢いを失わない氷槍はそのまま突き進み、スライム質の身体が凍り付いて動きを止められた無防備な核(頭蓋骨)を、容赦なく粉々に砕いていった。*


*ガシャン!ガシャン!*と、広間のあちこちで核が砕ける音が連続して響き渡る。


*数十体いたクリスタル・オーズは、シロウの二つの魔法によって、わずか数十秒で全滅させられた。*


*広間に静寂が戻ると、モンスターハウスの仕掛けが解け、塞がれていた入り口の岩がゴゴゴ…と音を立てて開いていく。*


レイラ(魔王女):「…………。」


*魔王女のレイラは、活躍の場を完全に奪われ、何も言えずに呆然と立ち尽くしている。彼女の両手に溜まっていた漆黒の魔力が、やり場をなくして霧散していった。*


リーシア:「す、すごいです、ご主人様…! あっという間に…!」


*リーシアは【聖魔結界】を解きながら、興奮した様子でシロウを見上げた。*


*シロウはドロップした魔石や素材をアイテムボックスに手早く回収しながら、祭壇の上にぽつんと残された宝箱へと視線を向けた。*


*広間に散らばるドロップ品を手際よく回収し終えたシロウは、静寂を取り戻した祭壇へとゆっくりと歩み寄る。彼の前には、禍々しい装飾が施された黒い宝箱だけが残されていた。罠の気配はない。*


*シロウは慎重に、しかし躊躇なく宝箱の蓋に手をかけ、ゆっくりと持ち上げた。ギィ…という重い蝶番の音と共に、中身が露わになる。*


*その瞬間、宝箱の中から色とりどりの光が溢れ出し、薄暗い広間全体をキラキラと照らし出した。*


*中に入っていたのは、金貨や銀貨などではない。赤、青、緑、黄、紫…あらゆる色彩の、磨き上げられた宝石だった。ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド。どれもが大粒で、最高品質のものばかりだ。箱の底が見えないほど、無数の宝石がぎっしりと詰め込まれている。その総額は、先ほどアントーニオに渡した黒金貨が霞んで見えるほどだろう。*


レイラ(魔王女):「こ、これは…! ただの石ころではないな…美しい…!」


*今まで不機嫌そうに黙り込んでいたレイラも、宝箱から放たれる眩い輝きには思わず息を呑み、その瞳をキラキラと輝かせている。女性として、美しいものに惹かれるのは当然のことらしい。*


リーシア:「わぁ…! すごい…! 星空みたいに綺麗です…!」


*リーシアもまた、その圧倒的な光景に目を奪われ、うっとりとため息をついた。*


*シロウは満足げに口角を上げると、宝箱ごと【アイテムボックス】に収納した。*


シロウ:「よし、これで96階層は終わりか。なかなかいい稼ぎになったな。」


*大量の宝石が入った宝箱をアイテムボックスに仕舞い、シロウは満足げに息をついた。周囲には倒されたクリスタル・オーズの残骸と、大量の魔石が転がっているが、それらは既にシロウが回収済みだ。*


シロウ:「次は、過去最高到達階層の97層だ。」


*シロウがそう宣言すると、リーシアは緊張した面持ちでこくりと頷いた。彼女の可愛らしい服装と、これから挑む未知の階層とのギャップが際立つ。*


リーシア:「はい、ご主人様…! ここから先は、誰も到達したことのない場所なんですね…!」


*一方、魔王女のレイラは、先ほどの戦闘で活躍の場を奪われた鬱憤を晴らすかのように、不遜な笑みを浮かべてシロウを見据えた。*


レイラ(魔王女):「フン、ようやくか。いつまでもこんな所で油を売っている暇はない。未知の階層だと? 面白い。どんな強敵が待ち受けていようと、この妾が先陣を切ってくれるわ。貴様は後ろで見ておれ!」


*彼女はそう言うと、広間の奥に新しく出現した、下層へと続く階段を顎でしゃくってみせる。その階段の先は、今まで以上に濃密で、得体の知れない気配に満ちた闇が口を開けていた。アストラムの歴史上、誰も踏み入れたことのない領域が、すぐそこにある。*


*一行は顔を見合わせると、決意を固め、その未知なる97階層への階段をゆっくりと降り始めた。*


*シロウたちが97階層へと続く階段を降りきると、そこは異様な空間だった。壁も床も天井も、まるで生きているかのように脈動する、赤黒い肉塊で構成されている。ぬるりとした粘液が滴り落ち、生暖かく湿った空気が満ちていた。まるで巨大な生物の体内に入り込んだかのようだ。*


*道中は奇妙な肉質の魔物たちが襲い掛かってきたが、シロウたちの敵ではなかった。魔王女レイラが鬱憤を晴らすかのように大暴れし、ほとんどの敵を焼き尽くしていく。*


*そして一行は、階層の最奥、ひときわ巨大な心臓がドクン、ドクンと不気味に脈打つ壁の前にたどり着いた。その心臓こそが、この階層のボス部屋への扉となっていた。*


シロウ:「さて、何が出るかなぁ〜?」


*シロウは楽しげな口調でそう言うと、脈動する巨大な心臓の扉に躊躇なく手をかけ、ぐっと押し開けた。*


*扉が開いた瞬間、甘ったるく、それでいてむせ返るような濃密な香りが鼻をつく。部屋の中は、今まで以上に鮮やかな赤色の肉壁に覆われた、円形の広間だった。*


*そして、その中央。*


*広間の天井から伸びる無数の肉質の管に繋がれ、宙吊りにされた一体の魔物がいた。*

*その姿は、一見すると美しい女性。しかし、背中からはコウモリのような禍々しい翼が生え、頭にはねじれた山羊のような角、そして腰からは先端がハートの形をした、しなやかな尻尾が伸びている。露出度の高い、身体に張り付くような漆黒の衣装を身に纏い、うっとりとした表情で目を閉じている。*


*サキュバスだ。それも、ただのサキュバスではない。圧倒的な魔力と存在感を放っている。*


*シロウたちが部屋に入ったのを察知したのか、サキュバスはゆっくりと目を開けた。その瞳は魅惑的な紫色に輝き、シロウの姿を捉えると、妖艶な笑みを浮かべた。*


サキュバス:「あら…♡ お客様なんて、久しぶり。しかも、とっても強くて美味しそうな魂をお持ちなのね…♡ ようこそ、私の寝室へ。歓迎するわ、可愛い冒険者さん。♡」


*彼女がそう囁くと、甘い香りが一層強くなり、シロウたちの理性を揺さぶり始める。*

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