最終話 そして僕らは……(後編)
「あらどうしたの?」
美波さんに尋ねられる。
「あぁちょっと昔のことを思い出していて……」
「あらそう。それは良かったわ。私たちやっとここまで来たのね」
僕らの目の前には扉がある。
「それでは新郎新婦のご入場です!」
荘厳な音楽が流れ扉が開かれる。
僕らはゆっくりとでも確実に歩き出す。
門が開いた瞬間、両側から滝のような拍手と多くのカメラがむけられる。
「おめでとうあっちゃん!」
「お前ら二人とも立派やで~!」
「ほ、本当におめでとうございます……」
僕の友人たちから大量の祝福を受ける。まさか僕らを祝うために僕の小中高大の同級生や先輩たちが忙しい中駆けつけてくれるなんて感謝しかない。
今日は僕と美波さんの結婚式の日だ。
プロポーズしたのは僕からだった。付き合い始めてから数年した後僕も大学の理工学部を大学院まで卒業し、同大学の研究職として勤めが安定したころ。僕と美波さんはある水族館に来ていた。目の前には熱帯魚が動いている。
「綺麗ね。この熱帯魚群」
「は、はい!とても綺麗です」
「でもこれがもっときれいになる時が……」
僕は美波さんの口を塞いだ。
「それは言っちゃダメですよ」
「あらどうしてかしら……」
美波さんの疑問を僕は聞き流す。絶対にこの瞬間を譲るわけにはいかないのだ。
「変な子ね」
美波さんがため息をついた瞬間。水槽が一変した。
今まで蒼かった水が急に紅く染まったのだ。
「こ、これは……」
美波さんが呟くので僕は勝利を確信した。
「これは奥にある夕日の光景がこの水槽に反射して紅く染まるんですよ」
僕は胸を張る。徹夜して調べたことだ。
「そう。確かに綺麗ねでもこれなら夕陽を見た方が……淳志くん?」
僕は美波さんに膝まづいた。
「美波さん。この夕日の元に宣言させてほしいです。ぼ、僕とずっと一緒にいてください!」
精一杯の宣言だった。今までずっと遊ばれてきたけど絶対にプロポーズの時だけは譲らないと決めていた。今どんな顔をしているんだろう。何とか上を見上げてみる。そこには……
「……」
今までにない顔をした美波さんがいた。
「私と結婚したいの?」
「は、はい!僕が全力で幸せにします!」
そのせい一杯の宣言を聞いて美波さんは……
「分かったわ」
ポンと僕の頭に触れた。
「予定よりは早かったけど受けてあげる。貴方と私はこれからもず~っと一緒よ?」
受けてくれた。僕はそれが何よりもうれしかったのだ。
「ありがとうございます!」
「ほらほら抱き着かないの皆見てるわよ」
「嬉しくて……」
僕は嬉しさでいっぱいになった。そしてその後安心したのか昨日の徹夜疲れが……
「眠いの?仕方ないわね」
「い、いえ!」
「ダメよこのままあなたを歩かせたら骨折するかもしれないわ」
美波さんはひょいと僕をお姫様抱っこしてしまう。
「み、美波さん……」
「それじゃ帰りましょうか」
僕のプロポーズ作戦は9割成功、1割失敗だった。
そんなこんなで話が決まれば後はあれよあれよと決まってしまう。友達たちに招待状を出してみたら意外にも多くの人が来てくれた。まぁ美波さんの方は仕事上の付き合いなので出席している人がすごく多いから格を保つなら丁度良かったのかもだけど。
「いや~結婚おめでとうございます!俺とあっちゃんはね幼稚園からの付き合いで互いのことをどこまでも知り尽くしてますよ。まさかそんなあっちゃんが結婚とはねぇー」
友人代表として僕からは啓馬、美波さんからは優香さんが挨拶してくれた。彼は夢をかなえてバスケットボールの選手になったらしい。いつか一緒に試合を見に行けたら良いな。
「と言うわけで乾杯の時間や。本日はこの新郎新婦両方の知り合いの池江武史が務めさせていただきます。皆さんグラスを持ってください!と言うわけで美波!淳志!結婚おめでとう!乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
一同の乾杯の声が響く。
「続きまして。新郎新婦の記念撮影をしていただきます」
アナウンスがされた瞬間、僕らの周りには人の壁ができる。
「よしあっちゃんを撮影してあげるわ!そしてブーケトスも貰うのよ!」
「フハハハハ。何の写真を頼もうか。やはりキスか?」
「光士郎さんあなたはそれを撮りたいだけ、後ブーケは渡しませんからね明菜さん。ってキスしてくれるんですか?撮りますよ~」
「フフフ俺らがコス撮影で鍛えた写真の腕を見せてあげよう」
「了解デース!」
そうして多くのカメラが構えられる。
「さぁ淳志くんキスしましょう?」
「は、はい!」
僕は美波さんのベールを脱ぐとその口に口づけをした。
「「「「おーーーー!」」」」
一同から反応が上がる。
「次は何を撮ろうか武史」
「そんなのお姫様抱っこに決まっとるやろ!」
武史先輩がそう言うので僕は頑張って持ち上げようとする。
「ちゃうちゃう!何でお前が美波持ち上げんねん。逆や逆」
「分かったわ」
ウエディングドレス姿の美波さんは僕をまたひょいと持ち上げた。
「あっちゃん可愛い~!」
「やっぱこっちだよね~」
「やっぱり新婦が新郎お姫様抱っこしちゃ締まらないって!」
「別にいいじゃねぇかお前らしくて。な?啓馬、英二」
「そうだな淳志はこっちの方が見慣れてる」
「そうだってさ!そのままキスしちまえよあっちゃん!」
啓馬に急かされて僕は唇を近づける、前に美波さんの顔がやって来て口づけしてしまった。
「フフッ。お先に頂いたわ♡」
「そ、そんなぁ~」
僕は顔を赤くする。そして気づいたのだ。美波さんには絶対勝てないのだと。




