5話 もしかしてツンデレ?!
ある日ツインテールの女子が校門前で見張りをしていたのを僕は見つけた。何か男子が注意されている。
「そこ!制服が乱れてるわよ!」
「ふぁぃ。」
「ちゃんと返事をしなさいよ!」
「へ、へぃ!」
へいとは何だ。江戸っ子かな?とりあえず無視して違う校門から行こうとしたところで呼び止められた。
「ちょっとアンタアタシから逃げる気?」
どうしてわざわざ反対側の校門から入ったのに僕に気付いたの?
「決してアタシから逃げられるとは思わないことね」
そう言って彼女はニヤつきながら僕に近づき、僕の姿勢を正す。彼女は園田明菜と言い僕の小学校からの幼馴染だ。生徒会にも入っていてその厳しさに定評がある。
「ネクタイはちゃんと……何よ絞め落としたりはしないわよ!」
「べ、別にそんなこと言ってないから…」
僕は慌てて訂正する。
「袖や裾もちゃんと……ってアンタみたいなおチビには最小サイズの制服でも大きいのね。クスクス」
彼女は嘲笑う。僕の低身長を笑っているのだ。彼女はこういうところがあるので苦手である。確かに僕の身体は小さくて制服のサイズが合っていない。
「手もちゃんと袖から出しなさいよ」
そう言って僕より大きい手で袖から引っ張り出す。
「ご、ごめんなさい」
「まぁいいわ。とりあえず昨日会長とお楽しみだったみたいね。」
「え?どういうこと?」
僕は思わず聞き返す。何でそんなことを知ってるんだろう…
「とぼけても無駄よ。アタシはアンタのことなら何でも知ってるんだから!」
「え?でもあれは美波さんが勝手に」
僕が言い返したけど彼女は続ける。
「まぁいいわ。アンタみたいなのにあの会長は相応しくないわよ」
そう言って僕のネクタイを引っ張る。そして顔を近づけて来る。彼女の目は本気だった。本気で僕に宣戦布告して来ているんだ。でも理由は分かる。僕みたいな弱者に美波さんみたいな聖人はもったいないってことぐらい。美波さんは人気者だから僕みたいな男にはもったいないんだ…彼女は生徒会で会長に近い立場だから特にそう感じるんだろう。
そんなことをしていると話を遮るように後ろから梨奈さんがやって来た。
「やっほ~あっちゃん!」
「り、梨奈さんおはよう!」
僕がそう答えると明菜はあきれ顔でこう告げる。
「梨奈さん…あなたまた校則違反だらけの服装でよくもぬけぬけと登校してくるわね…教育に悪いから直したほうが良いわよ?」
「まったくうるさいなぁ…」
「規則だから言ってるの。それよりもあっちゃんって何よ!まさか最近あっちゃんに絡んでるのって…」
ややこしい話になりそうだったので僕はすぐに下駄箱に向かって行った。
僕が昼休みにご飯を食べているとまた明菜がやってきた。
「あ、見つけた。アンタねぇアタシを置いていくなんていい度胸じゃない!」
そう言って僕の隣にドカッと座る。
「え?何で隣に座るの?」
僕は思わず聞いてしまう。だって今は教室もすいてるし他に座れるところはいくらでも……
「アンタ…どういうつもり?」
「え?何が?」
僕は思わず聞き返す。
「アンタねぇ!会長とどういう関係なの!?」
「え?」
僕はまた聞き返してしまう。僕と美波さんとの仲なんてただの……
「アンタに会長はふさわしくないわよ。」
「ふ、ふさわしくないって言ったって…そんなの僕が決めることじゃないし…僕はダメダメのチビだし…美波さんみたいな完璧な人には……」
僕はつい後ろ向きなことを口に出してしまう。彼女は僕の言葉を聞いてハァとため息をつく。
「あのね…アンタにふさわしくないってそう言うことじゃないのよ…」
「は、はい。」
この女子とは僕は既に長い付き合いだ。
「アンタはね…」
「園田さん!先生が呼んでるって!」
明菜の友達が呼びに来た。彼女は立ち上がる。
「とにかく!アンタに会長はふさわしくないの!」
そう言って屋上から去って行った。僕は彼女の後姿を見送るしかできなかった。
その後明菜は空き教室に入った。
「そうよ…あの子に会長なんて…」
明菜は思案して言う。
「会長なんて言うメスはふさわしくないのよ…あんなちっちゃい体の可愛い天使に‥‥」
園田明菜は海城淳史のことが好きだった。
「何よ!ちょっとからかっただけでうるうる見上げて来て。あれで同い年?可愛すぎて食べちゃいたい」
明菜は幼馴染の淳史のことを愛していた。いや溺愛していた。好きだからこそ淳史のことは全て調べている。そもそも美波との仲に納得いかないのだ。後梨奈についても…
「あの天使はアタシが守ってあげないと…あのメスに取られないようにしないと……」
そう言って明菜は淳史の写真にキスをする。
「待っててね。あっちゃん♪」