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その少女は殺されたい  作者: おじさん
少女は常に願っている
2/17

1-1

〜約半年前〜


余計な雑音も無い、静かなその場所にトラブルが舞い込んできたのは、慌ただしい声とほぼ同時だった。


「よ、ようやく見つけましたわ!! ここが貴方様のハウスですのね!!」


「…!? …どちら様で!?」


事務所でのんびりとコーヒー片手に新聞を読み、ブレイクタイムに浸っていた男は、あまりにも突然の来客に思わず飲んでいたコーヒーを噴き出しそうになる。


鍵はかけていたし、呼び鈴も鳴らなかった。そもそも『アポ無し』の来客など殆ど無いので、流石に驚きを隠せていない。


「はっ! 挨拶もせずに上がり込んでしまい申し訳ありません。申し遅れました。私、神凪カンナギ 麗花レイカと言います。歳は15。今日は貴方様に用があって参りました」


神凪麗花と名乗った少女は、美しい所作でお辞儀をし、丁寧に要件を告げる。どうやら男に用があってわざわざ訪ねたらしい。


「え、あ、はい。ご丁寧にどうも…。もしよろしければそこへお掛けください」


男は戸惑いながらも客だということを理解し、来客用の対応をする。なんというか流れに押し切られた感はあるが、それを気にさせない勢いが彼女にあった。


「ご厚意感謝いたしますわ。それでは失礼して…」


備え付けのソファに腰掛けると麗花は、まじまじの男の顔を見つめ始める。何かを確かめるような、そんな目線に男は少しばかりたじろぐ。


「やっぱり…恐らく間違いないですわ。貴方様…『神凪』という苗字に聞き覚えはないかしら?」


神凪、という苗字は珍しい部類に入るだろう。聞いたことさえあればきっと覚えているはずだ。


そう言われて、男は自分の記憶を辿っていく。しばらく黙った後に、思い出したようで、小さく声を出す。


「神凪って…5年前の…」


「そう!! 忘れたとは言わませんわ!! 私の両親を殺した事!!」


そう、神凪という苗字は5年前に聞いたものだ。何故聞いたか、それはその苗字の人間が『ターゲット』だったから。


確か、2人殺したのだった。依頼があったのだ。『神凪という夫婦を殺してくれ』と。理由?興味が無かったので聞いていない。


依頼は『夫婦を殺してくれ』だったので、子供は殺していなかった。目の前にいる少女はどうやらその時殺した夫婦の娘らしい。


「ずっと探してましたの。両親を殺した貴方のことを…」


こういう稼業をやっているからには、こういうことは珍しくないのだろう。男は少しも動揺することなく、威圧するように少女の目を見据えた。


「そうか…。それで、今日はその『仇討ち』か…?」


暗に、そうであったら容赦はしないと。謝る気も無いし、償う気も無い。仕事の邪魔をするならお前も…と言おうとしたところで、麗花が口を挟んだ。


「仇討ち? 『違いましてよ』?」


男が言ったことに対し、本気で疑問符を浮かべる麗花。その表情から全く嘘では無いことが見て取れる。


「え、違うの…? 仇討ちじゃなかったら、何だって両親殺した相手に会いに…」


「仇討ちなんて滅相も無い! 殺す気も捕まえる気も一切ありませんことよ。私の望みは別にあるのです」


少女の顔は憎悪にも悲哀にも染まっていない。何よりも『怒り』を感じない。むしろ、その逆。憧れの人を見つけたかのような…


「貴方様には私を『殺して欲しいのです』」


心底嬉しそうにそう告げた麗花を見て、今度こそ男は度肝を抜かれた。

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