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その少女は殺されたい  作者: おじさん
そして少女は悩んでいる
16/17

4-3

――――――――

――――

――


「…誠一郎」


「…何だよ」


「確かに私は『是非同居人を連れてこい』と言った。人嫌いなお前が人と共に住んでいるとは珍しいと思ってな」


「………」


「しばらく見ない内に…まさかロリコンになっていたとは…」


「ちげぇよ!! いや、まぁ、確かにそう見えてもおかしくはないが違うんだよ!!」


会わなければならない人物がいる、とのことで麗花を連れてその人の元へやってきた冠城であったのだが…


「いい、いいんだ、誠一郎。お前もちゃんと人だということが分かって私も嬉しい…」


「話を聞いてくれ!!」


一緒に連れてきた麗花を見た瞬間にとんでもない勘違いをされてしまっていた。とはいえ、事情を知らない人から見れば、少女を連れた変質者にしか見えないわけで…。


「私にも利益があると、今までの殺人は黙認してきたが…流石に誘拐となると警察に連絡せざるを得ないぞ、誠一郎」


「だから話を聞けと言っているだろ、クソ女狐が!! 誘拐でも何でもない!!」


「女狐とは人聞きが悪い。お前を拾ってやったのは誰だと思っている?」


「女詐欺師は女狐で十分だろ…それについては感謝してるが…」


「さて、警察に連絡を…」


「あー、もう埒が明かん!! お嬢さん、説明してやってくれ!」


「拉致!? やっぱり誘拐じゃないか!!」


「埒だよ!!!! いい加減にしろ、クソババァが!!」


わいのわいのと、コントのようなやり取りが冠城と件の人との間で行われる。このテンポの良さと遠慮の無い態度から察するに付き合いは短くはないのだろう。


その光景を、麗花は面白がって静観していた。普段決してテンションが高くない冠城が荒ぶっているのが珍しく、もう少し見ていようという態度が見て取れる。


「…とまぁ、冗談はさておき、だ」


「アンタの冗談は心臓に悪いし疲れるんだよ…」


「お嬢さん、『改めて』自己紹介してくれるかな?」


「はい! 私、神凪麗花と申します。歳は15。今は誠一郎様の元でお仕事の手伝いをさせていただいております。是非ともよろしくお願い致しますわ。…そして、以前はありがとうございましたですの」


いつも通りの丁寧な挨拶に美しい所作。…だったのだが、一つだけ違和感がある箇所が。


「…以前? 前にこの女に会ったことあるのか?」


冠城の疑問は尤もなものだった。彼女をここに連れてきたのは初めてのことであるし、まず目の前の女は普通の女じゃないと理解していたからだ。


「やっぱりか。あの時のお嬢さんだね?」


「はい。あの時は誠一郎様の居場所を教えていただき、本当に感謝していますわ」


「うんうん、ちゃんと会えたみたいで良かった。てっきり復讐するものと思っていたが、どうやら違っていたようだね」


「…お前、まさか」


「あー、うん。一般人が君の住所知っているわけないじゃないか。私が教えたんだよ。『神凪という夫婦を殺した人間の居場所を教えて欲しい』、と半年と少し前に彼女に言われてね」


「殺し屋さんの事だったら、裏の世界の方がよく知っているかな、と思ったんですの。それこそ、その界隈で超有名な詐欺師さんなら尚更、ですわ」


何でもないことのように、衝撃の事実を告げた麗花。今思えばそうだ。麗花は、ほぼ確信を持って冠城のとこへ乗り込んできた。その際に探し回ったとも。


「…随分と口が軽いな、らしくもない」


「結果的に良かっただろう? 天下の女詐欺師、冴島サエジマ 雪奈セツナに頼った彼女の作戦勝ちさ」


腕利きの詐欺師であれば、ありとあらゆる情報を持っていることだろう。騙す、ということは無知には出来ないことなのだから。


殺し屋の事を知りたいなら、裏の世界のネットワークを頼る他ない。麗花が目を付けたところは、その中でも最高峰と目される情報通のところであり…


「雪奈様が誠一郎様と知り合いだったのは、本当に幸運でしたわ…! 雪奈様は私が殺される為の道を切り開いてくださいましたの…!」


「…まさか、こんなに変な娘だとは思ってもみなかったがね」


「それは…同意だ」


そんな特異な人物であっても、麗花の思想はやはり理解し難いものであったようで。

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