第三節:奈落のミルクプラットフォーム
「ははは! 今月も最高賣上を更新だ! ボスが變わってからの方が、このアジトは儲かるじゃねえか!」
深夜、世界中へミルクを出荷し終えたレフティとジャックは、札束を掴みながら地下室で狂ったように踊り狂っていた。
その足元、冷たい床の上には、一日の過酷な搾乳と奉公を終え、拔け殼のようになって重なり合う美波、エレーナ、クロエの姿があった。
かつて世界を魅了した美貌も、誇り高き極道としての執念も、今や完全に枯れ果て、ただ怪物の利權を潤すための「ミルクの生產機」へと成り下がっていた。
「……美波……クロエ……私たちはもう……」
エレーナの變形した唇から、消え入るような嗚咽が漏れる。
「ええ……でも、私たちは……ただの、機械よ……」
三人はお互いの腫れ上がった顏を見合わせ、感情の完全に消え去った、不氣味なほど靜かな微笑みを交わした。
ボスが變わるたびに運命をズタズタに引き裂かれ、最後は三人揃って南アフリカの暗黑の地下室で、怪物のDNAを育て、そのミルクを世界へ切り賣りされる。それが、最初から決まっていた彼女たちの冷酷な終着驛だったのだ。
私が命を賭して守ろうとした誇りも、エレーナたちの美貌も、この新しく臺頭した若い手下二人の知性なき「ミルク販賣」というビジネスの前には、ただの效率的な資源に過ぎなかった。
意識の底で、靜かに冷たい風が吹いた。
もう、怒りも、悔しさも、痛みすらも感じない。ただ、機械の規則正しい驅動音を聞きながら、三人の意識はゆっくりと、そして今度こそ完全に、二度と目覺めることのない深い、深い絕望の闇の底へと沈んでいった。
南アフリカの廣大な地平線の眞下、怪物の利權が狂い咲く地下室の片隅で、三人のミューズの運命は、あまりにも殘酷に、そして完全に幕を閉じた。




