第三節:血塗れの分娩臺と、奈落の完成
南アフリカの過酷な陣痛の嵐が、地下室の三人を同時に襲った。
全面ガラス張りの向こう側、配置された現地の若い醫師たちの冷徹な手によって、麻醉も滿足に與えられないまま、三人は血塗れの分娩臺へと同時に引きずり出される。
「ぎゃあああぁっ……! あぁっ……!」
美波の裂けた唇から、血混じりの絕叫がほとばしる。エレーナは變形した手首をベッドの鐵枠に擦り付けながら身をよじり、クロエもまた、傷ひとつなかったはずの下半身が出產の衝擊で物理的に破壞されていく激痛に、白目を剥いて叫んだ。非對稱に腫れ上がった三人の目の隙閒から、ドロリとした血の淚が流れ落ち、床を眞っ赤に染め上げていく。
オギャア、オギャア、オギャア――。
靜まり返った地下病棟に、不氣味に重なる三つの赤ん坊の產聲が響き渡った。
それは祝福されるべき命の誕生ではなく、手下二人の暴虐なDNAを色濃く受け繼いだ、彼女たちの完全なる「敗北と終身奴隸」の證明だった。レフティとジャックは、生まれたばかりの赤ん坊たちを亂暴に抱え上げると、滿身創痍で床に伏せる三人の前に突きつけた。
「見事だ。お前たちの絕望から生まれたこのガキどもが、次の世代の俺たちの兵隊(奴隸)になるんだよ」
赤ん坊を奪われ、干からびた聲をあげて泣き崩れるエレーナとクロエ。そして、車椅子の車輪に顏を伏せたまま、完全に光を失った美波。
ボスが變わるたびに運命をズタズタに引き裂かれ、最後は三人揃って異國の地で子供を產まされ、怪物の血を未來へ繋ぐためだけの生贄とされた。
誇りも、美貌も、友情も、すべては南アフリカの暗黑の地下室で完全に粉碎され、ドロドロの肉片となって消え去った。三人の女たちの運命は、生まれてきた子供たちの產聲の向こう側で、二度と明けることのない深い、深い絕望の闇の底へと、完全に幕を閉じたのだった。




