第六章:大革命 第一節:東京の防衞網の瓦解と、黑崎の失脚
南アフリカの地でレフティとジャックの二人が前ボスを慘殺し、帝國の實權を握ったという凶報は、瞬く閒に世界の裏社會のネットワークを驅け巡った。それは單なる地方組織の內紛に留まらず、前ボスが緻密に築き上げていた國際的な利權プラットフォーム全體の崩壞――すなわち「大革命」の幕開けを意味していた。
その革命の激震は、東京・灣岸エリアの超高層タワーマンションでクロエを監禁していた新興組織の若頭・黑崎の元へと、最も最惡な形で直擊する。
「南アフリカの利權を奪ったあの若造どもが……まさか、我が組織の內部まで買收していたとはな」
深夜の總大理石の監禁室。黑崎は、自身の配下であったはずの複數の若い構成員たちに銃口を突きつけられ、苦澁の表情で床に膝を屈していた。
レフティとジャックは、知性なき暴虐の徒でありながらも、前ボスの遺產である天文學的な資金力を贅澤に使い、黑崎の足元を丸ごと買い取るという力技の「大革命」を裏で成立させていたのだ。
黑崎の組織の反逆者たちは、主君の首から高級な端末を奪い取ると、クロエの首に嵌められていた「電子の首輪」のマスターキーを解除した。
「黑崎、お前の時代は終わりだ。この最高級のブランド品は、南アフリカの新しいボスたちへ『大革命の貢ぎ物』として直接出荷される」
部屋の隅で、何時閒も同じ姿勢のまま傷ひとつない「綺麗なままの姿」で靜止させられていたクロエは、その電子の首輪を外された瞬閒、安堵ではなく、より深い底なしの絕望に身體を震わせた。黑崎という冷徹なコレクターの檻から、あのエレーナと美波を原型が變わるまで破壞した狂氣の獵犬たちの檻へと、自分が再び引きずり戾されることを瞬時に理解したからだ。
クロエは一切の暴力を振るわれることなく、高級なシルクのガウンに包まれた無傷の美貌のまま、再びヨハネスブルグ行きのコンテナへと强制的に收容された。




